料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI
   

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  某月某日
   

 
 バス停のベンチである。なかなかバスはこない。似た体系の夫婦が顔をそむけあって新聞を読んでいる。夫は競馬新聞、妻はスポーツ誌である。夫が上目遣いにジロッと私を見た。若い女性でないとみるや、苦虫をつぶしたような顔をして大きなゲップを一つした。感じ悪い。


 それにしても二人ともものすごく不機嫌な顔をしている。とくに喧嘩をしているようでもない。どうやら常日頃このような顔で暮らしているらしい。どうしてこの夫婦は機嫌が悪いのか。そう、それは多分このようにお互いが醜いからだ。では、どうして醜くなってしまったのか。もちろん歳をとったからもあるだろう。何々小町と言われた女性も歳をとればただの意地悪ババアになり、紅顔の美少年は厚顔の自己チュウになる。でもどうしてそんな歳の取り方しかできなかったのか。二人の日常に興味がわく。

 ある日、おじさんは自分の家にパサパサ頭の化け物がこちらをにらんでいるのに出くわす。性別もわからない。かたやおばさんは、快適なはずの日々の空間に、とつぜん見るからに人品いやしきおやじがテレビの前に陣取っているのを発見する。それが自分の妻であり夫であると気付くにはだいぶ時間がかかる。たまに気配は感じても、顔を見ることなどなかったから。
 ああ、お互いの無視がお互いの醜さを育ててしまった。

 さておじさんはどうするか?
 新聞のテレビ欄に目をそらす。ムム「美の巨乳たち」。これはビデオを撮っておかねば。にんまりと楊枝を使う。ツァッツァッ、シー、トン。出前のレバニラでもはさまったか。最後のトンは楊枝が新聞の上に落ちた音。近頃手もふるえるのだ。楊枝の下の「美の巨乳」をも一度見る。なになにマグリットぉ。外国女かあ、ムフッムフフフフッ。巨人を巨乳と早とちりしたのに気付くのは夜になってからである。
がっかりしたおやじ、重い身体を傾けて放屁する。

 その音を聞きつけた化け物の方、「あーやだ、いつまでいるんだろあんちきしょ」とパサパサ頭を振り立てる。そういえばこの頃「亭主元気で留守がいい」を聞かなくなった。「亭主死体で、保険金」てのはどうだ。ブツブツ言いながら携帯片手に個室に入る。
「ああ、あたし。どう、今夜カラオケ?じゃあさあの人、えーと何てったっけ?ほら、こないだ派手な服着てた。あそうそう○○さん。それとその友達のほれ、そーそ△△さん。彼女たちも誘ってくれる?場所はさ、駅前の、何たっけ?そそそそ、ボックス・エイリアン。やだ、あたしったら歳かしら。この頃名前がちーともでてこなくって。ハッハッハッ」
 笑った拍子にプップッと放屁のお返し。
 こうやって二人は永遠に仲良くなれないのだ。ああ、やだ、こうはなりたくない。ぶるぶるっと頭をふると髪の毛が顔にかかる。心なしかパサパサしている。なにやら不安になったところでバスが来た。

 

   
   

 

 
 
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