やっぱりゼルリナ♪!


『いやー!!』

目の前に血が拡がった。真っ赤な朱色のあの人の血が・・・


さすがに赤眼の魔王は強かった。前のレゾ・シャブラニグドゥよりもいっそう力を溜め、魔族は反撃を試みた、世界を滅ぼす為に。大半の街はその衝撃波で埋もれ、燃え、そして滅んでいった。一つ、そして又一つ、世界は魔族に食い貪られていった。そんな中、必死に戦っていた少女とその仲間達がいた。それはこの世界に残る希望、そして後に語られる伝説・・・


「ドラグ・スレイブ!!」私は'力ある言葉'を放つ。いくら強いこの呪文でもさほど役には立っていなかった。
「リナ、いったん離れるぞ!」
「分かったガウリイ、今、行く。」
「リナさんこっちです。」
「アメリア、お前も急げ!」

みんなはお互いを森の中で、呼び合い確認しながら、西へ走った。北のカタートから魔族の攻撃を急に受け、セイルーンをはじめ数々の街や国が滅ぼされていった。アメリアの父はセイルーンを守り抜こうと最後まで戦い、戦死したとの報告を受けていた。その時アメリアは涙を堪え、泣かなかった。自分には他にやる事があると、父を誇りに思うとだけ言って・・・私には彼女は妹みたいだったので、とても悲しかった。下唇を噛むその表情が痛々しかった。

「みんな大丈夫?」
「俺は平気だ、旦那はアメリアにすり傷治してもらってる。」
「そう。ゼル調子は?」
「平気だ。それにしても一生続きそうだな、この戦い」
「・・・そうね、でも終わらせなきゃ。」
「ああ、そうだな。」
私はゼルを見つめた。お互い死ぬかもしれないと言う事は承知だった。
「お前本調子じゃ無いだろ。」
ふとゼルが呟いた。
「え?な・・・何で分かったの?」
「お前を見てればな。」
「ゼルにはばれたか・・・お願いガウリイとアメリアには・・」
「内緒だろ。」
「ありがと、ゼル」
彼はフッと笑った。なんでも解ったような無敵な笑顔。そんな笑顔を見るのが私の日課になっていた。

ズゥーン

空間がうごめく感覚・・・これは、魔族。
「ゼル、避けて!!」
私達は左右に倒れ込む。
「お久しぶりです、リナさんとゼルガディスさん。」
「その声は、貴様、ゼロス!!」
「覚えていてくれたんですね。嬉しいですよ。」
ゼロスはニコリと笑顔で笑った。天使みたいな笑顔を見て私はゾッとした。悪い予感がして。
「感動の再会を続けるつもりは無いんでしょ、ゼロス。」
「ええ、そうですね。ゼラス様に怒られてしまいますね。」
「いくわよ!」
「は〜い♪」

火花を散らす戦いは切って落とされた。


「はぁ!」

ゼロスの一声で黒い魔球が点々と現れ、ゼルと私の方へ向かって放たれた。
私はひたすら逃げ、ゼルも避ける事で精一杯だ。時より応戦したが、効果は無いに等しい。きっとゼロスを殺す事が出来るのは私の禁呪文、「ラグナ・ブレード」か「ギガ・スレイブ」だけ・・・

でも私には、どちらも制御できる程の魔力が残っていない。

「ゼル、アメリアとガウリイは?これだけの爆音よ。駆け付けて来るはず。」
「・・・」
「ゼル?」
「その話は後だ。」
「ないしょ話しですか?仲間外れなんて酷いですよ。」

私は彼の言いたい事が何か知っている・・・
悲しい真実、本当の事・・・
だけど認めなくては、現実を・・・

そうこれはリアリティー。

The truth.

逃げてはいけない、見つめなくてはいけない真実。

いつもとは違った戦いだった。なんだか悪い気がして、胸の中で渦巻く恐怖と不安。闇に飲まれる恐れ、負ける事に対しての悔しさ、そして何か大切なものを無くしてしまいそうな予感・・・私は集中できなくて、呪文が途切れ、途切れになっていた。

私のその一瞬の隙を見てゼロスは私に魔球を放った。振り向くと魔球は私に当たる目の前だ。

「リナ、危ない!」

『死』という言葉が頭を過る・・・

そして・・・


魔球は私にぶつかる前に破裂し、その勢いで何か重いものが飛ばされて来た。私はその勢いで木にぶつかり、吹き飛ばされたものと木に挟まれた。

「ゼル?!」
私は叫ぶ。私の前に立ちふさがり、爆風で飛ばされたのは、ゼルだった。血に塗れ、すべてが朱色に染まった。

『いやー!!』

目の前に血が拡がった。真っ赤なクリムゾン色のあの人の血が・・・

「ゼル!ゼル!!しっかりして!!」
「怒鳴らなくても・・・聞こえる、リナ。」
弱々しく彼が片目を開け言った。

私はゼルが死ぬ事がわかっていた。

「ゼル、どうして欲しい?」
「最後にお前の笑顔を・・・見たい。」
「え??・・・うん。」
私は最高の笑顔を作った。涙が出そうだけど、彼のために我慢して。
「そう。やっぱり・・・お前は笑顔が・・一番・・似合うな。」
「お世辞言っても何もでないわよ!」
ちょっと赤くなりながら言った。ゼルの息が荒くなってる。
「・・・その笑顔を・・・俺が・・守りたか・・った。」
「・・・」
「・・・リナ・・・・好きだ、お前が・・他の・・誰を・・好きでも・・・」
「・・・ゼル、私も・・・」

私はそこで何も言わなかった。彼の息が止まった事がわかったから。なぜかは知らないけど涙は流れなかった。

「ゼロス、そこにまだいるの?」
「はい。」
私の目の前にゼロスはあらわれた。
「何の様ですか、リナさん?」
「ゼロス、最初で最後のお願いよ。・・・殺して」
ゼロスがショックそうに聞く。
「なぜ?」
「私がいけないの、仲間の事よりゼル一人の事しか考えて無かった。誰よりも大切だったから。彼のいない今、私に世界の為に戦う理由は無いから・・・私を殺してゼロス。一人生き延びるのは辛すぎる。体が生きてても、心が死んでいたら意味が無い・・・」
「・・・」
「それに私は知ってる。ガウリイとアメリアも死んでいるんでしょ?ゼルは私が知らないと思っていたみたいね。確かに私の位置からは見えないから、二人のいた場所が。・・・ゼルって嘘が下手だから、すぐわかっちゃった。」
「リナさんの魔力なら、きっと魔族に勝てますよ、お一人で。」
「こんな力、欲しいわけじゃ無い。ゼルがいないなら、どうなっても、いいの・・・世界なんて、どうでも。」
「・・・」
「私の世界はゼルが回してるの。ゼル無しじゃ私は生きていけない。」
「貴方が死を求めているならば・・殺して差し上げます。」
「・・・ありがとう、ゼロス。ゼルに会わなきゃ、あんたに恋してたかもね。」
「・・・そうですか?」
ニコッ
と私は笑ってみせた。
「準備はいいですか、リナさん?」
「ちょっと待って。」
と私はゼロスを止めた。ゼルを抱き着き彼の耳に囁いた。
「私の告白を聞かないで死ぬなんていい度胸じゃないの。ぜったい見つけ出してやるから。」
そして、そっと頬にキスする。

「いいわ、ゼロス。」
「おやすみなさい、リナさん」
「おやすみ。」

私はゼルの後を追いかけていった。

The End