闇に踊らされる娘

 

 

 ぴんっ、とおはじきを爪で弾く。弾かれたおはじきは、進路方向に転がっていた別のおはじきにぶつかり、方向転

換する。ぶつかったおはじきは、ぶつかってきたおはじきと反対の方向に動いた。

「滅ぼされた――――だと?」

「……はい」

 尋ねた相手は萎縮してこちらを見ようともしない。ちら、と横目でその様を眺める。うつむいて、身を縮こまらせて

いる相手――部下を。

「念の為に確認してえんだが……そいつは本当に人間なんだろうな」

「その、ようです」

 ざらざらざら。

 そこかしこに散らばっているおはじきを、手で乱暴に混ぜる。部下はその音にすら、びくっと体を震わせた。

 ――――人間が、滅ぼした。

 面白えじゃねえか。例えデマだったにせよ、それなりの根拠がなければ、デマにもならない筈だ。

 話半分に聞いても、損はなさそうだな。

「カンヅェルにマゼンダにセイグラム――はおろか、過去に赤眼の魔王(ルビーアイ)まで倒した、か」

 たかが、人間が。

 自分よりも高位の存在を。

「危険だな」

 まぐれか偶然か、それとも本人の実力か――。

「は?」

「危険な存在は見過ごせねえよな」

 唇の端を歪める。

 戦ってみたい。その人間と。冥王(ヘルマスター)フィブリゾが裏で噛んでいるとなれば、殺しておいても不利益など

ない。むしろ潰しておく方が利益になる。

 フィブリゾの企みも潰せて、尚且つ自分も楽しい。一石二鳥だ。

「それで、そいつはどこにいる?」

「は――――ディルス王国の方で、ラクターク殿がお相手をなさっているようです」

「ディルスね」

 考え込んだのは一瞬。次の一瞬には決断していた。

「ラルタークに言っておけ。殺すなってな」

「……は!?

 相手が驚くのも無理はない。その人間を殺せ、と命令したのは自分だ。

「ラルタークじゃあ、荷が重いかもしれねえからな……」

 半ば独り言のように呟いた。

 ルビーアイを滅ぼしたという人間が相手では、いくら竜神官でも簡単に殺せるかどうか。逆にたかが人間、とタカを

くくって油断した挙句にやられる、という恐れもある。こちらの駒を減らされたくはない。

 ならば余計な手を出すよりも、念には念を入れて自ら相手取った方がいい。

 無論、本音は別にある。その人間と戦ってみたいから、だ。部下の手前、正直に言おうとは思わないが。

「いつまで突っ立っているつもりだ? オレの命令が聞こえなかったか」

「は、い、いえっ、失礼致しますっ」

 部下は慌てて一礼し、ひゅんっ、と姿を消した。空間を渡り、ラルタークの元へ向かったのだろう。

 おはじきの一つを手に取る。

 このおはじきはまるで人間と同じだ。魔族に駒として扱われ、自分の意思などお構い無しに踊らされるしかない。

 手の中のそれをおもむろに宙に放り投げ――――おはじきがバッと散った。塵と変わり溶けて消える。

「そういう意味じゃあ、オレも似たようなもんか」

 世界に滅びを撒く為の駒だった自分。

 おはじきの残骸がきらきらと光りながら空気と同化した。

 そして今は、駒として扱われる人間を、駒の役割を与えずに消そうとしている。

「儚いもんだな」

 

 その言葉が、いずれ消え行く人間の命を指しているのか。あるいは塵と変えたおはじきを指しているのか。それ

とも、別の何かを指していたのか。

 知る者はいない。

 

 

――終。


あとがき

 

 終わりかしら? 終わったのかしら? ……最短記録ってヤツを更新してしまったのね……。構想からわずか、

三時間。三時間で完成させてしまった……。いいのだろうか(いや、良くない←反語)。

 まず、こんな私にリクエストをしてくださったきょん太様。申し訳ございません。こんなものを押し付けてしまって。今

まさに、後悔の渦に巻き込まれていることでしょう……。リクエストにお応えできず、申し訳ないです。これのどこが

ガーヴ×リナ……? つ、次があれば(ないって)頑張らせていただきます……。無難に、学園ものパラレルにでも

すれば良かったのか(爆死)。

 そしてこれを読んでくださっている皆様方。この話は続いてます。思いっきり。もし読んでやろう、という心優しい方

がいらっしゃいましたら、私のHPまで来ていただけると、嬉しい限りです。ただ、アップにはもう少し時間がかかると

思いますが。

 これは一応、7巻の途中でのエピソードです。ガーヴの所に部下が、「リナ=インバースは過去に赤眼の魔王を

倒している」という情報を持って来る、という。私のまったくの創作なので、本当はガーヴはリナがルビーアイを倒し

たことを知らなかったのでは……(滝汗)。

 ちなみにガーヴが「ラルタークにリナ=インバースを殺すなと伝えておけ」と言ってますが、ラルタークにこの命令

が伝わる前に、ガーヴの出番になってしまった、という設定です。……無理ありすぎ(爆)。

 

 長々と書いてすみません。それではこの辺で。

 

 稿了 平成十二年二月二十二日火曜日

改稿 平成十二年二月二十四日木曜日


どうでもいい、三下のコメント

ありがとうございます、ありがとうございます!!
なにがあっても返しませんよ!ええもう、送っていただいた時点で私のお宝になってますから。
後はただ、ひたすらコメツキバッタになる他御座りませぬ。私の無茶なリクを受けて頂いただけでも十分に嬉すぎです!!!(感涙・・・・)
ああ、もうガーヴ様が・・・ガーヴ様がかっちょええ(死語)・・・・うっとりしてしまいましたよ。マジに。
アニメではどこぞのヤクザ親父と化していましたが、本来ならば20前後の野性的なハンサムなのだ!!(別に原作至上主義者ではありません。)
そう、ワイルドですよ!ワイルド!!
私はこーゆーのに弱いです。
で、こうなったら、この後のエピソードも書いていただけることを切に願っておりまする。
お願い!!ぷりーーーーずっ!!

三下管理人 きょん太拝


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