お馬鹿劇場
Ver.14



 ここは・・・シックな内装だが、よく見ればバッチリ金がかけられていることが分かる室内である。そんじょそこらの安宿なんぞではないことだけははっきりしていた。
 まだ、室内が明るいところを見ると昼下がりといったところだろうか。その部屋の大きな窓からは高く澄んだ秋の空の広がりを目にする事ができたのだから。良い秋晴れのようである。
 これからはじまるある一コマは・・・・・そんな爽やかな秋晴れのある日の出来事である。



 ・・・・・なんぞという堅っ苦しい前置きはさておき、問題の室内へ戻ってみよう!
 よくよく見れば、部屋の一角から二つの気配が蠢いていた・・・・。

「あっ・・・・・・いや・・・・・やめて・・・・。」
「だめよ!飲むのよ!!」

 声は甲高い女のものだった。二人の間にはある種の緊張が流れている。

「いやいやっ!
 そんなの・・・・・あたし飲めないわよっ!」
「飲めるわ・・・・・あなたならね、リナ。
 一応人間でしょ?うふふふ・・・。」
「無理よぅ!・・・シェーラ!!」

 なんと!
 この二人はリナとシェーラだったようである。一体何をしているというのか?
 よくよく見れば、シェーラは手に1本の瓶を持っていた。無色透明の硝子瓶。いや、瓶というよりも壷のような形状ではあったが。当然中にはなみなみと液体が揺らめいている。白濁色の液体が・・・・。
 彼女は、その手にした瓶をリナの顔に近づけて・・・いやその愛らしい唇に押し付け、中の液体を無理矢理飲まそうとしているようだ。

「いやいやいやぁぁぁっ!!」

 リナは顔をそむけてひたすら拒絶する。だが、その姿にシェーラはただニヤッと笑んだだけで行為をやめようとはしない。

「そんなに嫌がる事ないでしょう?コレを欲しがったのはリナ・・・あなたじゃない?」
「そ、それは・・・・そうだけど・・・・」
「何が不満なの?」

 シェーラは手に持った壷をリナの顔の前で軽く振っている。瓶が揺れる度に、ちゃぷちゃぷと卑猥さを感じさせる音が響いていた。

「だって・・・だって・・・・そのにおい・・それに生温いし・・・・あたし・・・。」

 リナはどこか恥ずかしげに口を開いた。だが、その言葉にシェーラはピクリと眉を上げる。

「ニオイ?
 ぬるい?
 何を言ってるのかしら?これはこーゆーモノなのよ?(爆)」

 シェーラは口端を歪めつつ、リナの顔に瓶の口を近づける。リナはたまらず上体を仰け反らせソレから逃れようとする。

「やぁぁっ!!」
「いやじゃないわよ、ほら!
 もっとちゃんと飲むのよ!!」

 だが、シェーラは、すばやく、のけぞり逃れようとするリナの頭を押さえるとその唇に瓶の口を押し付け無理矢理流し込む!!

「んんんっ!!
 やぁぁぁっ・・・・ぐぶぶぅっ!!」

 一瞬の隙を突かれた所為で、リナは白濁色の液体を目一杯口にしてしまったようだ。そして彼女の意思とは裏腹に、リナの体は、反射的に反応し、喉がその液体をゴクリゴクリと嚥下してしまった。
 その直後、当然の事ながら、あまりにも性急な行為にリナはたまらず咽かえっている。彼女の唇から飲みきれなかった液体が滴り落ちている。

「ほら、飲めたでしょう?」

 シェーラはせき込むリナを嘲っている。その笑みは冷酷な魔族にはとても似合いのモノだった。

「うっ・・・・ごほっごほっ・・・・・ひ・・・ひどいじゃないのぉ・・・無理矢理なんて・・・」

 ひたすらせき込んでいたリナがようやく言葉を発した。だが、その目には驚いた事に涙が浮んでいた。よほど嫌だったようである。
 リナは手の項で、さも嫌そうに唇から滴っていた液体をグイと拭った。

「何を言ってるの?
 コレがオトナの味ってものなんでしょう?あなたたち人間風に言うと。
 それに、みんなアノ時には嬉しそうに飲むんでしょう?・・・・クスクスクスクス・・・・。」
「こんなの・・・こんなのは、アノ時には飲まないわよっ!!」
「違うの???
 アラアラ。じゃあ、その理由を詳しく教えてくれない?
 クククク・・・。」
「ウッ・・・・ごほっ!
 ・・・・これ・・・こんなニオイじゃ飲めないわよっ・・・・それに味も駄目っ!濃すぎるのよっ!!!」
「味?濃い????」

 リナの言葉にシェーラは首を傾げている。だが、リナは目に涙を溜めたまま、シェーラに向って叫んだ。

「そーよっ!!
 ソレ、すっごく苦いんだものっ!!」

 リナの言葉にシェーラは・・・・喉を鳴らしていた。くつくつと。

「くくくく・・・・・
 そーゆーところがお子様って言われる所以ね。濃いのがイイんじゃないの。」
「あのねぇ!ほどほどって言葉を知らないのっ?濃すぎよっ!」
「・・・・・・この味が分からないなんて・・・マダマダねぇ・・・・。」
「この味のどこをどう取ったらそんなこと言えるのよっ!!」

 リナは力一杯怒声を発した。だが、両手を上げて大仰に溜息をついていたシェーラは、気にしたようすなど全くなく、誰に言うともなく口を開いた。

「ふぅ・・・・折角、グラウシェラー様におねだりしまくって、こんなにたくさん頂戴してきたっていうのに・・・」
「そんなのあたしの知ったこっちゃないわよっ!!」
「嫌がるグラウシェラー様から無理矢理絞り取る・・・・これがどれほど厄介か・・・・リナ、あなたにはわからないでしょうね・・・。」
「んなのわかるわけないわよっ!!」

 呟くように言葉を発していたシェーラだったが、静かに目を閉じ、肩を竦めた。
 が、それも一瞬のことで、すぐにカッ!!と目を開くや、リナの顔にズイッ!と己の顔を持って行く。

「リナ。
 私は・・・今あなたが聞いた通りの苦労(はぁと)をしてきたの・・・・・
 それは分かるわね?」

 不意に、目の前で真剣な眼差しをされ、さしものリナもどぎまぎしている。

「え・・・ええ・・・そ、それはそお・・・でしょうね・・」
「そうよ!
 連日連夜、何度も何度も『お願いvv』して・・・・
 ようやくコレだけの量を確保してきたのよ。」
「ご、ご苦労様です・・・・。」
「だから・・・・」
「だから?」

 シェーラはそこで一息つくと、真剣な眼差しに白刃を煌かせ、リナを見据えた。

「コレは、リナ。
 ・・・・全部あなたに、飲んでもらうわ!」
「え゛っ!?」

 そして、またもシェーラはリナの口に液体を押し込もうとしたのだ。たまらずリナの悲鳴が室内に充満する!!

「いやいやいや、いやぁぁぁぁっ!!」



ドバンッッッ!!!


「そこまでですっっ!!!シェーラさん!!!」


 吹き飛ばされそうな轟音と共に部屋のドアが開かれた。その衝撃波にシェーラとリナの髪がゆらりと嬲られている。

「「誰っ?」」

 二人だけの世界に没頭していたリナとシェーラが見たものは・・・黒いラーメン丼神官ルックをはためかせた・・・・獣神官ゼロス!!

「ゼロス!!どうしてここに?」
「ああっ!!ゼロスゥゥ、お願いよ、助けて!!」

 シェーラは驚き、リナはすかさず救いをゼロスに求めた。その当の乱入者ゼロスはリナには優しく、シェーラには狂気の笑みを送る。
 そして、猛悪の殺気を放ち始めたのだ。
 見ればその紫の瞳が珍しくも見開かれている!

「シェーラさん。貴女、中々イイ度胸でいらしゃいますねェ・・。
 リナさんを掻っ攫った挙句、いぢめるなんて・・・ね。そんなことは僕だけの特権だっていうのに・・・。
 けれどそれだけじゃありません!真に許しがたいのは、泣いて嫌がっているというのに、汚らわしくも、嫌らしいそんな欲望の残りカス(死爆!)をまい・はにぃ・リナさん(はぁと)に飲ませるなんて(激怒もぉど発動)!!」

 そこで、言葉とは裏腹にゼロスは穏やかにも、一息つくと軽く肩をすくめる。だが、次の瞬間その瞳に鋭いものを湛え、シェーラを睨みすえた。

「いくらダイナスト様の寵姫と言えど、許せません!今度こそ、覚悟して下さいね!
 ヤツ裂きなんて可愛らしい程度では済ませませんよ!
 エクスキューショナーモード、オン!!ターゲット、覇王将軍シェーラ!!
 待っててください、まい・はにぃ・リナさんvvV
 すぐに助けてあげますから!!」

 そして、中間管理職随一の使い手の華麗なる攻撃が冴え渡る!!
 ・・・・・・・・・かと思われたその時。



「ねえ・・・・『どぶろく』ってそんなに汚らわしいの?ゼロス。」
「それはあたしもそー思うわよ、ねぇ、シェーラ。」



「え゛っ!!?」

ピキキキキッッッ!!



 奇妙な音と首を絞められたカエルのような声が、あたりに響いた。見れば・・・・・リナとシェーラの前に妖しいポーズを取ったゼロスが固まっていた。



「ひとつ聞きたいんだけど・・・・」
「何よ?」

 リナが表情を硬くして口を開く。質問されたシェーラは固まるゼロスを鼻で嘲いながら答えた。

「どーしたら、この『どぶろく』、こんなに不味くなるのよっ!!」
「知らないわよ!
 私はあなたが『覇王様vv秘蔵のお酒が飲みたいっ!』って言うからグラウシェラー様がすっごく渋るのを半ば無理矢理分捕ってきただけだもの。」
「あ、あんた・・・・可愛い顔して結構凄い性格ね・・・(冷汗)」

 リナのその言葉にシェーラの目が剣呑に光った!

「なぁによっ!
 その言い草!
 私がどんなに苦労したかも知らないでそんなこと言わないでよねっ!!」
「あんたこそ、なによっ!!
 乾杯する時に飲むモノと、こんな下剤みたいなモノを勘違いするような人(?)にそんなこと言う権利なんてないわっ!!」
「なんですってーーーーっ!!」
「乾杯する時は普通、シャンパンとかビールが定番よ!
 そんなことも知らないなんて・・・・・。これだから世間知らずなお嬢様(?!)は・・」
「偉そうに言わないでよっ!!人間風情がっ!!」

 リナは呆れた顔で肩を竦めて見せる。
 その彼女に、シェーラの猛悪!と言えるほどの殺気が襲う。だが、リナは怯えるどころか、かえって唇を軽く吊り上げニヤラ〜〜〜〜と笑んでいたのだ。そして、その嫌らしい笑みを浮べたまま、

「ああ〜〜ら。
 そーは言うけど・・・この『どぶろく』って、確か・・お礼だったわよねぇ?
 覇王にかまって貰いたいからっ・・て『おねだり』に、『おねがい』の仕方を教えて欲しいって泣きついてきた時の・・・・・・そうだったわよねぇ、シェーラ?」
「うっ・・・・そ、それは・・・そそ、そーだけど・・・・。」
「お礼って普通、喜ばれないと意味ないのよねぇ?」
「ううぅぅぅぅぅ・・・・・・・・。」

 今しがた迄の勢いはどこへやら、リナの言葉にシェーラはしどろもどろになっていた。とても覇王将軍とは思えない程に。
 そこへ容赦無いリナの突っ込みが入る。

「まあ・・・・いいわ。秘蔵のお酒がこんな味だなんてあなたも知らなかったみたいだしィ?
 わざとってわけじゃなさそうだし・・・。
 それよりもっ!?
 この『どぶろく』をせしめてこられたってことは・・・
 覇王に、上手く『おねだり』に、『おねがい』をできたってことね( ̄ー ̄)!?」
「え、ええ・・まあ・・・・ね。」
「ねえねえ、その時覇王はどんなだった?可愛かった?」

 リナはウラウラッ!とすでに真っ赤な顔をして恥ずかしがっているシェーラの肩をつついている。すると、シェーラはもじもじししていたが、いきなり、

「ええ!!
 それはもう可愛かったわvvVV
 いつもは冷静沈着なグラウシェラー様があんなにしどろもどろになるなんてVV
 あぁぁん、もう可愛すぎよぉぉ!!(身悶え!)
 もうもう、あんまり可愛くて目一杯、『お願い』して『おねだり』しちゃったもの!!
 ほんと、リナに教わった通りだったわ!
 ありがとうvvvVV」
「でしょ、でしょ!?
 あたしの『おねがい』&『おねだり』テクニックに敵はないわっっ!!」

 なんとも驚いた事に、覇王将軍(シェーラ)ともあろう者が、満面笑顔で人間(リナ)にお礼を言っている。対する人間たるリナは腕組みし、ふむふむと頷いていた。おそらく、自分が正しかった事へのものだろう。
 そんな得意絶頂状態のリナにシェーラはとんでもない事を言い出した。

「でねっ!!
 できたら・・・・そのぅ・・・もっと他にも『おねがい』&『おねだり』のテクニックを教えて欲しいんだけど・・・・
 駄目かしら?」

 その言葉にリナは少々驚いたようだが、妙に色ッポイ流し目と、妖しい台詞の定番を送った。

「うふふ・・・・・シェーラ、スキねェ・・・あなたもvvVV」
「だって、すっ・・・・・・・・・・・・ごく!!可愛いんですもの、アノ反応!」
「わかるわっ、そのキモチ!!
 もうたまんないのよねっ!!
 ・・・・・・・よし、いいわっ!
 私の知る全ての『おねがい』&『おねだり』テクニックを伝授してあげるっ!!」
「ほんとっ!ありがとうっっvvVV」
「でも、シェーラ!
 修行は厳しいわよっ!」
「構わないわッ!
 どこまでもついていきますっ、リナ師匠!!」
「シェーラッッ!!!」



ぐわしぃぃぃぃぃっっっ!!!



 綺羅綺羅と熱く輝く二対の瞳。
 握り締められる美少女二人の固く熱い握手。(参考資料:リ○ビタンAのCMのアノ場面/爆)
 その手の中には輝く瞳と同じく熱い思いが萌え萌えに燃え上がり始めていた。

 そんな熱い二人に、その象徴のような洛陽の緋色が降注いでいた・・・・。



 ―――こうして、リナとシェーラの世にも恐ろしい『おねがい』&『おねだり』テクニックの修行は始まったのである。




【おまけ。】

 リナとシェーラが師弟関係を結んでから、約3ヶ月程後。
 覇王宮では連日連夜、涙に暮れるおエライ腹心覇王殿と、連日連夜満面笑顔の覇王将軍殿を見られるようになったという。(覇王殿に合掌。成仏めされよ。)


【完!!】
今回の懺悔室。

皆様、キワモノなお時間でございます。
今回はぁぁぁっ!!
シェーラ×リナ(?!)でございます。(死爆)
櫻井さん!如何なモンでございましょうや?(如何もへったくれもないわっ!)
大変長らくお待たせしすぎましたが、ようやく・・・ようやく・・・・日の目を・・・・。

とゆーことで、このキワモノなブツは裏トップのキリ番1221を自己申告して下さった(笑)櫻井泉様に献上させていただきます!

きょん太拝