評価  :至高の一作 :傑作! :読み応えあり  :十分楽しめる 
2002 June
6月読了分:    
   −22
「傀儡后」              牧野修      ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション     (-)
 「MOUSE」もそうでしたが、相変わらずドラッグの悪夢に満ちた作品です。作品のパワーは十分に認めつつも、どうしてもこのドラッグの感覚は好きにはなれないです。

−21
「ベロニカは死ぬことにした」  パウロ・コェーリョ   角川書店                 
 「
『二十四歳で体験し得ることを全て体験して(それも容易なことではなかったが)、ベロニカは全てが死で終わると信じていた。だから、彼女は自殺を選んだ。ついに自由の身になるために。永遠の忘却だ。』
 だが、ベロニカは再び病室で目を覚ます。そして、その彼女に待っていたのは、あと一週間の命という宣告だった。
 彼女が過ごす残り一週間のみの人生。その彼女の目に映るものは...」

 寓話です。
 勘のいい読者なら恐らくストーリーが途中で読めるでしょう。ですが、寓話の本質はそこにはありません。そのストーリーに何を見るか、むしろ読む側の意識が問われているのです。先に読んだ「アルケミスト」よりは、ずっと感情移入をして読むことができました。ベロニカが感じている鬱屈と世界に対する疑問が、感覚的にぴったり来るからかもしれません。次々と語り手を変える重層的な構成も効果的ですし、「アルケミスト」の透明な世界に対して、ややセンチメンタルなストーリーも好みです。
 ここまで書いて思うのですが、ネタバレせずに解説するのが実に難しい本ですね。ずばり、ダニエル・キイスを読んで泣いたことのあるあなた!あなたなら、絶対にお勧めの一冊です。
−20
「アルケミスト」          パウロ・コェーリョ   角川文庫 コ11−1           
 
アンダルシアの赤茶けた草原、そこで羊を追う少年サンチャゴに予兆は届けられた。彼は、はるかエジプトにあるピラミッドを目指して旅立つ。彼を待つ宝を見つけるために。
 砂漠にきらめく星のような透明感に満ちた作品です。夢を追い続けることの高揚感、不安、あきらめ、そして再び見出す夢への道。そんな人生の側面が、クリスタルのように純粋に結晶化されています。まるで聖書の預言者達の物語のように。非常に示唆に満ちた作品であり、学ぶことは多いのですが、どうしてもサンチャゴに対して「かもめのジョナサン」的な違和感が抜けませんでした(^^;。
−19
「外法陰陽師 二」        如月天音       学研M文庫 き6−2           
 
外法陰陽師シリーズ第二作目です。前作よりもさらに呪術合戦がパワーアップ!孤高の美形ネクロマンシー清高が張り巡らす陰謀の網に、中つ国を追放された男・漢耿星が再び挑みます。平安の華麗な美に満ちた都に繰り広げられる、呪札魔術、精霊魔術、ネクロマンシー入り乱れての呪術合戦。呪札によって作られた無数の蝶が、音もなく夜の空を乱舞する導入部は秀逸です。そして、クライマックスでは、ライトセーバーばりの宝剣の輝きが、闇を切り裂きます。
 今回初登場のヒロイン藤原道長の大姫のプリンセスぶりもキュート。ぼややん青年貴族・行成との掛け合いは実に天然系ほのぼの。その合間にはネクロマンシーによって改造された少女の悲しげな視線が...
 とにかくサービス溢れるヒロイックファンタシー系伝奇小説の傑作!
2002 May
5月読了分:    
−18
「太陽の簒奪者」         野尻抱介     ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション     
 「水星に突如出現したナノテクノロジーによる巨大構造物。マスドライバーによって軌道上に打ち上げられたそれは、いつしか惑星を取り巻くリングとなった。レンズの向こうに広がるその光景は、少女であった亜紀の心に焼き付けられた。それを作り上げたであろう異星人たち、いつしかビルダーと呼ばれるようになった彼らへのコンタクトという歴史の大きなうねりの中へ、亜紀は身を投じていく。いくつもの想いと共に。
 歴史の向こうに亜紀が見たものとは?
 圧倒的なスケールで描かれた、傑作ファーストコンタクトSF作品」


 久しぶりにハードなSFを堪能させてもらいました(^^)。  
 
 やっぱりハードSFは、科学考証よりも歴史を感じるかどうかですね。人間が自分の手ではどうにもならない自然を描き、それに時を越えて翻弄されていくさまを描くのが、ハードSFの醍醐味というものではないでしょうか。科学考証なんざ、そのためのツールです!(<神を恐れぬ発言)
 作品では、ヒロイン亜紀を中心に何人もの人々、そして人類全体がファーストコンタクトという歴史のうねりに翻弄されていくさまが、実に見事に描かれていました。さすがは野尻氏、緻密でありながら詩的な雰囲気を漂わせた世界設定です。
−17
「魔術探偵スラクサス」     マーティン・スコット  ハヤカワFT306              
 
「エルフの織った魔法の布が盗まれた。裏町にオフィスを構える酔いどれ探偵に依頼に来たのは、王女様。腰の周りの肉は厚いが、敏腕探偵スラクサスは、グレートアックスを担いだハーフエルフの美人剣士、マクリと共に調査に入る。手始めは、オルクが管理する動物園のドラゴンの飼育係!」
 さあ、あなたはこのごった煮に、げっぷがいっぱいでしょうか? それとももう一皿いけそうですか?
 なんでもおいしく食べられるあなた! あなたにはハードボイルド素材・ファンタシー風味・RPGソースがけといった、複雑で且つスパイシーな味のハーモニーが待っています。ご賞味あれ!
−16
「平安陰陽奇譚・天狗変」    如月天音       学習研究社                
 
平安陰陽奇譚シリーズ第二作目です。
 今回は、奇跡の噂もある霊験新たかな寺が舞台。そこで起こる僧の連続殺人、つきまとう天狗の噂。そんな中に光栄と晴明の陰陽師コンビは、乗り込んでいきます。信仰の場としての寺では、陰陽道の技も邪教扱い、いつもとは僧たちの反感と勝手の違う展開に戸惑う二人。しかし、少しずつ解き明かされていく謎は、人の心の底にうごめく闇と陰謀を照らし出して生きます。
 いつも通りに、ボケと突っ込み全開の光栄・晴明コンビに加えて、光栄に恋する稚児・松寿が登場! 三つ巴のやり取りも、爆笑です。二作目とあってキャラもこなれてきて、実にテンポのいい作品に仕上がっています。
2002 March
3月読了分:
−15
「動物化するポストモダン」    東浩紀      講談社現代新書 1575          
 
オタク文化の分析が主な題材なのですが、結局それを通して日本の戦後文化変遷を、世界的な潮流と引き比べながら解き明かしてくれる名著です。
 著者はオタク文化の担い手次のように世代分析をしています。
 60年代生まれが、オタク文化の第一世代とされ、「ヤマト・ガンダム」現役世代と名づけられています。この世代の特徴は、個々のストーリーの背後に、大きな物語を読み込むのに熱狂することであると、著者は分析しています。その潮流が細分化され爛熟期を迎える時に10代を過ごしたのが、70年代生まれの第二世代。そしてエヴァンゲリオンが現役の80年代生まれが、第三世代であり、この世代の特徴は、個々の物語や現象の背後に、大きな物語ではなく、一種のデータベース(設定世界)を見るとのこと。この辺から、なぜオタクたちがオリジナルのストーリーからは完全に離れてしまいながら、キャラ萌え二次創作に没頭するのかを解き明かしています。
 この辺の世代分析は、60年代生まれの私が70年代、80年代の人と作品論を交わす時に感じた感覚のずれを、実にすっきりと納得させてくれました。また、サブカルチャー発祥の分析では、ヘーゲルが出てきたり、懐かしいポストモダンの流行が取り上げられたりと、幅広い観点から精力的に分析しています。社会構造から作品世界までを、俯瞰的に実にわかりやすい言葉で語っていますので、かつて、ニューアカデミズムの難解さに辟易された方にもお勧めの一作です。

−14
「ほしのこえ」(アニメーション作品)  新海誠   コミックスウェーブ(DVD発売元)    
 「暴走野郎」のこじまさんお勧めで、短編映画上映館「トリウッド」まで見に行った作品。
 その結果...
 
ラストでは、滂沱しそうになるのを、歯を食い縛って耐えました。
 おセンチ爆発のSFアニメ作品です。

 「火星での異文明遺跡発見とファーストコンタクトから8年。人類は選抜メンバーによる調査隊を送り出すこととなった。何気ない日常の中、中学最後の夏を迎えたミカコとノボル。二人が見上げる青い空を、白い宇宙船が昇っていく、その時ミカコは自分があの宇宙船のメンバーに選ばれたことを告げた。
 次第に、宇宙という空間、過ぎていく時に隔てられていく二人の距離

 『このメールが届くまで1年。ノボルくん、私のこと、忘れちゃうかな...』

 私たちは、たぶん、宇宙と地上にひきさかれる恋人の、最初の世代だ。」

 普通なら、狙いすぎだよなって、へそが曲がりそうなストーリーなのですが、日常のシーン一つ一つが実に鮮やかできれいで、とにかく引き込まれます。コピーに確か、「実物よりも美しい色彩のあふれたシーン」とかあったような気がしますが、まさに鮮やかな記憶を、そのまま映像にしたようです。
 そして、離れていく二人の距離を示す、携帯のメールの到達時間。木星までなら30分、冥王星なら5時間、でも、かなたでは...凡百のSF作品よりもはるかに、宇宙での距離が、人と人の繋がりにもつ意味を実感させます。宇宙のシーンも実に幻想的でかつ、リアルです。矛盾する言い方ですが、見た方にはわかっていただけるのではと思います。
 ラストでは、これまた切ない曲が、これでもかというくらい涙腺を攻撃(^^)。
 しかも、驚くべきことに25分のフルデジタルアニメーションを、作者である新海さんが一人で作られたそうです。
 4月19日にはDVDも発売予定ですので、是非とも見ていただきたい一作です。
 また、「トリウッド」で、発売記念上映会が4月19日・20日に開かれるそうですので、東京近郊の方はいかがでしょうか。

 「ほしのこえ」 オフィシャルサイト
 「Other voices -遠い声-」 新海誠氏オフィシャルサイト
−13
「クリスタル・ドラゴン」・19巻  あしべゆうほ   ボニータCOMICS               
 
20年以上前、まだファンタシーが指輪物語と共に一部の人々の間で読まれていた頃から始まったこの作品。いよいよ19巻で物語の全貌が明らかとなってきました。

 もう一度、基本設定を復習すると、
 「エリン(アイルランド)の見習いドルイダス、アリアン・ロッドは、自分たちの一族を、魔と結んだバラーの一族に滅ぼされてしまいます。バラー倒すための助け手を求めて、アリアンは、族長の娘ヘンルーダと共にブリテンへ、そして大陸へと旅を続けます。しかし、アリアンに秘められた大きな力は、精霊の王、神々たちを巻き込んだ大いなる運命をそれぞれの地へ運んでいきます。杖なきドルイドを持つという竜の杖、その杖があるという水晶の城へとアリアンはたどり着けるのでしょうか。」

 こんなかんじでしょうか。
 ケルト世界の描写から始まった物語は、バイキングの北欧、そしてローマへと限りなくひろがっていき、ある意味、上の設定はどうなったのか、本当にタイトルのクリスタルのドラゴンは出てくるのか、と心配になるほどの壮大な展開のストーリー展開です。しかし、遂にこの19巻でレギオンの秘密も明らかになり、物語の背景設定であるドワーフの王も「収穫の時か」などと思わせぶりな言葉を言っているところから、ストーリーの核心が迫っているようです。実はかわいい女だった「おっかさま」の恋の行方も含めて、次巻が待ち遠しい作品です。
−12
「平安陰陽奇譚・愁恋鬼篇」   如月天音     学習研究社                  
 
下でレビューした如月天音氏の過去作品ということで、購入してみました。いわゆる阿倍晴明ものなんですが、主人公をあえて賀茂光栄(賀茂家の若様)に持ってきたり、晴明が美青年ではなかったりと作者らしいキャラ立ての工夫が見られます。数多の作品のある流行のジャンルの中で、作者らしい個性がはっきりと見える佳作です。
2002 Feburary
2月読了分:
−11
「惑わしの森」           飯野文彦    祥伝社文庫 い11−1             
 
「樹海」、そこに漂う濃密な命の息吹、そしてその奥に広がる暗き異界。
 樹海という言葉は、様々なイメージを広げる幻想物語の格好の舞台でしょう。その意味で、樹海探検中心に進むこの物語は実に幻想的な異界の雰囲気が漂います。そして、男と女のもつれ合った糸に死と生の光があたる展開も、なかなかいい感じです。ただし、惜しむらくは、この小説、女性に魅力がない。これでは、ゲームの脇役キャラなみの薄さです。もし、ヒロインに魅力があれば、ダークな夢枕獏といった感じに仕上がったはずなのに、残念です。
−10
「快読シェークスピア」      河合隼雄、松岡和子  新潮文庫 か27−5         
 
リーの「影に歌えば」を読みだしたのですが、これはシェークスピアをわかってないと楽しめないことに気がついて、あわてて読んだアンチョコ本です。さすが河合隼雄氏、ユング心理学をベースに実に鮮やかに物語を解き明かします。そして翻訳家としての松岡和子氏の豊富な知識が、解説に厚みを加えています。
−09
「少年と少女のポルカ」     藤野千夜    講談社文庫 ふ52                
 
森奈津子氏お勧めの一作。
 内容はそう、ヴィヴィッドで、ちょっと懐かしいくらいの青春小説です。
 ただし、登場する少年・少女たちの多くが、もしヘテロセクシュアルのみを正常というのであれば、異常と切って捨てられる対象なのですが。
 人間が、動物のようにオスとメスしかなく、性の盛りの時にのみオスとメスが求め合うのなら、この小説は書かれなかったでしょう。ですが、人間の男と女は、オスとメスを鋳型にはしているものの、同じではありません。中性の子供から、育っていく過程でそうなっていくものです。故に、この物語の登場人物たちのように、オスでありながら女であったり、オスでありながらオスを求める第三の性になったりするのでしょう。
 それでも、どこかこの物語を青春小説と感じるのは、子供から男や女になっていく時、自分の中にあるもう一方のジェンダーを、影に押し込んでいった姿を浮かび上がらせるからなのかもしれません。
 だれしも、男の中に女を、そして女の中に男を持っているものなのですから。
−08
「邪馬台国の殺人」        中津文彦   カッパノベルズ                   (−)
 
邪馬台国はどこにあったのか。これは日本史というより、日本人のルーツに関する永遠のロマンですね。この素材を扱うだけで、作品の魅力度がアップするような気がします。ただし、さすがにこの作者の感覚の古さまではカバーしきれませんでしたが(笑)。
2002 January
1月読了分:
−07
「影に歌えば」           タニス・リー   ハヤカワFT83                  
 
正統「ロミオとジュリエット」ですね。脇役の部分を上手く膨らまして、絢爛たる長編小説に仕上げています。見所は、ルネッサンスの豪華さを、リーらしい華麗な色使いで再現しているところでしょうか。コスチュームの描写も鮮やかで美しいです。ただし、一種の本歌取り小説ですので、本格的に楽しむにはシェークスピアを読んでいることが前提のようですね。
−06
「月と太陽の魔導師」       タニス・リー   ハヤカワFT42                  
 
太陽と月、白と黒、そして男と女...
 全てが二つに分けられた奇妙な異世界を舞台とする、サイケデリック・ファンタシーです。
 古い映画ですが「アクエリアス」とか「ザルドス」とかのイメージでしょうか。70年代の色使いとプログレっぽい音楽が似合いそうです。ミュージカルか、トリスタンとイズーばりの楽劇にしたらかっこいいかも。

−05
「神殺しの丘」           日向真幸来   ソノラマ文庫926                 (-)
迫害されたキリスト教が国教となり、ついにローマから異教の追放が始まった。神殿に使える楽師カノンは、その歌が受け入れられる土地を探し、ブリテンの地にまでたどり着いた。そこで彼を待ち受けていたのは、ケルトと異邦のの神々の争いであった。」

 のっけから言ってしまえば、次回作に期待というところでしょうか(^^;
 ストーンサークルを舞台にした異郷の神々の降臨シーンは、非常に魅惑的です。この辺は私の異世界好みを実にくすぐるのですが、いかんせんキャラが立ってない。
 まず、ヒーローのカノンですが、出だしと中盤と最後で、それぞれが別人です。もちろんキャラクターの多面的要素というのは、キャラを深める上では必要です。しかし、読者はそのキャラの全人生を知るわけではないので、そのキャラだとはっきりわかる一貫した特徴がなければなりません。それも、他のキャラから抜き出るようなはっきりした特徴が。そうしてキャラが立った状態にならなければ、ストーリー展開にメリハリが欠けてしまうのです。この作品ではヒロインも似たような状態ですね。
 ただ、舞台設定は緻密に作りこんでいるし、考証もしっかりしていますので、もう少し魅力的なキャラが暴れてくれれば、いい作品になるのではと期待しています。
−04
「サムライ・レンズマン」     古橋秀之    徳間デュアル文庫 ふ1-1           

 
君は太陽ビームに心を躍らせたことがあるか!
 スーパーモーラーと惑星要塞の激突に、
 デュオデック魚雷と負爆弾とQ砲の乱舞に目を輝かせたことがあるか!
 よし、お前にはこの本を読む資格がある。


 えー、それほどのものかはどうかは別として(^^;、正調レンズマンの世界です。かつてレンズマンシリーズに心をときめかした方にはお勧めですね。あの人は今、的な楽しみもありますし。個人的にはポリティカル・コレクトネスの観点から、クリスにもうちょっと活躍の場があるかなあと思ったのですが。欠点といえば、それだけに終わってしまい、新しい作品として新機軸が見られないことでしょうか。
−03
「外法陰陽師」         如月天音    学研M文庫 き-6-1               
 
異界の者と人間とのハーフ。類まれなる能力を持ちながら、どちらの世界からも拒否される孤独な運命。
 「吸血鬼ハンターD」に連なる、孤高のヒーローの系譜に、新たな男の登場です。
 名を漢耿星、ただしこれは平安の日本に潜む故の仮の名。中(つ)国で王朝を一つ影から滅ぼし、ただいま流罪の身。そんな物騒な男のもとに、恐れ気もなく通う平安ぼややん青年貴族、藤原行成。黒猫の姿に身を変え、耿星を監視するはずが、からかうのが常の妖、羅々。こんなメンバーが、平安の夜、百鬼夜行の世界に繰り広げられる、恐るべき呪詛の陰謀に挑んでいきます。
 平安貴族の光と、その呪術にまみれた闇の部分が良くかけていますし、ヒーロー耿星が姿を変え、性別を変え謎に挑むところは実にかっこいい! 敵役の妖術師も、えげつないまでのネクロマンシーを駆使して耿星の前に立ちふさがる。陰陽師ものには、いささか食傷していたのですが、大当たりの一作でした。
−02
「無面目・太公望伝」     諸星大二郎   潮漫画文庫                    
 
諸星ワールドの懐かしさについ手に取った一冊。
 80年代の作品ですが、「孔子暗黒伝」や「妖怪ハンター」の雰囲気は健在です。こういう作品は、こうした文庫の形で残っていって欲しいですね。
−01
「永久帰還装置」        神林長平    朝日ソノラマ社                  

 
神林版「ターミネーター」、以上、解説終わり(^^;