非常にさわやかな日である。
燦々と陽光が降注ぎ、空には小鳥が囀っている。典型的な昼の光景であった。
だが、ここには激しく鋭いモノが権力を振りかざしていたのだ。
そう、それは―――。
―――ビシッ!――――――「ああっ・・」
―――ビシッ!!―――――「ああぁぁぁ!・・・イイわぁ、でも別のトコもぉぉ!!」
―――ビシィッッッ!!―――「ああぁぁぁぁぁぁんっっ!!も、もっとぉぉぉぉっっ!!」
鋭い打撃音と女の声が響き渡っていた。よくよく見れば、二つの影が蠢いている。
「どうですか?リナさん。具合・・・・イイでしょう?」
どうやら、リナとゼロスの二人のようだ。二人の周囲には怪しげな霞みが薄く漂っている。
「ああぁぁ・・・・・ダメンv、もっとぉぉ。」
リナの表情には恍惚が浮かんでいる。鋭い鞭打がそうさせているのだ。その目にはもう大粒の涙が浮かんでいると言うのに、さらにゼロスへおねだりをしている。
―――バシッ!・・・・ビシビシッッッ!
ゼロスはそんなリナを楽しそうに一瞥すると、手に持った細く長い棒を撓らせた。とたん、沸き上がる打撃音とリナの声。
「ああああっ・・・・・ゼロスぅ、もっと、もっとしてぇぇぇぇ!!」
リナの目に溜まっていた涙はすでに流れた後だった。頬にはその後がくっきりと残っている。
だというのに、リナはまだ満足しないのか、ただひたすら振り下ろされる棒を待ちうけているようだ。
さしものゼロスもリナの貧欲さに呆れた口調になっている。
「おやおや。さっきからこんなになるまでヤっているのに、まだ足りないんですか?」
ゼロスは手のモノでリナのモノを軽くつついている。
「足りないわよぉ。そんな小手先のテクニックなんて・・・・・・ねぇ、お願い、もっと激しくして!」
リナは体を身悶えさせている。振り下ろされる棒だけを見ていたのだろう。
ゼロスはやれやれと溜息をついたが次の瞬間に、目にもとまらぬ早さで棒を打ちつけていた。何度も何度も。
―――ビシッ!ビシッ!バシッ!バチィィッ!!
「あ・・・あ・・・ああっっっ!イイ・・・・イイわよぅ、ゼロスぅぅ!!」
嵐のように降注ぐ棒にリナはいつもとはまったく違う声音で答えている。周囲は二人の熱気に染まり、妖しくけぶる空気が更に濃くなっているようだ。
「い、いかがです?リナさん。今のは?」
激しい行為に僅かながら息が上がっているのか、ゼロスの声もかすれていた。
しかし、そんなゼロスの激しい行為でさえ満足できなかったのだろうか。リナの瞳は今だに不満の色が浮かんでいた。ゼロスはそんなリナの瞳の色に気がついてはいない。
ゼロスが軽く溜息をついた瞬間、不意にゼロスの手にあった細身の棒が横手から奪い取られていた。リナだった。てっきり満足しまって声もでないのだと思いこんでいたのだが。
だが、現実のリナは棒を手に、先ほどまでのじらされたコトへの不満とはまた別の欲望を、瞳に浮かべていた。
「な、何をする気ですか・・・・・リナさん?」
珍しくもゼロスがうろたえていた。
そんな様子を楽しげに見ていたリナにんまりと笑みを浮かべていた。いや、獲物を見つけた猛禽のようと言っても過言ではなかった。そのリナの瞳がぬらりと濡れ光る。
「知ってた?・・・・・あたしねぇ、ゼロス。あんな程度じゃ我慢できないのよ。もっと、そうよ・・・これくらいはヤってくれないと!!」
そして、リナの腕がゆっくりと振り上げられた。と次の瞬間にはゼロスの行為など問題にもならないほど熱く激しい殴打がはじめられたのだ。
―――ビシッ・・・・バシィッッ・・・・
ビシッ・・・ビシッ・・・・
バチッ・・ビシッ・・ビシッ!!
「ああっ!リ、リナさん・・・・そ、そんな・・・・ああっ!い、いけませんね、そんなにするなんて。」
ゼロスはリナのあまりの激しい行為に、半ば恍惚とした表情を浮かべている。ただその場で身動きさえ出来ずにいた。一連の殴打がゼロスを圧倒していたのだ。
「どお、ゼロス?あたしのテクニックは?!」
「ああ・・・・凄いです・・・・僕なんかよりずっと・・・・・。」
「うふふふ・・・わかったでしょ?あたし、これくらいヤらないと満足できないの・・・。」
と、言葉を切るリナ。
だがすぐに、その細腕がまたもゆっくり、ゆっくりと振り上げられていく。その愛らしい唇からはくぐもった笑い声が漏れつづけていた。そんなリナを目の当たりにしたゼロスの瞳には・・・魔族にあるまじき、怯えの色が浮かんでいた。
「リ、リリ、リナさん・・・・まさか、まだ・・・・・?」
「・・・そうよ、ゼロス。まだまだこれこれからじゃないの・・・・・」
赤い唇をベロリと舐め上げる。ただそれだけの行為でリナの妖しい色気ともいえるものが倍増していた。
そのリナの濡れ光る唇からくぐもった笑い声が響く。そして、また撓る棒が振り下ろされようとした。
『くすくすくす・・・・まだまだ甘いわねぇ、その程度のテクニックで。そんなことだから、大平原の小さな胸って言われるのよ、リナ=インバース。』
熱い行為に没頭していた二人が声の元へと視線を移すとそこには・・・。
「ゼッ、ゼラス様!どうしてここに?!」
「んなっ!!ゼラスって・・・獣王?!!」
二人が驚愕に襲われているのを当の獣王は嫣然たる笑みを浮かべて見ている。驚きのあまり、さしものリナも胸の事を指摘された事を忘れているようだ。
『ゼロスがどうしてるか、様子を見に来たら・・・・・こぉぉぉんなことをしてるな・ん・て(はぁと)・・・いけない子達ねぇ・・。』
獣王の麗しの顔は笑みに包まれてはいるがその瞳は・・・・剣呑な欲望に覆われている。
いまだに振り上げたまま固まっているリナに近づくと、その手に握られていたモノを取り上げた。そうして、今まで以上に笑みを深くする。
『ほんと、楽しそうねえ。ゼロス?主をほったらかしてこんなことしてるなんて・・。』
ゼラスの棘のある言葉に、ゼロスの顔面が瞬時に蒼白になっていた。
「じゅ・・・・獣王様・・・・・・?」
『でもねぇ。貴方達。そんな程度じゃまだまだよ。本当のテクニックがどんなものか、味あわせてあ・げ・る(はぁと)』
撓る棒を空いた手にペシペシと打ちつけながらウインクをするゼラス。大抵の男なら一撃ノックダウンな妖艶さである。が、ゼロスとリナにとってはそうではなかった。それはそれは、そら恐ろしいものに見えたようだ。
ゼラスの言葉にゼロスとリナ二人の驚愕が慄きへと変化した時、ゼラスの白い腕が縦横無尽に舞った。
―――ビシッ!
ビシッ、ビシッ!
ビシッ、ビシッ、ビシッ!
ビシッ、ビシッ、ビシッ、ビシッ!
「ああああっ!ゼ、ゼラス様ぁぁぁあ!!」
「だ、だめよう・・・そんな、そんなにしないで!!ああっ!!」
『うふふふふ・・・・いいわね。その顔、声。ナニよりその負の香り♪あぁぁ・・・・たまらないわ。』
ゼラスの恍惚とした表情がすべてを物語っている。今の享楽の全てを。
―――ビシッ!ビシッ!バシバシバシバシッッ!!・・・・・・ビリッっ!!
だが、とうとう鞭打とはまた別の種類の音が響いた。ゼラスの足元には薄布の切れ端が落ちている。
どうやら、ゼラスの殴打がとうとう、布を引き裂いていたようである。裂けた布の間からは白く柔らかなものがチラチラと見え隠れしていた。
『あらあら、破れたわ。仕方ないわねぇ・・・いっそのこと全部剥がして丸裸にしてしまおうかしら♪』
中途半端な裂け目がゼラスの欲望に火をつけてしまったようだ。
ゼラスの言葉を耳に入れるなり、瞬時にゼロスとリナは冷汗を垂らす。
「お、おお、お願いですから、ゼラス様もう止めてくださいっっ!!」
「あああ・・・・・・・破くなんて・・・・。」
二人諸共にその身をうち震わせている。
そうして、ゼラスは2人の身悶え様にいたく満足げに微笑んだが、それでもその手を止めることなく、その後もただひたすらに打ち据え続けた。
「ああ・・・ゼラス様・・・・・もう・・・・おゆるしくださ・・・・・。」
「お・・・・・おねが・・・・・・もう・・・・・やめてぇ!だめぇぇ・・・。」
鋭い打撃音が響く度、千切れ飛ぶ布切れが周囲に散乱していった。
ついに、ゼロスとリナ二人共々にもう、声もなくただ涙を流すだけとなった時。ゼラスが最後の仕上げとばかりに、勢いよく腕を振り上げた。
その時!!
『まぁぁてぇぇぇいっっっっ!!』
不意に響き渡る野太い男の声!!
『なんか・・・・・どこかで聞いたような声ね・・・・・。』
腕を高々と振り上げたままゼラスが振り向くと、そこには、燃えるような赤毛をなびかせた魔竜王の姿!!
「おい、ゼラス!!
なんだってこんなとこまで出張って女王様よろしくSMごっこしてやがんだ。
以前からその気があるんじゃねぇかとは思ってたが・・・まさか、おおっぴらにやりだすとはな。ったく、お前って奴は・・・・。
SMごっこなら、Sのくそったれやダイナスト、フィブリゾの陰険野郎どもで十分だろーがっっ!!ダルフィン相手でも面白れぇだろーが・・・・い、いや、そうじゃねぇ!!
よーは、ゼロスなんざどーでもいいが、俺のお気に入りの女に手ぇ出すんじゃねぇっっっ!!」
呆気にとられた3人はガーヴの怒声を呆然と聞いていたが、しばしの間を置いてからゼラスの顔に青筋が浮き出し、その白い肩をかすかに震わせ始めた。
しかし、そんなゼラスに気づくことなどなく、ガーヴの遠慮のない追い討ちがはじまる。
「いいか!!もしそれ以上、その女に手ぇ出そーってんなら、2度と妙な気起こせねぇようにしてやるから、覚悟するんだな。ゼラスよ!!!」
―――チャキッ!!!
ガーヴは長大な愛剣をすらりと放ち、切っ先をゼラスに向ける。次の瞬間には、鍛え上げられた剣技が冴え渡るっ!!と思われたのだが・・・・・。
『あのねぇ、干してる布団ハタくのって・・・女王様・・・SMごっこって言うの?』
―――ぴしぃっっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(沈黙)
ゼラスの低くおどろおどろし〜〜〜い声が現実をしらしめた。
見れば、ガーヴの挙動が止まっている。恐ろしい沈黙が辺りを支配していた。
嵐の前の静けさが周囲を席巻していたのだ。その静けさの水面下では、『だぶる・くぃーんず・もぉぉど』がひそやかに胎動を始めていた!
そう、この後の地獄を顕現する為に。
(これより、各現場より2次元実況生中継とさせていただきます。)
まずは、左の《ゼラス女王様地獄》方面。
相対するは腹心のお二人。
先ほどからずっと、ガーヴはその場に剣を構えたまま、器用にも冷汗をタラーリタラリと流している。
硬直したのは体だけなところはさすが元腹心の意地と矜持と言えよう。だが、その表情は恐怖に汚染されている。魔族であるはずが、いや、それ故にこの後に吹き荒れる恐怖を想像してのことだったのかしれぬ。
だが、そんなガーヴのことなどお構いなしに、ゼラス様のご尊顔に貼りついた青筋はさらーにクッキリと浮かび上がっていくのだ!
「す、すまねぇ!
俺の勘違いだったみてぇだな・・・だ、誰にでも間違いってのはあるもんだ。
ぢゃ、俺は他にも用があるから。ま、そーゆーことで!!達者でな、ゼラス!」
大柄な体に不似合い・・・いや、笑えるほどコソコソと空間を渡ろうとするガーヴ。
だが、
『ふふふ・・ほほほほほほほっ!
お・ま・ち。
くぅぉぉぉぉぉら、ガーヴゥゥゥッ!!
この妾にあれだけ言いたい放題言って只で済むとでも?!』
すかさずゼラスがガーヴの右肩を掴んで引きとめていた。その麗しの顔は、般若となっている。ガーヴの全身にドッと汗が噴出していた。
「だ、だだ、だから、誤ってんじゃねぇか。そそ、それに・・・勘違いしただけだろーが。」
もう、すでにガーヴはオヨビゴシである。しかし、極僅かでも女王様(笑)もとい、ゼラスの怒りを解こうと、卑屈にも詫びを入れている。
『第一、だーれーが、女王様ごっこですって!!?
失礼ね、私はもともと女『王』よ!!
それに、私がこんなとこにまで、暇つぶしに出てくるはめになったのは誰のせーだと思ってるのよ!!
貴方が離反なんかして帰ってこないからじゃないのっ!
いえ、それよりも聞き捨てならないこと言ってたわねぇぇ・・・お気に入りの女って何よ!!?(激怒モード発動!!)・・・・・・・まさか・・・あのちんちくりんじゃないでしょぉぉぉぉねぇぇぇぇぇぇ?!!』
ゼラスはふかーく、くっきりと青筋を立ててリナを指差している。
「うっ・・・・そ、そそ、それは・・・・・」
嘘だろうと違うと言えばいいものを、とたんに言葉に詰るガーヴ。この態度がこの後のガーヴの運命を決定していた。
瞬時にゼラスの瞳が猛悪に染まる!布団叩きを手に。
『うふふふふ・・・・そう・・
目の前にすぺしゃる・ぐれぇと・だいなまいつ・ばでぃの美女がいるってのに・・・他のお気に入りの女・・・女?!!!
そ、それもあんな・・・あれが、あのちんくしゃが?
あんなんだったら、まだ、ダルフィンの名前が出てくる方がずっとマシよ!!
離反にかこつけてホントは女漁りが理由だったんでしょ!?
がぁぁぁぁぁぁぁう゛っ!!(にっこり)。許さないから(はぁと)』
「どわぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!」
で、右の《リナ女王様地獄》方面担当。
相対するはパシリ魔族とドラマタクィーン。
二人はずたぼろのお布団の前で呆然と突っ立っていた。
「ああぁぁぁぁぁ・・・・・・あたしの・・・・あたしのお布団がぁぁぁぁ・・・・・あんなに周囲が霞むくらい、涙が止まらないくらい埃まみれになってまで叩いたのに・・・・・途中までベリーグーな感触だったのに・・・・・ふかふかのあたしのお布団さんがぁ・・・・・。」
珍しくもリナが大粒の涙を浮かべている。
見れば先ほどまで張り倒されていた布団が破け中から真白の綿があちらこちらとはみ出している。
涙を浮かべるリナをゼロスはそっと抱き寄せ、優しく囁いた。
「リナさん、すみません。ゼラス様が無茶をした所為で・・・・・・・。」
「ゼロス・・・・・」
リナの肩が震えていた。泣いているのだろうか?
ゼロスはそんなリナが愛しくて更に抱きしめる腕に力を込める。だが、魔族のゼロスは感じ取るのを忘れていた。リナの怒りと嘆きの違いを!
「そう・・・・・・・分かってくれるのね、ゼロス。あたしの気持ちを・・・・・それじゃあ、あたしの怒りもわかってくれるわよねっっっ(怒)!!」
「・・・えっ?い、怒りって・・・・リナさん?」
ゆっくりとゼロスを振り仰ぐリナ。だが、その表情は凶刃の色で染まりきっていた。
「リ、リリリ、リリリ・・・・リナ・・・さん?・・・あの・・・言っておきますけど・・・破いたのは、僕じゃなくて、ゼ、ゼゼゼ、ゼラス様ですよぅぅぅぅ(TT)」
ゼロスの声はもう、リナには届いてはいないようだった。
その証拠に、リナは地獄の女王もかくやと言わんばかりの声を発していた。ゼロスはその変貌にただただ恐怖していた。額に冷汗が浮かび始める。
「ゼーローーース♪あたしのお布団・・・・かわいそーだと思うでしょ?」
ゼロスはリナの視線に操られるように首振り人形の如くひたすら懸命に首を縦に振りまくる。
そして思い知らさせるのだ。
己が身の危険度を。
それはボコられてよれよれのウルトラマンのカラータイマーのように鳴り響く、己の本能の早鐘が教えてくれていた。
「ふふふふふふふふ・・・あたしのお布団さんが、あたしのお布団さんが・・・。
それに何?
大草原の小さな胸?!
あたしがちんちくりんですって?(激烈怒りモード起動!)
ねーえぇぇぇぇ、ゼロスぅ。魔族って、主の尻拭いは部下の務めよねぇぇぇぇぇぇ?!!
あたしのキモチ・・・わかってくれるって言ったわよねっ。言ったでしょう?言ったのよ!!!ってことだから♪
ぜぇぇぇぇろぉぉぉぉぉすぅぅぅぅぅっ(にここに)。うふふ。可愛がってあ・げ・るっ(はぁと)」
「うわわわぁぁぁああああんっっ!!!」
そうして、だぶる・くぃーんず・ついすたぁが、哀れなるかな、スケープ・ゴート達を襲ったのだった。(合掌)
後にはただ、真白の綿を撒き散らす、見るも無残なお布団さんが爆風に揺れていた。
(2次元実況生中継は現場の危険度が急上昇した為、急遽、終了させていただきます。悪しからずご了承下さい。)
完!!
おまけ。
後日、群狼の島にある獣王宮では、獣王様専用の赤い髪をした大柄の『下僕』が。
そして、我らがリナちんの傍には黒髪おかっぱニコ目の『下僕』が。
暫しの間、滂沱の涙と悲嘆に暮れつつ、それぞれの主へご奉仕にいそしんでいたと言う。
(改稿 2007.2.15)
今回の懺悔室。
ふぃぃぃぃぃぃぃぃ。
うーーむ。
是の一体どのへんがお馬鹿版超絶悶死級エロエロ脳味噌融解ばーぢょんなのか・・・・・。
すみません、すみませんねこまたさん(TT)あうぅぅうう。
なんか妙なお二人も参加させるわ、もう訳わからん状態。
次回だ!!次回こそ!!!
とかいいつつ、単なる助平になったりして・・・・(大馬鹿)
三下管理人 きょん太拝