お馬鹿劇場
Ver.10


「リナさん・・・どうです、イイですか?」

 普段ののほほんとした雰囲気は抜け落ち、真剣そのものの声が響く。

「あっ・・・・・いやっ、ゼロス!もっとそっと・・・そっとよ・・・・」

 リナの声。
 甘える猫を思わせるようなその声に、ゼロスは体から力が抜けていくような感覚に陥る。そんな感覚など彼には持ち得るはずがないのに。でもそう感じてしまうのであるから、不思議である。
 その酩酊感にも似た感覚を楽しみながら、リナの期待に答えようとする。

「わかってます。リナさんのここ。小さいですからねぇ・・・・・。」
「もう・・・ゼロスの馬鹿。好きで狭いんじゃないわよ・・・。」

 リナの囁くような応えが返ってくる。先程よりも、もっともっと甘い声。
 ゼロスはリナの様子を瞳の端で捉えると、満足したかのように笑みを浮かべていた。そして、ツィッと細く長い指を伸ばし、優しく優しくリナの小さな窪みなぞり始めたのだ。

「あ・・・ゼロス・・・。」
「可愛いですよ、リナさん。本当に。・・・入口も、奥もこんなに小さいとは、思いもしませんでしたよ。」
「ね、ねえ・・・・お願い・・・早くして・・・・・ハメて・・・・奥まで。」

 リナはゼロスの行為の所為か、早くもしきりに哀願を始めた。その瞳には切ないが、熱いモノが宿っている。
 その熱に惹かれるかのように、ゼロスの声にも粘つくようなものが混じり始める。

「・・・いいですよ。リナさんのお願いなら・・・・僕はなんでも聞いてあげますよ。」
「あぁ・・・・嬉しい・・・ゼロスぅ!」
「でも、リナさんのココ。このままでは・・・・・。」

―――――ツプッ・・・・・

 ゼロスは窪みをずっとなぞっていたのだが、不意に指先でリナの小さな窪みを突いた。とたんにリナの甲高い声が上がる。

「ああっ!だ、だめよぅ、そんなことしちゃ、壊れちゃうぅ!!」
「クスクスクス・・・・おやおや。リナさんでもそんな物言いをされるんですねぇ。」
「もぅ、ゼロスの意地悪!・・・・だって、だって・・この間も同じようなコトして裂けたじゃない!!あたし痛いのイヤなの!!」
「・・・この間はすみませんでした。僕も少し力が入りすぎたようで。・・でも、今日は大丈夫ですよ♪」

 なにやら、妙に楽しげな様子のゼロスが空いた手を一振りすると・・・・そこには、1本のチューブが現れたのだ。そして、そのチューブをリナの顔前に突きつけながらも、ニコニコ笑顔が絶える事は無かった。

「これです。これをリナさんのココにタップリと・・・♪」
「ちょ・・ちょっと!!」

 リナの制止など聞く耳持たず、ゼロスはチューブを握り力を込める。するとチューブから蜂蜜を思わせる透明な液体が滴り始めた。―――滴る先には、リナの小さな窪みが・・・。

―――――ポタッ・・・・ポタポタポタ・・・・・

 つい今しがたまだ、空だった窪みには大量の粘つく液が溢れかえっている。すでに窪みには納まりきらない分が流れ出していた程に。

「ああーーんっ!!そんなっ・・・そんなにしちゃだめぇぇぇ!!」

 あまりの状態に驚いたのか、リナが抗議がゼロスを止めた。ゼロスは今初めて気がついたかのように、大洪水となったモノを見やる。しかし、その面には満面の笑みが貼りついていた。

「これだけタップリかければ大丈夫ですよ、リナさん。すぐにハメてあげますよ・・・・・望み通り奥まで♪」
「ダメよぉ、ゼロス。このままじゃ多すぎてすぐに抜けちゃう!!」
「大丈夫ですよ。一気に奥まで押し込んで、コレを拭えば。」
「でもでも・・・」

 ゼロスはリナを安心させるかのようにいつも通りのニコニコ顔を見せた。しかし、当のリナは不安が残っているようだ。それは彼女の瞳に、表情にありありと浮かんでいた。
 ゼロスはそんなリナを楽しげに見ていたかと思うと、その一瞬後には今までにない真剣な眼差しで狭い窪みを見つめる。リナはリナで今から始まる行為を固唾を飲んで待っていた。
 緊迫した空気が漂い始めていた。
 そして―――不意に、ゼロスが動き、奥に埋没させていた。まさしく電光石火の早業だった。

―――ヅブッ・・・・・・。

「ああっ!!!」

 粘つく音と同時にリナの声が上がった。
 すでに窪みに・・・いや、洪水の中にゼロスの指があった。そして、ゆっくりと指をクネクネと人には不可能な動きで蠢かしはじめたのだ。

「あ・・・・あぁ・・・・・あ・・・・ゼロス・・・・・ああっ!そこそこっ、そこよぉっ!!!」

 どうやら、リナのお気に召すところに行き当たったようである。その甲高い声を耳にするや否や、ゼロスは動きを止めた。その額からはあり得るはずのない汗が光っていた。

「ふぅ・・・・う・・・上手くイったようですね。リナさん・・・。」

 リナの応えはなかった。だが、その上気した頬が今を物語っていた。
 そうして、二人は暫し見つめあった後、今だ、ゼロスの指が捉えたままの窪みへと視線を移す。

「・・嬉しい・・・ゼロス。これで・・・ようやく、ようやく・・・・。」
「そうですよ、リナさん。ようやく・・・後は、ココを綺麗にしましょうね♪ちょっとかけすぎましたから。」
「もう、ヌルヌルよぉ、馬鹿・・・だから、そんなにしないでっていったのよ。」

 言葉とおり、うっとりしているリナを眺めながら、ゼロスは空いた手で窪みに纏わり付く液を拭い始めた・・・・。



ドガンッ!!!



「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああっっっっっっ!!!」


 いきなり起こる破壊音。あーーんど野獣の雄叫び!!!
 そのいきなりの闖入者は???
 水母の剣士、ガウリイ=ガブリエフ!!!

「リッ、リリリリリ、リナ!
 お前、わかってるのか?!
 そいつは魔族だぞ。空飛ぶ生ゴミ、有機肥料にさえなれない人畜有害な生ゴミ魔族なんだぞ!!・・・・・そ、そんな、そんなのと・・・・・。
 可愛さ余って憎さ百倍!許さん!断じて揺るしはせん!
 だが、何より許せんのは・・・・・貴様だ!!!
 昼日中から俺の女(になる予定だった)、リナに手を出すとは!
 ゼロス!!今すぐ、剣の錆にしてくれる!!!覚悟するんだな!」

 光よりも早くガウリイの手に握られるブラスト・ソード!!
 その刀身がギラリと光った!!!
 その次ぎの瞬間、ゼロスの間合いに入る、かと思われたその時!


「あのさぁ・・・・アミュレットの宝石くっつけてもらうのって・・・・昼はダメなの?」
「あのですね。アミュレットの修理ってそんな罪になりましたっけ?」


 あくまで・・・・あくまでノホホンなゼロスとリナのダブル・インパクトなメンタル・ブローはさしもの水母剣士の精神を干上がらせてしまったようだ。
 二人の前には、打ち上げられた水母のように崩折れる希代の剣士の残骸が漂っていた。



「ねえねえ、ゼロス。ところでこれほんとーにちゃんとくっついてるんでしょーね!」
「当然ですよ!!これはですね、ルビーアイ様が『あの方』よりの下されモノを有難くも僕の上司ゼラス様に下された非常に有難い一品ですよ!!」
「〜〜〜〜〜でもねぇ・・・・そんな事聞くと余計心配になるじゃない・・・」

 リナの表情には不安をベースに、疑心という白粉が塗りたくられている。
 そんなリナをゼロスはおおいに不満だったのだろう、ニコちゃん顔を歪めている。

「どうしてです!!
 僕が・・・僕が、存在(命)がけで、渋りまくるゼラス様におねだりしまくって持ってきたこれの効力を疑うんですか!!
 僕の・・僕のこの海より深いリナさんへの愛(?!)を信じてくれないんですか?!!」
「ゼロス・・・・・貴方の気持ちはすごく嬉しいわ。
 けど!この間も修理に失敗したしっ!!!!」

 悲鳴のような声でリナに問うゼロスと、喜びと切なさに彩られたリナ。
 そのリナの目前にはゼロスが突きつけるチューブがあった。そのチューブには・・・・。

【超絶強力瞬間接着剤、『デモンアルファ!!』―――ドラゴンでも地面に貼り付け可能!!想像を絶する効果!!これで割れ物なんて怖くない!!】

 などと妖しい事この上ないキャッチ・コピーが書かれている。それ故にリナの疑心も仕方のないことだった。

「そっれっにっ!!!!じゃあ、どうして今になっても固まらないのよ。この接着剤!!!」
「・・・・・・・・・・・・。」

 リナがビシッとアミュレットを指差した。
 その指の先には・・・小さなアミュレットのこれまた、小さな窪み。ソコには今もまだ、ぬるぬるとした接着剤が塗布されていた・・・・。

「ねえ。どーゆーことよ!」
「あ・・あは・・・あははははははは・・・・。くっついてませんねぇ・・・・ど、どーゆーことでしょーねー?」

 ゼロスは滝のように汗を流しながら、アミュレットを手に取る。すると!



―――ポロッッ!



 転がり落ちた。くっついていたはずの宝石が。そして、辺りを空白が埋めていくのだった・・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 空白の刻限はいずれ終わりを告げる。その後には・・・・灼熱の魔力が吹き荒れるのだった。

「・・・・・・・・こ・・こぉんの、おまぬけ魔族!!!
 食らえ、ブラム・ブレイザー!
 ドラグ・スレイーーブッ!!!
 最終奥義、ラグナ・ブレードッッッッ!!!」
「ひえっ!うわわわっ!!や、止めて下さいよゥ、リィ〜〜ナァ〜〜さぁぁぁぁぁあん!お許しをぉぉぉ!!!」
「☆△○!!!」
「!!!!(TT)」 


 稀に見るマジック・ストームは局地的に絶大なる被害をもたらしつづけた。
 その局地的被災地の傍らには、爆風に翻弄される水母の干物と、壊れたままのアミュレットが大勢の蟻さんにたかられていた・・・。




【群狼の島、獣王宮内、玉座の間】

「くすくすくすくす・・・クククククク・・・・。」
 きらびやかな玉座の間に1人の女性がいた。
 その艶かしい唇からはこれまた、麗しい笑い声が漏れている。
 目前には今もなお、大騒ぎをしているゼロスとリナの姿が大写しにされており・・・・・・。

「どうやら、予想通りね。(はぁと)」

 その人物は手の中に視線を落とす。そこには・・・・・ゼロスが持っていたチューブと同じモノがあった。

「しかし・・・ゼロスもまだまだ甘いわ。この私が早々簡単にこれを渡すと思ったのかしらねぇ。クスクス。
 ほんと『水あめ』の方を渡すだけでこれだけ面白いモノを見物できるなんて(はぁと)」

 今まで満面の笑みを浮かべていたが、ふと、女性は残念そうな面持ちに変わった。

「あぁ、こんなことならS様のところで見物すればよかったかしら?このところ退屈されていたようだし・・・まあいいわ。
 !そうだわ、今度はカタートで見物しましょう!!
 その時は、お菓子をいっぱい持ってって、それから、ダイナストやダルフィンも呼びましょう!!」

 そうして、麗しの女王様はにっこりと、とても魅力的な微笑を浮かべられたのでした。


完!(改稿 2007.2.15)


 ・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 ふふふふふ・・・・・。
 今回は・・・堂々のリクエストです。
 しかし、何ゆえ?こんなゼロリナファンを敵に回すようなの書いて明日から生きていけるのだろーか?
 つくづく私、ギャグしかダメなんだと痛感しております。
 ・・・・・いや!ここであきらめてはいかん!
 燃えろ根性!
 目指すはラブラブの星!!!
 これっすね。

 で、今回は、目出度くも、4444番をゲットいただきました、ねこまた様よりのリクエストでごさいました。
 謹んで献上させていただきます。
 (でも、すでにリクupする前から『お礼』なるお宝をいただいていたりして・・(死))

三下管理人 きょん太拝