『My Magic Word of Power』(前編)



「・・・リナ・・」
誰かの呼ぶ声。
「・・・リナ・・さん」
誰かを私が読んでいる。

ーでもアノ愛しい声じゃない
 違う人の声。

「・・リナさん、起きてください。」
「・・・う・・ん、おはようゼロス。」
「おはようございます、リナさん。今朝はお味噌汁に鮭のご飯ですよ。」
「・・そう。」

私はゆっくり起き上がる。
頭がくらくらして、ベットを降りた途端倒れてしまう。

「リナさん?!大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫。自分で立てるから。」

よろよろしながら起き上がる。
後ろからゼロスが起き上がるのを手伝ってくれる。

「いい、大丈夫。本当にゼロス、平気だから退いて。」
「でも、・・・・」
「いいから!」
思わず叫んでしまった。

ー体が信号を出す。
 ちがう・・・・違う・・・・
 この人じゃない、この人じゃない

「・・すみません。リナさんが、そんなに嫌だとは、知らなくて。」
「・・・いい。誤らないで、私が悪いの。怒鳴って、ごめん。」

ー何かが無い。
 何か大切なモノを忘れてる。
 何か足りない
 満たされない。

食卓の席にゼロスと私は座った。
「ありがとね、私をここに居させてくれて。」
「どう致しまして。リナさんの為なら、いつでも(はあと)」
にこりと笑顔で笑った。

だがその笑顔の裏には何か感じる。
何かがあるのが直感的に分かる。

ー違和感、予感。
 何かが違う、あるべき所に何かがない!
 足りない、何かが足りない。

こんなに優しい人の横にいるのに。
綺麗な森の真ん中のかわいい一軒家に、かっこいくて優しい彼氏といるのに・・・

「・・・ゼロス。何か、何かいつもと違わない?」
「(ギク)な、何も違いませんよ。」
「3日前から何かスッキリしないの、頭が、もわもわする。」
「き、気のせいですよ。(ギクギク)」
「・・・本当に私は貴方と2年前から暮らしているの?」
「・・・(ギクギクギク)そ、そ、そうですよ。嫌ですね〜リナさん、からかわないでくださいよ。」
「本当に?」
「本当ですよ(はあと)、愛してます、リナさん。」
ゼロスの最高の笑みを見たからには言い返せない。

ーでも何かが変。
 変わった。
 違う。

ーどうして?
 なんで?
 何が足りないの?

ー恐い
 自分が誰なのか分からなくなる
 不安
 何が無いのか分からない自分が・・・
 押し寄せてくる波
 悪い予感
 何かが「違う」のに、何が「違う」のか分からない・・・

「リナさん、何をぼーっとしてるんですか?」
「・・・なんでも無い。ゼロスごめん、ちょっと、一人にして。」
納得いかなそうな顔をしつつ、
「分かりました。何かいる時は呼んでくださいね。」
「ありがとう、ご馳走様。」

私は部屋に向かう。
私の部屋だとゼロスは言っていたけど、何となく違和感がある。

部屋に入ると、大きなふかふかの温かな毛布に包まり、ベットに寝転がる。

「はあ〜、何なんだろう、この気持ち・・・穴の開いたような、この感覚・・・」

頬を水滴が流れる。

「悲しく無いのに、何で泣けるの?」

涙は止まらず、流れ続ける・・・

「・・・何で、泣いてるの?」

溢れる思い・・・

心に一つの文字が浮き上がる。
「不安」

「・・・ひっく・・・ひっく・・・」

声を押し殺し無く。

悲しい、淋しい。
彼がいないと・・・
心が押しつぶされる。

「・・・・・・ゼ・・ル・・・。」
知らず知らず声を発していた。

誰の名前かは知らない。

でも安心する、落ち着く名前。

「・・・ゼ・・ル・・・」
もう一度確かめるように言う。

「ゼルゼルゼルゼルゼル」
立続けに言ってみる。

ー安心
 気が安らぐ
 安らぎの呪文

何で忘れてたんだろう、この名前。
誰の名前だったっけ?

一切思い出せないけど、いい名前。

「・・・ゼル。」
再度呼んでみる。
その名前を噛み締めるように・・・

「・・・ゼル。」
「・・・呼んだか?」
扉の向こうに聞きなれた、安心する優しい声。

ずっと忘れていた、低い心地よい声。

ふわぁ〜

ー心の中が暖かい。
 忘れていた何かが扉の向こうにありそう・・・

「どうぞ、入って来て。」
知らぬ間に、私は声をかけていた。

続く・・・



『My Magic Word of Power』タイトルの意味は『力の出る魔法の呪文』です。
もちろんリナの魔法の呪文は・・・

では、後半は明日にでも載せます。
それでは、急いで書かなきゃ〜。(わんさかわんさか)

コメント、批判なんでもください。

セラフィーナ   Sealphina