FRDX-400




八重洲無線のHF(1.9〜30Mhz)受信機です。FLDX-400送信機とともに、八重洲の400ラインとして発売され1960年代後半から1970年代前半にかけてアマチュアのDXQSOに活躍したRigです。高一中二シングルスーパーにBFOとプロダクト検波の受信機では、QRHと選択度に限界があり、受信機から手が離せない・・・。安定したSSB通信には新しい技術が必要と、八重洲無線が当時の最新技術を投入し、開発したものと思われます。(コリンズの受信機を大分参考にしながら・・) ラインナップは大きく3タイプに分かれており、オプションのあるなしでグレードが分かれています。以下がその概要です。

スタンダード  簡易なAM受信機 28Mhzはオプション
デラックス   1.9Mhz、28Mhzの一部、SSBメカニカルフィルタ、100K・25Khzマーカー、
スーパーデラックス CW、SSB、AM、FMの各フィルタ、2m・4mのクリスタルコンバータ、100K・25Khzマーカー


メカニカルフィルタ

本機はデラックスタイプのグレードですが、オプションのCWMFが付いています。MFはSSBが2.4Khz、CWが600hz、どちらも国際電機の製品が搭載されています。1971年には八重洲FT-200が登場しますが、既にクリスタルフィルタに変更されていますから、MFはSSB通信機の初期にわずかの期間採用されていたことになります。私としては性能を追求するわけではないので、MFはのそユニークな原理からしても、貴重な部品です。


こんな構成です

ブロック図は以下のとおり。RF:6BZ6 1stミクサ・1st局発:6U8 2ndミクサ:6BE6 2nd局発(2SC372のクラップ)。IF×2段は6BA6、デタクタはダイオードによるAM部とリング復調回路SSB部、AF段は6BM8で 5.9Mhz、455Khzのダブルスーパー 2nd局発可変の俗にいうコリンズタイプとなっております。2nd局発のクラップ発振回路は500Khz可変。28Mhzでは4分割でバンドをカバーしています。その他はMFの後段にREJECSYON TUNING:12AT7 リング復調用局発:12AT7という構成ですから、高一中2なんですね!

AGCはSSB専用機ですからファーストアタックが当たり前ですが、リリース側の時定数が選択できます。FT−200では選択できませんから、本機はきっと高級なのでしょう。また、RF段の6BZ6及びIF段の6BA6×2にAGCを掛けています。使用している限り、IF段はダブルに掛けなくても良いような気もします。リング復調回路に掛ける局発(BFOというのでしょうか?)周波数は456.5Khzと453.5Khzで12AT7の各3極管がUSB/LSBの発振を受け持っています。れから、混信除去のアクセサリー回路、Tノッチ:12AT7ですが有効に働けば現在でも7Mhz等では重宝することでしょう。



わくわく!

ご覧のとおりさび、キズが結構あります。しかし、大きなダメージは無く概ね良好な状態です。フロントパネルの状態、四隅にビニールカバーの切れ端が残っており新品当時の面影が偲ばれます。パネル文字は印刷仕上げかと思っていましたが、アルミ板をプレスして着色した文字仕上げになっており、手のかかる高級なもののようです。パネルの清掃時に文字はがれを気にしなくても済みそう。PHONEジャック、VRレバーは共に茶色く錆びて整備のし甲斐があります。最も気になるメーター周りのエンブレム付きのプラスチックカバーはメッキ部分に錆びが発生しており、年代が感じられます。美しく仕上げられるかどうかはこの辺がキーポイントとなりそう・・。

シャーシ内部は写真右、ホコリは結構あります。鉄板をメッキしたシャーシにボツボツと錆びが出ていますが、清掃すれば見違えるようになるでしょう。シャーシ下側は写真がありませんが、大変きれいでした。



受  信

 電源部の状態を確認してから、SWを入れてみました。購入時のコメントでは「電源は入りました」のみ。「受信できました」ではありません。こんなコメントでも、購入してしまう自分がコワイ・・・。

メーター、ダイヤル部のパイロットランプが点灯し、Sメーターが右側一杯に振り切れます。しばらくするとSメーターの針が戻り、受信ノイズが・・・・・・・・。聞えません・・。いつもここで感じる「裏切られ感」。これを味わうために小遣いをはたいていると思うと「治してやるゾ!」というファイトが沸いてくる。煙が出ないだけマシ?まぁ、これがあるからお安く買える?と思いながらパネルのツマミをいじります。とりあえずマーカー回路を確認してみることにしました。FRDX-400ではマーカーのSWはパネル左下FUNCTIONにあり、ロータリーSWでANT回路と切り替えて入力します。とっ・・・!小さい音ではありますが、ピィーーと言う音がします。回り込みではなさそう。AFゲインを一杯に上げると音量に変化があります。CWモードにすると聞えません。各バンドとも聞えますので受信は出来そうです!感度の問題を真っ先に解決しなければ先に進まないようですから、信号ライン系を回路図を見ながら確認することに・・。真空管のエミッションか?各ステージの同調回路か?フィルタか?どれも可能性大であるが、まずはMFのマッチングと整備から開始することにしました。この作業に当たって、JR3XUHさんのホームページから貴重な情報を参考にさせていただきました。上の写真シャーシ内部の左下に見えるのが、大好きなMFのユニットです。取り出してまずはCWフィルタから中をあけます。何故CWフィルタからかといえば、万が一壊してしまった時SSBが聞けないのは寂しいし、失敗の学習が出来ますよね!
 というわけで、下の写真はCWのMF−455-03AZ27。(末尾27は真空管用です。)スポンジがベタベタ状態で5エレメント構成、トランスデューサ部は手が付けられません。


マニキュア除光液、アンモニアなど色々と洗浄液は皆様、工夫されているようですが私の場合無水アルコールで洗浄してみました。写真左がSSB用、右側がCW用です。SSB用は6エレメントの薄型振動子になっています。こんな鉄の塊がフィルタになってるんですねー。クッション材用は何が良いかと検討しましたが、加工の容易さと経年劣化、実績を考慮してフェルト生地の中綿を使ってみました。丁寧にくるんでケース内にそーっと収めます。




MFが綺麗に整備できたところで、再度受信機に組み込みます。結構、半田付けが狭いところでやらなければならず、大変ですが何とか接続。早速電源を投入します。オーッ!!聞える聞える!!Sメーターも振れ始めました。全く聞えなかったCWモードでもマッチングを取り直すとSSBと同等の感度で入感します。切れ味もCFのラダー型と遜色ありません。「しめしめ、小遣い分取り戻したぞ!」
若干感度は悪いものの、各バンド受信確認できますので、後は調整で追い込めれば良しとして受信機の清掃作業にかかりました。



今回は,水洗いをしてみようかと思いましたが、既にメカフィルを整備してしまったので、またの機会にして綿棒と無水アルコール、車用コンパウンドとウェスでしこしこ磨きました。写真上のとおり見事にピカピカになりました。局発クリスタルも写真のとおりです。左3個は比較用に磨いていない状態で撮影したものです。この受信機の一番気に入っているところはシャーシ鉄板部分に直接真空管が取り付けられているところです。プリント基板上に取り付けられている真空管を見るとなんとなくがっかりしてしまうのは私だけでしょうか?


フロントパネル周りの様子です。1Khz直読ダイヤルは当初、つや消し仕上げとなっていましたが、アルコールで拭いたらピカピカになってしまいました。文字が消えた訳ではないので、これでしばらく使おうと思います。オレンジ色のダイヤルイルミネーションが何とも良い感じです。


受信感度
しばらく受信をしていると色々不満が出てくる。どうも、3.5Mhzと7Mhzの感度が他のバンドより低い。Sメーターは振れるものの、FT-200と比べても明らかに受信感度が劣っています。まず、中間周波増幅段のIFT3個を調整。ほとんどずれていません。Sメーター回路のチェック、プリセレクタ回路のチェック、RF回路アンテナコイルと、回路図を見ながら確認し調整しますが、同調回路などの調整による感度改善は得られませんでした。おかしい・・・

14Mhz以上ではそれほど感度が悪いとは思われないし、コンディションの変わり目で私の勘違いかなーとも思いました。30年も前のリグに性能を追い求める訳ではないのですが、どうも合点がいかない。こんな感度のはずがない・・・。どこか具合が悪いのなら元通りに戻して使いたい。 どうもモヤモヤとしながら数日後、通勤電車のなかで思いついたのは、原因の切り分けをすることでした。(3.5Mhzと7Mhzの感度が悪いのなら原因は共通の回路にある可能性が大きい。そこを見直せば何かのヒントがあるかもしれない・・。) 大急ぎで回路図を見直します。該当する回路はプリセレクタにありました。




写真の回路図の左上側がアンテナ入力側、右上側が1stミクサ回路になります。中央下部分が1st局発回路が見えます。まず、この回路のロータリースイッチS102C及びS102eは現状の接続が1.9Mhzになっています。従って、3.5及び7Mhzの共通回路は13時方向の接点と12時方向の接点が接続された回路。つまり同調用コンデンサC104,C105及びC115,C116ということになります。バリコンは見た目に問題ないので外して考えるとこのコンデンサのリーク又は短絡があった場合にどうなるかということです。
 回路的にはプリセレクタの同調も取れたように見えるし、感度の低下があっても一応聞えてしまいそうです。症状からしてもピタリと合います。「これだ!」ということで早々コンデンサのチェックに入りました。 シャーシの下側は比較的綺麗でさびなどが発生している様子はありません。問題のRF段の回路を見てびっくり!全く手が付けられません。コイルパック化されたシールド板とロータリーSWの一番奥にこれらのコンデンサが配置されています。このままで半田ごてを突っ込んでいくと手痛いしっぺ返しを食いそう・・。かといってここを分解しだしたら相当な手間がかかります。しかし、よくよく見るとコンデンサの片側はアースとバリコンにつながっていますから、何とかテスタの電圧くらいはかけられそうです。 4つのコンデンサはすべてマイカコンのようですが取り合えずチェック! 全て異常ありません。全くリークしていません。  はて・・??

 またまた、モヤモヤの日々に突入・・。7Mhzで普段S9の局が、この受信機ではS5程度で入感しています。正確な感度を調べるなら、ジェネレータがあれば一目瞭然ですが、S9を34dBとしてS1つ当り3dB間隔としても12dB位の感度差があるわけで、これを老朽化の感度低下と甘んじることは私にはできません。真空管を取替えてみようかな。そういえばこれをまず真っ先にやらなくてはいけないはず・・・。しかしバンドによって感度が違うから、エミッションの問題と言えるだろうか?


ともかく、挿入されている真空管のチェックを遅まきながら実施。どうも、一部仕様と違う球が入っている。一つはIF初段の6BA6がシャープカットオフの6CB6に。リング復調用局発12AT7が12AX7になっています。しかし、全て当時の東芝製で途中で入れ替えられた様子はありません。試しにIF段の6CB6を別の6BA6に差し替えますが、変化なし。12AX7はヒーター電圧が低いのか殆ど赤く光りません。しかし、発振出力はあるようで、USB・LSB共に快調に復調していますから、感度との影響はありません。


とんだアクシデント

シールドケースは6BM8を除き全てに付いています。また、電源回路には5Hのチョークコイルが挿入され豪華絢爛な仕様の受信機・・。何とかならないものかとケースから外したまましばらく受信していると、ビョ〜ンと受信機の中央から50センチ程真上に、何か飛び上がった!「真空管がっ!いや、シールドケースがっ!」 「バチッ!」 しまったと思い電源SWに手を伸ばすより早く、2Aのヒューズが働いた。シールドケースは、ご存知のとおりバネが頂部に付いており、しっかりとシャーシにはめ込まないとこんな事になる。真空管のチェックをしたときどうも一つだけ収まりが悪かった・・。シールドケースはどうも、チョークコイルとメカフィルのマッチングTrの外装部を短絡させたようだ。メカフィルにダメージは?とヒューズを取替え、再受信してみたが問題はなかった。

飛んだアクシデントである・・。


わかった!

直るあての外れたまま1週間が過ぎ、土曜日がやって来た。この間、暇があれば回路図を眺めて考えたが、これと言ったアイデアは浮かばない。この日はやはりHFのハイバンドがコンディションに恵まれ、14MhzではロシアのアマチュアがS9で入感している。「14Mhzはいいんだけどなー」と思いながらバンドスイッチを7Mhzに切り替えた時、一瞬だけ受信ノイズが大きく聞えた。あれっ?と思いバンド切換えスイッチに少し力を入れてみると受信音量に変化が・・。なーんだロータリーSWの接触不良かー。と思っていたらどうも違う。シャーシのシールド部を歪めても発生する。プリセレのバリコンに力を加えても発生する。ずっと力を加えたまま受信していると感度はすこぶる良い!(レストアの快感を感じるのはこんな瞬間!)

 色々なところに指で圧力を加えながら受信音を確認していると、どうもプリセレクタ回路のバリコン付近があやしい・・・・・・。 配線をじっと確認しても問題が無い。バリコンの配線を一部指で触ると良く動く線が一本・・。「めーっけ!」上の回路図VC101aの入力側配線の断線であった・・。原因は不明だが、配線はかろうじてバリコンの端子にくっついている。見た目には断線しては見えないが使用している配線コードは単線の被覆銅線でもろくなっていたようです。私がケースを外す時うっかり触ってしまったのかもしれません。しかし、仮にそうだったとしても、いずれは訪れる故障だったのでしょう。

いいところまで、たどり着いていながらゴールインできなかった一週間前が悔やまれます。まあ、そんなに急ぐ必要もありませんが・・・。とにかく原因が判って良かった。早速、半田付けして完了。7Mhzを受信してみます。Sメーターの振れかたがぜんぜん違います。プリセレクターもチューニングがクリティカルになり、感度がグンとアップしたのがわかります。「この受信機はこんなものか・・」とあきらめなくてよかった!!


ダイヤルの仕上げ

一段落ついたので、ピカピカにしてしまったダイヤル類の仕上げを行いました。左がつるつるな状態のダイヤル。右が再塗装後のダイヤル。わかりにくいですが、これを本体に装着した時は結構目に付く部分なので違いがはっきりします。どちらが好みかは、分かれるところですが、500Khzダイヤルはつや消しでないと装着した時反射して見難い。


今後は、この受信機のオプション部分をいたずらしようと思っています。


チューニングダイヤルの調整

以前から気になっていたメインダイヤルの操作について、調整をしました。

 

八重洲の無線機をいろいろいじってみるとチューニングダイヤルの重さに機種ごとの違いを感じたことはないでしょうか?私は、FT-401の非常に軽いダイヤルの操作感触が好きでしたが、ある時別の同機を触った時にまったく違う重い感触のダイヤルだったことを覚えています。この受信機も我が家にやって来た時は、バーニヤダイヤルより重い感触でとても使い物にならなかった。  その後、ボールドライブの減速機に、固まってこびりついていたグリスをある程度清掃し、何とか使える状態にまでなったがどうも気に入らない・・。 ダイヤルの一部にやはり引っかかりのような感触があり、いずれ手を加えようと思っていました。

 何とか、チューニングのダイヤルタッチを軽く改善できないかということで、ボールドライブの減速機を取り外し観察してみることにしました。写真は減速機を取り外したところ。かなりグリスで汚れています。こちら側を向いている部分がVFOのバリコンに接続される部分です。



取り外した状態で軸を回してみると、かなり重いことが分かりました。これはどうやらボールベアリングの動作にかなりのストレスがかかっているのが原因のようです。ベアリングの抑えは、リング状のスプリングとワッシャでこのワッシャを6箇所のツメで抑えている構造です。したがってボアリングの動きをもう少しスムーズにするためには、このツメによる抑えを調節してみる必要があります。6個のツメのうちワッシャが強く当っている一箇所のツメを少し開いてみました。
 この作業で軸の硬さが大分改善されました。最もダイヤルノブが軽い状態にしてみると、軸がスリップしてしまい100KHZダイヤル固定部分とノブがバラバラな動きになりそうです。このツメの僅かな抑え加減で、全く異なるチューニングの感触になるわけです。この加減は実際にダイヤルを取り付けながら動かしてみて自分の気に入る感触に調節すると良いと思います。 ここまで、調節のメドが立ちましたから減速気の清掃をすることにしました。



固まったグリスを清掃するため、無水アルコールにつけて脱脂をします。脱脂はスプレー式の洗浄剤もありますから、時間をかけたくない場合は便利です。私の場合、楽しみながらやっていますのでこんな具合です。洗浄が終わったら、よく乾かしてグリスを塗布しますが、耐磨耗とスリップ防止の両方を考慮してセラミック系のグリスを使いました。 取り付けて見ると、いままでと全くちがう感触のダイヤルになりました。もともと軽いタッチが好みでしたから、好みの操作性に仕上がったといえます。いままで、500KHZ分の周波数の移動はかなりの労力でしたが、操作が楽しくなりました。違う受信機になったような感じです。