アンソロジー



タニス・リー     HOME


雨にうたれて (1987)
ジャンフィアの木 (1989)
貴婦人(ラ・ダーム) (1995)
顔には花、足には刺 (1996)
ヒューマン・ミステリ (1999)
KISS KISS (1999)
THE BEAST (1999)
A WOLF AT THE DOOR (2000) 工事中!

雨にうたれて  CRYING IN THE RAIN 〈OTHER EDENS〉 (1987)
              Edited By Christopher Evans & Robert Holdstock

  未来の地球。 放射能によって汚染された雨を避け、苦しみの中で人々は生きていた。

  だが〈センター〉では、一握りの特権階級の人々が豊かに暮らしていた。 〈センター〉を覆う〈ドーム〉と〈入関〉の厳しいチェックによって、〈センター〉は汚染から守られている。 外から見れば楽園のような世界がそこにはあった。

  16歳の少女グリーナは、ある日母親に連れられて〈センター〉に〈入関〉した。 健康なグリーナを、〈センター〉内の裕福な男に引き渡すためであった。


  サイエンス・フィクションの短編です。 過酷な世界での、母と娘の互いへの愛情が、ほろ苦く、もの悲しく、描かれています。 なんとも不器用な愛情表現が、心の中に静かに染み入ってくるのです。

  物語の舞台である〈センター〉の中と外の世界の落差によって、汚染に苦しむ人々の生活がとてもリアルに感じられます。 こうした物語の土台である世界観は、長編であっても短編であっても、リー作品では常にしっかりと築き上げられます。 それはもう、リーの感性が、無数の世界に繋がっているとしか思えません。

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ジャンフィアの木  THE JANFIA TREE 〈BLOOD IS NOT ENOUGH〉
                           (1989)  Edited By Ellen Datlow

  ある重い病気を患う作家が、友人の所有する別荘で療養のために滞在することになった。

  彼女は別荘についてすぐに、甘い香りを放つ白い花の木を見つけた。 昼は微かだが、夜になるとその香りはむせかえる程に強くなる。 その見知らぬ木に興味をもった彼女は、友人からその名を聞き、そしてその「ジャンフィア」という変わった名の由来を調べくれるよう、頼んだ。

  ジャンフィアの木は、奇妙な言い伝えを持った木であった。


  吸血鬼アンソロジーに収録された作品です。 現在では様々な吸血鬼、様々な物語が多くの作家によって生み出されています。

  リーも多くの吸血鬼譚を書いていますが、その中でも、この作品は独特の雰囲気を持っているように思えます。

  ジャンフィアの木にまつわる話が、アラビアン・ナイトの一節のようであるのも、リー作品の特徴でしょう。 息がつまるような、夜の重い空気を感じられる作品です。

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貴婦人(ラ・ダーム)  LA DAME 〈SISTERS OF THE NIGHT〉 (1995)
              Edited By Barbara Hambly & Martin H.Greenberg

  人生の半分を兵士として過ごした青年ジェラックは、戦争のはびこる陸地に嫌気を感じ、海沿いの村を訪れた。 そこで彼は白い優美な小型の船を見つけた。 持ち主の痩せた男を探し、船を買い取りたいと銀貨を出して見せた。 だが男はすぐに肯かなかった。

  男は言った。 「貴婦人(マイ・レディ)なんだ」


  女性の吸血鬼をテーマとしたアンソロジーでの作品です。

  短編ながら、相変わらずリーは密度の高い物語を作りだしています。 女性にみなされる事の多い船を、吸血鬼になぞらえ、白と赤を巧みに散りばめた美しい情景によって、吸血鬼譚であるにも関わらず、生々しさよりも、海の中にある超自然の存在を崇高に見せています。

  吸血鬼譚のバリエーションの多さにも、いつもながら驚かされます。

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顔には花、足には刺  FLOWERS FOR FACES,THORNS FOR FEET
       〈TWISTS OF THE TALE〉 (1996)  Edited By Ellen Datlow

  魔女狩りの時代、雪山の麓の村に、アナシンとマリセットという名の二人の若い魔女がいた。 魔女狩り師の訪れを聞いた二人は、その魂を猫の姿に変えて村を逃れた。

  そして二人は真っ黒な雄猫と出会う。 雄猫は堕天使である事を二人に告げ、魔女狩りに動揺する二人に、4つの不思議な猫の物語を語り始めた。


  猫をテーマにしたアンソロジーに収められた作品です。 さすがに猫と共に暮らしているリーは、生き生きと猫の生活を描写しています。

  そして作中で語られる4つの物語それぞれに、様々な猫たちが登場します。 その姿はまさに猫ならではなのですが、全ての猫に魅力的な強い個性があるのです。 また〈平たい地球シリーズ〉を彷彿とさせる語りが、「これぞリー作品!」なのです(笑)

  猫好きの方にはたまらない、ミステリアスな魅力溢れる作品です。

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ヒューマン・ミステリ  THE HUMAN MYSTERY
              〈MORE HOLMES FOR THE HOLIDAYS〉 (1999)
     Edited By Martin H.Greenberg & Carol−Lynn Rossell Waugh

  ある年の冬、クリスマスの数日前に一人の女性が、ホームズとワトソンの元を訪れた。 彼女の名はエレノア・キャストン。

  彼女は遠縁の叔母が亡くなった事により、財産を得た。 初めのうちは余裕に満ちた生活を幸せに思って過ごしていたが、いつからか使用人がおかしな態度を取り、辞める者まで出始めた。 そして彼女はキャストン家にまつわる、奇妙で恐ろしい伝説を叔母の残した文書の中から発見した。

  エレノアはその伝説の謎を解き、不安を取り除いて欲しいとホームズに依頼した。


  クリスマスに活躍するホームズをテーマにしたアンソロジー。 お馴染みシャーロック・ホームズを現代の作家が色々な角度で書き上げています。

  そこにリー作品が収録されていると教えていただいた時は、とても驚いたものです。 推理小説まで書くなんて、リー様の守備範囲はどこまで広がっていくのだろう? なんて思いました。

  ですがやはりファンタジーの女王、ミステリー作家の作品とは一味も二味も違うホームズでした。

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KISS KISS  〈SILVER BIRCH、BLOOD MOON〉 (1999)
       Edited By Ellen Datlow & Terri Windling  AVON BOOKS

  『私』は小さな領地を持った貴族の娘であった。 11歳の誕生日に、領主である父から金の毬を結婚の時の持参金として贈られた。 だが『私』は館近くの湖に、その毬を落としてしまう。 現れたのは蛙の姿をした精霊、もしくは魔物。

  だが毬を拾う代わりに彼女に付いてきた蛙は、彼女の周囲にいる誰よりも彼女をいたわり、優しかった。蛙を毛嫌いしていた『私』も、やがて蛙を大切な友人と思うようになっていく。

  だが彼女が16歳の誕生日をじき迎えるという、ある冬の日・・・


  フェアリー・テール「蛙の王子様」のバリエーションです。 リーは以前にも『血のごとく赤く』で「彼女の未来」というアジアン・テイストの「蛙の王子様」を書いていますが、それとはまったく違う物語に仕上がっています。

  他のフェアリー・テールについてもそうですが、慣れ親しんだ物語をリー独自の世界へと、見事なまでに昇華させてます。

  私としては、ホラー・タッチの「彼女の未来」よりも、こちらのほろ苦い恋物語の方が印象深かったです。 ラストでは、蛙への主人公の想いに、ほろっとさせられました。(;_;)

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私の拙い抄訳でも、読んでみたいという方はメール、掲示板にてご一報下さい。

 


THE BEAST  〈RUBY SLIPPERS、GOLDEN TEARS〉 (1999)
       Edited By Ellen Datlow & Terri Windling  AVON BOOKS

  イゾベルは父によって、ある若い富豪ヴェサヴョンに引き合わされた。 彼は一人、姿のない召使いにかしずかれ、高いタワーの最上階の豪邸に、様々な稀少な美術品に囲まれて住んでいた。

  若く美しい二人は出会った時から互いに惹かれあい、彼はイゾベルに琥珀と金で作られた薔薇のネックレスを贈った。

  当然のように二人は結婚式をあげ、タワーの中で暮らし始めるが・・・。


  塔と薔薇でおわかりだと思いますが、〈美女と野獣〉のバリエーションです。 『血のごとく赤く』の中にもサイエンス・フィクション版がありますが、それとはまったく違った物語が展開しています。

  タイトルが〈野獣〉だけなのには、ちょっとした意味があります。 この辺の苦みは、やはり大人のためのフェアリー・テール、リー作品の面白いところでしょう。

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私の拙い翻訳でも、読んでみたいという方はメール、掲示板にてご一報下さい。

A WOLF AT THE DOOR  
 〈A WOLF AT THE DOOR ;and Other Retold Fairy Tales〉(2000)
  Edited By Ellen Datlow & Terri Windling  SIMON & SCHUSTER






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