料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI
   

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左:MAY 右:十兵衛
撮影:岡崎伸彦
 
     
  癌癌カクカク  
     
   

 十兵衛が肥満細胞腫という癌にかかったのは9才になるちょっと前のことであった。
 ある日、後足の膝にプクンと小指の先ぐらいの膨らみを見つけた。病院へ行ったら心配ないと言われたので安心していたらどんどん大きくなった。
「先生、どんどん大きくなるんですけど」
「脂肪だと思うよ。ほら、皮膚とつながっていて、肉のほうにはくっついてないでしょう」と何だかわからないことを言う。主人が「なるほど、そうですね」と安易に追随して早期発見の機会を逸してしまった。
 

 しばらくしてから別の所で組織検査をしてもらったら癌であることが判明した。そこから大病院へ紹介してもらって手術を受けた。翌日にはもう退院だという。混んでいるから余分に入れておかないのだ。金銭的には有りがたいことだし、動物は治りが早いものだからと喜んで会計をしていたら傷口から血が染み出てきた。包帯を巻きなおしてくれた女性が「こういう場合、滲みてくるのは仕方ないんですよ」と言った。
家に帰ると膝から下が脹らんでブヨブヨになっていた。ハヤテが手術後にそうなったときには歩いて直ったくらいだからと放っておいたら翌朝糸がぶち切れて犬舎が血の海になった。外へ出すとき、傷口から小さな肉片まで飛び出した。
 

 さて入院したはいいが何日経っても傷口が塞がらない。よく動く場所なので治りが悪いらしい。落ち着くのに2週間ほどかかった。それからまた1週間して抜糸。ヤレヤレと思っていたら癌が取りきれていなかったので放射線を当てるという。犬に放射線?と驚いたが、取りきれなかった部分が不気味である。腹をくくった。
週に2回の通院がはじまった。十兵衛は病院の方向へ車を走らせると落ち着かなくなる。放射線は性に合わないようだった。もっとも性に合うものなどいるわけもない。それでも助手の先生にリードを渡して「行け」と言うと観念したように治療室へ向かう。
放射線治療が終っても薬を飲まなくてはならなかったので、結局半年近く病院通いをした。金欠でこっちの鼻血も出なくなった頃、十兵衛はひとまず治療を終えた。
「緊縮財政なんだからね、お前のエサは格を落とすからね」
 しかしよく考えてみたら元々一番安いドッグフードだったので落とせなかった。
 片足を引きずるようにカクカクと歩いていた十兵衛は、そのうち元通りに歩けるようになった。放射線を当てた部分の毛は真っ白になり、やがて抜け、それっきり生えてこなかった。

 
     
 
     
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