2002.08.06
だいたい今、このページの容量は、ファイルを全部足して10メガというところ。
そして今回の旅行で撮りまくった写真や動画は、約600メガ。
契約しているプロバイダのHPスペースの上限は、15メガ。
動画をひとつアップすれば、それで終わりだろうなあ、5メガの空きなんて。
はてさて、どうしたものか。
どこか無料のスペースを借りて、そこへ動画はアップする、とかなのかな?
良いアイデア、
どこか良い無料サーバなどがありましたら
是非教えて頂きたい。
さて、おみやげ。
赤い水性 <買ってこい> 26 Jul 2002 03:07:49
レーガンを探すのは苦労しました・・・。しかししかし、NYでついに発見いたしました!
それが↓の画像です!

元大統領の国外持ち出しはワシントン条約で禁止
されているとかで、現物は税関で取り上げられてしまいました。
残念でなりませんが
この汗と努力が結晶した画像だけでも、どうぞお持ち帰りください。
やただねこ <もし私にもお土産を貰う資格があるのなら>
29 Jul 2002 20:08:18
NYに現れたトカゲゴジラが生み付けってった卵のかけら。
ビルが爆発した時に大部分の物は焼失したと思われるので
入手困難かもしれないが探してみてくれ。
来る日も来る日も卵のかけらを追い求めて、NYを歩き回ったにもかかわらず
残念ながら卵のかけらを見つけることはできませんでした。
が、
再び暴れていた親ゴジラの方を倒したので
その爪をあげます。

この拳にかけて!
みやむさんからの依頼であるPowerPuffGirls
のキーホルダーの入手には成功しています。
なるさんの希望、外国のお金も。たかさん、アキラさんの分も。
あとはまあ、細かいみやげものがいくつか。
・メトロポリタン美術館の名画ポストカード(5〜10枚ほど)
・PowerPuffGirlsのキーホルダー(たしか5個)
読者プレゼントというほどではないですけど
欲しい人は、どちらが欲しいか希望を明記の上、
メールで住所を送って来てください。
まあ、いいとこ数人だと思いますけど、たくさん応募があったらまた何か考えます。
それでも足りなかったなら、先着順。
抽選の仕方なんてわからないから。
あ、もちろん
ざくろさんやTorusutonaさんとか
nontanさんやKATさん、三木さん、せのお、・・・
全員は挙げきれないのでこのへんにしますが
知っている人は優遇ということで。
欲しければですけど。
〆切:今日の日付受信分まで。
2002.08.07
ゼロかよ?! 応募者! それはそれで寂しいものが。
カウンターは回ってるのになあ。
みやむさんのPowerPuffGirlsを探してトイザラスに出掛けたんですけど。

巨大なのはともかく
店内に観覧車が回っていたり。
機械仕掛けティラノサウルスが咆哮していたり。
ふーむ、さすがにアメリカ。
しかしでも、冷静に観察していくと、品揃え自体はそれほどでもない、かな。
隈無く店内を回って、PowerPuffと出会った先は・・・
女の子向けおもちゃ売場。
まわりの視界一面ピンク色・・・
あああ浮いてる浮いてる目立ってる。
PowerPuff持ってレジに並ぶと
金髪・赤い服の小さい女の子が近寄ってきて。
僕を見上げたかと思うと
クスッ。
あああ笑ったな笑いおったな。
他にも、僕を真似てPowerPuffキーホルダーを指に掛けようとして
親に怒られる子供など
いけない影響力を振りまいてきました。
2002.08.08
みやむさん、おみやげ買ってきましたよ。
買ってきましたってば。
ちゃんと聞いてんのかこらあ!!
送るぞ!
送りますよ!
送らして下さい!
着払い可?!
・・・はい、お察しの通り
『あずまんが大王4巻』
を読みました。
にすん <応募ゼロ> 7 Aug 2002 07:14:59
とのこと、皆さん遠慮深いのですなぁ。
昨日の記事を読み返してみると、優遇者のなかに、拙も入っているではありませんか。
まだ、間に合うようでしたら、
女の子に笑われるという危険を冒して入手していただいたPowerPuffなるものを、
どんなものかは知りませんが後学のため、…
みやむ <応募します、全部(笑)>
7 Aug 2002 08:09:43
お勤めご苦労さんでした!(お約束)
わざわざご購入ありがとうございます。
これはこちらも何か送らないと。
Torusutona <アメリカといえば>
7 Aug 2002 13:03:26
決勝戦まで勝ち残るために再びロシアへ行かなくちゃいけません
本音は金がかかるから
RBの最中はロシアにいたいけど・・・不法滞在でまたつかまる可能性があるのでやめときますw
アメリカで子供とバスケで勝負して負けた記憶が・・・・
しかも笑われた・・・・・
誰だって苦手なものはあるのよ!!
PowerPuff欲しいようでいらないような・・・ほしいような・・・
あー、いいっすよー。他にも欲しい人います?
2002.08.09
『家族計画』一度目クリア。
どれも言葉にすると何か違うので
コメントは控えます。
2002.08.10
6月1日 次の村へ
コペイヤ出発の見送りは・・・とても別れとは思えない熱烈なものだった。
みんなで歌い
子供たちは走るクルマに駆け寄りながら併走する。
村の出口まで。
この一週間、色々あった。
とても一週間とは思えない。
でもその一週間は終わった。
少しホッとする。
しかし、これからまた次の村へと行くのか・・・。
考えられない。
また知らない村で、知らない人たちと出会って、また始めから、もう一週間!
こんな一週間がもう一回ある?
そんな馬鹿な。
クルマは首都アクラにある、最初の夜に泊まった、あの海の見えるホテルへと着く。
そこで見送りに同行してくれたエマニエルさんたちとお別れの握手を。
え? お別れ? まさか。 また会えるんですよね。
まったく実感がわかない。
最後の最後に握手に来てくれたお髭の人が
君はこれから二週間目の村へと行くのだ、See you
と熱い握手を。
ツナサンド絶品だよなあ、昼食をこのホテルでとり・・・
今度のワゴンの方が少し大きいかな。TOYOTAときたか。
迎えに来てくれた次の村の人たちと再びワゴンに乗り込む。
そうすると急にコペイヤでの出来事が頭の中に押し寄せてきた。
コブラベ・・・。
散々思い悩んだが、その結果、僕の行動は正しかったのだろうか?
そして最後の夜に受けた、ベギング。
ベギングを断ったのは正しい。
僕は正しいことをした。
正しいことをしたんだ。
しかしそれで良かったのだろうか。
目の前に困っている人がいた。
正しくなくても、僕が間違ったことをすれば
人を、一人、助けられたかもしれない。
わからない。
ただ確かなのは、僕は、何もできなかったということ。
それだけは忘れまい。
6月1日 2週間目の始まり
ガーナを車で移動していると、ときどき検問のようなものに出くわす。
どうやら首都アクラの出入り、地区ごとの境目、というような要所に設けて
人(というか自動車?)の出入りをチェックしているらしい。
コペイヤに行くまでにはそんなのが2〜3度あった。
ベレー帽のようなものをかぶっていたっけな。
それに長い銃を小脇に抱えている。
警察というより軍人っぽいけど、あんまりそういう区分けに意味はないのかも。
そんな人が助手席の窓際まで歩いてきて、ジョーと短いやりとりをするのだった。
今回もアクラを出るあたりで、やはり。
しかし
何故か僕らの所には人が質問にさえ来なくて。
そのままノーチェックで通過。
なんで?
くるっ、と助手席のジョーが振り返り、サングラス姿で自分のかぶっている帽子を指さす。
その黒いキャップには、白文字で大きく
F B I
と書かれていた。
みんな大笑い。
あっはっはっは!
2002.08.11
6月1日 ダガラ・ミュージックセンター
首都アクラから一時間くらい走ったところで、ワゴンは道をそれる。
土のデコボコ道でがくんかくんと上下に揺すられる。
窓の外には山が見える。
アクラも、コペイヤも海沿いだった。つまりガーナの南の端に位置していた。
ということは、ここは少し北にあたるのかな?
高い塀に囲まれた、そこの鉄の門が開いて、ワゴンは中へと進んで止まる。
着いたようだ。
・・・村、じゃないの?
次々と降りて、出迎えてくれる人たちと握手を交わしていく。
ヴェナールさん・・・? 白人・・・?
このヴェナールさんが、ここの責任者なのかな?
どうして白人?
僕はボストンに戻って妹と話をするまで、ずっと白人だと思ってた。
更にみんな和気藹々としていて、ジョーとヴェナールさんも親しげだったので旧知の間柄だと
思い込んでいたのだけれど・・・。
詳しくは後日談にでも。
犬がいる。
タッタッタと寄ってきて、みんなと挨拶をしている。
僕の所にも来てくれたが、
ここは冷たくあしらっておく。
狂犬病までいかなくても衛生面のことと
それに飼っていた犬のことを思い出して。
仲良くなる気にはなれなかった。
あと僕のやる気も少し。コブラベいないし。
そんな僕の所へ、子供がふたり近づいてきて握手。
そのふたりは、ジャスティス
と
アネス、そう名乗った。
My name はサトシだ。
すると「友達になろう」と。
each other friend か?
お互いの間で指を振る。
Thank you。
ふふ。
コブラベのときとそっくりそのまま同じやりとりになった。
6月1日 歓迎の儀式
さっそく部屋割り、と言っても自分たちで好きな部屋へ入っていって荷物を置くだけ。
妹が、シェア・ルームに挑戦しろ、と言ってきたので従う。
FMと
セレブかカレブか読み方のわからなかった
正しくは、ケレブだった!
ケレブと3人でひとつの部屋に。
二段ベッド2つの部屋で、僕に二段ベッドをひとつ使わせてくれるあたり
気を使ってもらっちゃってるなあ。
すまんことっす。
荷物を置いて外に出ると、歓迎の儀式が待っていた。
下がそのままの土で、石敷きではないんだけど
コペイヤにあったような円形の屋根を持つ場所が作ってあって
そこで。
用意してもらってあった椅子に、輪になって座る。
ジョーが、「コペイヤではすごく度の強いお酒を飲んだ」、
と多分そう言っている。
ヴェナールさんは、
「ああそれもあるけど、○×△*にはもうトライしたか?」
まだだ、というジョーに
そりゃあいけない、ガーナに来たら何はおいてもこの酒を飲まなくては
そんな感じで。
ヤシの実かな? 何かの木の実を半分に割ったような大杯になみなみと注がれる。
おそるおそる口をつけてみると・・・
度数は強くない。
ビールに似ている。ビールを
酸っぱくして、気を抜いたら
こんな感じか。
いや、多分、みんなが想像しているよりは不味くない。
別に全部飲まずに残しても良いらしかったんだけど
度があんまり強くないもんだから、調子に乗って飲み干す。
ぐぃ〜。
なんだか少しよい心持ち・・・
あー、きいてきた、酔ってるかも〜、と部屋で寝ているとFMが来て
「Who lady?」と。
さあ? 誰だろ。お嬢さんなんか知らないなあ、と思っていると
「サトーシ、dinner ready」だった。
oh、さんきゅー。
晩御飯は独特のシーフードカレーのようなもので。
おいしく頂く。
電気も水道も来ている!
お湯は出ないけど、シャワーもきちんとしたものがついており、良い気分であがってくると
おばさんに
「take your bath?」と訊かれたので
yeah! take your bath、Thank you。
と頭を下げる。
あれっ!?
っていう顔を一瞬していたけど、すぐに満足そうに笑ってくれた。
うんうん。通じてる。
いいんだ、雰囲気、雰囲気。
2002.08.12
6月2日 レッスン開始
建物は二棟ある。ベッドのおかれている部屋が並ぶだけの離れと、母屋。
母屋の方には、風呂とトイレが3つずつ!!!
そして居間にはテレビが!!! しかもソファ付きだあ。
台所があるのも母屋。
朝食はベランダ、昼と夜は居間。
だったんだけど、そのうちハエの少ない居間で朝食も摂るようになる。
でもこの日の朝食は母屋のベランダ。
台所に顔を出すと、英語で「〜〜〜〜〜〜〜〜〜?」
あ、えっと?
「Do you like egg?」
卵?
yeah、yeah、
卵は別に好きですが。
トーストに紅茶、それに食後のフルーツ。
そして台所へ行って起きたことを伝えると、スクランブルエッグを作ってくれる。
そういうことらしかった。
持ってきてくれたスクランブルエッグをお礼を言って食べる。
あー、おいしいなあ。
食事・・・日本にいるときより、ぜってぇ豪華だ・・・。
ベランダからは山が見える。
綺麗な山だ。
日本の山とは、どことなく受ける印象が違うが。
木の生え方かな?
そうやって朝御飯を食べているみんなに犬が挨拶に来る。
あわよくば分け前を、と思っているのかもしれない。
僕のところにも来たが・・・
ガバッ
膝の上に前足で乗り上げてきた。
の、ノーノーノー。
僕にだけえらい馴れ馴れしいじゃないか。
あげられないよ。
何も持ってませんポーズをしてみせる。
朝食後は早速レッスン開始。先生はヴェナールさん。
ここで習うのはドラムではなかった。
サキフォンだかザキフォンだかいう、まあ日本語で言うならば『木琴』。
木製の鍵盤がならんでいて、その下には音を響かせるための壺のような木の実が。
そんなの。
あー、まあ、なんというか難しい。
ドラムは叩く場所一カ所だけど、これはリズムに加えてメロディがあるから。
あっ
という間に落ちこぼれて
隔離補習の憂き目に。
ジェロームさんというもうひとりの先生からマンツーマン指導を受ける。
あー、その、うーんと、あんまり無理には。
有り難いけど、僕が先生をひとり占領しちゃうのはどうかなあ。
練習終了後、エヴンやFMが街へ行くというのでついていく。
サイフと水の入ったペットボトルも持ったものの、慌てていたので日焼け止めを塗り忘れた。
体感気温は日本と同じか、ひょっとすると日本より涼しいかもしれないが
それは日陰にいる場合の話で。
日中の日なたにおける太陽の威力たるや。
肌を焼くというか焦がすというか。
鉄の門の外で待っていてくれたみんなに合流する。
案内ついてきてくれたフェリックスさんと英語に苦戦しながら会話する。
へええ
フェリックスという名前の人はここには3人もいるんですか。
道は当然、土。そこにはゴミが落ちていて、家畜らしい動物が走り回っている。
ヤギ、ニワトリ。
そして道の両側には祭りの夜店のような商店が軒をつらねている。
僕らの集団をみつけた子供たちが、あちこちから寄ってくる。
東洋人は目立つのか、僕のところにもかなり。
片っ端から自己紹介して、友達になってくれるか、と。
う、うーん、どうだろうか。
友達、か。
もう、ちょっと簡単にはうなずけない僕だった。
エヴンたちがココナッツジュースを買って飲む。そっか、もう昼か。
友子もけっこう外の食べ物を平気で口にしているけど大丈夫なのかな?
僕は極力避ける方針でいこう。
子供だけではなく、大人からの注目も浴びているようだ。
日韓W杯共同開催中だけあって、
Koreanか? Japaneseか?
と訊かれることが多かった。
Japaneseだ、というと大抵みんな歓迎してくれる。
日本の人気は不思議なほど高いのだった。
卓球台の置かれているところや、ビデオの鑑賞が可能だという店などもあり
なるほど、これは村ではなく街なのだろう。
電気も水道も来てるんだし。
日陰を選んで歩き、首筋に水をかける。
これくらいの外出ではどうということはないのだろうけど、腕や首が本当に熱い。
じりじりする。
街の様子よりもそちらが気になってしまうくらい。それくらい日差しは強かった。
歩いてみて思ったのは、ここはコペイヤとは違うらしい、ということ。
コペイヤは施設を囲むように村があって、施設は村の一部だった。村の施設だった。
あそこを運営しているのはエマニエルさんだろうけれども、村のみんなのものであった。
・・・詳しくは知らないけど。少なくともそう感じた。
だけど、ここは、ダガラ・ミュージックセンターは違う感じがする。
まずなんとしても施設があって、
そこから一番近い集落がたまたまこの街だ、というような印象を受ける。
ちなみに僕はここに居るあいだ中、ずーーーっと
だから・
ミュージックセンター だと思っていた。
だかーら!
だかーら!
だかーら! さ、さるふぁれぞるしん処方
だかーら!
だかーら!
ぷっ。 おもしろーい。 ・・・と思ってた。
2002.08.13
なるさんに急かされて、メモリ足りないのにUOLBRぶっ込んでウルティマオンライン。
動くもんだなあ、64メガしかなくても。
そして変わったなあ、ウルティマオンライン。
たかさんに
「半年ぶりに復帰したひげさんです」
と周りに紹介されてとまどいまくり。
2002.08.15
2万ヒットですねえ、2万ヒットですよ。
恒例の記念画像は・・・
謎のストーンサークル写真。

感謝を込めて進呈。持って帰れ。
そもそも僕がこのホームページを作ろうと思ったきっかけは
nontanさんの掲示板に
「2万ヒットおめでとうございます!」
という書き込みをしたこと
なんです。
掲示板に書き込むことで、それまで観ているだけだった自分も何か作ってみたいな、と
そう思ったわけなんですね。
その2万ヒットをこうして迎えることができました。
最近、夢の中でヴァイオリンをよく弾きます。
中学の時にやめたものなんですけど、一年に一回くらい急に弾きたくなることがあります。
それで取り出したら
こーなった。
24時間程度で削除します。
ちなみに昨晩見た夢は・・・便器が用を足す度にあふれ
きちゃないな。
2002.08.16
6月2日 午後
朝御飯と晩御飯は料金の内だけど、昼御飯に関しては自力調達ということらしかった。
自由に外出して食べてもらって結構です、ということだろう。
自分で用意できない場合は、おばさんが作ってもくれる。
台所にノートが用意してあって、
横軸に名前、たとえばサトシ、縦軸がランチ、そこの欄にひとつマークすることで。
マークの仕方にも、ちょっととまどった。
縦線を4つ書いたあと、それにナナメ線をかけて5、とカウントか。
そういえば見たことあるかも。
Japaneseはdifferent
『正』の字を書くんだ
と空中に書いてみせたり。
そうやってツケておいて、最後に清算するということ。
水のペットボトルもこうやって買う。
コペイヤでは浄水装置を通した水を、空のペットボトルにタダで込めてくれたが。
外国から輸入しているらしいミネラルウォーターは大変に高価だ。
一本5000シリーもする。
ドル換算すれば1ドル以下だけど・・・心して飲むことにする。
昼食後、外に出たら子供たちに囲まれ、
日本語混じりの英語と、地面に綴る筆談で意志疎通。
「サッカーをするのにシューズがほしい、お金をくれるか?」
とか
「日本から僕たちに、どんなお土産を持ってきてくれたか?」
とか
っはっはっは
ストレートな要求が心地よい。
よいか、お金はあげられない。僕は金持ちではない。
お土産は帽子と鉛筆を持ってきている。
わかるか、ペンシルとハットだ。
かぶったり、書いたりする仕草。
アネスは、
「父親が死んでしまって困っている、助けて欲しい」と。
うっ。
そ、それは。
My heartはpainだが、助けられない。
友達にはなれても、親にはなれない。
そう答える。
ここの子供たちは目敏いなあ。もう僕のデジカメに目を付けたか。
液晶付きデジタルカメラ。
僕もこれを手に入れるまで、これに慣れるまでは驚きの存在だったからなあ。
だからコソッと目立たないように、目立たないように撮影していたつもりなんだけど。
次々に撮って! 撮って! と。
見せて! 見せて! と。
あー、全員撮ったろ?
今日はこれくらいで勘弁したって。
これから何かあるらしい。
だんだん人が増えてきている。
みんなも外に集まってきている。
アネスが来て、
「これがsistersだ」と女の子たちを紹介される。
これは、どうも。よろしくと頭を下げる。
なんか嫌がってないか? モジモジしてるな? と思っていると
フェリックスさんが飛んできて
「〜〜〜〜〜play Joke、Don’t mind! Don’t mind!」
ほほう、そういうわけか。
詐術か。
フェリックスさんに感謝を。
どうやら歓迎のパフォーマンスがあるみたい。
石敷きになっている場所を舞台のようにして、イスが並べられる。
そこへ僕らが思い思いに腰掛けていく。
鉄の門が開き、乗用車が一台乗り入れて来た。
そこから降りてきたのは、身なりも体格も良いオジサン。奥さんらしい人と一緒。
見るからにお偉いさんだ。
さっそく良い場所にテーブルとイスが運ばれ、ビールが供される。
ふおっ。
何者だろう。
味皇・・・という人はこんな感じか?
ミスター味っ子、観たことないけど。
この人ならあるいは
口からビームを出して大阪城を壊せるかも。
そう思わせるオーラが出ていた。
いや、ミスター味っ子、知らないんだけど。
そのオジサンの挨拶でパフォーマンスは幕を開ける。何を言っていたかはわからなかったが。
そろいの衣装をまとった人たちが次々と入場してきて
木琴などで演奏しているヴェナールさんたちを中心に
輪を作って踊り始める。
最初はゆっくりとした感じだったのだけど、いつのまにか速くなったり。
色々変化する。
ここでも、どうやっているのかよくわからない小刻みな足捌きが・・・
と思っているとオジサンが僕を呼び寄せて何か言っている。
写真? 写真を? 撮れ、それとも、撮るな?
ふむふむ。
この場面はシャープだから、大いに写真を撮れ?
了解しました。
激写!激写。
そんなこんなしていると、踊りの輪の中から人がひとり抜けてきて、僕の手をとる。
は?
ちょ、ちょっと。それって、踊れってこと?!
踊れない踊れないって!
あ、これ、囃し立てるな子供たち!
あ、あ、あーーーーーーっ・・・・・・……
僕に続いてみんなも次々と飛び込んでいき、大盛り上がりであったことであるなあ。
特にジョーのはじけっぷりは
味皇オジサンが思わず駆け寄って抱きしめるほどでありました。
2002.08.18
6月3日 午前
朝食後、木琴をならべているヴェナールさんを見つけたので
思っていることを切り出してみた。
I think I cannot play this.
「じゃあ何だったらできる?」
怪訝そうに問い返すヴェナールさんに
いやいや、そうじゃあなくって
I give up.
と両手を上げたら、大笑いされた。
「私の手にかかれば、誰だってできるようになる」
「たとえミュージシャンでなくとも」
そう言われたので
もう少しがんばってみることにする。
今日は昨日と同じ隔離練習ながら、先生はヴェナールさん。
そして昨日の初日の練習時にどこかへ外出していたらしい、グリアムさん、マジックマイク、ジョー
それに僕、というメンバーだった。
そういうわけなので今日の練習内容は初日とまったく同じ。
まあこれならば、叩けないこともないや。
練習後、ジョーに「グッドjob、グッドjob」
と大いに握手されたけど。
うーん? それほどでは。
僕を見かけると、エヴンが
「My friend! 調子はどうだ?」
と呼び掛けてくれるように
なっていたのだけど、今日はハグまで。なんか照れるなあ。
そして
「ジョーが、サトシのドラムがすごくいいって言ってたよ」
って。
うーん。そうかなあ。
I don’t think so.
そう言ったら
側で聞いていたケレブが大笑いしていた。
6月3日 午後
ジャスティスが輪ゴムで作った首飾りをくれた。
おかえしに鉛筆をあげることにする。
妹とボストンで選んだおみやげ用の鉛筆で、表面がキラキラ虹色に光る。
「beautiful」
と喜んでくれた。
首飾りは、友子とFMももらっていたようだ。
日差しが弱まってくる頃から、ダンスのレッスン開始。
動き自体はコペイヤの方が複雑な気がするが
コブラベがいないから。
難しい。
日が暮れれば晩御飯。
母屋の玄関では
もちつきが行われていた。
杵と臼で。
合いの手も入れてるし。
本当に餅ではないかと思ったが、ついているのは
バナナとイモだって。
フフ(fufu?)というガーナの食べ物だとのこと。
非常に粘り気があり、手づかみで食べるのが正しい食べ方だそうだ。
手を洗うための水を入れたボールがテーブルに置かれる。
が、僕はスプーンで食べることにさせてもらう。
・・・だって手で掴んだりしたら大変なことになりそうなくらい粘るんだもん。
魚や肉のスープを好みに合わせてかける。
味は
イモを餅にすれば、こうなるだろう、というようなもの。
2002.08.18 その2
ざくろ <2万ヒット突破> 15 Aug 2002 08:01:20
nontan <おめでとにゃ> 16 Aug 2002 07:10:35
2万ヒットおめでとうございます。
これからも頑張って下さい……って、
バイオリンで何弾いてまんのやーーっ!?(笑)
しかも何気にウマイし…
Torusutona <> 16 Aug 2002 10:34:54
2万ヒットご苦労様です
バンオリン引けるんですか?w
やただねこ <おめでとさん> 17 Aug 2002 00:48:26
祝・2万ヒット!
というわけでおめでとさん。
と言ってもこれをカキコしてる現在
あんたと電話してるんだから・・・・・・馬鹿だな。
2002/08/15
三木 二寸
びれっじ様;
2万ヒットの快挙、おめでとうございます。
海外旅行中にも順調にアクセスがありましたね。
ところで、
最近の小泉改革も迷走しているようで、
基本的なところで論じる必要があると感じるようになりました。
古いものを引っ張り出して恐縮ですが、
数年前に書いた論文を、
特に手直しせずに投稿します。
議論そのものは古くなっていないようなのです。
その分、日本の社会が進歩していないのでしょうか。
制限容量が心配ななかで恐縮ですが、
それほど、大きなサイズではありませんので、
採用いただければうれしいのですが…。
...... にすん
文字主体の三木さんですので容量の心配はしなくて大丈夫です。
ありがたく掲載させてもらいます。
留守中のアクセスは、掲示板を盛り上げてくださった皆さんのおかげと感謝しています。
ところで留守中、日本はどんな感じだったのでしょうか?
議員が辞めたり、個人情報がどうの、とか。
ここはギャグサイトではありますが、真面目な話題も避けては通りません。
時事系、ニュース系の書き込みも掲示板で大募集。
真面目な話題で笑いをとるのも可。
大空カバン久々の本更新は、書き物その他・三木二寸の言いたい放題
『日本再生へ三つの処方箋』。
2002.08.19
6月4日 午前
朝食時、みんなでサッカーワールドカップをテレビ観戦。
この映っているところは日本か韓国か。
なんだか不思議な感じだなあ。
日本がベージョンに2−2で引き分けたよ!
ベージョン?
すごい快挙が起きたようだけど、ベージョンってどこだ?
マジック・マイク、グリアムさん、エヴンが説明してくれたけどイマイチわからない。
フランスがあって、ドイツがあって、その横らへんにある
小さい国、とても小さい国だという。
そのあたりで『べ』から始まる国名といえば
・・・ベルギー?
そう言ってみても、芳しい反応が返ってこない。
ベルギーじゃないのかなあ。
後日、エヴンに、ベージョンはエルキュール・ポワロの国か? と訊ねたら
「ポアロ! ポアロ!」
そう! まさにその国!
って感じで言ってた。
名探偵ポワロはベルギー警察出身。
コカコーラのCMとかに混じって、番組の合間にはガーナで作られた独特のCMも入る。
笑えるCMが多くて興味深かった。
例えば、蚊取り線香のCM。
寝ている男の人がいきなりバチンと顔面を張られて、イタイなにすんの、と飛び起きる。
蚊が潰れている手の平を突きつけられながら、蚊取り線香使いなさい!
とまあこんな風。
「お兄ちゃん! 子供に愚痴られたに!」
「お前の兄さん、
日本語で話し掛けてくるけど大丈夫か?」
あっはっはっは!
「日本語で言われても何ゆうとるかわからんって」
え〜、そんなこともないと思うんだけどなあ。
だって、みんな僕と話しできとるやん。
「みんな頷いてても、わかってないに」
えええええええ?!
僕が日本語で話し掛けるのには訳がある。
人間は言葉で意志疎通をはかるが、コミニュケーションにおける言語の占める割合は意外に小さい。
人は相手の発した言葉を、言葉以外の部分、例えば
表情や声色であるとか
仕草、
更には相手との距離、立っている位置や座っている場所、
そういったものを基にして判断する。
これを確か、ボディラングエッジとか言語外言語とか言ったはずだ。
この部分の占める割合が非常に大きいのだ。
例えば。
あなたが、言葉の分からない外国の映画を観ているとして。
一組の男女が、駆け寄って抱きしめ合い、その後、何か言っているとする。
言語にかかわらず、言っている内容は想像がつくだろう。
そう。
・
・
・
・
・
・
「あなたを・・・殺します」
他の例を挙げるなら。
仕切りの向こう側から、恋人同士の普通の会話が聞こえてきたとして。
その様子をひょいと覗いてみたら
・
・
・
・
・
・
表情は硬いまま、
抜刀して、互いに間合いをはかりつつ
一方は上段、もう一方が脇構え
このように
ボディラングエッジは言語を発した際に自然に伴われるものだ。
だから
英語で足りない分は、どもったり、黙ったりしているよりは自分の最も得意な言語
僕なら日本語、で表現してやった方が伝わるのではないか?
しゃべったときの仕草や声色で伝わるのではないか?
そう思ってのことなんだけど。
いや実際、この方法うまくいってると思うんだけど。
「英語はThank youだけ、あと、おじぎしかしない、って言われとった」
あっはっはっは!
そんなことはないやろう、英語もしゃべっとるやん。
確かにThank youはよく言うけどな。
ドラムのクラスがハードだ。
今日から先生は、またジェロームさんに戻る。マンツーマン。サシで勝負。
この木琴がどういう楽器なのか、どう難しいのか、ちょっと説明してみよう。
4 in between、2 in between、などと言うのだが
まず間に4つの鍵盤を挟んだ状態を基本形にする。
左手のバチで叩いた場所から右へ5つ目の鍵盤が、右手のバチで叩くべき場所になる。
そして中に挟んだ4つのうち一番左側の鍵盤と
そこから右へ2つ目の鍵盤が次に同時に叩くべき場所で、
残りの、中に挟んだ4つのうち左から2番目の鍵盤と一番右側の鍵盤が
その次に叩くべき場所。
間に挟む鍵盤の数ごとに、アンクルがどうの、ブラデスがどうのとか
血縁関係のような言い方をしていた。
ま、これはあくまで基本で。
色々なリズムをつけて変化させたり
左手と右手で違うリズムとメロディを刻んだり
平気でさせられる。
そして例えば、AというバージョンとBというバージョンがあったとして
それを
AABA、BBAB
AABA、BBAB
AABA、BBAB
AABA、BBAB
AABA、BBAB
(以下延々)
と刻むなんてことは、頭で理解していても、そう易々とできることではない。
一度や二度、刻むだけならばともかく
僕が間違えるまで、延々と先が見えなくなるまで刻む。
まったく同じリズム、同じペースで。
ちょっと机か床を叩いてみ?
シロウトには至難だよ?
朝御飯を食べてから、昼前まで叩きます。
脳味噌とろけます。
あー、Aを2回叩いたら、Bを1回、Aを1回、そしてBを2回、Aを1回、Bを1回
最初に戻るから
Aを2回、Bを1回、Aを1回、Bを2回、Aを1回、Bを1回
・・・
あれ、このAって何回目だ? 次はBに移っていいのか・・・
このBは? もう1回B叩いていいんだっけ・・・
「You must count」
yes、かうんと
Aを2回叩いたから、Bを1回、Aを1回、そしてBを2回、Aを1回、Bを1回
最初に戻るから
Aを2回、Bを1回、Aを1回、Bを2回、Aを1回、Bを1回
・・・
あれ、このAって何回目だ? 次はBでいいのか・・・
あ、れ、? いま連続で2回叩かなかったか、どこだ・・・
しかもジェロームさん、僕が頭で一応理解したとみるや
僕の目の前で違うパートを叩いて伴奏を始めちゃうから。
あ、あ? あー? 僕のリズムはどれやー?
「confuse?」
YEAH! confuse。
人さし指と中指の間の皮がズルむけ。木を削って作られたバチをここに挟むから。
ちり紙をぐるぐる巻きにしても、なんだか指の骨に響いてくる。
それにもう、腕が上がらない。
6月4日 午後
三日連続のスコール。まんま夕立だな。
夕食後、エヴンに少し合気道を教えてもらう。
斬りかかって行ったら、ひねられた。
なるほどお。大したもんだ。
しかし僕はいつも通りスリーピイ。早々と部屋に引き上げて寝ていると、友子に起こされる。
「みんな踊っとるからサトシも呼んで来い、ってジョーが!」
なんだあ?!
慌てて居間に駆けつけると、FMのギターに合わせて、たしかにみんなが歌い踊っている。
ジョーとエディが、テーブルをドラムに見立てて競演してるし。
す、すごい。
こんなことってあるのか。
2002.08.20
6月5日 レッスンは続く
つ、つらい・・・。もう腕が上がらない。
もっと強く叩け、と言われるけど、なぞるようにしか叩けない。
いま叩いているのは、昨日とはまた別のメロディでリズム。
ちょっとできるようになると、次へ進む。
どこまで進めばいいのか。
どこまであるのか。
今度はAパートを4回叩いたあと、Bパートを2回、Aパートを2回、そしてBパートを4回か。
そしてAを2、Bを2、Aを4、というサイクル。
1,2,3,4(A)
1,2(B)
1,2(A)
1,2,3,4(B)
1,2(A)
1,2(B)
1,2,3,4(A)
・・・・・・。
できない。いつまでもいつまでも、こればっかり。
次々に進んでもつらいし、立ち往生も然り。
わん、とぅ、すりー、ふぉー
わん、とぅ
わん、とぅ
わん、とぅ、すりー、ふぉー
いち、に、さん、しー
いち、に
いち、に
いち、に、さん、し。
2回がつづくと3回目もそのまま2回で叩いてしまう・・・。
もうダメかも。
か、数が数えられない。
いち、に、さん・・・
AでBだから・・・
意識がもうろうと・・・
あ、なんだか幻聴が
次は2つですぅ
次も2つですぅ はわわ
ここは4つですよ がんばってくださぃ〜
アッサリできるようになったし。
じ、自分が怖ぇ。
おかしいな僕は葵ちゃんの方が
2002.08.21
6月5日 昼
練習後、みんなでマーケットに出掛けるという。
僕らはこれからマーケットへ行くんだ、と子供に言ったところ
じゃあ、おみやげに何か買ってきてほしい
、とゼロバベルという子供からリクエスト。
っはっはっは。なかなか抜け目ないな。
いいだろう。ただし、何か適当なものを見つけることができたらな。
みんなを乗せたワゴンは、だいたい一時間くらいで首都アクラへ。
劇場だ、という建物の売店のような所で昼食をとる。
そこからそこの下の方へとすり鉢型に屋外のちょっとしたステージのようなもの
が広がっていて、そこでは若者が何人か息のあったダンスを見せていた。
ラジカセを持ち込んで。見物人も学生と思しき若者たち。
楽しくて踊っているんだろうけど
それ以上に何か志のようなものを感じた。
食事をとっていると急な雨。ザーッとくる。
全員が食べ終わっても降り止まず、ワゴンまで走ることになった。
ちょくちょくよく降るなあ。
ワゴンが次に着いた先は、インターネットカフェだった。その名も
busy internet
つ、つながりにくそぅ〜。
いいのかそんな店名で。よほど旧式のパソコンが並んでいるのか思いきや・・・
どっこい、モニターは薄型で壁に掛けるようなタイプ。
回線も高速でまったくストレスは感じなかった。
ふーむ。
後にニューヨークのタイムズスクエアで入ることになるネットカフェと、ほとんど同等。
これほどの設備・・・政府が補助金でも出しているのかもしらん。
あと、busyであるということは、ガーナではプラスの意味なのだな。
妹が使ったあとの残り時間をもらって、『大空カバン』の掲示板に書き込み。
日本語が表示できないのか、すべてが文字化けを起こして・・・
あれ? ヤフーJAPANは見れてるのにな?
(右クリック→エンコード→日本語の手順をド忘れしてました。)
あー、みんな何ゆーてんのー?
このパソコン日本語が苦手らしいから、ローマ字で書いておこう。
higeoyaz <> 5 Jun 2002 23:40:33
旅先からあまり多くを語るのも、どうかなと思う。これくらいでいいだろう。
みやむさんの以下の返事をボストンでみたときは嬉しかったことであるなあ。
みゃあああああ <反応あり> 7 Jun 2002 07:40:27
このネットカフェでグリアムさんとお別れらしい。
コペイヤで途中から合流してきた仲間。なかなか博識なような人。
「オレハ ヤクザ ダ カネ ヲ ダセ」
いらん日本語しってんな〜。
一人でアフリカに来て、ここからも単独行動ということなのだろうか。
すごいなあ。
ワゴンに乗って移動していると、窓際に人が駆け寄ってきて色々な物を売ってくる。
ガーナの地図を売りに来たので一枚買い求めようと。
How much?
何も言わずに地図を丸めて、僕に押し付けてくる。
だから、How much?
「10 タウザンド」
テン?
テンって10だよな。10千ということは、5千札でおつりは・・・
ちがうか!
5千札、2枚だというのか!?
なんだとお、そんなに高いのか。地図を窓際で押し返す。
隣りに座っているエディの方を振り向くと
いいからその手に持っている5千札を渡してしまえ
、というジェスチャー。
僕が5千札を差し出してワゴンは発進。
ガーナでの買い物には、バーゲニングといって、値切ることが必要。
相手は希望金額を言ってくるので、こちらも希望金額を言って
その間を縮めていくような行為だ。
まだまだ、まったく慣れていない僕だった。
その地図をヴェナールさんとジョーが眺めながら、なんだか話をしている。
ガーナの北西の端を指さしたりしながら。
友子によると
ヴェナールさんたちは、その北の端からここへ来ているのだという。
へええ。
コペイヤは南東の端っこの村だったから
じゃあ僕らは
ガーナの一番北の端と一番南の端の音楽を教えてもらっていることになるなあ。
あれ? 市場は? マーケットには行かないことになったらしい。
そのままワゴンは帰りの途に。
ゼロバベルには何も買えなかったな。
楽しみにしていたら悪いことをしたかも。してるだろうな。
みんなファン・ヨーゴーというガーナのアイスクリームが気に入ったようで
窓から買い求めて食べている。
僕はコペイヤで一度食べたからそれでもう十分だ。
僕が食べているのを見て、
「お腹こわしそう」とか言っていた妹は、もうふっきれたのか
なんでもかんでも、もしゃもしゃ食べている。
サッカーボールを売りに来たのを見て、FMが買い求める。
たくさん5千札を渡していたな。高いものだ。
子供たちへだろう。
「FMはやさしい」
そう妹は言っていた。たしかに。やさしいな。
真似のできない、やさしさだ。
去ったあとのボールの所有を考えてしまって、僕には買えない。
FMのやさしさには、同時に配慮の足りないところがあるが
考え込んだ末に結局何もできない僕と、どちらがいいかは
わからない。
あのねえ、ガーナにも渋滞があるんだよ。
意外じゃあないかい?
だいたい首都のアクラを出た辺りで起きるね。
原因は車が多いからじゃないけど。
総じて古い車が多いわけで。
そういう車のなかには、人の駆け足ぐらいのスピードでしか走れないものも。
巨大トレーラーとか。
そんな車が一台でるとどうなるか。
首都を出た辺りから道が狭くなり、片側一車線ずつしかなくなる。
これで追い越しをかけるには、対向車線の安全が確認できる見通しの良い直線しかない。
つまり
そういう直線が出てくるまで、車が数珠つなぎになりながらノロノロ走ることに。
こういう渋滞が起きると、とても苦しい。
ガーナの車は、素晴らしくパンチの効いた排気ガスをお見舞いしてくれるので。
当然のごとく全開になっている窓から流れ込んでくる。
最初は、規制前の古いエンジンだから排ガスがすごいのだと思っていたけど
友子が
「これは軽油やな」
とか言ってきて合点がいく。
軽油、というのがどういうものか僕は知らないが
混ぜ物のたくさん入った粗悪なガソリンを燃やしているからではないだろうか。
多分だけど。
2002.08.22
6月5日 夕方
ジャスティスがキーボードを抱えてやってきた。
自動演奏の機能まで付いていて、ボタンを押すと対応した曲が流れ出したりもする。
大したものを持っているなあ。
「You can try」
ふむ。どれ。何か弾いてみるか。
人さし指一本で「とんぼのメガネは〜♪」、「さいたさいたチューリップの花が〜♪」などと
押してみるが、どれもウケは今ひとつ。
そっか。日本だけの歌だから馴染みがないのか。
そこへ通りかかった友子をつかまえて。お前なら何か適当な曲をちょろっと弾けるだろ?
サラッと『メリーさんの羊』を弾いて母屋の方に行ってしまったが
これがウケがいい。
ジャスティスや他の子供たちも、
『メリーさんの羊』
を再現しようとキーボードに向かっている。
なるほど。この曲は世界的なものだったか。
エジソンが最初に蓄音機に入れたのってこの歌だっけ?
それとも電話で最初に伝えた内容が、この歌?
なんかで読んだ気がするが、まあいいや。
苦戦している子供たちに、ちょっとかしてみん? と妹が弾いたようにキーを押してやる。
妹はたしか、こう弾いていた。
シーラソラ シシシ
ラララ シレレ
シーラソラ シシシ
ララ シーラソ
色々試しては、わからなくなると僕の方を見上げてくる。
そうするともう一度弾いてやる。
そんなことをしているうちに、ダンスのクラスの時間になった。
しかしダンスの授業は希望者だけでいい、とかで大分人数も減っていた。
それなら僕も。
このままジャスティスに
『メリーさんの羊』
を教えている方がいい。
いいか。近くにサウンド・ソースが2つあるのはeach other良くない。
ダンスの練習が始まっていたから。
ここじゃダメだ。裏へ行こう。
裏庭のベンチに、子供たちに囲まれながら腰掛ける。
シーラソラ シシシ
ラララ シレレ
シーラソラ シシシ
ララ シーラソ
トゥルルルルルル、鍵盤を端からなぞって喜んでいる。
うん。弾けるようになって何よりだ。
僕も嬉しいぞ。
お返し、とばかりに
この前くれた輪ゴムの首飾りの作り方を教えてくれた。
何かしてもらったら、何かして返す、か。
良い感覚をしてるな。
僕が見様見真似でなんとか首飾りを形にすると
ジャスティスも喜んでくれた。
そして首に掛けてくれた。
すると周りの子供たちが
「いま習っている曲は弾けるか?」
「ダンスの音楽を教えてくれ」と。
そうきたか。
僕が毎日ジェロームさんと練習しているのは細切れのパート、パート。
ダンスの音楽といえるかどうかはわからないけど
一カ所だけ単音で弾く、右手と左手で同時に同じ鍵盤を叩く、特徴的な箇所がある。
たぶん、そこのメロディは、こうだと思う。
ドドソララミソソ ドドレド
ラララドドソララ ララドラ
(以下繰り返し)
なんとなーく、だけど僕にはこう聞こえている。自信ないけど。
って僕が弾くのに合わせて歌ってきたし。
ものすごく食いつきがいいなあ。大ウケじゃーん。
ああいいよ、教える教える。
慌てるな。
6月6日 に雨ザーザー
珍しくシトシト降っている。雨音で目が覚めると、いきなり便意。
体が冷えたらしく、いやな腹痛を伴っている。
そのままトイレに走り込み、案の定の下りっ腹。
コペイヤは昼も夜も暑かった。
しかしここダガラに来てから、夜は寒いくらいだ。
長袖長ズボンは、いる。
蚊除けに持ってきたものだけど、まさか防寒に使うことになろうとは。
そういえば
こっちに来てからは蚊にも刺されていないなあ。
今日は一週間に一度のマラリアの薬を飲む日。
飲み合わせはイヤだが、仕方ない。
多めの朝食と水で
イモディウムという下痢止めを一錠飲んでおく。
んん。
なんだか動きたくない。
ひたすら寝続け
眠れなくなると本を読む
そんな一日となった。
ときどき部屋に戻ってくる、FMやケレブに身を起こして会釈をする。
僕が会釈をすると、深々とおじぎを返されたりして、逆にこちらが戸惑ったりもするんだけど
ケレブはきちんと会釈を返してくれる貴重な存在。
16:30
友子が、ジョーの
「シプロを飲め」という指示を伝えに来る。
シプロか・・・。
炭疸菌事件でも使われたとかいう大変強力な薬だ。
あんまり飲みたくはないが、ここは従おう。
台所で食パンを一枚もらって
それと水で飲む。
夜には、羽虫が大量発生。
窓や電灯に隙間なくビッシリ。雨上がりはこうなるのだという。
翌日には死んでしまうというから、カゲロウの一種なのかな。
居間に入ってきた羽虫を
この家の子供が器用にタオルで打ち落としていた。
2002.08.23
6月7日 日本人先生に会う
腹はまだ痛むが、寝てもばかりはいられないので活動再開。
しかしそれにしても今日のドラムのクラスは特にハードなような・・・
「morning class finish!」
休憩なしやったんかい。
マンツーマンで休憩なしはつらいわッ!
午後からは、友子が学校を見に行く、という。
「お兄ちゃんも来る?」
あたぼー。もちろん、行く。
僕らにダンスを教えてくれているのは、女の子なんだけど
その子の学校だという。
なんでも、その学校には日本人の先生がいるとか・・・?
フェリックスさんたちの案内で、友子、FM、僕というメンバー。
街を通って道路へと出る。
そこで乗り合いタクシーを拾って出発。
あ、タクシーと言っても、乗用車じゃなくてワゴンね。
だから、むしろバスと呼ぶ方がいいのかな。別に普通のタクシーもいるし。
この乗り合いワゴンには、運転手の他に
横引きのドアを開け閉めしたり、席を詰め込む調整をする、車掌のような人が居て
降りるときにその人にお金を払う。
当然のごとく満席でギュウギュウ詰め。
場合によっては・・・
車掌さんは車の外側で窓枠にしがみついてたり。
どうもこの横引きのドアってのは、痛みやすいらしい。
見かけがボロボロの車でも元気に走っているけど
乗ったワゴンは大抵、この扉の開閉に苦労していた。
なかには
ドアなしで走ってるのもいた。
しばらく走って降りる。そこから横道へと歩いて行くのだけど。
すごいな。この辺は。舗装されてるじゃないか。
ガソリンスタンドもあるし・・・ちょっとした都市なのかな。
ガソリンスタンドは、給油する場所であると同時に輸入品を扱う高級店でもある。
主に食料品、それに絵本やチェスなど。
ジュースやkitkat、
「オレオ!」
ファンヨーゴも売ってる。
門があって、そこの木戸のようなところをくぐる。
? ここが学校?
フェリックスさんが訪問の事情を守衛さんらしい人に説明して。
門の脇の暗い教室でしばらく待つことになったようだ。
教室内を見て回る。
何か表のようなものが壁に貼ってあるが・・・まる稲?
丸で囲った稲という漢字が、表の中にマークとして書き込まれていた。
おい、友子ー、稲だってよ?
「だからゆったやん、日本人の先生がおるって」
それはわかっているが。
何の表なのだろう。
先生が書き込んだのか、生徒が書き込んだのか。
そうこうするうちに、女の子がひとり教室に飛び込んできて
FM、友子、と抱きついている。
つづいて僕も?! うわ。
だ、誰だ?
本当にしばらくわからなかった。何事かと思った。
踊りの女の子。訪ねてきた僕たちを歓迎してくれたのだな。
その案内で奥へと進む。
門から入った道を真っ直ぐ行くと急に視界が開けて学校らしい景色が目に入る。
ここが広い敷地を持つ施設だと、やっとわかった。
日の光も入ってきて、なるほど学校だ。
更に奥の校舎へと案内される。
左右に廊下が広がっており、その廊下に面して教室が連なっている。
踊りの女の子のクラスはホームルームの最中だったのかな?
そのまま黒板の前に通されて・・・
あ、っと、my name is satoshi、Japanese。
まるで転校生だな!
転校したことないけど。こんな感じなのだろうか。
よく見ると女の子ばっかり・・・女子高?
続いて案内されたのが・・・
「あ、すいません、ちょっと待ってもらえます?」
日本語だ・・・。
うんうん、もちろんだよなあ。授業中だもん。
熱心に授業をしてみえられた。
放課した、踊りの女の子の教室で、待つことしばし。
やってきたその日本人先生は、人気者らしく生徒に囲まれいて。
輪の外からあらためて、その先生を見てみると
予想以上に若い。女の人だ。
妹にそっくり。
ふ…む?
職員室らしい部屋に通してもらう。
イスを勧められて、思わず
Thank you。
反射。
日本人に英語。あべこべやん。
互いに自己紹介をして、お話を聞かせてもらう。
イナバさんという、海外協力隊の方で。2年の期間のちょうど半分くらい経ったところだそう。
「なんか生徒から、日本人が来ているって言われて。あんまり期待はしてなかったんですけど」
「でも話が、ボストンから来ていてダンスとドラムを習っているんだ、とか具体的だったんで」
「大使館関係の人とかを除いて、ふつうの日本人に会ったのは初めてです」
門の脇の教室に、まる稲と書かれた表があったんですけど。
「ああ。ご覧になられましたか」
課題の提出状況の表だったらしい。
それで生徒が勝手に印を付けにくくするために漢字にしたとか。
なるほど。イナバさんの稲だったのか。
日本人はガーナ全体で、たった200人しかいない話。
それでも日本人の会がある話。
この学校は比較的裕福な家庭の子供が通っているという話。
学校にはだいぶ慣れてきたという話。
生徒がどういうときにどういう嘘を言うかわかってきたそうな。
ガーナの、舶来製品を有り難がる傾向の話。
米が余っているのに、外国の米の方がおいしいとして輸入しているんだって。
「こっちの人に結婚してくれって言われませんか?」と友子。
言われるけど
もっとハンサムなガーナニアンじゃないとイヤ、っていうと「ぐわー」と言う話。
蚊は今は少ないけど、これから雨季に入ってドンドン増えるという話。
今でも夜は長袖長ズボンだとか。
「日に焼けてませんね」
やはり日中は外には出ないという話。
食べ物は不便だけど、自分で料理しているのでなんとかなる話。
「炒め物中心になっちゃいますけど」
毎日飲むように薬が渡されていて、半年は真面目に飲んでいたけど、半年を過ぎてからは
「これはもう大丈夫だな」
と思って飲まないようにしている話。
そこへ給食らしい食べ物が運ばれてきて。イナバさんは食事の時間。
僕らの分も用意してくれるようだったけど
昼御飯を食べていたし、遠慮させてもらった。
「なんか食べてもらいたいみたいだけど」
どれも興味深く、面白い話だった。
友子も相当感銘を受けていたようで。
ガーナで生活するなんてすごいよなあ、と言っていた。
うんうん。
門まで送ってもらって。
待っていたフェリックスさんたちが、行きがけに教えた日本語で
「トマス、アナタのナマエはナンデスカ」
「トマス」
爆笑。 イナバさんも笑っていた。
2002.08.23 その2
6月7日 夕方
まだ少し腹も痛いし、疲れてもいたのでダンスの授業は写真撮影に専念することに。
みんながんばってるなー
などとのんびりしていたのに
踊りの女の子とペアになって一人ずつ踊ることに。
ジョー:「サトーシ!」
ええっー、ムリですよー、と言いながらも逃がしてもらえないので見よう見まね。
塀の上から覗いているギャラリーからもふくめて
ひときわあたたかい拍手をもらったように思った。
ジョー:「good dance」
へたっぴなりの敢闘賞・・・かな?
ジャスティスが今日もキーボードを抱えてやってきた。
リンゴをあげよう、と差し出されたが
oh sorry
extra food を eat すると
I am sickness.
というと
わかってくれたようだ。
嬉しいじゃないか。自分で食べられるものを。
『メリーさんの羊』は完全にマスターしていたので
じゃあ、例のダンスのパートを教えようか。
ドドソララミソソ ドドレド
ラララドドソララ ララドラ
なんだかずいぶん手間取っているな。
なんでかな…ん?…そういえば…いくら僕がドレミで言っても…ひょっとして…
君ら、この鍵盤をなんと呼ぶ? what’s this Key’s name?
「C」
がーん。
こ、高度だ。
なに? もう帰らないとならない?
だけど明日までに完ペキにしてくるって?
そうか。
わかった。・・・明日はたしか最終日だな。
他の子供はまだまだ遊び回っている。
ジャスティスは、他の子よりも身なりが良い気がする。
キーボードといい、さっきは電池交換もしていたし。
それに厳しい門限。
アドレスを教えてくれたのだけど
フリーメールとはいえ、メールアドレスを持っているのにも驚いた。
ええとこの子なんだろか?
ジャスティスが帰った後は、わーっと残りの子供に囲まれて、またも写真大会。
撮ってくれ、撮ってくれ、と子供たちが少し離れた場所で
思い思いのポーズをキメる。
そこまでされると撮らないわけにもいかないので、シャッターを押す。
すると
「Let me see! Let me see!」
うわーっと
液晶を一目みようと、僕の背後に押し寄せる。
見終わると、またすぐ飛び出して行って
あちこちで、めいめいポーズをとる。
撮れば押し寄せ
また離れてはポーズ。
押しては返す、返しては押し寄せる。それはまるで波のよう。
さあ、もうそろそろいいだろう? 全員写ったはずだ。
バッテリー残量が残り少ないサインも出たし。
no バッテリーな。
子供の一人が、遅れてやってきた女の子たちを指さして
「この子たちがまだだ」、というように主張する。
なるほど。認めよう。
じゃあ次の写真はガールズONLYだ。
男子は遠慮するように。
いくぞ? わん とぅー の すりっ! パシャ。

なんでこーなる。
お前ら遠慮せんかい。
今度こそガールズONLYだからな。電池がないんだから。
いくぞお。フェイント気味に素早く撮ってやる。
パシャ。
ふう。これで全員だな。
今日はこれでfinishだ。
その後は腕相撲大会。なんでだよ?
次々に挑戦してくる子供たち。
いいけど、僕は腕相撲強いよ? そんな細っこい腕じゃあ無理だと思うなあ。
何の抵抗も感じずにパタン、パタンと全員を倒してやる。
と、続いて今度は左で挑戦してくる。
あー、悪いけど僕は左も強いよ、普段荷物を左手に持つから。
やはり簡単にゴボウ抜き。
すると次々に格闘のポーズをとって襲い来る。
って、日本人は全員カラテカか!?
ぼ、僕はちがッ No NO のーーーーー・・・・・・……
2002.08.24
6月7日 夜
居間でくつろいでいると
フェリックスさんが
「ドンドン話そう!」
とやって来てくれた。
僕は特に用事がなければ黙っていることが多い。
英語が苦手なこともあるけど、日本にいるときでもどちらかといえばそうだ。
一度話し始めれば、芋づる式に話題が出てくるので、よくしゃべるけれども
最初の話し始める内容を思い付かなければ、いつまでも黙っている。
フェリックスさんは、その沈黙がイヤなんだって。
有り難いことだ。
えっ!
フェリックスさん18歳!?
わ、若ッ。
「じゃあいくつだと思ってたんだ」と友子を介して。
いや、いや。
いくつとかは思ってなかったけど。
こっちの人の年齢はわからないなあ。
わからないから、とりあえず自分を基準に考えるわけで。同じくらいかと。
いやしかし
コブラベが17歳だと思うとますますわからんなあ。
まあ日本人でもわかりにくい人はいるけど。
エヴンが、
「my friend! って呼び掛けるのは日本語でどう言えばいい?」
って。
「うーん、お兄ちゃん、どう言えばいい?」
あ、う、そうだな、
あえてだよ?
あえて言うなら・・・
おお心の友よ! かな。
ジャイアニズム全開。
友子大笑い。
日本人は友人に『友』とはあまり言わないんだ、と伝えてもらう。
日本は秘する文化だから。
『友』と口に出した瞬間、急に嘘臭くなってしまう。
だけどエヴンに
「my friend!」
と呼び掛けてもらえるのは嬉しいことだから
できればそのままがいいな。
2002.08.26
6月8日 マウンテン
今日がいわばダガラ最後の一日。
出発は明日だけど、おそらく早い時間に出ることになるだろう。
それで朝食後、少し荷物をいじっていたら、午前の練習に遅れてしまったようだ。
外へ出ると、もうみんな木琴の前に座っていて、ヴェナールさんが
「Do you want to play?」
少し考えたけど
答えはNO。
首を振る。
そのまま足はいつも隔離補習を受けていた母屋の裏手へ。
ははあ、なるほど。
ジェロームさんたちは忙しそうに楽器を梱包していた。
そういえばどこかで演奏するんだとか言っていたような気もする。
それで今日は先生が足りないわけか。
NOと言ったのは間違いだったかな。
これでは居場所がないというか、なんというか。
僕は何をすればいいのだろう。
とりあえずベンチに腰を下ろしたところへ子供たちがやって来た。
お、ゼロバベルか。
この子は顔も名前も特徴的だから見分けられる。
なに、山へ行こう?
有無を言わさず手を引いて連れ出されるように。
まあ、こちらにも異存はなかったけど。
あれよあれよと言う間に、犬のタイガーまで巻き込んで5人と1匹の集団ができあがる。
タイガーはいるか? そう何度も確認する。
道とは違うところを歩いたり、遅れたり、タイガーはあまり行きたくないようだ。
しかし子供の一人が呼び掛けるとしぶしぶという感じで追い付いてくる。
子供たちも一枚岩というわけではなさそう。
お互いになにやら悪口を言い合ったりしている。
僕にも、あれがほしいだの、何をくれだのと言ってくる。
日本の山とは違う。低い木と、背の高い草が中心だ。
結構な勾配、そして悪い足場。
あー、ジュロス、ごめんやけど手を繋いでいては歩け、うわっと。
こちらのバランスまで崩れる。
この中で最年少らしいのが、このジュロス。
ヴェナールさんとこの子供らしい。
とても可愛らしい子供で、うちの妹のお気に入り。
どれくらいお気に入りかというと
「もー、わたしの My boyやわ」
と言っては物真似をするくらい。
特徴的な笑い方をする子供なのだけれど
帰ってからも「あは」「くしゅ」とか毎日言っていた。
ゼロバベル! ゼロバベール!
先頭を進んでいるゼロバベルに、ジュロスを前に出すように言う。
だけどどうもイヤなようだ。聞き入れてくれない。
ところでジュロス、その帽子、友子からもらわなかったか?
やっぱりそうか。
友子にとられた帽子、ジュロスのものになったか。
はあ、はあ、ふう。呼吸が荒くなってきている。
「tired?」
yeah、yeah、きついな。
ん
あれ、息が上がってるのって僕だけ!?
ジュロスも足元はふらつくが呼吸は平常ときたか。
おかしいな持久走は得意なんだけど。
だがこの様子なら僕は自分の心配だけをしておればいいようだ。
呼ばれて振り返ると、眼下に景色が広がりだしていた。
休憩がてら4人と1匹の並んだ写真をとってやる。
少しずつ広がる景色を確かめ確かめ、険しい山道を列を作って歩いていくと
心が一つになっていくような気がする。
もう悪口は聞こえない。
タイガーもおとなしくついてきている。
ゴツゴツした岩が転がり、ワケのわからん虫が飛んでいるのを見て
怪我と病気が頭をよぎったが
もう引き返すつもりはなかった。
そこに山があるから。
後ろから大人が一人追い付いてきた。
Hello。
ナタを手挟んでるな。外国人である僕は少し緊張する。
ゼロバベルが道について質問し、それに答えると、またサッサと登って行ってしまった。
僕の方は見ていたけど。
ところでいま、デンジャラスと聞こえたような?
「not dangerous」
ならいいが。
途中、山仕事をする人が休めるような場所があり、そこでもまた道を訊いていた。
そうやってたどり着いた山頂にあったものは・・・
家と庭だった。
ニワトリ走ってる。
家の中の人に挨拶をして通り抜けさせてもらう。
しかし
おーい、いま家の人、デンジャラスって言わなかったか?
みんなで口々に
「「「not dangerous」」」
だといいが。
あ、タイガーはいるか? タイガーどこだ?
いるな。うん、うん。
ここからは尾根づたいに下り。ずいぶん楽になる。
景色もいい。
子供たちのリクエストに応えながら写真も撮ってやる。
「let me see let me see」
そうやって一々見せていたらキリがないだろ。
帰ったらまとめて見せるから、今は我慢だ。
え、ナニコレ?
これがパイナップルだというのか。
すげえバランスの悪いなり方すんだな。
知っていたような気もするが、直にこうやって見ると結構ショッキングな植物だ。
ほう。
これ一面パイナップル畑かあ。
すごいなあ。
作業をしていた、おじさんとおばさんにご挨拶。Hello。
訊かれてJapaneseだと答えると
Welcome!
ゼロバベルあたりが、
あれが何の木で、どれがどんな植物だ、
と色々教えてくれるが
残念ながら半分もわからなかった。
コーンに、落花生
それとロンドンに輸出しているという木は
なんとかわかったかな。
その木は家具になるんだそうで、
とても大事な輸出品だと言っていた。
ガーナと言えばカカオしか知らなかったが
なるほどなあ。
ゆるやかな坂道を下っていくと舗装された車道に出た。
子供の一人がタイガーの両前足をつかんで、二足歩行させるように引っ張っている。
待て待て、それはいけない。タイガーが腰を痛める。
なぜそんなことを・・・?
「COME!」
少し歩く度に、車が来るので道の端によけなければならない。
とてもbusyな道なんだなあ、そう言うとみんな
yesと言っていた。
ちょっと意外だが、山越えの貴重なルートなのかもしれない。
ああ、そうか。タイガーが車に轢かれないようにしてたのか。
タイガー首輪してないもんなあ。そっかあ。
しかしなあ。
ゆっくりでいいからタイガーを手許において歩いて、車が来たらみんなで押さえ付けよう。
そういうことで落着したのだけど
タイガーはそのうち、車が来ると自分から草むらに飛び込んでいくように。
か、賢いなー、クレバー、クレバー!
子供たちもタイガーの行動に大喜びだった。
暑い。山を出た舗装道路なので日差しが照りつける。
僕はいつも通りミネラルウォーターのペットボトルを手にしていたが
子供たちはもちろん持っていない。飲む気にはなれない。
雲が多めで助かった。
もしもカンカン照りならアウトだった。
いきなり飛び出したから、日焼け止めも帽子もない。
思慮深いようでいて、ときどき考えなし。
それにしても本当にここはガーナなのだろうか。
虫取り網とカゴを持って、日本の田舎を子供たちと歩いている夏休み。
そんな気分。
悪くない。
道なりに歩く。
どこまで続くんだろうか、この道は。
どこまでも続くような・・・。
「ここにグランド・ファーザーとグランド・マザーが住んでいる」
ほう、ゼロバベルのお祖父さんとお祖母さんが。
案内されて道から少し山の方へと逸れる。
ゆるい斜面を上がったところに木が何本か植わった広場があり
そこで涼しげにしておられた。
僕らも木陰に、お祖父さん達を正面にして半円を描くように座らせてもらう。
子供たちに水を飲ませてくれて。
僕にも飲んだらどうか、と言ってくれたけれどペットボトルのしか飲めないので丁寧にお断りした。
お祖父さんの名前はサキさん。
ガーナのことは知らなくて見に来たのだな?
どこから来た?
滞在何日目で、ここにはあとどれくらいいる?
日本人はガーナに何人くらいいるんだ? (あ、それは昨日イナバさんに。200人!)
などと矢継ぎ早の質問。
とても歓迎してもらっているのを肌で感じる。
この国における、日本の人気は高い。
ニッサン、トヨタ、パナソニック・・・etc
優秀な日本製品に触れる機会が多いから
そのイメージが先行しているのだと思う。
本当の日本と日本人が知られても
歓迎されるようにならなくては。
水を飲まないのなら、という感じで僕にはマンゴーをくれた。
あ、えっと
extra food は I cannot eat、だと言うと
「そこの木でとれたものだよ?」
と不思議そうな顔をされた。
足を掻いているのをみて、「どうしたのだ?」
どうもインセクト、bite me のようです。
「oh sorry」
no、no、子供たち。なんか君らすぐに謝るが、君らのせいじゃない。
「どこを歩いてきた?」とサキさんに問われる。
山のてっぺんをまわって、ここまで来た
そう言うと、とても驚かれた。
う?
やっぱ危ない橋だったか?
ゼロバベルが、「グランド・ファとマの写真をとってくれ」
というのでカメラを取り出すと
家からは子供が走り出てくるし
脱いで手に持っていた洋服を着込んでポーズをとるしで、ドタバタ。
構えていない普通の様子も撮りたいんだけどなあ。
ガーナの人は写真に写るということにポリシーがあるような。
明治維新の頃の日本人もそうだったようだけど。
いきますよー。わん、とぅー、の、すりっ!
「let me see let me see」
子供がワッと駆け寄る。
日本語で、これが撮れた写真です、などと言いながら液晶を見せると
ご老人ふたりも驚いていた様子。
そして山で撮った写真も見せて欲しい、というのでカメラを渡して操作を教えると
とても喜んでくれた。
さあ、もう行こうと子供たちが急かすので、よくお礼を言って出発する。
施設以外の様子をこうして見ることが出来たのは、望外の幸せだった。
再び道をゆく。
僕の手にしているマンゴーを指さして、
食べろ食べろと声を掛けてくる。
立ち止まって言う。
いいか。
マンゴー is very good、デリシャス
but
I afraid sickness
usually Japanese are very weakness in GAHNA
「oh sorry」
あっはっは。
いやいや。
それでも帰ったら
I will eat this、after ランチ、だけんどもね
そう言うと
みんなも笑ってくれた。
ん、ここを折れるのか?
長かった道もようやく終点。
あ、ここか。
車で施設に乗り入れるときに使う横道だった。
そうか。着いたか。
ジュロスが僕の手を握ってくる。
っはっはっは。
そんなに手を繋ぎたかったのか。
みんな、Do you like ジュースか?
よし、わかった。
台所の手帳、ジュース欄に4つ印をつけて。
みんなとても良い顔をしていた。
うん。こうでなくては。
2002.08.27
6月8日 昼
「お兄ちゃん、カギを持ったまま外へ行ったらあかん」
まったくその通り。
僕は部屋のカギを持ったままだった。
ケレブの元へ駆けつける。 so sorry!
「no problem」
笑顔だったけど、すまんことです。
みんなどこへ行っていたのだ、と心配してくれていた。
そういえば、行き先も告げていなかった。
I went to mountain 、 with children.
ジョー:「very good」
それにしても子供たちはおいしそうに飲んでいたよな、コーラとスプライト。
コーラはわかる。飲んだこと、ある。
でもスプライトって・・・なんだったかな?
ちょっとためしに飲んでみよう。
くわっ
食道が痛てえぇ
やっぱ炭酸はアカンわ。飲めん。
よく洗って食べたマンゴーは、まだ固かった。
2002.08.28
6月8日 午後
山で綺麗な花をいくつか教えてくれた、マディソンを見かけたので、つかまえて言う。
あーっと、さっきの4人を集めてくれないか。
マウンテン・チーム を。
極秘にな、シークレットで。鼻先に人さし指を立ててみせる。
極秘って言ったじゃーん。
目の前にたくさんの子供が群がる。
僕が手に持つ、光る鉛筆を
「自分にくれ」とアピールしまくり。
そんなに本数持ってない。
マウンテン・チームONLY!
ん、さっき君には渡しただろ?
あ? ジュロスと同じ家だから自分が届ける?
じゃあ、お願いする。
残った最後の一本は・・・。アネス、君にもあげる。
他のみんなも子供たちにおみやげを渡していたが
FMなんかは、大きなビニール袋いっぱいにシールやトレーディングカードを持っていて
それを全員に配っていた。
すぐに使ってしまうのか。驚いた。
子供たちは、もらったシールをすぐにはがして、自分のおでこに貼ったり
FMのギターに貼ったりしていた。
こっちの人たちは、楽しみ方が刹那的だと思う。
それで損をすることもあるだろうけど、しかしそれは楽しむのが上手いということでもある。
僕らはシールをもらっても、おそらく貼らずにとっておくだろう。
そしてついには使うことなく、つまりは楽しむことなく、数年後に捨てることになるだろう。
あと、ちょっと所有の観念が違う気がする。
他人のものと自分のものとの境界が、僕らよりもぼんやりしている。
「わーっ、ちょうだい、ちょうだい!」と、
やっと手にしたシールを
他人の持ち物に貼ったりするなんて。
でもそれで子供たちは満足なのらしい。
どうも、お金持ちが、お金を持ってない人にお金を渡すのは当然
持っている人から持っていない人に物が渡るのは当然
それは水が高いところから低いところへ流れるように自然なことだと考えている
そんな印象を受けた。
個人の持ち物でも、同時にみんなのもの。そんな感じ。
表の庭でFMがギターを弾いている。それを子供たちが囲んで聴いている。
僕もその輪の後ろの方で、ぼーっとしている。
そこへ犬のタイガーがやってきた。
この犬は音楽が好きなようだ。
ヴェナールさんの演奏を目を細めて、こっくりこっくり船をこぎながら聞いていたりする。
・・・なでてしまった。
せっかく今日まで我慢したのにな。
足元でコロンと横になると
後ろ足の付け根を、軽く噛むというか舐めるというか・・・
なつかしいな、この動作。
代わりにそこをやさしくかいてやる。
すると、気持ちよさそうに・・・
ふっ、とこっちに振り向いたかと思うと
ぱくっ
いつの間にか僕の足についていたらしい、虫をやさしくとってくれていた。
さっきジュロスに鉛筆を届けると言っていた子供が呼んだので
タイガーは立ち上がる。そちらへ小走りに駆ける。
そして、その子の手を軽く噛むようにして引っ張られていった。
誰に対しても従順この上ないタイガーが、人の手を口の中に入れる・・・か。
最高度の信頼。
そうか。
この子がいたからタイガーは山へ一緒に来てくれたのだな。
子供たちがアドレスの交換をしようと言ってくる。
ああいいよ。
ZERUBABEL?!
君の名前はゼルバベル?!
ゼル?!
合成人間で、声は緑川光?!
ずっとゼロバベルだと思ってたなあ。
そのゼルバベルから改まった話があるよう。
「ジュースを give してくれてThank you」
give、という言葉の響きから
どこか卑屈なものを感じて眉をひそめる。
そういうつもりではなかったのだがな。
「サッカーをするのにブーツがいる」
「半額でいいから助けてくれないか」
やっぱりそういう話か。
FMの買ってきたサッカーボールでパスを回している様子を見ても、上手いとは思う。
サッカーシューズがあれば、もっと練習できるだろうこともわかる。
しかしな。
You must understand friend.
small money or big money かは is not problem.
money それを君にプレゼントすることが is problem.
手の平を水平にして同じ高さでぶつけて見せる。
僕らはフレンドだろ?
お互いを人さし指で往復する。
手の平の高さを変えて、これならばいいかもしれない。
だけど
もう一度、同じ高さで手の平同士をぶつけて見せる。
すまんな。
魂は同じ高さにいたくてな。
分かってもらえるとは思わない。
ただのわがままかもしれない。
本当にすまない。
ところでジャスティスはどうしたのだろう。
通り掛かった子供に質問してみる。
Do you know ジャスティス?
あ、いや、知り合いかどうかではなくて
今日はジャスティス、どうしてるか知らないか?
うん、ここに来てないよな。
どうしてかまでは知らない・・・か。
Thankyou。
「Do you want to meet ジャスティス?」
NO。
あー、いや、というか
はっきりと約束したわけじゃあ、ないというか。
no promise。
ジャスティスがどうして来ないかは、マディソンが知っていた。
「グランマに連れられてショッピングに行った」
そうな。
残念だ。
子供の一人が、ガーナのお金について教えてあげよう。
そう言って、コインをいくつか取り出して
これがいくらで、これがいくら、と説明してくれた。
そしてその中の一枚を
「これが200シリー。これで鉛筆を買うことが出来る」
そう言った。
だいたい僕らは買い物を5千札単位で行う。
小さくても、2千か千、やはりお札だ。
大きなお金を振り回しているのだな。
2002.08.30
6月8日 夜
踊りの女の子に石けんをプレゼントしようと居間へ向かったら
「サトーシ!!」
「「「イエー!!!」」」
ってな感じでダンスに巻き込まれた。
みんなすごいなあ。そうやって自由に体を動かして、踊れるんだ。
僕は何をどうすればいいのやら。
阿波踊り って踊れたら万能なのかなあ。
そんなことを考えながら
足踏みをして、お尻をふっておく。
大盛り上がりの部屋に
「サトーシ!」
窓の外から子供たちの声がする。
飛び出して
ジャスティスか!
そうだった。
会いに来てくれたかあ。
嬉しいぞ。
すごく嬉しいぞ。
お互い見合わせながら、何を言っていいかわからず
あー、なあ、うーん、と言って肩をたたいた。
僕らの家事をしてくれている女の人に
言葉はわからなかったが、子供たちはみんなひどく叱られているようで
そのまま施設の外へと追い出された。
こんな時間に来てはいけない、そういうことらしい。
僕も一緒に外へと出る。
女の人は僕には愛想よく
「帰ってきたら、ここのリングベルを鳴らして下さいね」
おそらくそう言って
裏門を閉じた。
いつも早い時間に帰るジャスティスだもんな。
それがこんな規則破りのようなことを。
昼間、僕がジャスティスを探していたという話を伝え聞いて
それで来てくれたに違いない。
ジャスティス、キーボードは?
こっち、と手をひいてくれる。
う。
夜道か。
僕は夜目が効かない。いわゆる鳥目らしい。
例えば、お化け屋敷に入ると順路が見えなくて、違った意味で恐ろしい体験をすることになる。
全部手探りの迷路と化す。
dark、very very dark.
my eye is bird eye.
I cannot see.
そう伝えたら
とても気を使って誘導してくれた。
手をつないで、ここ、ここ、ここ、と
次に僕が足を置くべき場所を全部指示してくれたのだが
もう感謝のあまり、2〜3歩ごとに Thankyou Thankyou
と言うはめになって
みんな笑っていた。
なにやら向こうの横道から光がやってくる。
街灯などない夜道のこと。
灯りは目立つ。
交差するところでバッタリ会ったのは
ジョーとヴェナールさんだった。
「これからtownへ行くのか?」
うーんと、どうなんだろ。
ジャスティスのキーボードのあるところへ行く、そこがtownかどうかは知らないけど
たぶんtownかもしれない。
そう聞いた、ジョーとヴェナールさんは顔を見合わせて
「彼の英語は子供たちにしかわからない」
そう大笑いしながら行ってしまった。
夜道を子供たちに囲まれながら移動しているのは奇妙な光景だったかもしれないな。
ここ、ここ、ここ。
Thankyou。
道は平坦ではない。盛り上がったり落ち込んできたり。
くぼみにはゴミがたくさん溜まっていたりする。
ガーナの人はゴミをそこら辺にポイ捨てにするのだ。
それは決して悪いことではないと思う。
痩せた土壌を見る限り、果物の皮などをそこらに投げ捨てれば
肥料になって土を良くするだろう。
ガーナの風土に適した習慣だと思う。
だけどガーナは今、急速に発展してきているらしい。
ゴミの中にビニールなどの土に還らないものが多く見受けられる。
『ガーナをきれいにしよう』という歌を作っていた
ヴィクトさんは
物事がよく見えているのだなあ。
そうこうしていると大通りに出た。
昼間に来たときと、まるで雰囲気が違う。
あの友好的な人たちはどこへ行ったのだろう。
すごくガラの悪い縁日というか。
太めの参道を挟んで、夜店が立ち並んでいるのを想像してもらって
その両側から
Chinese! Chinese!
という鋭い声が飛ぶ。
そんな場所になっていた。
両側の商店からの光で、もう足元は十分安全だったが
とても、この小さな手を放すことはできないのだった。
真っ直ぐ前を向いて胸を張る。
ジャスティスと大通りの真ん中を歩いていく。
着いた先は、軒を連ねる商店のひとつ。
今日もとても良い服を着ていたので、どんないいとこの子だろうかと思ったけれど
そうではないようだ。
父親らしい人も
僕に挨拶ひとつ、返してくれない。
商売の邪魔だから隅っこでやれ、って感じで。
ジャスティスにバーッと小言を言うだけだった。
お店の端っこ、ギリギリ光の届くところへ席をうつして
ではではキーボードでレッツ・チャレンジ。
最後ということで熱がこもる。
ラストパート、ファーストパートでサークルOK?
空中に円を描く。エンドレス。
ドドソララミソソ ドドレド
ラララドドソララ ララドラ
ラfinish、ラstart。
まずメロディを完全に覚えなくては。ちょっと弾くのやめてSing!
メロディがチェンジするところでキーchangeだ。
this キー、this キー、don’t use、
this キー は Only once。
・・・というように
僕もできる限りがんばった。
通り掛かった数人が、僕を品定めするようにジロジロと。
「ヤロー、いい加減なこと教えやがったらタダおかねっぞ!」
ってなもんだろうか。
そうだよなあ。
現地の、ここの音楽を、わけわからん外国人が教えようとしてるんだもんなあ。
でも、すぐにうなずいて去っていってくれる。
ホッ。
練習が長引くにつれ
ついてきた子供たちも、一人減り、二人減り・・・
finish!
わー パチパチ できたー
というころには2〜3人になっていた。
ジャスティスともう一人、ふたりが懐中電灯を用意してくれて
それに照らしてもらいながら帰る。
うう。悪いなあ。
電池を使わせてしまった。
とても貴重なものに違いないのに。
大通りからすぐに脇道へと逸れたのは
きっとジャスティスの配慮だろう。
門の前まで戻って来て。
ジャスティスにいつ会っても渡せるように、後ろポケットに入れておいた
ハンカチを取り出す。
自分用のだけど、この柄は派手だし、多分気に入ってくれるだろう。
どうやらこの国では
布がとても高級なようだし。
「ワーオ!」
良かった。
You、ライト、さんきゅー。
もう一人の子には
踊りの女の子に渡せなかった石けんを。
ホント、こういうときって、言葉が出ない。
元気でな
そう言って肩をたたくと
一瞬、ためらって
でも抱擁してくれた。
その一瞬のためらいが、とても嬉しかった。
good bye
「see you tomorrow」
お。見送ってくれるって?
うん!
See you tomorrow!
2002.08.31
6月9日 出発の朝
朝。早めに起きて、荷物を仕舞う。
このことを、みんな『パッキング』とか呼んでるな。
順調に詰め込み終わったので、
まだちょっと早いんだけど朝御飯を食べに母屋へ行くことにする。
建物を出たところで
「サトシ!」
駆け寄ってきて僕を見上げる子供の顔。
ジャスティスか!
ジャスティスは整った顔立ちをしているので、実は見分けるのが難しい。
うんうん、と頷いている。
早起きしたのか?!
そうか・・・
早起きをしてくれたか。
そしてそのまま僕の手を引いて、裏庭の方へ。
そこにはキーボードが持ってきてあって、練習の成果を見せてくれるらしい。
ドドソララミソソ ドドレド
ラララドドソララ ララドラ
っはっはっは。
気負ったかな? 所々詰まったりしていたが。
いやいやしかし、練習してきたのはよくわかった。
うん。これなら僕がいなくても弾けるようになるだろう。
good だ。 very good だぞ。
おわ。
騒ぎを聞きつけたヴェナールさんや踊りの女の子なんかも外へ出てきて。
ジャスティスの演奏に合わせて歌詞を口ずさんでいた。
トメーナティ トメーナティ トメーナ
イーサンユィフォ
トメーナティ トメーナティ トメーナ
イーサンユィフォ
うわーあ。ヴェナールさんの前で弾いちゃうかジャスティス。
僕、赤面。
悪いなジャスティス、朝御飯だけは食べておかんとならんでな。
ちょっと待っててくれよ。
ブレックファースト、wait please。
卵をかき込み、食パンを詰め込んで、紅茶で流す。
どこだ、ジャスティス!
よし、写真を撮っておこう。
意外なことにジャスティスの写真はあんまりなかったからな。
黒のジージャンとは。今日は特におしゃれじゃないか?
この施設の写真も撮っておこう。
裏庭にまわってパチリとやっていると
ドラムの達人であるエディさんと、踊りの女の子が撮ってほしいってポーズを。
ホント、写真に写るということにこだわりがあるよなあ。
ちょうどよい機会なので、踊りの女の子には石けんを贈らせてもらったのだが
見ていたヴェナールさんに冷やかされちゃった。
言葉わからないけど、多分。
女の子にプレゼントなんかしたことないからなあ。汗ダラダラだ。
屋根付き広場の下、ひとつのイスにジャスティスとふたりで腰掛ける。
小さくて、銭湯にあるようなイス。これは木琴を演奏するときに使うもの。
ジャスティスは譲ろうとしてくれたけど
半分ずつ座ろう、と。
となりのイスの子が立ち上がろうとしたのも止める。
人をおしのけてまで座ろうとは思わない。
それに、今は、この方がいい。
ジャスティスや他の子と一緒に、ただ座ってすごす。
何を話すでもなく。
小さなイスだから、ほとんど背中合わせ。
脇腹をくすぐってきたり
僕の右腕の大アザに驚いたり
珍しげに黒髪をさわったり
でも、ただ座ってすごす。
言葉はあんまりいらない。
母屋からみんながゾロゾロと出てきて、次々に握手したりハグしたりし始める。
振り返って
横目がちにジャスティスと眼を合わす。
いよいよ出発みたいだ、と。
よし! 気合ひとつ立ち上がり
カバンから帽子を取り出してジャスティスにかぶせる。
プレゼントだ。
昨晩、多すぎるプレゼントは友情を壊すかもと悩んだけどな。
ジャスティス、あげる!
握手に来てくれたジェロームさんにも。もう一個の帽子を。
「ワーオ! 私に!?」
先生。
ジェロームさんって顔は二枚目だけど、三枚目ってくらい陽気だよなあ。
練習では、険悪なほど真剣になって、また変わるけど。
散々お世話になりましたから。
お互い、あまり良い生徒でも先生でもなかったですが。
そんなことを思いながら万感を・・・
ん?
子供に後ろからつつかれる。
「〜〜〜cry〜〜〜」
?!
わっ
おい
驚きうろたえる。
帽子を目深にかぶって隠しているけど
ポロポロとこぼれる涙が
木のイスをぬらしている。
大丈夫だ、 大丈夫だ、 そう言って肩をたたき続けるしかできなかった。
FMが来て
「Don’t cry Don’t cry」
と。
そうか。
そう言えばよかったのか。
ジャスティス、僕はもう乗り込まなくては。
窓から見えるジャスティスは、しばらくそのままだったが
エンジンが動き出す頃には
笑顔を取り戻して窓際に駆け寄ってくれた。
うん、いい顔だ。
強いな。
走り出した車の中で、ヴェナールさんがみんなを笑わせている。
「サトシは子供たちのボスで、子供が泣いていた」
「これはここに残るしかないなあ」
ドッと沸く。
このときかけたサングラスは
風よけのためだけじゃ、なかったよ。
2002.08.31 その2
書きました。アフリカ編、とりあえず書き終わりました。
第二週目まで書いたわけですけど、三週目は観光だったので
それは写真を中心にして、また後日にでも。
いやあ、書くの大変でした。
書くのは大変でしたが、読むのも大変だったのではないでしょうか。
ご苦労様です。