料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI
   

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  ひびこれぎもん  
 
 
  某月某日
    若い女性が二人、ワインを飲みながら話している。
「リュージってゆうのよ」
「えーっ、カッコいいじゃん」
「そうでしょ、そう思うでしょお?それが、ぜーんぜんよ。だって、ツブってゆう字なんだもん」
「ツブウ?」
「ってゆうかぁ、米ヘンに立つって書くぅ」
「ああ、一粒とかゆう?」
 ここで私は彼女たちの方をチラと見る。
「ふた粒よ。粒二だもん、ツブがふたっつ。ねぇっ、なんかヤじゃないっ?」
 その言い方に腹が立って今度ははっきりと二人を睨みつけてやる。しかし向こうはまるで意に介さない。仕方ないから腹立ちついでにトイレに立った。
 
  しかしよく考えてみれば、たいしたことじゃないのだ。リュウジのリュウを竜だと勝手に思い込んだだけの話。それをどんな風に表現しようと勝手というもの。
  名前といえば、私の母など誕生日の数字を名前にされて長い間「親に愛情がない」と嘆いていたが、後年、愛情があるからこそ誕生日を大切にしてくれたのだと思い至って急に救われた気分になったそうだ。
   
   そこへいくと粒二はいい。粒よりの人間になれという親心が最初から、すけて見えるような名前ではないか。マメに生きてほしい場合は豆二だっていい。昔、近所に豆腐屋の息子で豆吉という名前の子どもがいたが、これはどちらかというと、ちと気の毒であった。江戸時代じゃないんだし。
  あの時、マー坊がどのように考えていたか知る由もないが、母と同じで、当人の問題なのだ。他人がとやかく言うものでもなかろう。もう隣の会話なんか聞かないようにしよう。連れが来るまで本でも読んでいればいい。

  席に戻るとバッグから本を取り出した。「えー、お笑いを一席。・・・世の中には、可笑しな考え方をする御仁があるもので・・」
 本をすぐ閉じた。よりにもよって今日は落語読本だった。気を取り直して周囲を見回してみる。隣の二人と私以外、店には客がいなかった。それなのに、どうしてこんな奥まったところにくっついて座らされたのか。おまけにテーブルとテーブルの間は狭くてトイレに立つのも一苦労だった。突然、古いコマーシャルを思い出した。「ねえ、どーしてこんなに空いているのに相席なの?」ってやつ。

  隣の会話が再び耳に入ってきた。
「まだいいほうよ。うちの隣の犬なんてオスがシンノスケ?メスがタマサブロー?ってゆうか考えられないし。タマサブローなんてこーんな太っちゃって短い足でドタドタ走る?もう、ころがる方が早いっつの。あれじゃボール玉サブローよ、サーイテェ」
 私はタマサブローという可愛いブルドックを知っている。とうとう耐えられなく勘定を済ませて外へ出た。その後、連れがどうしたのか知らない。
 
 
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