1998年1月
所長からのメッセージ

■ 金融不安 ■
三洋証券の倒産、北海道拓殖銀行、徳陽シティ銀行の経営破綻、そして山一証券の自主廃業とビッグニュースが続いた11月でした。なかでも預かり資産24兆円、昭和40年の日銀特融を受けるまでは業界1位と言われていた証券会社の消滅にはびっくりさせられます。三洋証券とあわせてわずか1ヶ月で1万人、系列まで含めれば2万人のもの人が職を失うことになるわけです。私自身も大学4年の時に山一証券を会社訪問し、内定をもらっていただけに他人ごととは思えません。また山一証券に内定していた500人の学生も気の毒ですが、入社してから僅か7ヶ月で会社が倒産してしまった新入社員の方がもっとかわいそうかも知れません。
さらに安田信託銀行の経営不安も伝えられ、世の中不安感一杯です。「危なそうな銀行からおろしたお金をどこに預けたらよいか?」というご相談をこの1週間で何件も受けました。これは大変な異常事態です。それほど危機的な経営状況でない会社でもちょっと悪い噂が出ると、噂が噂を呼び、株価の下落を招き本当に倒産させられてしまいます。是非とも政府の何らかの対策が必要です。不安感を一掃しなければ誰も金融機関にお金を預けず、本当にタンス預金になってしまいます。暮れのボーナスで買い物をする人も減り、一層の景気の悪化を招くことは明らかです。といって総ての金融機関を公的資金で救済するということが本当に可能でしょうか。不良債権はいくらあるか想像もつきません。それなのに必ず預金者は保護されると断言出来るでしょうか?
なおくれぐれも注意すべきは抵当証券と利付債、割引債です。抵当証券は預金と異なるため、保護の対象となりません。また割引債等も保護の対象となりません。特に今経営不安がささやかれている日本債券信用銀行の場合には大量の割引債発行残高があるので影響は大変大きいと思います。
また東邦生命については合併の噂で持ちきりです。東邦生命についてはムーディーズでCの格付けを受けた時点で生き残りの道は殆どなくなりました。あとはどうやって救済するか、破綻させるかという話ですが、これに関しては水面下で吸収合併相手探しが盛んに行われているようです。外資系の企業の名前もちらほら挙がっていますが、まだはっきり決まらず、今は時間稼ぎの状態です。格付けCにはならなくともBの下の方の千代田、協栄、日本団体、第百、東京生命の各社についても極めて危険な状況にあると言えるでしょう。
また経済評論家の中には「日本は既に恐慌が始まっている」と言う人もいますが、恐慌のさなかに2万人もの人がサッカーの応援にマレーシアに行くでしょうか。世の中にはまだまだバブリーなシーンが多々見受けられます。経済の基本的な部分に対する不信が蔓延している状況を打破することが必要だと思います。国民の心の中に将来に対する不安があるうちは、いくら所得税減税をやっても消費には結びつかないということがなぜ政治家にはわからないのでしょう。金融機関ばかりでなく、総ての大企業の不良債権を明らかにするとともに、族議員の圧力を排除し、450兆円にものぼる国の債務を解消するための行材政改革を実行し、将来の展望を明らかにしない限りは国民は政府を信用しません。このような中で来年4月の外為法の改正が実行されれば、個人金融資産660兆円の海外流出が始まり、さらなる円安が進みます。
経済一流、政治は三流と言われていたことが現実となっているようです。もっと悪いことに株にたとえれば額面割れとなっている橋本政権の株を売っても代わりに買う株がありません。倒産した銀行の預金を預け代えようにも、どの銀行も危なくて預け代えられない状況と言えます。その場合は預金はタンス預金となります。政治の場合にはどうなるかと言えば棄権するか共産党に投票することになります。

■ 株は買い時? ■
ところで格言によれば今は株の買い時かも知れません。
買い時の理由は「買い材料がないこと」です。何しろ一つとして良い材料がありません。悪い材料なら山ほどあります。株式市場にとって誰でも知っている情報は情報ではありません。100円以下の銘柄が数十もあるというのは異常事態です。僅か29円の銘柄まであります。誰も助かると思っていないのに、金融機関が引導を渡さないために生き残っているのです。どっちみち現在の債務を返済できる見込みはないのですから、いっそ早めに会社更生法を申請して立て直した方が良いとも思うのですが・・・。
これ以上悪いニュースが出る心配がない(海外は別です)時が本当の買い時ならば、今はその時のような気もします。もっとも株は景気の先行きを表わしているとも言います。株式市場の先見性を信じるならば我が国の経済が良くなる見込みは依然ないということになります。

■ 税制改正の行方 ■
先月号でも触れた平成10年度の税制改正ですが、先月の5日に明らかになった時点では「非現実的なものが多いな」と思ったのですが、最近の動きを見ているとまんざらそうでもなくなって来たように思えます。というのは財界からこれらに反対する声が聞こえてきませんし、税理士会でも大蔵省案についての研修会が開催されるようになりました。何となくそのまま行ってしまう可能性も否定できません。
また先月は触れませんでしたが、幾つか気になる改正案があります。最も皆さんに関係があるのは少額減価償却資産の金額基準の引き下げでしょう。これまで20万円未満の減価償却資産については支出時に一括経費として経理処理することが認められていました。従って何とか20万円未満で購入しようと躍起になったわけです。特にパソコンの値段の目安が20万円になっているのはまんざらこれと関係がないわけではありません。これが以前のように10万円に基準が引き下げられる危険があります。要注意です。
またこれまで減価償却の方法として建物以外は「簡便法」という償却方法が認められていました。これは通常の月割りで償却する代わりに、どんな資産でも最低6ヶ月分の償却費の計上が認められる制度で、このおかげで、決算日僅か1日しか使用していなくとも半年分の償却費が認められるという納税者に大変有利な制度でした。この制度が大蔵省案では100万円未満の資産に限るとされています。

■ 年末を迎えて ■
とうとう1997年もあと2週間ばかりになってしまいました。もう今年の贈与はお済みでしょうか?年末が近づくと、「何か今年中にしておかないと損するのではないか」という不安感で一杯になります。個人事業主の方は「何か買う予定があれば是非今年中に」という気持ちがお有りだと思います。
税制改正のところでもお話ししましたが、年末になると20万円未満のパソコンを漁るおじさんが秋葉原に出没します。ただし来年半ばにはwindows98が発売になりますし、その場合にはpentium200MHz以上が推奨ですので、出来るならばそれ以上の性能の機種を選んだ方がよいと思います。最もその性能では20万円未満ではないかも知れません。
他にも来年早々購入予定のものがあれば早めの購入をお勧めします。切手やタクシークーポンの買いだめは税務上認められませんので注意が必要です。
最後に…金融機関の貸し渋りはまだまだ続くと思われます。借りられるチャンスがあったら借りておく方がよいでしょう。

■ 年末年始休暇のお知らせ ■
下記期間は、年末年始休暇とさせていただきますので、あらかじめご了承下さい。
1998年12月29日〜1999年1月4日

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