爛れた恋を君と
耳障りな軋みを上げて目の前のドアが開いた。その後に黒い人影が揺れている。薄闇が広がる室内からは誰なのかは分からない。揺れるその陰は絵のように薄っぺらい存在感だった。
「さっさと入れば?
見つかっても知らないわよ。」
室内からかけられた女の声音に吸い寄せられるが如く陰は、室内の薄闇に融け込んで行く。コツコツと薄闇に足音が響く。その足音が向っている先には、狭苦しいシングルベッドと、開け放たれた窓。その向こうに漆黒の闇が広がる夜と、それよりなお黒い迷宮のような杜が見える。
その窓辺にあられもない姿で座っている一人の女がいた。裸身に軽く白いシャツを羽織っただけの姿。薄闇によく映える姿だった。
女の顔には幼さと妖艶さが入り混じり、陰が己に近づいてくるのを見とめるとニタリと笑んで見せた。
「遅いわよ。」
「仕方なかろう?
今の俺は・・・・・・」
低く響く男の声。ようやく闇から現れた姿は地味なマントに身を覆い尽くしていた。先のドアを開けた時と大差のないもの。その顔すら見えない男に女は軽く笑って言った。
「分かってるわよ、ゼル。
何たって今は・・・・・・・・ンンッ!」
だが、女の言葉は最後まで続きはしなかった。陰が女の口を塞いでいた為だ。その瞬間に陰は・・・・生身の男に変化する。その触合う女も共に影絵のように窓辺に浮き上がっていた。二人の間でばさりと音を立てて足下にわだかまるマントの動きだけが目についた。
「御託はいらん・・・。
来い、リナ。」
「そうね。」
ゼルと呼ばれた男の腕がリナと呼ばれた女を包み、その背に腰に触れていく。
そして、薄闇の中、二人してチークを踊り始める。艶やかに、密やかに。・・・・・また、淫らに。時さほど経ずして二人の陰は薄闇に溶け込んでいく。
後に続く、秘め事を黒い杜だけが聞いていた。そう・・・・触れなば焼けつく冷酷さと、鏝を爛れさせるほどに熱い睦言を。
「ねえ・・・・・」
「なんだ?」
「『王』になった気分はどう?」
「言うな・・・うっとおしいだけだ」
「・・・とか言って・・・あの時は、
『俺はどこまでやれるか試してみたい!』
なーーんて、自分の可能性に目が眩んだくせに?
目の前の史上最高のイイオンナを袖にして。」
「・・・・・・・・。」
「だんまり?
ところで・・・・・ねぇ、
あの子のこと、愛してる?
今までも、これからも。」
「・・・・・・・傷つけたくはないな。」
「酷い男。」
「フン!そういうあんたはどうなんだ?
あの時、史上最高のイイオトコを何も言わず、
ただ見送ったろう?」
「・・・ゼルがそれを望んだからよ。」
「俺の所為か?何もかも!?」
「まさか?!
アレはアレ。コレはコレよ。
今のあたしは、スリルと・・・・
そうね・・・恋を楽しんでるの。
遊んでそうだけど、変にお堅い『セイルーン王』
を堕してみたくなった・・・
ってところかしら?」
「・・・あいつの親友なんだろう?
酷い女だな。」
「酷い女は嫌い?」
「・・・・・以前ならな。」
「じゃあ、今は?」
「『女』に見えるのは・・・
リナだけだ。」
「クスクスクス・・・・・・・・
ほんと、酷い男よね。
口先だけであの子の傍にいるんだから。」
「!?俺も最初はっ!!」
「愛してたとでも?」
「・・・・・・・・・・・」
「それすら言えないなんて・・・・
ほっっんと!
酷い男・・・・・。」
そうして、背徳に満ちた睦言は夜明け近くまで流れ続けた。恋と愛と堕落に塗れた二人の狭間で。
【完】
由布さんへ!
萌え萌えなりクエストをありがとうございましたm(__)m
な・・・なんかもうドロドロですみません。
気がついたらこんなんに(TT)
あの・・・・その・・・・これも漏れなく返却権がばっちりついてますので、何時でも使用して下さってかまいませんので・・・・
・・・略奪愛って・・・・むずかしいざんす。やはりおこちゃまな私ではまだまだとゆーことですだ。
ということで、キリ番8765番をゲットされました由布さんへ捧げさせていただきます。
三下管理人 きょん太拝