hallicrefters SX-99の修復記


アメリカ、ハリクラフターズ社の受信機を入手しました。
日本では、なかなか購入する機会がなく米国で購入したものを送ってもらいました。船便で約1ヶ月半くらいかかりましたが厳重な梱包のおかげで、トラブルもありませんでした。写真は梱包を開いたところです。キズも少なく、この機種唯一の弱点であるSメーターカバーの黄ばみも全くありません。



ハリクラフターズ社については、数々のHPに記載も多いのでそちらを参考にしていただくとして、このSX-99の
簡単な仕様を説明します。

本機は高1中2(IF455KHz)のシングルコンバージョン構成となっており、発売当時まだAM通信が主流だったため、プロダクト検波技術が導入される前の製品のようです。その後発売される本格的通信型受信機SX-100はプロダクト検波が搭載されSSB対応となっていますが、SX-99もCWは対応していますのでBFOを搭載しSSB通信を復調することができます。SXのXはクリスタルフィルターを搭載しているという意味があるそうです。挿入損失はかなりありそうで、マニュアルには記載がないようですが体感的に約−10dB以上と推測できます。この受信機はシャーシの刻印とオリジナル真空管から1959年製のMark 1Dであることがわかりました。

受信バンドは

・0.538〜1.6MHz
・1.55〜4.6MHz
・4.6〜13.0MHz
・12.0〜34.0MHz

の4バンドで構成され、チューニングダイヤルとスプレッドダイヤルがついています。AGCはRF段1stIF・2ndIF段の2ステージでカソードバイアスを可変することでゲインコントロールを行い、AM受信では大変クリアな音質と安定した受信を確保してくれます。真空管はGT管及びメタル管で構成されています。





上記の写真はシャーシ内部です。アンテナトリマ、チュウニング、スプレッドの各バリコンと真空管のゆったりとしたレイアウトです。アルミシャーシですがまだ光沢が残っており製造40年以上の経過が感じられません。



真空管は電源回路の5Y3GTを除いてオリジナルが装着されています。Mark 1Dではダイヤル表示板はアルミ製になっています。また、ダイヤルカバーはガラス板が取り付けられ経年劣化する材料を極力使わないよう工夫がされています。この辺の仕様が塗装色も含めMark 1Aから1Dまでのバージョンで微妙に変更されていますが、回路構成等主要部分の変更は各バージョンで実施されていないようです。


この受信機は、ここに到着する前から問題を抱えていました。前オーナーがコレクションとして所有していたもので、キッチンラジオとして使用されていたようですが、突然の破裂音がありその後Sメーターの不動作、音量の減少が発生したとの情報をいただきました。「小さな音で受信できているから修理は簡単だ!」とのコメント付きで購入したのですが・・・・。どんなもんでしょうか??



写真は修復前のシャーシ下部です。私の感想としては「大変きたない!」又は「荒っぽい作り」というところです。半田付けもなんとなく上手ではないし、ヤニもシャーシのあちこちに飛び散っています。きれいに清掃しながら修理することにしました。コンデンサはペーパーコンデンサ(赤色:Tiny Chief 黒色:Black Beauty)、マイカ・セラミックが取り付けられていますが、比較的良い状態に見えます。回路チェックをしてみると特に改造した様子はありません。電源を入れてみることにします。


電源を投入すると表示用ランプ、真空管ヒーターは点灯しましたが、何も聞こえません。幸いこげくさい匂いは嗅がずにすみましたが、さて、どうしたものか??しばらくすると接続したスピーカーから「ブッ」という音が聞えました。AFゲインを最高に上げると何やら受信ノイズらしきものが聞えます。チューニングダイヤルを動かすと変化しますのでどうやら受信はできているようですが、どう見てもマトモではありません。AVCのSWをONにしても全く変化がありません。事前情報から考えてやはり、IF段に何らかの問題があるように思われます。ボルテージマップを参考に要所の電圧をチェックします。1st IF AMP 6SG7の第2グリット電圧が10V以下となっています。本来100V〜140V程度の電圧がここには必要です。この真空管の第2グリットは「第2のプレート」と称される部分でここにB電圧に近い電圧がかかっていないと、まともな利得が取れません。これが諸悪の根源でした。



上記は1st IF Amp 6SG7のシャーシ下部配線状況  写真中央がG2のバイパス用セラミックコンデンサ



ご覧のとおり、6SG7 G2のパスコン(何とセラミック)0.02μFが11KΩの抵抗にすりかわっていました。一つ前の写真中央のセラミックコンデンサがそれです。このコンデンサ(抵抗?)によって分圧された電圧分しか、6SG7のG2に印加されていなかった訳です。 発見するまでに約2週間ほどかかってしまいました。とりあえず手持ちのフィルムコンデンサに取替えて動作確認をします。


Sメーターも正常動作をするようになり、AGCもかかります。が、CWがビート音になりません。BFOは発振していますが、カップリングがとれていないようです。配線を確認してみると2nd IF AMPの第1グリッド付近までBFO出力のシールド線が延びており、接続されていません。直接接続すれば、IF AMP 6Sk7 のグリットバイアス電圧が変化してしまうので、回路図とマニュアルを確認します。よく見るとカップリングはコンデンサ素子によるものではありません。WIER GIMMICKとなっていますから、入力回路にこの出力線を絡めてみました。これで、CWとSSBが復調できるようになりました。

ペーパーコンデンサはチェックと同時にフィルムコンデンサに取替えていきます。トラブルの原因となりやすいBlack Beautyを取替えて赤色:Tiny Chiefのコンデンサは、オリジナルの味わいを尊重して残しました。

各部の調整は簡単に実施しました。IFTの455KHzは殆どずれていません。また、トラッキングはGDMの出力を利用して調整しますが、各バンドともおおまかに納まりました。



清掃作業

前面パネルを取り外して清掃します。


パネルは中性洗剤にしばらくつけて水洗いし、乾燥させます。欠品、破損の多いツマミ類も同様に洗浄しますが、乾燥後に潤滑油を止めねじ部分に塗布します。ツマミ類が劣化し、艶が失われている場合は、油分を取り除いてクリア塗装をかけるとある程度復活します。ワックス等で磨いても駄目な場合に有効です。今回はこの作業は必要ありませんでした。
シャーシは真空管をはずし、無水アルコールで汚れを拭取ります。Sメーターカバーはやはり中性洗剤につけこんで水洗い乾燥後、傷が表面にあれば車ケア用のコンパウンド(細かいもの)で磨くと新品同様になります。また、スナップスイッチ、ジャックのとめねじ等は錆びなどがあると大変目立ちます。これらは紙やすりで磨くと、取り返しのつかない事になっていまいますので、錆び取り剤と酸化防止剤を利用するか、すこし荒っぽいですがやわらかい真鍮のブラシで擦ってもきれいに清掃できます。チューニング機構の稼動部はあまりいたずらしないほうが無難ですが、ひっかかりやベアリングの古い潤滑油の除去をしなければならないときは揮発性の高いアルコール洗浄剤(電気屋・ラジコン模型屋などにあるもの)を使って清掃、脱脂した後に注油します。

もともときれいなラジオでしたから、ピカピカになりました。


使用状況

100v電源を入れるとしばらくして、Sメーターが0の位置を示し受信音が聞えてきます。7メガのアマチュアバンドにチューニングするとCW通信とその少し上の周波数にモガモガというSSBの交信がS9位の強度で入感しています。BFOをONにしてRFゲインを調節すると大変クリアにSSB交信が復調できました。クリスタルフィルタをONにし、バンドスプレッドダイヤルを回します。多少「リンリン」いいますが、適度にサイドが切れて混信除去機能も充分働きます。いやいや、これでは、実際にQSOに使ってみたくなる気持ちがわかります。感度も大変よく、この状態で定格電圧で使用すればますます快調なことでしょう!!

プロダクト検波とAGCから独立したSメーター回路になっていれば、文句なしですが私が生まれて間もない時代に、アメリカではこんなものを市販していたとは驚くばかり・・・・。ますますハリクラファンになってしまいました!