刹那、咄嗟に魔力を放っていた。
「ひどいな。せっかくの再会なのに、いきなり攻撃だなんて」
くすくす笑うのは冥王フィブリゾ――――。
揺らめく姿を睨み付けた。本体が来た訳ではない。力の片鱗をこちらに送りこんでいるのだ。フィブリゾが、まるで陽炎のように揺らいで見えるのも、攻撃が通じなかったのも、だからだ。
「何の用だ」
低く唸る。
始末しに来たのか。ルビーアイから離反した自分を。
「そう怒らないでよ。今日はね、忠告しに来たんだ。安心していいよ、今ここできみを滅ぼすつもりなんかないから」
なんだと!?
「てめえ……一体何を考えてやがる?」
「忠告しに来た、って言ったでしょ」
フィブリゾのくすくす笑いが変貌する。魔族しか得られぬ、ひどく残酷で毒々しい笑みに。
「リナ=インバースには手を出すな。――ってね」
一瞬の後には再び元のくすくす笑いを浮かべていた。
気圧されて何も言い返せない。
かつては同じ地位に立っていたというのに。どうしてこうまで力の差が出てしまうのか。
「身を守りたいんだったら、素直に忠告に従うことだね」
無理だとは思うけど。
フィブリゾは瞬く間に、ふっと跡形もなく消えた。
小さな呟きを残して。「滅びたいんだったら別だけど――――ね……」という。
待て、と言う暇もなかった。気配を探っても近くにはいない。どうやら本当に立ち去ったらしい。
全身の緊張をほどく。冷汗まで浮かべていた。
「ちっ……」
フィブリゾめ……。
リナ=インバースには手を出すな? どういう意味だ。そう言われて、手を出さねえ奴がいるとでも思ってやがんのか。なんの裏がある? 奴の本当の目的はなんだ。
「オレが殺すと計画が失敗するから――って理由で来たんだったら、簡単に済む話なんだがな……」
リナ=インバース……か。どうやら、ただの人間じゃあねえらしいな。フィブリゾが執着を覚えるほどの何かを持っているのか。
魔王――ルビーアイ――を倒したって話も、まんざらウソじゃねえらしいな。ますます会って殺してみたくなった。
フィブリゾがリナ=インバースをそんなに大切だって言うなら、ぶっ壊してやる。オレのこの手で。
今はいない冥王へと毒づく。
「ふざけてんじゃねえぞ。オレが忠告されたからって、退くわけがねえだろうが」
身を守るためにルビーアイを倒す。生きるためにフィブリゾの計画をツブす。自分自身の為にリナ=インバースという人間を殺す。
自分の未来(これから)の為に。
彼は知らない。
その思いこそが冥王の狙いだったのだ。
彼がこの時、既にフィブリゾの手の上で踊らされていたのだと――――知るのは、まだ先の話……。
――終劇。
あとがき
ずいぶん調子に乗ってます……。これは「闇に踊らされる娘」の翌日あたりの話だとでも思ってください。フィブリゾはガーヴの前に現れることで、彼のリナに対する興味を引き出し、尚且つ、ガーヴのフィブリゾに対する警戒や反感ひっくるめて言えば、冥王の立てた計画を潰そうとする意欲? 手を出そう、という気持ちを増幅させたんですね。
こんな話でガーヴの格好良さを出せたのだろうか……(核爆)。なんかフィブラガーヴみたいな話だし(死)。これでもガーヴリナなんです。リナ出てきてないけど。フィブリナのようにも読める話だけど(自爆)。←まあそれも狙ってるんですけどもね。
しかし短い話だ(展開早くてゴメンナサイ)。お付き合いありがとうございました。続きをお楽しみください。
稿了 平成十二年二月二十六日土曜日
追記。
上に続き、とあるのは、同時に送る(予定/死)のガーヴリナ三作目のことです。……この話同様に、リナは出てきませんが(爆死)。これで本当にガーヴリナなのか……?
どうでもいい、三下のコメント
いやー、言ってみるもんだ!
ガーヴリナ。
うーむ。エエ響きじゃ・・・・。
もう、続きのお宝もバッチリ、しっかりupさせていただきます。
私のようなポリシーの欠片も無い者の為に貴重なお時間を割いていただけるなんて・・。
喜びを通り越して至福の世界です。
ガーヴ様・・・・。
しかし、データクラッシュに皆様からのお宝が巻き込まれていなくて本当によかった・・・(;;)
これで、これで・・・また、極楽浄土が素晴らしくなっていく。
ええことじゃあ。
では、皆様、次回作を近日中にup致します。
住刃 斬様にこのお宝の更なる続きを書いていただけるようお願いして下さいませ。
三下管理人 きょん太拝