いつからだったろう。
なぜだったんだろう。
深海に眠る真珠のように、幾重の歳月の中から、あたしの心海に生まれた。
気になる、傍にして欲しい、誰にも渡したくない、好きだ、―――そして、愛。
さまざまの思いは、あたしをあたしでなくさせる。
そう、ほんの些細なことで―――鎌首を擡げる思考。
――あたしは魔女になる―――
ほんとに、ショックだった。
「私、ゼルガディスさんが好きです!」
アメリアのあの言葉。
あたしの気持ちと同様の台詞。あたしが言いたかった・・・・心。
あの時、ゼルがなんて答えるのか、後から思えば笑えるくらい全神経をその一瞬に差し向けていた。
「・・・俺は・・・他の奴も同じだが、『旅を共にしている者』という認識しかない。だから、お前には答えられない。」
ゼルは、いつもと変わらぬ冷徹さで答えていた。この言葉はあたしをどれほど安心させたか。『まだ、チャンスはある!』それほど、柄にも無く・・・そう、妙に不似合いな不安に慄いていたのだ。あたしは。
「・・だれか、好きな人がいるんですか?」
「いや、いない。だが、俺は人を好きになるということが理解できない・・・・感じられない。それだけだ。」
「そんな!・・・そんなの、ゼルガディスさん悲しすぎます・・・可哀想です。」
あたしの思いの代弁者でもあるアメリアの言葉は、ゼルからあたしへの、いや、他者への一つの大きなハードルを提示されたに等しかった。
―――人を好きになることが解らない―――
こんなことがあるだろうか?無理に押さえつけているならともかく。
あの、不器用だけど優しいゼルにない・・・そんなことは、無いはず。
絶対、ゼルの中にある。ただ、きっと眠っているだけだ。
なら、あたしが、目覚めさせてみせる。
思いの卵を孵せばいいのよ。
目覚めさえすれば、後はあたしの方に向けさせればいい。
そう、周囲に罠を張り巡らせて絡め取ればいい。
何を引き換えにしても手に入れてみせる。
あたしは、アメリアのように優しくはないから・・・ただ涙するなんてごめんだから。
ゼルの為に涙を流すアメリアから、不思議なものを見るようなゼルから視線を外した。
言葉は知らず唇から漏れた。
「必ず、手に入れるから。ゼル。」
この時から、あたしは、男を絡め取る魔女に変わった・・・
そして、最大のチャンスは到来する―――
あたしは、今まで何かにつけ行動を起した。ゼルの感情を覚醒させるために。
けれど、さすがゼル!というか、まったくもって変化はなかったのだ。頑固一徹というか・・・。
多分、あたしはともかく、ゼルは環境に影響されているんだと思う。雑音が多すぎるのだ。
で、都合の良いことに自称保護者が風邪で寝込んだ時は、心配もしたけど、笑みが浮かぶことを止められなかった。薄情ではあるけれど。
そして、その日の夕方、あたしはちょっとしたことを口実にゼルと二人きりになるように仕向けた。
今夜こそ、ゼルの心を孵して見せる。・・・そして、私が必ず、手に入れる。
そんな、決意とともに。
そして、挑戦が、一世一代の芝居が始まったのだ。
「 お前は好きな奴はいるか?」
ゼルの言葉。おそらく、自分でも、己に対して疑念があるからだろう。そして、逆説的に見れば、それは望みでもあるのだから。
『教えてくれ、どうしたらその感情は生まれる?どうやってその気持ちを手に入れた?』
ほら、これが、証明書。
ゼルは気づかないところで、欲しているの、手探りをしてでも。
――― クスクスッ ―――
あたしはゼルの反応に笑いがこみ上げてきた。でも、面には出さない。
そうよ。こうでなければ・・・・・あたしの今までの努力は報われない。このためにあれこれ手を廻していたんだから。
そうこうしている間にもゼルはあたしに「逆説の望み」を漏らしつづけている。
もうすぐ・・・もうすぐよ。
だって、あたしは知って・・・ううん、そう感じたから。ゼルへのプレゼントは共に悲しむことじゃない、一緒に戦える者、そして、救い手であることを。
・・・・なら、それが、あたしだってことを摺り込めばいい。どこからか涌き出てくる魔女の思考。自分でも可笑しいくらい。
さぁ、詰めに入らないと―――ほら、ゼルの目覚める刻限よ。
もう、魔女の刻も終わるから・・・。
『あたしにも、チャンスはあるでしょ?ゼルの彼女になる・・・』
この言葉は、Blackbox key・・・
思った通りkeyが、ドアを空けたようね。ゼルの心が孵ったのを感じられるから。
でも、これだけじゃダメよね? 最後の仕上げはきちんとしないと・・・・・・ね。
『ゼル、好きよ。愛しているわ・・・』
今、魔女なあたしは絡め取った標的の腕の中にいる。
でも、とても、幸せなのだ。
自然に微笑みが浮かぶくらい。
そして、ゼルの目覚めの代わりに、あたしの中の魔女の刻が眠りについた――――
fin.
実に、約6年ぶりの新作スレパロ・・・・・それなのに・・・・・ゲロゲロ(死語)・・・・。
すでに、のっけからパッパラパー。全くリナぢゃないです。いかん、これでは。
大体、人様のネタから暴走するところからして、ダメダメだね。言語道断、万死に値する所業です。
ゴメンネーー、セラフィーナ・・・・。
でも、浮かばないんですーーー、ネタ。
誰か、ネタ提供してくれないですかねぇ。(極悪!自分)
で、今回のも、心がお空より尚、広く優しいセラフィーナに熨斗つけて進呈。
(しかし、頭書きは、粗悪品・・・粗品にもならん・・・(T_T))
セラちゃん版を読みたい方は、ここからGO!!
三下管理人 きょん太拝