お馬鹿劇場
Ver.3


 まるで、全て絡め取られるような感覚がゼルガディスを覆う。一握の恐怖と共に。
 そんなゼルガディスの慄きなぞ気づく事なく、背後の人物は手を休めない。
「・・・っ!!・・リ・・・リ・・ナ、もう、いい・・・・」
「なにいってんのよ、ゼル!まだ・・・始めたばかりじゃないのぉ・・・」
 背後の人物はリナだったようだ。
 だが、普段のリナからは想像もつかない笑みを浮かべている。おそらく、今も続けているゼルガディスへの行為がそうさせているのだろう・・・。
 今まで、優しく撫でるように動かしていたリナの手にいきなり力が篭る、強い力が!
「・・たの・・む・・・もう・・・・っ痛!!」
「ふふっ。あら?そんなにきつかった?ゼル。」
「馬・・鹿野郎・・・あ、あまり激しく・・するな・・・はぁっ・・・」
 謝りもせず、笑うリナ。おそらく、彼に対しての嗜虐心がそうさせるのだろう。魔的な笑みを浮かべるリナにゼルガディスは痛みを堪え、抗議の声を発した。
 すると、体を硬くしているゼルガディスを眺めていたリナが耳元で囁く。嘲うような声音で。
「ゼルは・・ソフトなのがお好みのようね・・・でも・・でもね。・・・あたしはこうしたいのよ!!」
 囁きが終わるか終わらないうちに、リナは更に強く激しく動き出す。
 ――グッ・・グッ・・グッ・・・
「・・・うっ・・や、やめっ・・!っ・・・はぁっ・・」
 リナの容赦のない行為が続く。重ねられる強い、強すぎる刺激・・・。
 すると、ゼルガディスの頬に水滴が流れた。汗なのか・・それとも、涙なのか。
「あら?ゼル、泣いてるの?」
 一時、行為を止めてリナは彼の顔を覗き込む。
「・・・っはあっ・・・そ、そん・・なはずないだろう!?」
「・・・ふーーん。そうなの。もし、泣いてたのなら、ここらへんで止めようかな〜って思ったのに・・・それなら!まだまだ、いけるわよね、ゼル?!!!」
 なぜ、ゼルガディスは気づかなかったのか・・。彼の強情がリナの欲望の炎にとって油であることを。
 だが、時すでに遅し!
「なっ!!・・・んっ!・・や、やめろ!・・・んあっ・・・あああっ!!」
 ゼルガディスは、一際、切ない声をあげた。
「・・・ごめんね。ゼル・・・毛、抜けちゃった・・・」
 謝るリナの声に応えはない。彼は放心状態に陥っている様だ。
 そして、リナはそんな彼をただ、楽しげに眺めていた。彼の毛を手にして・・・


「誰!!!」
 熱い興奮もどこへやら、リナはドアへ、正確にはドアの前の気配に誰何する。


「ああああああーーーーーーんんっ!!!」



 辺りを破壊可能に思わせる絶叫・・いや、泣き声が響き渡る。
 驚いたリナが勢いよくドアを開けると、そこには派手に泣き喚いているアメリアとおろおろと周囲をまわっているガウリイだった。
「・・どうしたの?二人とも・・
 っは!さては、ガウリイなんかやったわね!!」
「!!なに、いってんだ!俺じゃないぞ!これは・・」
 おそらく、ガウリイはリナのせいだと言いたかったのだろう。がその言葉は別のものが引き継いでいた。
「リナさんのせいですぅぅぅぅぅぅぅーーーーー!!!!」
 泣いていたアメリアはとうとう、ぶち切れたようだった。そして、機関銃話法が炸裂する!
「リ、リナさんにどんな秘密があろうと、人様に顔向けできない趣味があろうと、歩く破壊神、ドラマタ、ロバーズ・キラー、頭から足の爪の先まで胃袋でもなんでもかまいませんけど、ゼルガディスさんを引き込まないで下さい!!変態にしないでください!!!!」
「だれが、変態か!!?」
「んなっ!!?なぁぁんですってーーー!!アメリア、どういうことよ!」
 いつの間にやら、やって来たゼルガディスとリナの声が響く。
 アメリアは、泣きながらも己の憤慨を二人、――正確には一人だが――に、言い募る。
「だって、今、二人、部屋の中で・・・」
「ゼルの髪をとかしていたのよ!!!!」
 リナが、アメリアの言葉を強引に遮る。
「・・・はっ???か・・み・・・」
 アメリアはリナの言葉に思考回路が完全にシャットアウトされたようだ。
「そうよ!ゼルが、いつも髪をちゃんととかすって言ってたのよ。前からやりたくて仕方なかったのよねぇぇ。それが、今日やっと念願かなったっていうか・・・」
 リナが、嬉しそうに口を開く。しかしながら、そのとかしてもらっていた・・・もとい!とかされていたゼルガディスは憤懣やるかた無しといった風情である。
「・・・何が髪をとかす、だ?!あれは引っこ抜くっていうんだ!」
「なんですって、ゼル!!このリナ・インバースに髪とかしてもらっておいて、その言い草!!大体、針金のくせして絡まる方かどうかしてんじゃないのよ!!」
「ふざけるな!!俺は最初からしてくれなんて頼んだ覚えなぞ無い!それをお前が無理やり・・・・あまつさえ、雑草みたいにプチプチプチプチ引っこ抜きやがって!!」
「・・・っ!!・・そっ、それは・・・・でも、ちょっぴしだけじゃない!!」
「・・・・・これが・・・この状態でもそういえるのか?」
 エキサイトしていたはずのゼルガディスの声におどろおどろしい危険なものが混じっていた。
「・・・・えっと・・ゼル?その・・あの・・・これは・・
 そっ、そうよ!!
 このブラシのせいよ、なんたって変な名前だもん!『くるくるかーるン 〜これで君もさらさらストレート〜』なんて・・・」
 リナの言い訳は続けられている。今もなお。
 そして・・・ゼルガディスの無差別級報復措置のゴングが鳴り響きいたのだった・・・。


 この後、約3ヶ月の長きにわたり、レゾの狂戦士、魔剣士ゼルガディスの頭部に複数の10円禿が燦然と輝くこととなる。
 更に、彼の人の人間不審についてだが・・・飛躍的に拍車が掛かってしまったことも言わずもがな・・である。



完。




閑話休題
 今回も例に漏れず、解説させていただきたく存ずる。
 以前より筆者には一つ疑問が念頭ござった。其れは、ゼルの髪の毛について、で御座る。
 どういうことかと申し上げると―――
 彼の人の頭髪は針金、つまり金属で構成されているのは周知の事実、更に、金属と言うものは、硬いもの。故に、衝撃を受けたる時は、その後が生々しく残り、元通りに修復することは容易くないこともご理解いただけることと存ずる。
 其の様に、厄介極まりないもので出来ていおるにも関わらず、常にサラサラストレートをキープ成し得ているのは如何なることで御座ろう哉?また、如何様な手管を使役した結果であるのか?という、愚かしい疑念から、今回のような仕儀に相成ったので御座る。
 其れ故に、彼の人の髪は形状記憶合金製か、はたまた、空想科学小説なるものに記述されておると聞き及ぶ、生体合金などという怪しげな舶来品で出来ていたりするのであろうか・・・などと妙な考えにも至ったので御座るが・・・
 さりながら、なによりも、某の愚昧なる妄想が勝ち申した結果が、例のブツを生み出す原動力となったことは厳然たる事実、と認識せざるを得ないので御座る。
 その例のブツ・・・・
 此れもやはり、件の賢者、赤法師レゾの手によるものとして―――どんな毛髪をもストレートヘアにしてしまう脅威の魔道器で御座る。
 おそらく、遥か以前、彼の人のえも言われぬヘアースタイルをレゾ殿が見るに見かねて開発したものと拝察したので御座るが、果たして、真実は開発者本人にしか解らぬことで御座るな・・。
 なにやら、長い解説になり、申し訳ない。
 それでは、某は此れにて御免。


・・・・・・・・・。
本当に私はスレイヤーズFANだったのか?
何年も前のモノとはいえ、若気の至りで書いたものでも・・・あまりにヒドイ・・
ゼルファンに・・・ゼルリナファンに殺される・・・もう、自分のモノはUPしないほうがいいのかもしれない・・・

さつきちゃんが・・・ゼルファンの貴女が喜んでくれなかったら、とてもじゃないけどUPする勇気がなかったですよ。ハイ。
ありがとうです。ちょっと安心した・・・ふぅっ!
で、今回のはいつも素敵なゼルを見せてくれるさつきちゃんへ捧げます。

三下管理人 きょん太拝