銀光は闇、其れ故に閃いた。
「首に剣を生やしたくなければ答えろ・・・何者だ?」
「狂戦士の看板はまだ下ろしてないの?見境ないのはよくないわよ。・・・・・・この剣呑な物、のけてくれない?」
「・・・・何の用だ?リナ」
「ふぅ・・・・・ほんとに、物騒なんだから。」
「で、・・・なんだ?こんな夜更けに。」
「そうね。単刀直入にいくわ。ゼルもその方がいいでしょ?・・・・・・・あのね。いい加減に少しはあたしの事、信頼してくれてもいいんじゃない?うわべだけじゃなくて。って言いに来たわけ。」
「ハッ!!何を言い出すかと思いきや・・・・悪いが、俺は誰も信用なんぞしない性質でな。その範疇には漏れなくお前も入っている。」
「・・・・誰も『信用してくれ。』なんて言ってないわよ。あたしは、信頼してくれっていったの。」
「・・・フン・・・どちらも同じ事だ。」
「違うわよ。ゼル、辞書引いたことあるの?」
「・・・・・・・屁理屈だな。」
「あたしたち、シャブラニグドゥも一緒に倒したじゃない。」
「あいつはレゾだったからな。仕方あるまい。」
「いつも、助けてくれたじゃない?」
「成り行きだ。」
「ほんとにもう!・・・少しは愛想良くなったら?」
「俺に愛想なぞ必要ない。」
「女にもてないわよ?そんなんじゃ。」
「お前には関係ないだろう。」
「関係無くはないわよ。・・・もう少し・・・・気楽にやれば?そんな肩肘張ってて息苦しくないの。」
「???何を言った?・・・・・・まあ、いい。それと俺は別にこのままで、かまわん。」
「あたしにすればゼルは十分自虐的よ・・・・ゼルって、もしかしてマゾ?」
「俺は、変な趣味なぞ持ち合わせていない。」
「その方がいいわよ。妙な趣味はちょっと・・ねぇ。」
「ふぅ。・・・・いいか、俺はお前さんの下らん御託に付合う気など毛頭ない!さっさと俺の前から消えろ!」
「ふーん。こういう軽い会話、少しは楽しみなさいよ。・・・・・・って、まぁいっか。じゃあ退散するわ、ゼル。」
そして、リナはゼルガディスの部屋から退場した。
コツコツコツコツ・・・・・・ 闇に靴音が飲みこまれ、そして、また闇から出づる。
リナの部屋へゼルガディスが登場する。先程から僅か数刻の後。
「で、今度はあたしがこう言う番ね。『何の用?』・・・・・ゼル?」
「・・・・なぜだ?」
「だから何の事?」
「・・・・俺に・・信頼してくれと言ったのは、お前だ。」
「ああ、そのこと・・」
「そうだ。なぜ俺の信頼が欲しい?」
「簡単な事よ。あたしは・・・・死にたくないからよ。」
「俺は、お前を殺さん・・・。」
「今は・・・ね。この先は分からないじゃない。」
「・・・・・」
「先のことなんて、誰にも分からない。どんな風に、何処に転ぶかも分からないわ・・・・それに、ゼルはいずれ一人旅に出るでしょ?」
「・・・だから?」
「退路を作っておきたかったのよ。」
「退路?」
「そう。」
「・・・・?」
「構想としては至極単純。仮に、あたしが強敵に狙われてるとする。例えば魔族とか。・・・これってあり得ない仮定じゃないわ。あたしにとっては。」
「・・・・で?」
「このままじゃ、ヘタすれば死ぬ羽目になる可能性も高い、っていうような状況で貴方が現れたら?味方ならいいわよ。・・・でも、貴方が敵の手先ではないという証明は全くない。どころか、かえって敵方の走狗、であることも考えられる・・・そうでしょ?」
「・・・・そうだな。」
「高確率の死・・・・それが現実でも、あたしは死にたくない。まだまだ、やりたいことがあるもの。その為には最後まで諦めはしない。・・・しないけど、確実に退路へ至る為の、少しでも高い確率が欲しいのよ。そんな状況下、ゼルが最終的にあたしの側に居るようにすればその確立はぐんと上がる。そして、退く時の戦力にもなる。・・・皆で、確実に生き延びる為の。」
「・・・で、退路=信頼か?」
「そのとおり。一旦信頼したら、その相手を裏切るような性格じゃないもの。ゼルは。」
「・・・・・・・・・だが、俺が手を貸したとしても、どうにもならん事もあるだろう?」
「そのときは・・・仕方がないわ。せいぜい鮮やかに、派手に幕を引くわよ。」
「それに俺も道連れにするつもりか?・・・・可愛い顔をして、なかなか狸だな。」
「お褒めに預かり光栄の至り・・・とでも言うべき?言っとくけど、あたしは、道連れなんて欲しかないわよ。逝く時は一人でいくわ。それとね、ゼルだって十分、狐よ。」
「・・・・・化かし合い・・か?」
「化かし合いなら、楽しめるでしょ?さっきとは違って・・・。」
「つくづく、変わった奴だ・・・」
「・・・あのね。あたしは男じゃないだから、やたら、奴、奴って連呼しないでよ!!」
「男は・・・お前ほど貪婪にはならん。全てにおいてな。」
「それって、男のプライドが足ひっぱってるだけでしょ。」
「かもな。」
「そうよ。結構、男ってロマンティシズムだの、ダンディズムだのに浸りたがるじゃない。」
「・・・・俺も含まれるのか?」
「!呆れた・・・ゼルはモロ、まんまじゃないのよ。そんなこともわかってなかったの?!」
「相変わらず達者な口だな・・・・まあいい。―――もう一つ聞きたいことがある。」
「なによ?」
「俺が・・・『肩肘張ってる』ように見えるんだ?」
「そう見えるんだから仕方ないじゃない。それどころか、疲れ果てた老人にも見える時があるわね。」
「俺がか?大概失礼な奴だな。俺はまだ24だぞ。人を勝手にジジイにするな!」
「仕様がないでしょ。そう見えたんだから。」
「ったく!」
「・・・・・でも、あたしがそう見えたのは、きっとゼルの一番の望みってのに追い立てられてるように感じてるからでしょうね。」
「・・・・・体――か。」
「そっ。そんなに焦らない方がいいんじゃない?いっそのこと、ライフワークにでもした方がいいと思うけど・・・・。」
「お前に何がわかる・・・・・・気軽にそんな事を口にしないで貰いたいものだな。」
「分からないわよ、あたしには。・・・・でも以外。」
「何がだ?」
「こんな勝手なことを言えば、もっと・・・そうよ。もっと感情的になると思ってたのに。でも、今すごく静かだもの。」
「表は・・・静謐でも、奥底で怒り狂っているのかもしれんぞ。」
「そうなの?」
「さてね・・・・・。だが、一つ忠告してやる。いらんことにまで手を出さないほうが身のためだぞ。」
「それ脅し?・・・・・でも、その方がスリルがあるわね。」
「スリル・・・・か。そんなものを追い求めていれば・・・・・遠からず、死ぬかもしれんぞ?」
「かまわないわよ、楽しめればね。」
「じゃあ、なぜ俺を・・・俺の信頼を欲しがる?死のゲームを楽しみたい、などと言う人間に退路など似合わんぞ。」
「わかってないわね、ゼル。死にたくないってのは・・・何度もゲームを楽しむ為の必須条件よ。」
「で、退路―――か?」
「そう、だから。ゼルの信頼が欲しいの。」
「高くつくぞ?」
「高くついても!」
「・・ったく!・・・・・・・・ところでお前、今何歳だ?」
「なによ、急に。」
「いくつだ?答えろ。」
「偉そーに、なによ?!もう18よ!!」
「まだ、18だ。・・・なのに、もう、棺桶に片足突っ込みたいのか・・。」
「すでに、なんどもやってるわよ。別にいいじゃない。あたしが好きでやってるんだから。」
「だが、このままだと・・・・・。」
「ストップ!!ゼルの言いたい事は・・・分かってる。・・・・でもね、それも、スリルの一部だからね。」
「そう言われればそうだな。」
「そうよ!・・・・で?どうなの?あたしの申し出、受けてくれるんでしょう?ゼルガディス=グレイワーズ。・・・だから、今あたしの前に居るんじゃないの?・・・でも、条件次第ってとこでしょうけど。」
「・・・・・本当に強引な奴だ。無理矢理、話題を戻したな。」
「んなこと、どうでもいいのよ!返事は?」
「・・・おまえさんの言った通りだ。条件次第ってな。」
「その条件は?」
「お前に肩入れして、俺にどれほどありがたい見返りがあるのか説明してくれ。それが条件だ。―――出来るならな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうやら、無理のようだな。・・・・それじゃ、俺は部屋に戻るとするか・・・・。」
「待って!あるわよ、見返りは。」
「ほう?どんな?」
「あたしも貴方にあげるわよ。絶対の信頼を。」
「そんなものはいらん。」
「むっ!なによ、天下のリナ=インバースの信頼よ!・・・・・それに、そんな凍る目をしなくてすむようになるはずよ。」
「・・・・・・・凍る目?俺が?」
「そうよ。出会った頃よりかは格段にマシになってるけど・・・。まだ、半分は凍ってる。」
「凍る目か・・・・・・なら、凍えている俺を暖めてくれるとでも?」
「そういうこと!」
「・・・・それは、俺をクドイてるのか?」
「ちっ、違うわよ!!なんでそーなるのよ!!!」
「違うのか?ふむ・・・・・・なら、そうだな。逆に俺が、お前をオトスってのもいいかもしれんな。ひとつチャレンジしてみるか・・・」
「ななななな!ちょっと、ゼル!!んなのにチャレンジするな!あたしは、そんなつもりで言ったんじゃ・・・・えっ?!な、何笑ってんのよ、ゼル!!」
「お前、顔真っ赤だぞ?・・・・・・クッククククッ・・・・・・こういうところはからかいがいのある奴だな。・・・・・しかし、この俺にそこまであーだこーだ言うとは大したもんだ。・・・・・・・・・・・・・・フッ、いいだろう。お前にくれてやる。お前が望むモノをな。どちらにせよ、見透かされた俺の負けだったからな。」
「?何?良く聞こえなかったんだけど・・・・・・・でも、ほんと、カッコつけよね。ゼルって。」
「俺はカッコなんぞつけとらん。」
「十分つけてるわよ。・・・・なんのかんの言っても、ロマンティシズムだのダンディズムだのの塊よ、ゼルは。」
「・・・・・うるさい奴だ・・・・ったく!少しは黙って口説かれたらどうなんだ?」
「えっ?どの辺が口説いてたってのよ?」
「これから、そのつもりだった。だから・・・・・もう、黙ってろ・・・・」
「ちょっ!?・・・・・ゼル!」
―――絡み合う視線。そして蕩ける心。
燎と共に燃え、そして消えた夜。だが、「シン」に、はじまりの・・・夜。―――
あの時から―――
あたし達は、変わった・・・・・・お互い信用した訳ではないが・・・・。
信用できるのは自分だけだと知っているから。
だからこそ、例え一時離れてしまおうと、出会えば変わらぬ信頼を与え合うようになった。
これは、どちらかが死ぬまで、いや、死んだ後も変わる事なく続くのだ。
まさしく、此れこそが―――永遠。
完。(TT)
グハッ・・・・・・・・・。ダメダメだね。
もともと、ちんたら書きするタイプなので、今回はチンタラの部分を削ってみよう!!
そして、なによりラブラブを書くのだ!!!
ってなもんで、意気揚揚と書き、削りまくってみたんですが・・・・撃沈。(TT)
本当は神無月 紗羅様に献上するはずだったです。
が!こんなモノとてもじゃないですが、人様に差し上げられない、人様のHPに掲載させていただけるようなモノじゃない・・・
ということで、献上用に、誠に申し訳無いですが・・・・・また別のブツを手直ししております。ごめんなさいです。紗羅さん。許して。(TT)
もっと、修行致します。精進致します。
だから・・・見捨てないでーーーーー(号泣)
三下管理人 きょん太拝