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 あたしがホクホク顔で息抜き(=盗賊いぢめ)をした直後だった。帰り道、人の気配を感じた。
 こんなところに人?不信感に追ってみれば・・・・。

「あれ〜〜、もしかしなくても・・・・ゼル?」

 森の奥、ちょっとした広場の真中にその人物はいた―――一緒に旅をしてる内の一人。ゼルガディス。
 明かりなど一つもないというのに、ゼルの姿ははっきりと見て取れる。満月の所為だ。あの月のおかげで息抜きするのにちょっぴり苦労したってのに・・・今となっては夜道の助けなんて・・・皮肉なもんよね。ありがたいけど。
 ゼルは、その銀光の中、漂っているように見えた。
 鋼の銀髪、蒼の瞳、青黒い岩の体。人型をとっていても人外にしか見えない。それでも―――なんて綺麗なんだろう。綺麗な綺麗な白い魔物。でも、心は誰よりも人間だ。こんなに月光に映えるモノをあたしは知らない。
 こんな時はいつも思い知らされる。ゼルは夜の・・・・・闇の人間なのだと。

「・・・・・あんたか。」

 あたしはぼんやりとゼルを見ていたようで、その彼の声はあたしを現実に引き戻した。
 でもどうした訳か、あたしはかける言葉が出なかった。まるで言葉を忘れてしまったように。ただ、その場に凝り固まっていた。

「・・・・・こんな時間にどうした?・・・・・・・ああ、また例の趣味か。」

 ゼルの声音に溜息と呆れが含まれていた。ここでようやくあたしは声を出すことが出来た。図星を指された所為だろうか。

「それって、あんまりなご挨拶じゃない?」
「だが、図星だろう?」

 大当たりだ。
 ゼルは笑っている。それだけなのに、あたしはその様子に体温が2、3度上昇するのを感じていた。なんでまたこんな奴の笑顔で赤面するのよ!
 一応、あたしは自問自答してみた。が、理由はわかっていた。ゼルが笑ったからだ。いつものような触れなば焼けつく凍土のようなものじゃなくて。
 そう、屈託の無い笑み。子供のような笑みだったから。
 あたしは赤い顔を見られたくなくて、すぐさまそっぽ向いた。

「いーじゃないの!盗賊いぢめはレディの必須教養よ!!」
「・・・・・そんな教養がいるのか、レディに・・・?」

 あたしの無茶苦茶な言葉にゼルのこめかみがキラリと光を放った。どうやら、冷汗でも流したらしい。こーゆーとこはあたし達四人の中で1番常識的だ。と、妙な感心をしつつ、ふと浮かんだ疑問を投げかけた。

「って、ところでゼルこそ、こんな時間に何してんの?それもこんな場所で。」

 こんな場面ではお約束とも言える質問に、ゼルは軽く肩を竦める。そして、右手の親指を突き立てた。指の指し示す先には――――――月。
 煌々と闇夜を渡る月―――その狂ったような青白い光の中に立つゼルは、光に溶け消えていくようだ。などと妙に感心しながら、あの月に何の用があるのかと考えてみる・・・・しかし、やっぱり分からない。
 その疑問は自然に口から出ていた。「だからなんだ?」と。

「わからんか。今日は満月、月見くらいしてもかまわんだろう?・・・・いくら俺でも・・な。」

 ゼルはそう言って左手を掲げて見せる。その手には酒瓶とグラスが収まっていた。
 ああ・・・なるほど、月見ね。ふーーん。
 ようやく、あたしは合点がいく。あたしが心でフムフム頷いていると珍しい言葉を聞いた。

「あんたも一緒にどうだ?・・・・・極上の酒もあるぞ。」

 へっ?い、今世にも珍しい言葉を聞いたような・・・・・?
 木霊の囁きか、或いは聞き間違いかとあたしはゼルを見つめ返す。しかし、そこには淡々と言葉を紡ぐゼルしかいなかった。

「まぁ、いやならいいが・・・・・・。」
「いやなんて、言ってないわよ―――

 どうやら、夢でも幻でもないらしい。人を避けている彼にしては珍しいこともあるものだと思いながらもあたしは無意識の内に答えていた。
 さくさくと足音と影があたしを追って来る。気づいた時、あたしはゼルのすぐ隣に立っていた。

 ―――折角のお誘いだしね。」

 あたしはニッと笑い返して、軽くウインクする。ゼルはあたしの答えに少し驚いたようだが、結局満足したようで、その場に腰を下ろし、あたしを見上げた。
 ゼルはあたしの影に埋もれた。けれどその髪は、瞳は、肌は周囲の光で微光を放っている。そうやって彼は月の光を影の中に届けている。

「なら、さっさと座れ。折角の月が見えん。」
「ムッ!何よ、あたしより月の方がいいっていうの?」
「そう、聞こえんか?」

 ゼルの無遠慮な言葉。すぐ報復措置を取ろうとしたけど・・・・・・やめた。
 ゼルの言う通りだ。折角の月を爆炎で翳らせるなんて無粋な真似はしたくない。結局、あたしは失礼ね、と口をヘの字にしながら彼の隣に腰を落ちつけた。
 そして、すぐさま甘く苦いアルコールが香り始める。目の前にはグラス―――。

「・・・・・・・・・グラスは一つしかない。」
「当然、グラスはあたしでしょ?」
「・・・・・仕方ないな。」

 あたしの言葉にゼルは溜息をつく。けれどその溜息は闇を渡る風が連れ去っていく。

「・・・・・それとも・・・・・・・飲ませてやろうか?」
「!・・ば、馬鹿。どーかしてるんじゃない?」
「フッ・・・満月の夜は狂ってもかまわんと聞いてるからな?」

 〜〜〜〜〜こいつは・・・・・わかってやってるわね。絶対。
 あたしはニヤリと笑うゼルに確信した。ワザと間違えてるって。しっかし、あたしだからいいようなものの・・・・こんなことガウリイ相手に言ったりしようものなら・・・・満月毎にバカやらかすわね、絶対。
 平気で殺し文句を言ってみたり、しれっとウソをついてみたり―――そんなゼルの狸振りに呆れつつ、また感心しつつ。

「狂っていい・・・・・・・じゃなくて、狂わされるでしょーが。えらい違いよ。」
「・・・・・同じだ。最後に狂うことには違いあるまい?」

 確かにそうだと呟くあたしになみなみと酒の入ったグラスが手渡される。

 あたしはちびりちびりと舐めながら。
 ゼルは瓶に口付けぐびぐびと腹に押し込みながら。
 あたしと彼、二つの影は少しずつ歪み長く伸びていった。
 後にはただ・・・・。



 狂う・・・狂う・・・・・・狂い咲き。
 星を食らって咲き誇る。
 狂った夜空の・・・・・・・月。


完。


どーでもいいコメント。
すみません。
ようやく、リンク記念に献上しても大丈夫そうなブツができたのはよかったのですが・・・・やはし、後から見たらどうしようもないブツ・・・・(TT)
ちゅーことで、少し改稿してはみたのですが、やはり変わりない・・・・
おまけに暗いし・・・・・。
もっと明るいのを献上すればよかった・・・

ということで、いつもありがとうこざいますの気持ちも込めて、かみやはるか様へ捧げます。

 三下管理人 きょん太拝