「なんで俺がこんなことを・・・。」
「本当ですよ。いくら何でもひどいですぅぅ!!」





   『僕            ですかぁぁぁっ!』
      達が何したってん
   『俺            だぁぁぁぁぁっ!』






【恒例行事♪】






絢爛豪華な大広間。
見目良し、味良し、ボリューム満点な料理と酒の数々。
ざわめく人々を綺羅らかに照らし出すシャンデリアが目に眩しい。
そして、広間の中央は広く場所が取られていて、麗しく、また、凛々しく着飾った人々が思い思いにパートナーと踊りに興じていた。
そんな素晴らしくノーブルな空間の一角に、二つの影が縮こまり、肩寄せ合っていた。
見ようによっては、

『熱く燃え盛る友情を確かめ合っている!!』

と、場所柄さえわきまえていれば多少風変わりではあるが、そう取れなくも無い姿。だが、情けなさ1000%な声がそうではないと物語っている。

「なんで・・なんでなんですかぁぁぁ・・・ゼラスさまぁぁぁ(TT)」
「泣かないで下さいよ、ゼロス様ぁ・・・・俺だって、俺だって・・・・ガァァァヴさまぁぁ、ひどひぃぃ・・・(TT)」

二人の男は共に、悲痛な面に滂沱の涙を煌かせていた。
どうやら風変わりな友情の確かめ合いではなく、ひたすら傷を舐め合っているようである。(情けない・・)


「僕は・・ゼラス様のご信任厚い獣神官として陰に影に・・じゃなくて!
 創られてこのかた153年と3ヶ月と22日。
 影に日向にそれはそれは一生懸命、破壊と殺戮と意地悪とお使いに精出してきたんですぅぅぅ、それなのに、それなのにぃぃ・・・(TT)」

「俺も・・ガーヴ様の秘書官として辣腕を振るってきたってのに・・・
 創り出されてこの方123年と8ヶ月と9日。
 暇つぶしの度に、下界巡りのお供や温泉リサーチや美形調達!
 その後にやってくるラルターク老のお小言を滅びる覚悟で身代わりに・・・と、力一杯がんばってきたってのにぃぃぃぃっ!!
 なぜです、なぜなんですかぁぁぁぁっ!!」


黒い神官のローブを纏っていた男は、手にしていたハンカチを目じりに押し当てた。だが、そのハンカチはもう涙でぐっしょりとしている。相当長い間、涙の大洪水と戦っていたようだ。
そろそろ代わりのハンカチがいると誰もが思う頃、すかさず脇からスッと代わりの物が差し出された。

「ゼロス様・・・・・どうぞ、これを。」

それは、真っ白なハンドタオル。
染み一つ無い白さが目に焼き付くほど眩しい。
その白さ故に、隅にちょっぴりの刺繍とのコントラストが目につく。
刺繍は、文字。
文字は、

―― カンヅェル ――

そう読めた。
微妙に歪んだ刺繍から推測するに、お手製だろう。
その刺繍の名は普通に考えると、持ち主――つまり差入れた人物の名だと思われる。

なおかつ、ハンドタオルを差し出した人物の相手への態度、口調からするとどうやら彼は神官よりは格下のようだ。
この人物。刺繍の腕は少々難アリのようだが、これほどまで情けなく涙していても、目上の者へのこの気配りは・・・さすが辣腕秘書官と自画自賛するだけはあるようだ。
うーむ、プロフェッショナル。


黒の神官はタオルに一瞥をくれたのち、涙に溺れた瞳で差入れてくれた(自称)辣腕秘書官を見た。
青い肌と、黒髪。男らしい整った顔立ち。自分の隣で涙している青い魔導師を。

「す・・すみませんねぇ、カンヅェルさん。
 ・・えぐえぐ・・・僕とした事が・・・・
 でも・・でも・・えぐえぐえぐえぐ。」
「・・・でも・・・泣きたくなる、と言いたいのでしょう?
 あんまりにも情けなくて泣けてくる、と。
 そう思われるのはとーぜんですよ、ゼロス様っっ!!」

青い魔導師の言葉に黒の神官はこっくりと頷いた。

―― ボタボタボタボタ・・・・

その反動で黒の神官の顔から滝流れの涙がフロアに降り注ぐ。
だが、神官殿はまだまだ嘆き足りないのだろう、潤んだ瞳をまん○&大開きにして、更に泣いた―――ただ大泣きした。

「そーですよねぇぇぇっっ!!
 貴方だけですよ、僕のキモチをわかってくれるのはぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!
 うっうっうぅううううぅぅぅぅっ!!」
「ぜぇぇぇぇろぉぉぉぉすぅぅぅぅぅぅさぁぁぁぁぁまぁぁぁぁぁっ!!!(TT)」



ぐわしぃぃぃぃぃっっっっ!!!


パワフルな効果音と同時に、黒の神官と青の魔導師は硬く硬く硬〜〜〜〜く、互いを抱きしめあった。
そうして、二人は、滝の涙と鼻水を垂れ流しながら、まだ足りぬとばかりに涙し始めるのだった。
だが、そんな時も長くは続かない。
悲壮感に塗れた二人の上に、お気楽極まりない声が降り注いだからだ。
日の丸の扇子と共に。
その声と扇子に二人の顔色が青→白→ゾンビ色(土気色)へと瞬時に七変化した。その速度は、リトマス試験紙顔負けのスピードである。
この変(顔)色が、神、魔、人に関わらず、現実とは如何に、針の筵より鋭く苦痛に満ちているのかを示していた。


「うぉぉぉおおおいっ!!
 ひぃぃっく・・・おめぇら、さっさとやれよぉぉっ!!
 みぃ〜〜〜んな待ってんだからなぁぁ。
 ヒックッ!!
 主の云う事、無視するつもりかぁぁっ!?
 あぁ〜〜〜〜ん????
 カ〜〜〜ンヅェルゥゥッ!!」

「ガーヴの言う通りよぉ、ゼぇぇロスぅぅぅ♪
 はっやくぅぅぅうんvvv
 舞台照明もバッチリキメてあんのよぉぉぉ!!
 早くしないと・・・・・怒っちゃうわよぉぉんvvv
 ご主人様の・・命令よぉぉぉっ!!」


木霊した―――二人にとって、畏怖と敬慕の象徴たるご主人様の声が。





           ますね・・・。』
『出来上がって
           る・・・・・。』



ご主人様のからの貴い(?)要請に進退極まる二人。
周囲からも『は・や・く』、『ヤ〜レ』だのとダブル・シュプレヒコールが涌き上がり始めている。
だが、最後の抵抗といわんばかりに、二人は抱き合ったまま凝り固まっていた。
涙と鼻水、更に冷汗もミックスさせた流れで顔にゼブラゾーンをつくりながら・・・。



『なぜ?!!!』



数瞬か、はたまた数時間か―――とにかく、二人の硬直状態が解けるまでの時間が過ぎる。



『なんで!?誰がこんな決まり事をぉぉぉっっ!!』



そうして―――二人の雄叫びが上がるのだ。



「「何で、新人は


 『裸踊り』


  なんかしなくちゃならないんですかぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!」」






『第○○回 新人歓迎会♪

 メインイベント!!  

 恒例♪ 
 新人による【裸踊り】(ゼロス&カンヅェル)』





と、頭上にババンッ!と貼られたおめでたい紅白の横断幕がヒラリと二人の雄叫びに震えた――。









★★ おまけ。★★

(出演者 ゼ=獣王ゼラス=メタリオム、ガ=魔竜王ガーヴ、グ=覇王グラウシェラー)

ガ:「あーあー、酒なんぞ口にするから、ひっくりかえるんだぞぉぉ、フィブよー」
ゼ:「ダルフィンなんか瓶ごといくもんだら、すぐダウンするし〜」
グ:「仕方あるまい、なんといってもお子様達だからな。」(それは何か違う!)

ゼ:「ところで・・・前から気になってたんだけど、新人歓迎会の恒例行事って誰の発案だったの、ガーヴ?・・・まさか、貴方?」
ガ:「あぁん?冗談言うなよ、これはなぁ・・・ヒック・・・確か・・・。」
グ:「王だ。」
ゼ:「え゛っ゛!?そーなの?グラウシェラー!!」
ガ:「そーのとーり!考えても見ろ、んな馬鹿馬鹿しいこと思いつく暇人つったらあの糞親父しかいないだろ!」
ゼ:「そーー言われればそうよねぇぇぇ♪ホホホッ」
グ:「暇人糞親父って・・・確かに。ふむ、珍しく意見が合うな、ガーヴ( ̄ー ̄)」
ガ:「だろ?グラウ( ̄ー ̄)」

ガ&ゼ&グ:「アハハハハハハハハッ!!!」


愉快愉快と談笑する魔族3巨頭。
その数秒後。
彼らの真後ろに、おどろおどろしいオーラを纏った赤影がゆらりと立っていたような、いないような・・・。



魔族3巨頭の運命や如何に?!


【完】

 

今回の懺悔室!

おめでとうございます〜〜〜vv
そして、何よりありがとうございますっっ!!
ねこまたさん、見事表裏共々4444ヒットされた貴方様に脱帽です(笑)

ええもう、キリ番とはいえ、ねこまたさんのお宝がなければ彼らのストリップ・・・じゃなくて、ダンスは日の目を見なかったでしょう!!(その方がよかったかも・・・・)

カンヅェル君とゼロス君に代わり御礼申し上げますm(__)m

そ・し・て!!
彼らの裸踊り。
その最高の席(=中央最前列v)は永久にねこまたさんのものです!!


イロボケ大王 拝