瘴気渦巻く、獣王ゼラス=メタリオムの居城。
そこは人影もなく、ただ静まり返っていた。
そして、城主である獣王は、静かに玉座に座っていた。
何か考えて込んでいるのだろうか?
両の眼を閉じ、右手で頬杖をつきながら静止した姿は、まるで眠っているようにも見えた。
もちろん、魔族が眠るはずは無い。
と言う事は、十中八九間違いなく獣王は、自分の考えに没頭しているのだろう。
「ゼロス」
凛とした獣王の声が玉座の間に響く。
まるで、隣にいる者に呼びかけるような大きさの声で。
すると、暗闇に支配されているその空間に、闇の蟠りが出現した。
同じ闇色でありながら、決して他の闇と相容れぬ闇。
獣神官ゼロスの出現である。
「・・・お側に、獣王様」
頭を垂れ跪く姿は、部下として当然の礼儀であった。
その姿を認めると、獣王はわざとらしく溜息をついた。
獣王が自分を呼び出すのは、何か仕事がある時だけである。
もちろん、その仕事の中には、使いっ走りも含まれるが・・・。
だが、今回の獣王は、溜息をついたっきり、言葉を発さなかった。
ただならぬ獣王の負の感情を感じ、ゼロスは伏せていた顔を上げ、上司の様子を伺った。
すると、獣王と目が合う。
「獣王様、何か問題でも?」
上司の様子から、何か大変な事が起こったのではないかとゼロスは推察したのだ。
だが、実際は違った。
「問題と言えば、問題だな・・・。
ゼロス。おまえ、あの人間の娘はモノにできたのか?」
ゼロスを覗き込むように見つめる獣王の眼差しには、真摯の光が宿っていた。
「・・・あの・・・獣王様、ご質問の意味が判りかねますが・・・」
上司の問いに即答すべき立場の神官は、どう答えて良いものか困惑を極めていた。
だが、そんな部下の心情などお構いなしの獣王は、今度は呆れを含んだ声音で聴いてきた。
「なんだ、まだなのか? 人間の娘1人落とせぬようでは獣神官の名が泣くぞ?
そうだ、人間の女というものはプレゼントに弱いと聴く。
これを持っていけ。 なぁに、心配するな。 プレゼント代は出世払いにしておいてやる」
一方的にそう言うと、手の平に乗る程の小さな箱をゼロスに差し出した。
その小箱を受け取りながら、ゼロスは内心苦笑していた。
魔族は完全な縦社会。
おまけに、創造主には絶対服従である為、出世などありはしない。
つまり獣王はゼロスに、滅びるまで馬車馬のように働けと、言っているのである。
「・・・はぁ、ありがとうございます・・・」
このときのゼロスに、他に言う言葉が見つかるはずもなかった。
とりあえず、獣王から頂いた小箱を持って、その人間の娘に会いに行くゼロス。
この時、考えるべきだったのだ。
何故、獣王がこんな事を言い出したのかを。
そして、渡す前に箱の中身を確かめるべきだったのだ、ゼロスは。
(魔族のくせに)バカ正直に上司からの贈り物として、彼女に差し出したのがまずかった。
そう、結果は凄まじいものがあった。
箱を開けた彼女は悲鳴を上げ、その後、問答無用でゼロスに攻撃呪文をぶちかましたのだ。
なぜなら、その小箱の中身は蛞蝓だったから・・・。
散々攻撃呪文を投げつけられ、ボロボロになって獣王の居城に帰り着くゼロス。
そして、帰って来たゼロスを待っていたのは、指差して笑う上司の姿であった。
獣王ゼラス=メタリオムが考えた悪戯だったと言う事は、今更言うまでもない。
おしまい(^^;
どうでもいいコメント
あぁぁぁぁぁぁあああああっっ!!
激らぶvvvVVV
特に悪戯のお得意そうなゼラス様が・・ふふふふ( ̄ー ̄)
もうもう、なんて楽しいんでしょう!
ゼラス様とゼロス君の二人はこうでなくてはっ!!!
私の理想の二人がここにいます!
長月さん!!本当に素晴らしいお作品をありがとうございましたm(__)m
そして、UPするのにこんなにも時間がかかってしまって申し訳ありませんでしたm(__)m
こんな鈍亀なヤツですが・・・どうぞこれからもよろしくお付き合いくださいまし(縋りつき!)
三下管理人 きょん太拝