ミッドナイト・ブルース
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 ざわざわと喧騒が窓を伝って響いていた。
 が、何時の間にか、それは緩やかなベース音と、甲高いピアノに変わり、微かな歌声が響いていた。おそらく、すぐ近くの酒場からだろう。
 リナはその歌をぼんやりと聞き、ぽつりと呟いた。

「こういうのも・・・・いいわよね。」
「・・・・何がだ?」

 ゼルガディスは表情も声音も変えず淡々と答えている。

「こうやってブルースを聞くのも。」

 ゼルガディスはゆっくりと体を起こし、ナイトテーブルのグラスを手に取る。グラスの表面が流れ落ちるほどの汗をかいている。ウイスキーに浮べた氷の冷気はゼルガディスの少し火照った手に心地よかった。

「俺はこっちの方がいい。」

 ゼルガディスのにべもない返事にリナは口をへの字に曲げていた。

「・・・・・・少しくらいムードを盛り上げてくれてもいいじゃない!」

 ゼルガディスの喉が鳴っている。見れば、グラスに並々とあった琥珀の液体はすでに嚥下され尽くしていた。そんな、全くとりあってくれない彼に、リナが甘い怒気を発した。

「ちょっと、ゼル!」
「鼓膜はまだ健在だ。・・・・耳元で喚くな。」

 今回はさしものゼルガディスも無視できなかったようだ。なんせ、耳のすぐ傍で言われたのだから。眉をひそめ、ちらと、リナへ目を向ける。すぐそばに赤茶けた大きな瞳と、しなだれかかるような白い肢体があった。その体に点々と浮ぶ赤い印。つい今しがたまで重ね合わせた肌の狭間で出来たもの。ゼルガディスはそれが妙に嬉しくてクスリと笑った。
 それをリナはバカされたと勘違いしたのか、すぐさま怒りを顕わにする。

「なによ、その言い草。っとに!・・・・・・・・・・・・まあいいわよ・・・・・と・こ・ろ・で!ねっ、あたしにもそれ、頂戴。」

 リナは薄い怒気を面に貼りつけていたが、すぐに別のものに興味を移していた。はしっこく動く瞳はゼルガディスの持つグラスを見ていた。

「目を回しても知らんぞ。」
「別にいいわよ。立ってる訳じゃないから、倒れる心配もないし。
 そ・れ・に!それくれたら、桜色のあたしを見せてあげるから。いいでしょ?色っぽくて・・・・ゾクゾクするわよ。」

 ゼルガディスの呆れ半分の制止にリナはおどけた様子で笑っている。その笑みは彼がこの一言で折れる、と確信していた。

「色っぽい?ゾクゾク?・・ハッ!その程度じゃ、無理だな。」

 が、ゼルガディスの態度は横柄と言えるものだった。何処か冷たい視線がリナに向けられる。その口元には、リナとはまた別の笑みが浮かべられていた。

「そんなのやってみないとわからないじゃない!」

 で、結局リナはまたも憤慨することになった。そんな彼女を笑いながら、ゼルガディスはまたグラスをいっぱいにしている。琥珀の液体に嬲られ、カラカラと氷が鳴った。そして、氷を嵌め込んだような瞳がリナを捉えた。

「俺をゾクゾクさせたかったら・・・・」
「させたかったら?」

 ゼルガディスはウィスキーを軽く煽ると、リナの頭を引き寄せ・・・・・唇を割った。

「んんっ!?」

 少し、ぬるくなった液体がリナに送られてくる。リナは、そのきつい香りとアルコールに一瞬で熱くさせられる。苦しさにリナがうめいていた。
 ゼルガディスは唇を放そうとしない。リナは仕方なく口の中のウィスキーを嚥下する。
 そして、それに満足したかのようにゼルガディスは唇を離す。
 が、またすぐに酒を口に含むとリナの口に流し込んでいた。

「・・・・っん!・・・・ゼル・・・・・もう・・・」

 息を整える間もなく、与えられ続ける酒。
 リナはただただ嚥下し続けた。お互いを絡め合わせている訳でもないのに、リナの息は少し荒くなり始めていた。

「もう・・い・・らない・・・」

 ゼルガディスが唇を再度放した時にはリナの体はもう朱に染まり出していた。上気した頬と、少し苦しげな瞳が彼を見ていた。だが、ゼルガディスはまったく取り合わず、グラスに残った酒をすべて口にすると、リナに口付けていた。そして、リナが全て飲み干すのを確認してから唇を放すと、彼女の口から零れた雫を舐め取った。
 そして、リナの耳元で意地悪な合成獣は囁いた。

「そう・・・・最低、これくらいのリップ・サービスをしてくれないと・・・・・無理だな。」

 ゼルガディスは心底意地の悪い表情でリナを覗き込んでいる。だが、いつもの威勢の良い答えは無く、リナはベッドに沈み込んでいた。その彼女へゼルガディスはただ、笑った。

「どうした、リナ。ダウンか?もう、酒はいらんのか?」
「ゼ・・・ル・・・・のばかぁ・・・・・」

 体の中を駆け巡る熱に焼かれているリナは荒い息をしていた。が、それが収まっていくにつれ、その意識も薄れていくようだった。その証拠に閉じた瞼をその都度、重そうに何度も持ち上げている。

「ブルースか・・・・昔はよく聞いた。酒の肴にはよかったからな・・・・。」

 ゼルガディスはそんなリナを眺めながら、ようやくぽつりと彼女へ応えていた。

「・・・・・・昔?・・じゃあ・・・今・・・・は・・・・」

 リナは薄れていく意識の中で口を開いた。が、それが限界だったようだ。朱の唇が閉じると同時に、瞼も、意識も完全に閉じられてしまったようで―――ゼルガディスの腕の中から、すぐさま、緩やかな寝息が聞こえ始めた。
 彼はその様子に溜息をつくと、リナの白い瞼に口付ける。

「今は・・・・・・あんたの寝顔だ。」

 もう、グラスの氷は溶けてなくなっていた。

(完)


どーでもいいコメント。

ムッキーさん!!リンク&いつもいつもありがとうございますっっっ
そして、いつもすばらしいお宝をありがとうございますっっ!!

の、お礼のつもりでお送りさせていただいのですが・・・・いかんですね。
次は・・・次こそは!!
ムッキーさんの御作品のように甘甘らぶらぶを・・・・・(ふっ!ムリムリ!)
(最近またぞろ甘甘らぶらぶを書きたいとのた打ち回っている大バカ。)

三下管理人 きょん太拝