タニス・リー

夜話を紡ぎ出すブリテンのシェハラザード姫、
タニス・リーの紹介です。

Special Contents


Graphical Story Digest
「平たい地球」シリーズ

ストーリーイメージ 「邂逅」
「Faces Under Water」

Letter from Lee: 

 リー氏からファンレターの返事をいただきました。その中で、自作の色使いを語る部分が、ヴィジュアルで美しかったので、ご紹介したいと思います。

      

ストーリーイメージ 
「よみがへり」
「闇の公子・カジールとフェラジン」
 画像をクリックするとストーリーダイジェストをオリジナルグラフィックとともに紹介します。


All Works of Tanith Lee & Review Links

(タニスリー作品リスト&レビューリンク)




My Review of Tanith Lee's Works

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銀色の恋人 / _ ゴルゴン / _ その他 / _アンソロジー・雑誌収録


平たい地球シリーズ(ハヤカワFT45、86、89、121、122、140)

内容: 平たい地球を舞台とした、妖魔と人との夜と黎明の物語。昔語りのような擬古調の文体を使って、闇の残酷さに満ち溢れる物語が次々と繰り広げられて行きます。

(内容はストーリーダイジェストをご覧ください。)

 ストーリーイメージ 「よみがへり」

寸評: 千夜一夜物語に引き比べられる圧倒的な物語性。登場人物達は己が運命のまま、夜の物語を一つ、また一つと紡ぎだしていきます。物語は次の物語を生み続けます、やがてくる黎明まで...
この物語性こそファンタシーの真髄と言うべきものでしょう。そして、登場する妖魔の王、人間達も、役割としての運命を演じきって、苦悩しながらも気高さを失いません(ぐじぐじと悩むだけの内面告白が何ページも続く某国産大河ヒロイックファンタシーとは大違い(^_^!))。事実(Fact)としての人間を追い求め続けるノンフィクションや自然派小説に対して、「人間にとっての真実(Truth)は物語の中にあるのだ」というファンタシーの存在意義を見事に示した、純正ファンタシーの傑作です。

真説キャラクター紹介

(未収録の外伝)
「The Man Who Stole the Moon」  Year's Best Fantasy 2

 「ジャキア(Jaqir)は、盗めぬものなど何一つない例え母鳥が抱く卵さえもと呼ばれる盗賊のプリンス。しかし彼は、盗んで捨てた女の復讐から、王の前へ引き立てられてしまう。王の前でも自分の盗みの技を披露するジャキア。その彼に王が下した審判とは、その技で月を盗んでみろというものであった...」

 「惑乱の公子」と「熱夢の女王」の中間に入るサイドストーリーです。そうですねえイメージ的にはアラジンのようなほら吹き話が主軸なのですが、ドリンの活躍で平たい地球らしい雰囲気が出ています。そして、今回の見所は、ややセンチメンタルなアズュラーンの君でしょうか。もちろん悪の君たる微笑は健在なのですが。
 それと、5人目の闇の君は登場しませんでしたね。私はジャキアがチャズの君のように活躍するのかと思ってましたが。


「The Origin of Snow」  リー公式サイト収録

 「いまだ、闇の君主となる前のアズュラーン、彼は天啓に導かれて西、北、南から集った賢者達の前に現われる。そして、天啓の秘密を暴かんと神々の住まう天空へ、竜の背に乗り訪れる。すでに自らの沈黙の思考の内に閉じこもっていたはずの神々にアズュラーンが見出した秘密とは...」

 リーからの素晴らしいクリスマスプレゼント、平たい地球シリーズの最新短編です!闇の君主となる前のアズュラーンのトリックスターぶりが楽しい、正に外伝らしい短編です。ストーリーも「雪は何故、生まれ出でたか」というタイトルにぴったりファンタスティックなもので、最後のシーンは本当に子供にベッドで聞かせてあげたなったくらい美しいです。これを読むと次に雪を見る目が変わるような気がします。
 しかも今回の短編で、今まで謎であった闇の君たちの正体が一気に明らかになるという素晴らしいおまけ付き。長い英文ではないので、リーファンの方は是非ともチャレンジしてください。

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幻魔の虜囚(ハヤカワFT51)

内容: 愛のファンタシー作家タニス・リーを決定づけた記念碑的作品。

 「奴隷娘シャイナ。攫われて奴隷に落ちた身でありながら、彼女は運命に対して誇りを失わなかった。しかし、彼女は恋に落ちた。想った相手は旅芸人の一座の黒髪の王子、そして恐るべき黒き魔術師ヴォルクハヴァールの人形。
 昂然と一人で生きてきたシャイナが初めて頼ったのは、村外れに住む魔女であった。魔女はヴァルクハヴァールによって魂を奪われた黒髪の王子ダジエルの事を語り、取り引きを持ち掛けた。ダジエルを奪い返す手段と彼女の血の一部、、、
 愛に捉えられたシャイナの旅が始まる。
 シャイナの愛とヴォルクの憎しみが繰り広げる双面の神を巡っての戦い。
 そして、その果てに待っていたのはシャイな自身も思いもよらぬ運命であった。」

寸評: _ 愛のファンタシー作家タニス・リーを決定づけた記念碑的作品。
 時として、初期の作品にその後の作者が展開させていくものがぎゅっと詰め込まれている胚芽のような作品ががあります。この作品もそんな作品です。ここで示されたテーマ「人の魂こそ魔術師にして神秘、そしてその魂を導くものは愛。」、これこそ、その後のリーの作品を一貫して流れる響きとなりました。そして、この言葉の裏返しとして提示されている「あらゆる神神は人の祈り(恐れ)の影にすぎない」というテーゼこそ凡百の幻想作家からリーを際立たせているポイントです。   作品に戻ってみましょう。物語は黒髪の美青年ダジエルへのシャイナの恋から始まります。そしてシャイナはダジエルを開放するために魔術師ヴォルクハヴァールと対決することを決意します。
 そして、まるで舞台劇のようなクライマックス。
 ヒロイン・シャイナは愛の神ソヴァントヴァジナット、敵役・ヴォルクは恐怖の神タカーナの名において魔術をふるい争います。しかし、この二つの名を持つ神は本当は一つの神であり、真の闘争はシャイナの「愛」とヴォルクハヴァールの「憎しみ」との争いであったのです。そこでは神は、その二人の命をかけた祈りが形を取るための触媒にすぎません。人の想いが持つ強さこそ魔法であり、故にこそ魂は魔術師なのです。それはシャイナの祈りと魔法がヴォルクを打ち負かした時、今まで黒き神タカーナであった神像が白き神に変身することに良く現れています。白と黒、光と影、そして愛と憎しみ。この作品はそんな劇的な視覚効果がふんだんに使われていて、まるで壮大な劇場でのオペラを見るようです。
 ただし解説にもありましたが、キャラクターが類型的すぎるという見方はあるでしょう。特にヒロインシャイナは、普通の基準からすれば充分ひねりが入っているものの、リーのキャラクターとしてはややいい子ちゃんという感じがするのは事実です。その辺は好みの問題ですが、私にはこのテーマをさらに肉付けするために、平たい地球がかかれたような気がします。なぜなら、やはりそのクライマックスで黒き神アズュラーンは白き娘アズュリアズによって闇から光へ、恐怖から愛へその姿を変えられてしまうのですから。 _ /Next _ /Top 

ヴェヌスの秘録シリーズ タニス・リー/産業編集センター

       

ヴェヌスの秘録1 水底の仮面

 18世紀のベヌス。緩やかな斜陽の光の中、美と退廃を誇る都。
 そんな都に耽溺し暮らす青年フリアンは、運河に一つの仮面を見出す。
 水面に漂う顔...仮面はそんな不吉な気配を漂わせていた。

 フリアンによって錬金術師シャーキンのもとに持ちこまれたマスクは、魔術によってその中に古き呪いが吹き込まれていることを表した。そして、都の流行り歌を作った青年の死がそれと関わりがあることも。
 その流行り歌は笑わぬ姫君とその求婚者達の物語を語った歌。
 フリアンは仮面を見出したその場所で、歌に謡われた通りの女と出会う。
 フリアンと笑わぬ仮面を持つ女...
 物語が今始まる。

 退廃の都ベヌス、仮面の謝肉祭の一週間に繰り広げられるサスペンスホラー
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  ストーリーイメージ 「邂逅」


ヴェヌスの秘録2 炎の聖少女

 
 天使を夢見る少女 それは母の夢から受け継がれた
 少女が天使との法悦を夢見る時、あたりを焼き尽くす炎が目覚める。
 危機の訪れたヴェヌスに、その炎が踊る時、
 少女の運命は...

 火をモチーフにした、ヴェヌスの秘録 第二巻

原書に挑戦される方へ−作品解説
読後感想: エウリディケ−闇と血の人形愛
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パラディスの秘録 堕ちたる者の書 タニス・リー/角川ホラー文庫(H508-2)

内容:
 黄の殺意: 「その娘の名はジュアニーヌにしてジュアン、少女にして少年、そして聖女にして野獣...
救いを求めた少女がその兄によって突き倒されるとき、堕落の都パラディスの夜に一匹の野獣が生まれた。昼は尼僧院に少女として暮らし、夜は悪の衝動に突き動かされる少年として生きるアンドロギュヌス。
 その奔放な生活に堕ちていく少女が生きるパラディスに、黒死病の波が押し寄せた。少女を踏みにじった世界が崩れ落ちていく。その黒死の嵐の中、少女は自らのうちにある世界を幻視する。悪魔にして天使、光の存在に導かれて...
 アガペーとエロスが交錯する宗教エクスタシーが、今、闇の言葉で綴られた。」
 他、紅に染められて、青の帝国の二編からなるダークファンタシーの中編集。パラディスシリーズ第二巻

「黄の殺意」書評: 世界の終わりと永遠なる世界 

序論: キリスト教の光と闇

本論: 丸い地球のアズュリアズ―ジュアニーノ
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タマスターラ(ハヤカワFT96)

内容: インドを舞台とした幻想連作短編集
「ナーガ(龍)の都」:インドの強烈な光の中で、繊細なイギリス人の少年デイビットは脅えてくらしたいた。しかし、そこにアグニーニと名乗る美しい女が現れたことで、彼のインド神話への旅が始まる。英雄としての生を体験した少年に何が起こるのか。

「炎の虎」:濃密なジャングルの中、ペターサンは虎に引き裂かれたように殺されていた。その小屋に残された謎の詩をたどって彼の死の謎を追い続けた「私」の前に現れたのは、一対の光る目を持った燃える霊虚の姿であった。最後の詩の真の意味とは。

「タマスターラ」:暴虐なテロリストルナールと、密林に不時着した彼の前に現れた謎の娘タマスターラ。仲間からの処刑によって彼の最後が迫る。彼にしか見えないその娘と彼との真の関係が見出されたのは、その死の瞬間であった。タマスターラ、暗黒の星、魂に刻まれた影...
他四編

寸評: _ インドの熱く湿った夜。その夜を舞台にリーの夜話が繰り広げられて行きます。
「ナーガ(龍)の都」:何もかも溶かし尽くすようなインドの暑さの中、繊細な北国の少年デイビットはいつもその居場所を探していました。そこに現れた成熟した美しい女(ひと)アグニーニ。彼女に導かれて少年は神話世界の冒険に旅立ちます、類まれなる英雄として...なさずに終わる中でありながら、この二人の関係には濃厚なエロティシズムが漂い、そしてインド神話のディーバとアスラの戦いの世界を蘇らせた佳作です。

「炎の虎」:一人の男が死に際に残した謎に満ちた詩。「私」はその謎に強く引きつけられて密林の夜を歩き、ついにはその森の霊に出会ってしまいます。同じインドの密林でもジャングルではなくデカン高原辺りが舞台でしょうか。その静まり返った木々がもつ霊的な雰囲気が全編に溢れ、詩に隠された謎を追うというミステリー的な緊張感も感じさせてくれる一作。

「タマスターラ」:タマスターラ、暗黒の星。それを作品ではこう説かれています。あまりにも強い光を見た時に目に残る残像の影、見ることのできなくなった黒い点。もし、これが肉体でなく魂に起こったとしたら、魂は自分でも見えないその影を背負って幾つもの生をわたっていくことになります。その影が結び付けた、男と女。これも一つの恋物語なのでしょうか。

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冬物語(ハヤカワ文庫FT43)

内容: 追うものと追われるもの。リーの語りが堪能できる1対の佳作による中編集。

  「冬物語」:海辺の巫女オアイーヴ。産みの響きのする名前を持った少女は、聖なる骨を納めた祭壇に仕えていた。満ち足りた祈りの日々に突然訪れた灰色の髪をした男グレイ。彼はオアイーヴにも優る魔法の力によって聖なる骨を盗み出した。暖かい日々に訪れた突然の隙間風のような男の訪れ、それはオアイーヴを旅へと駆り出した、聖なる骨を取り戻すために...オアイーヴを待ち受ける魔法と時が織り成すゲーム。そのゲームの果てにオアイーヴが選択した運命とは。

 「アヴィリスの妖盃」:アヴィリスは陥落した。その火と瓦礫の中で傭兵ハヴォルに見出された盃は金色に輝き妖しい宝玉の光に満ちていた。それを奪い去った三人の男達。しかしその内二人までは、すでに夢の中で訪れる亡霊の呪いにより無残な死に様を遂げた。残るハヴォルの逃亡のたびが続く。怪しげな色彩に満ちた世界。ハヴォルの逃亡の旅に終わりは来るのか。

寸評:
「冬物語」
 満ち足りた祈りに日々に訪れる突然の運命。ジュブナイルとして発表されたこの作品は、魔法に満ちた少女時代から目覚めというジュブナイルらしいテーマを持っています。しかし、リーの語りの織り成す世界は、そのテーマをありきたりの成長物語から美しいファンタシーの小品に変えてしまいました。リーの語りは、少女が選び取った世界を、色彩の鮮やかな対比によって描き出しています。それは、巫女として孤独に生きるオアイーヴの世界が冬の白で満たされているのに対して、最後に女としての運命を選び取ったオアイーブの世界が色彩、特に瑞々しい青に満たされていることに最も良く現れています。この物語一応ハッピーエンドですが、そこはタニス・リーなかなかひねりの効いたどんでん返し待っています。

「アヴィリスの妖盃」
 ホラーです(^_^)。呪われた盃に触れて逃亡を続ける男達。なかなか姿を見せない影に潜む敵。そして、仲間は次々に惨殺されていく。見事にホラーのお約束のストーリーでありながら、リーに語らせればこれほどまでに妖しい色彩に満ちた物語となりました。陥落する都アヴィリスの黄金の炎と闇の黒、妖盃と亡霊達が見せる緑や赤の光がきらめく世界。そして、この物語は「冬物語」を裏返すように、雪の白い世界につつまれることによって浄化されて行きます。
 まあ、最後の結末は少し「リー様それはあまりに都合が良いのでは」という部分もありますが、やはり、少年少女にはハッピーエンドは必要なのでしょう。
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銀色の恋人(ハヤカワ文庫SF725)

内容: 近未来を舞台としたタニス・リー流のピュアなラブストーリー
  「銀色の肌、赤い髪をしたシルバー、彼は鮮やかに少女ジェーンの前に現れた。そして少女はシルバーに恋をする。しかし彼は人間のコンパニオンとして開発された、ロボットであった。彼の魂の存在を信じる少女は、シルバーに愛を語り続ける。時に優しく、時にエゴイスティックに。ナルチシズムを乗り越えて少女が彼への愛を確かめた時、奇跡は起きる。タニス・リーの描く狂気に満ちたそしてあまりにもピュアーなラブストーリー。」

「銀色の恋人」書評: ファンタシーと物語 

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ゴルゴン・幻獣夜話 (ハヤカワ文庫FT217)

内容: 幻獣をテーマにファンタシー、SciFi、ホラーと広いジャンルの幻想ストーリーを集めた短編集
 表題作ゴルゴン:「エーゲ海が洗うギリシアの島々。しかし、沖に離れた緑の孤島については誰も語りたがらない。そんな謎に引かれた作家は驚くべき話を耳にする。その島にはゴルゴン(メデューサ)がいるというのだ。作家はその謎を追うべく誰一人近づかないその島に渡る。そしてその作家が目にしたのは一人の女性の姿...日常の世界に待ち受ける残酷な運命という名の恐怖を描いたホラー」

寸評:
 ちょっとこんな想像をしてみてください。
月夜、テーブルの上にはランプの明かり、そしてワイン。ソファーにもたれたリーが、あの猫のような瞳であなたを見つめながら語る物語。次々と物語は紡ぎ出されていきます、時には恐ろしく、時には皮肉な結末に満ちた、そして時には悲劇の愛がきらめく話の数々。「こんな話はどうかしら...」そんな声が聞こえそうな夜話を集めた作品集です。

 表題作「ゴルゴン」は、ホラー作家リーの真骨頂。何一つ超自然の存在が姿をあらわさないのにもかかわらず、そこに運命という名の残酷さが世界を支配しています。まるで、何気なく語られる、おとぎ話の残酷さの前に立ち尽くした時のように...

 「マグリットの秘密情報員」は、ほんの時たまこの世界に姿を見せる異世界、そして異形のものに魅せられた女の話。リーにしては珍しい等身大のこのヒロインは、リーにダブって見えて、まるでリーその人から自らの神秘体験を語られているようです。

 「白の王妃」は白と黒の対比の鮮やかな世界に語られる悲劇の愛。白の世界に閉じ込められた白い王妃に訪れる黒い影、愛と残酷、そして開放...清浄な世界の中淡々と流れる時と迎えるドラマチックな結末がモノクロームの世界に展開されていきます。

 その他、佳作のSciFiショートショートやコメディータッチの作品などリーのストーリーテリングが楽しめる短編集です。
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その他の作品

「幻獣の書」 パラディスの秘録 タニス・リー 角川ホラー文庫 560 
  中世ヨーロッパの華麗なゴシック世界を舞台にした耽美エロティックホラー。パラディスの秘録シリーズ第二巻になります。美しき女の幽霊との出会いから始まる、1000年時をまたぐ呪いの物語。ストレートホラーとしては読みやすい佳作です。
 しかし、、リー様の作品としては
「平凡」という感じですねえ。まず、悪魔が美しくない。やはり、悪は悪の美学がないと、このままではただの動物ですね。それと、ヒロインも妖しくない、なんか典型的なホラーのヒロイン達という感じで平板な気がします。やはりリー様のヒロインは一癖ないともの足りませんね。

「血のごとく赤く」(ハヤカワ文庫FT234) 
 グリマー姉妹による闇の童話集。お馴染みの昔語り、「ハーメルンの笛吹き」、「赤頭巾」、「美女と野獣」がリーの手によって妖しく美しく蘇る。リーの語る闇と悪に満ちた世界に、忘れられていた昔語りの真の姿が一つ、また一つと現れていく。

「黄金の魔獣」(ハヤカワ文庫FT224) 
 インドからイギリスへ、退廃と美と血に満ちた人狼ストーリー。 どこか、アン・ライスのインタヴュー・ウィズ・ヴァンパイアを思い出させるような、旧世紀のエレガントさに満ちています。(いつもどおり超絶美形キャラが闊歩するリー作品ですが、主人公のダニエルとその敵ハイペリオンの関係は、敵対するが故に愛よりも深い絆に結ばれていて、やXいファンが喜びそうな雰囲気が濃厚(^_^))。

「闇の城」 (ハヤカワ文庫FT53)
 荒れ果てた丘の上に立つ闇の城。その中で養われかつ閉じ込められた少女リルーン。真の竪琴弾きであり呪歌歌いでもあるリアは、その城の呼び声に引き付けられてリルーンを助け出します。しかし、リルーンにはかつてその城を悪に染めた邪悪な力が潜んでいたのです。
 ちょっとダークなジュブナイルファンタシー。囚われのわがままなお姫様と世慣れた竪琴弾きというまあ、リーとしては比較的お約束的なストーリー展開ですが、その闇の描写はストーリーに充分精彩を与えています。

「白馬の王子」 (ハヤカワ文庫FT48)
ストーリー: 荒野を行く白馬の王子、待ち受けるは巨大な真鍮の龍、魔物、妖術使い。そして、王子には使命を果たすという燃えるような決意が...無かった!? 記憶をすっかり無くして愚痴をこぼしまくる王子と、彼を支えるしゃべる馬のコンビ繰り広げるラプソディー。この最悪の無気力コンビは、ファンタシーランドを救えるのか。ブリテンのシェハラザード姫、タニス・リーが放つ、面白うてやがて悲しきユーモアファンタシー。

コメント: もし、あなたがファンタシーファンを自認し、数多くのファンタシーを読んでいるなら、この本は是非ともお勧めです。恐らくあちらこちらに「にやり」とさせられるような、いわゆるファンタシーをおちょくったシーンを見つけ出すと思います。この無気力王子の「やってられないよ」というつぶやきとともに... 
 しかし、さすがはタニス・リーそれだけでは終わらせません。「ジュウェルスター!」のときの声が響くクライマックスでは、ファンタシーファンなら誰でもこの王子愛さずにはいられないような結末が待っています。

「月と太陽の魔導師」 (ハヤカワ文庫FT42)
 太陽と月、白と黒、そして男と女...
 全てが二つに分けられた奇妙な異世界を舞台とする、サイケデリック・ファンタシーです。
 古い映画ですが「アクエリアス」とか「ザルドス」とかのイメージでしょうか。70年代の色使いとプログレっぽい音楽が似合いそうです。ミュージカルか、トリスタンとイズーばりの楽劇にしたらかっこいいかも。

「ドラゴン探索号の冒険」(現代教養文庫1320 A&F) 
_ リーお得意のボケ王子が総出演のユーモアジュブナイル。しかし、なんといっても精彩を放っているのが、意地悪魔女のマリーニャ。リー自信の意地悪ぶりが目に浮かぶような(^^;、味のあるキャラです。

「死霊の都」 (ハヤカワ文庫FT50)
 「森には死人が現れる。それに触れた人間は悪に染まる。閉鎖された村に住む少年ショーンは森の闇の中に置き去りにされた。彼が触れた死人、鴉の一族とは。ショーンは村を追放され死人の都を目指す。死人の王と対峙するために...」
 どちらかと言えばエピックファンタシー、最終章のタイトルが「王の帰還」ですからねえ。リー様としてはこういうのも書けるんだぞということが言いたかったのかなという程度の出来でしょうか。特に珍しくヒロインが類型的で、あまり魅力的とは言えないですね。ショーンは元気で良いですけれど。

「影に歌えば」(ハヤカワ文庫FT83) 
 正統「ロミオとジュリエット」ですね。脇役の部分を上手く膨らまして、絢爛たる長編小説に仕上げています。見所は、ルネッサンスの豪華さを、リーらしい華麗な色使いで再現しているところでしょうか。コスチュームの描写も鮮やかで美しいです。ただし、一種の本歌取り小説ですので、本格的に楽しむにはシェークスピアを読んでいることが前提のようですね。

アンソロジー・雑誌収録の作品

「PERSIAN EYES」  /DAW30周年記念アンソロジー 未翻訳・DAW社 
 
 「時はローマ、パラティーノの丘に屋敷を持つリヴィウスは一人の奴隷少女に目を止めた。どこか常ならぬ雰囲気に心を惹かれて。「顔を上げなさい」、伏せたままの少女に彼は命じた。その顔にあったのは二つの緑の輝き、ペルージアン・アイズ。妻がこの新しい奴隷について言っていたことが頭をよぎる。だがそれは、リヴィウスのありふれてはいても満ち足りた日常からの転落の始まりであった。
 最初に気づいたのは子供たちであった。崩壊した家、崩壊した夫、妻フルヴィアはその謎を追い求めて、奴隷少女の軌跡をたどる。何故彼女は、次々と主を移ったのか? そして、なぜ贈り物として我が家に着たのか?
 その謎の行き着く先は...」

 ちょっと思い出したのは、映画・「ゆりかごを揺らす手」。
 短編のTVドラマとしてBBCあたりに作ってみてもらいたいような、切れのいいホラー短編です。最近のリー作品の特徴である、テンポの良いサスペンスタッチのストーリー運びが、この作品でも冴えていて、奴隷少女の影が幸せな家庭に射していく導入部はかなり怖いです(^^;。
 また、いつもの幻視の力で、古代ローマの生活、色彩が実に生き生きと再現されていてますし、解放もありうるという身分としての奴隷と、その主人との微妙な人間関係も実に良く表現されて、物語世界にリアリティーを与えてます。
 まあ、その分耽美はやや押さえ気味でしょうか。

「貴婦人(ラ・ダーム)」 /死の姉妹 グリーンバーグ&ハムリー編 扶桑社ミステリー 0508 
 「
青く美しい海に浮かぶ一艘の白い船。戦争から戻った一人の男は、その船に魅せられた。穢れを知らぬような純白のその姿、その船に抱かれるように航海に出た男の身に起こるのは...」
 夜の眷属を描くアンソロジーの中で描かれた、絵画的な美しさに満ちた短編です。

「顔には花、足には刺」 /魔猫    エレン・ダトロウ編       早川書房 
 「魔女狩りが始まった。二人の魔女はその魂を猫に移す。月夜、彼女達の前に現われた高貴な猫の正体は。」
 物語の中で登場人物達がさらに物語を語る。入れ子となった物語は、幾つもの世界に包み込まれていきます。まるで、我々自信の現実ですら一つの物語と化すように。リーらしい語り口に満ちた短編です。

「ヒューマン・ミステリー」 /シャーロック・ホームズ 四人目の賢者 原書房 
 現代の作家達が、それぞれの趣向でホームズを蘇らせるというアンソロジー。
 りーとホームズという奇妙な取り合わせですが、リーらしく意地悪に料理しています。
ホームズというのは、プライドの塊のような人で、おまけに、コカイン中毒の上に、女性差別論者であったりと、現代であれば探偵よりは犯罪者になったのかもしれない困った人なわけです(^^;
 作品の中では、リーらしい情熱的なヒロインが、そんなホームズの姿を顕わにしていきます。。

「焔の虎」 /不思議な猫たち      J・ダン&G・ドソワ編      扶桑社ミステリー 0722 
 
タマスターラに収録。

「時の過ぎ行くままに」 /雑誌収録      SFマガジン 1987年4月号 52P-69P 
 
まさに「As Time Goes By」が聞こえてきそうなストーリーです。時空から切り離された酒場、そこで出会う男と女。けれど二人は、以前出会っていた...タイムパラドックスと男と女の出会いを、リー流に料理したSF短編の佳作です。


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