料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI
   

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左:MAY 右:十兵衛
撮影:岡崎伸彦
 
     
  食えん?  
     
   十兵衛が入院した。下痢と嘔吐が止まらなかったからだ。ハヤテがトウモロコシの芯を詰まらせたように、十兵衛も木の枝か何か呑み込んだにちがいない。
 生憎ゴールデンウィークだった。休みに対応する病院を見つけて連れて行ったら即入院。一応レントゲンを撮ったが、木屑や草は写らないものらしい。点滴だけの毎日で、黒い十兵衛が青瓢箪のようになった。
 一週間後に草のかたまりが出て目出度く退院となった。体重は7キロ減。十兵衛改め、ホネカワ筋エモン。

 筋エモン七番勝負、島原の乱。
「筋エモン殿。セッシャは刀を鍬にかえて暮らしておる身、幕府に歯向かうつもりは毛頭ござらぬ。とは言えセッシャ、痩せても枯れても武士でござる。お疑いとあらば見っ事立ち合い、武士らしく死んでごらんにいれましょうぞ。お相手がソコモトならばセッシャこの上もない幸せ。いざ、勝負!」
 セッシャがさっと身構える。筋エモンは立っているのもやっとの有様。どっちが「痩せ枯れ」なのかわからない。
「どうなされた、筋エモン殿」
「ふ、不覚にも・・この身、衰え・・ゴホゴホ・・勝負どころでは・・ゴホ・・ござらぬ。き、斬るなと煮るなと、か、勝手にされい」
「それは難儀なこと、さぞ江戸におわすホネカワの殿もお嘆きでござろう。幸いなことにセッシャ、ここに南蛮の良薬を携えてござる。これにて養生なされよ。勝負はそれからのことでござる、のう?」
 などと労わられては筋が進まぬよ筋エモン殿。早く十兵衛にお戻り願わねば。

 その十兵衛にもどるべく退院の日。
「尿に菌が出ているので抗生物質をお出ししておきますね」「え、膀胱炎ですか?」「そうみたいですね。オシッコの出も悪いようですし、一度前立腺を調べたほうがいいです」
 そこで思い出したのが、そこの動物看護士の言葉。
「十兵衛ちゃんは、オンナのコみたいに座ってオシッコするんですねえ」
「そんなはずはないです。いつも片足上げですが」
「いえ、大も小も犬舎の中で座ってやりますよ」
 そこの病院は大小便を犬舎内、もしくは狭い犬舎横通路でやらせるシステムになっていた。十兵衛のように外でとしつけられた犬には過酷だったろう。我慢に我慢を重ね、仕方なくお座りしたままショロショロとやったのだ。点滴で普段より水分は多い。膀胱炎にだってなるわな。
 しかし考えてみれば都会の病院の場合、それはそれで仕方のないことなのかもしれない。これからの飼い主は、ハウスでもトイレができるようにしつけておかなければいけない。

 後日、前立腺のレントゲンになった。「飼い主さん、手伝ってください」。ドーベルマンだからと何故か看護士たちはこかへ消え、仕方なく私がレントゲン室へ入るハメになった。ふと見れば、消えたはずの看護士たちがガラスの向こうから覗いている。「飼い主さん、よそ見しないでもっとしっかり押さえて」
 というわけで、私の脳味噌も写っているのではないかと心配になった。
「○○君、ネガ見てみろよ、この飼い主、脳みそが小さいねえ。カニ並みだね」
「いやあ先生、カニみそなら食えますが。こっちは・・」
「ハハハハ、食えんな、食えん食えん」
 
 さてレントゲンの結果であるが、これがうまくいかなかった。
「膀胱が空で場所がわからなくて、とうことは前立腺が腫れてるかどうかもわからないということです」
 だったら、なぜ「オシッコをためて来てください」って言わなかったのだろう。
「まあ、切っちゃうなら切っちゃったほうが早いですけどね、オスはいずれくることだから。なんなら今やっちゃいますか?費用は後からでも大丈夫ですよ。そのへんのことは事務所で聞いてもらえば」
 若い医者はなんだかとても張り切っていた。こちらは 「とにかく膀胱炎を直してからのことに」 と答えるのがやっとであった。
、その日は抗生物質の他にホルモン剤をもらって帰ってきた。手伝ったのにレントゲンの割引きはなかった。ああ、食えん食えん。

 
     
 
     
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