料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI
   

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  某月某日
   

 公園のベンチでおにぎりを食べていたら、急に喉につまらせてしまった。脇の道に入ってきたトラックが「ファックしまーす、ファックしまーす」と大声を出したからだ。もちろん真昼間の公園でトラックがファックするはずがない。「バックしまーす」と言っているのだ。テープの劣化なのだろう。
  しかし、なぜBAが劣化するとFAになるのか。BAのBだけ消えてAだけでもいいわけだし、MAでもいいはずだ。それに、「ック」もしくは「しまーす」はなぜ他の音に変化しないのか。

 そっと運転手のほうをうかがってみる。あんなに大胆に「ファックしまーす」なんて連呼して恥ずかしくはないのだろうか?
 運転手は逞しい肘を窓から突き出して助手席の男と談笑している。テープなど気にしてるふうではない。助手席の男の顔は見えないが、フロントガラスまで伸ばした足先が笑う度にゆらゆらと揺れている。この人も気にしてないということだ。とにかく二人とも至極リラックスしていて、特にそういうご関係、もしくは行為中でもなさそうである。
  まわりの人たちを観察してみる。昼時とあって、いくつかあるベンチは食事する人たちで埋まっている。誰一人トラックに関心を持ってはいない。テープの声も先刻劣化と承知なのか、無視している。
 やがてトラックが止まり、ファックも終わったわけだが、ただ一人私の心だけはチヂに乱れたままである。
 

 ふと思い出した。以前にも同じテープを聞いたことがあった。音の変化もまったく同じだった。つまり、あのテープを使っているメーカーがあるということだ。
 劣化となれば相当古い車に装着せられたものだろうか。しかし昨今、排ガス規制やらなにやらで、それほど古い車は走っていない。とくに東京のどまんなかを走るトラックたちはそれなりに身奇麗である。それなのにまた聞かされてしまうとは。
 どうしてさっさとテープを交換しないのだろうか。バッグギヤと一体になっているなら、ギヤを換えればいいではないか。車検のときにテープの文言は聞かないのだろうか。検査官が「おいおい、ファックはまずいだろうファックは、ハイ、交換!」と言えばいいのだ。

 それとも、完全に私の聞き間違いだろうか。他の人には「バックしまーす」と正しく聞こえているのに、私だけが「ファックしまーす」と思っているのだろうか。恥ずかしさで顔から火が出そうになる。いや火が出そうなのは暑いからだ。今日は30度を越す真夏日なのだ。そんな日に、またどうして炎天下のベンチで食事なんかしているだ。あとのベンチはみな木陰にある。道理で遅くにやってきた割に座れたと思った。ああ、なんだか頭がふらふらする。助手席で揺れてた足先みたいだ。ふらふらの頭に何やら映像がちらつく。意思をもちはじめたロボラックたちが炎天下の東京を徘徊し、戦争やらファックやら始めてしまう映像である。
 アブナイ、アブナイ。さあ背筋を伸ばして、「頭を正常な位置にバックしまーす」

 

   
   

 

 
 
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