ゼルリナ♪ Ver.2
「リナさん、リナさんはガウリイさんとゼルガディスさんとどちらが好きですか?」
唐突にアメリアが聞いて来た。
「え?!私は・・・ガウリイはクラゲだし、ゼルも・・・別にそういう風に見た事ないから・・・。アメリアはどうなのよ?」
「わ、私は・・・」
赤面するアメリア。耳まで真っ赤に染めて、手で顔を覆っている。
「はっきりしなさいよ、アメリア。」
「・・・ゼルガディスさん」
ぽつりと呟いた。
「ゼルガディスさんが好き・・・です・・・」
腕を組み替え私は
「ゼルね〜。手強いわよ〜きっと。」
と忠告する。
「リ・・・リナさんは私とゼルガディスさんが一緒にいたら、合うと思いますか?」
「かわいいカップルになるんじゃないの。」
・・・・・声がだんだん震えているのが分かる。
ーー恐いんだ・・・
なんで恐いの?
ーーゼルを取られるから・・・アメリアに・・・
素直になればいいのに
ーーだめだよ
なんで?
ーーアメリアが傷付いちゃう・・・
「リナさん!リナさん聞いてますか?それでどうしましょう?」
「だから、告白です。ゼルガディスさんに今夜告白しようと思っているんです。リナさん、どう思いますか。」
「・・・いいんじゃないの・・・」
「それで〜何を着ればいいでしょうか??髪は?お化粧は?ねぇリナどうしましょう?」
「・・・何でもいいんじゃないの?・・・ごめんアメリア、頭が痛いから先に寝るね。」
「おやすみなさい、リナさん。成功を祈ってて下さいね。」
「・・・」
私は聞こえない振りをして二階の私の部屋へと向かった。
その夜はむせるように声を押さえて泣いた。
その夜は満月の明るい夜でした。
アメリアは今頃ゼルに告白しているの・・・かな。
そう思うと心が裂けそうだった。
朝になるのが恐かった。
苦しかった。
目の前が暗闇に溶け込んだ様・・・
『え?????ちょっと???』
そう、本当に目の前が真っ暗になっていた。
そして私には誰の仕業かすぐに解った。
「ちょっとゼロス!何やってるのよ??」
「あっ、解っちゃいましたか?」
とぼけた顔のゼロスが出て来た。
「ちょっと、生ゴミ魔族元の世界へ帰せ!」
「いや〜リナさんそんなに怒らなくても、いいじゃないですか。グレますよ。」
「勝手にぐレてて、私は今そんな気分じゃないの!!」
180°回転して、ゼロすに背を向ける。
「解っています、だからここにお呼びしたんです。」
ふわぁ
何かが私の後ろから覆いかぶさって来た。ゼロスが抱き着いて来たのだ。
「ちょっと、ゼロス?!な、何を・・・」
「僕じゃダメですか?」
「え?」
「ぼくじゃゼルガディスさんの代わりには、なれませんか?」
ゼロスが震えているのが、私に優しく巻き付く腕から伝わって来た。
「なんで、何で知っているの?わ、私がゼルの事・・・」
「解ります。いつもあなたを見て来たから。あなただけを・・・」
「ゼロス・・・」
「わかっています。あなたがゼルガディスさんが好きな事くらい、でも飽きられません!」
声を荒く叫ぶゼロス。
「ごめん・・・ゼロス、無理。ゼルの代わりなんて・・・思えない!」
はぁ〜
ため息を尽き、腕を緩めるゼロス。
「仕方がないですね。自分のものにするまで帰すつもりはなかったんですけど・・・そんな顔をされると・・・」
私は自分の顔を触ってはじめて気がついた。
私は涙を流していた・・・
次に目が覚めた時、私は宿のベッドの上でした。
テーブルにはゼロスの短い手紙。
ーーリナさんへ
好きです、いつまでも・・・
ゼロス
また泣いた。悲しくて。
すべてが終わってしまったみたいで・・・
絶望した。
あまりにもいっぺんに色々な事が起きていて・・・
わからなくなった。
トントン
扉をノックする音がする。
涙を拭ってから、
「誰?」
と聞いた。
入って来たのは涙をいっぱい溜めたアメリアだった・・・
「ひっくひっく。リナさーん。ゼルがディスさんが・・・。」
「落ち着いて、アメリア。どうしたの?」
「ゼルがディスさんに好きて言ったら、・・・無視されて、部屋から追い出されました。」
「そうなの・・・」
ーーホッとしてる。
アメリアには悪いけど
ーーやっと気がついた
『ゼルが好き・・・』
「大丈夫アメリア?」
「・・・リナさ〜ん!!」
アメリアは私に飛びついて泣き続けた・・・
止まらない滝のように。
アメリヤが泣き止んだのは朝の2時の事だった。泣き腫らした目を閉じ静かに眠っているがその表情は悲しみでいっぱいだった。
私は扉を静かに閉め、アメリアの部屋に行き寝ようとした。
「リナ。」
低い旋律の馴染みのある声。聞いていると安心できる彼の声・・・
振り向くとそこに、ゼルがいた。
気がつくと私はゼルの瞳に見とれていた。
「リナ、一杯どうだ、俺の部屋で。」
「え?うん、いいよ。」
私は頷いてゼルの後を追って部屋へ入った。
適当にナイトテーブルの上の物を退かし、ウイスキーと氷りを乗せ、二人でベッドの先に座り、少し飲んだ。ほのかに頬が熱くなり始めた・・・
「ねぇ、ゼル、なんでアメリアのをふったの?」
ギロっとこっちをゼルは向いた。目と目がぶつかる・・・
「何で知ってる?」
「アメリアが泣いて私の部屋に来たから。ねぇ、な・・何でそんな事したの?ふるにしても、もっと良い方法が・・・」
「俺は好きでもないやつに、優しくするのが優しさだとは思わない。」
「それでも、アメリアが可哀想・・・」
「・・・それが俺のやり方だ。」
何も言い返せなかった。そう・・・私がお節介なだけ・・・
ぐびっ
私はストレートにウイスキーを飲んだ。
「そうだとしても。相手の事も考えないと・・・そんな事してると仲間との関係が・・・」
「いいさ。そろそろ、お前達とも別れて又一人で旅をしようと思っていたしな・・・」
「な?!何で??どうして??」
混乱していた。
ーーゼルがいなくなる。傍にいない。
それだけで、胸が張り裂けそうだった。
「なんで???」
泣叫ぶように私は聞いた。
「・・・」
下を向いたままゼルは答えなかった。
沈黙が部屋を包んだ・・・
やけになって私はストレートをもう一杯飲んだ。いつもは美味しいウイスキーがほのかに苦かった。
「おいリナ、寄せ、そんなに飲むと体に悪いぞ。」
「うるさい〜!いいの私が飲みたいの!!」
「ほら、もう酔ってるだろ。」
「嫌だー!!のむ!!」
「こら、ビンをはなせリナ。」
ガラガラ、ドスン!!
ゼルがビンを取ろうとした所、私たちはバランスを崩し、ベッドの上に押し倒される形で倒れた。静けさが辺りに拡がる・・・
「ねぇゼル本当に行っちゃうの?」
潤んだ瞳でゼルを見つめた。泣かないでおこうと思いながら、頬を一筋の涙が流れた・・・
「本気で言ったの?ゼル、答えて!!」
「俺は、お前とはもう旅ができない。このまま旅を続けたら・・・狂っちまう。」
「・・・何で狂っちゃうの?」
「それは・・・」
「それは??」
また沈黙が流れた。私を見つめるゼルの瞳が余りにもきれいで、私は金縛りに合った・・・
ちゅ
ゼルの唇が私のに触れる。舌が口の中に侵入して来た。
息が荒くなり、息苦しくなる。それでもゼルはキスし続けた。
酔いもさめる程の長いディープキス。
「ゼル、な・・んで?」
「お前が好きだから」
「え?」
「ただの仲間としてしか見られていない事が分かったから・・お前の傍にいるのは辛い。」
ゼルは優しく私にまたキスした。今までに無い優しい笑顔で・・・
「・・・だから出て行くの?」
「ああ。」
「ちょっと待って私の気持ちは?!聞いてもくれないの??」
「聞かなくても分かる・・・」
「分かって無い!!」
私はゼルの首に腕を回した。
「・・・私もゼルの事が・・・好き・・・だから。」
「本当か?」
「ほんと!」
「嘘だとしても、もう離さない・・・」
ゼルは私のおでこに優しくキスした。
強度のストレスと不安、それに飲み過ぎであった私は急に安心した所為で眠ってしまった。
かすかにゼルの声が聞こえてきた・・・
「おやすみ、リナ。」
The End