長 編  1991〜



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BLACK UNICORN 〈ユニコーン・シリーズ T〉(1991)
黄金の魔獣 (1992)
DARK DANCE 〈血のオペラ・シリーズ T〉(1992)
PERSONAL DARKNESS 〈血のオペラ・シリーズ U〉(1993)

BLACK UNICORN 〈 UNICORN SERIES T〉 (1991)

  魔女であるジェイヴは、砂漠に囲まれた砦を治めていた。 だがジェイヴの16歳の娘、タナクィルは友達の一人すらなく、母には構われず、孤独な日々を過ごしていた。 それどころか時折砦のあちらこちらに漏れてしまう母の魔法の片鱗に悩まされていた。

  ある時、母の魔法の影響によって、人の言葉を話すようになったピーヴの一匹が、タナクィルの元に一本の不思議な骨を持ってきた。 水晶のように透明で、月光のように輝くその骨を、ピーヴは他にも探しているようで、しきりにタナクィルに骨をせがむ。 そして、ピーヴと共にタナクィルは全ての骨を砂漠から掘り出し、組み立てた。 するとそれは一頭のユニコーンの姿となった。


  未翻訳の〈ユニコーン・シリーズ〉1作目です。 この後、『GOLD UNICORN』『RED UNICORN』と続きます。

  魔法使いの娘であるのに、ほとんど魔法を使えない少女タナクィル(Tanaquil/取りあえずこの読みにさせてください(笑))。 彼女がユニコーンの魔法に翻弄されながら、母がタブーとしている父を捜すため、旅に出ます。

  なんといってもピーヴ(peeve)がお茶目です。 トラブル・メイカーの彼がユニコーン以上に活躍してくれます。 ピーヴは、狐のような大きな耳を持ち、猫と小型犬の中間のような姿をしています。 『GOLD〜』のイラストレーターは彼をとってもキュートに描いています。 リーも楽しんで彼を書いていたそうです。

  もちろん色鮮やかな魔法も次から次へと現れます。 そしていつもとはちょっと違った角度から、今度の魔法は描かれています。 ラストのどんでん返しもリーならではです。 ああ、ぜひ翻訳して欲しいものです・・・(祈)

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黄金の魔獣  HEART−BEAST (1992)

  イギリス人青年ダニエル・ヴェームンドは、遙か東方の地で「狼」と呼ばれる大きなダイヤモンドに出会った。 ダニエルはその呪いに選ばれ、魅せられたかのようにダイヤモンドへと導かれたのだった。

  そして呪いは満月の光と共に、美しいダニエルを醜悪な魔獣へと変化させた。 魔獣となったダニエルは無差別に人を八つ裂きにしていく。

  だがそのダイヤモンドはすぐ様彼から奪われ、フランス人の商人の手に渡ってしまった。 熱病にも似たダイヤモンドの呪いに捕らわれたダニエルは、商人を追って北へと向かう船に乗り込んでいった。


  豪華絢爛な破滅の物語。 怪物が登場しますが、恐怖感はありません。 ですがリーならではの目も眩むような美青年と美女が、転げ落ちるように血みどろの破滅へと向かっていく様が凄絶です。

  個人的にはホラー・ストーリーはハッピーエンドであって欲しいのですが、この物語はそういった型には嵌められません。 (もともと恐怖を追求した作品ではないと思うのです。 ホラー小説と言っていいものか疑問です)

  虐げられている人間が、強運と自らの意志によって幸せをつかみ取る物語を、いくつも描いているリーですが、この物語では登場人物は自ら破滅を選び取っていきます。 破滅を選択する理由は様々ですが、彼らには破滅こそが財産や社会的地位よりも魅了されるものなのです。 呪いの魔獣は彼らの求めに応じているだけなのかもしれません・・・。

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DARK DANCE 〈 BLOOD OPERA SEQUENCE T〉 (1992)

  霧のロンドン。 レイチェラ(Rachaela)はただ一人の肉親である母と死に別れ、静寂を好み、ひっそりと一人暮らしていた。 じき30歳になろうとしていたが、特に恋人を求めるでなく、だが長い黒髪と薄青の瞳を持つ美しい女であった。

  そんなある日、勤め先の古書店に客を装って見知らぬ男が、親類からの手紙を彼女に手渡した。 その一族の名はスカラベ(Scarabae)。 一族の元に来るようにという弁護士の勧めをレイチェラは断るが、一族の圧力によって仕事を失い、やむなく彼女は一族の住む地へと向かう。

  辿りついたロンドン郊外の館は、海を望む崖の上に立っていた。 そこには風貌の似た二十人ばかりの一族が住んでいた。 そして、レイチェラが物心つく前に姿を消した父親アダムス(Adamus)がいた。 だが70歳近いはずの彼の姿は、若く美しい青年のものであった。


  〈血のオペラ〉シリーズの第1弾。 数多い吸血奇譚の一つです。 陽光を避け、夜と美しいものを愛する謎の一族スカラベ。 一族のことを何一つ知らないレイチェラは、彼らの奇妙な振るまいに、苛立ち、怯え、拒絶します。 ですが、若いままの父アダムスに出会い、彼女の運命はさらに深くスカラベ一族に引き込まれていきます。

  リーならではの色鮮やかな夜の情景が、繰り広げられます。 その中で個性豊かなスカラベ一族の面々が、一つまた一つと人ならぬ姿を垣間見せていくのです。

  残念なことに謎の総ては明かされません。 吸血鬼という言葉がでてきますが、一族の人々はレイチェラに対し、はっきりとそれを肯定しないのです。 一族の謎は次作へと続きます!

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PERSONAL DARKNESS 〈 BLOOD OPERA SEQUENCE U〉 (1993)

  海辺の館が焼失した時に、焼死したはずのレイチェラ(Rachaela)の娘、ルツ(Ruth)が生きていた。 だがレイチェラと生き延びた一族は、すでに他の館に移った後であった。

  姿はハイティーンの少女であっても、まだ幼いルツは、助けを求める保護者として、かつて彼女をレイチェラと共に育ててくれた老女エマ(Emma)を探しながらロンドンへと向かう。 しかしその行く先々で、ルツは幼い残虐さのままに、出会う人々を殺していく。

  一方、スカラベ一族の館で過ごしていたレイチェラの前に、白髪の青年マラク(Malach)と長身の美女アルシネ(Althene)が現れた。 彼らもまた、スカラベの一族であり、マラクはルツを狩るためにやってきたのだった。


  〈血のオペラ〉シリーズ2作目です。

  一族の邪悪な血が勝ったために、彷徨える殺人鬼となったレイチェラの娘ルツ。 一族と同じように老いが止まってしまったレイチェラ。 二人を巡ってまた新たな一族マラクとアルシネが現れます。 そして徐々に若さを取り戻す老いていたはずの一族、カミロ(Camillo)とミランダ(Miranda)。 一族に魅せられ巻き込まれた人々が、翻弄される様がリアルに描かれています。

  さらに新たな、人とは異なる一族の能力が現れます。 一般的な吸血鬼の姿はそこにはありません。 それが魅力的であり、テンポの良い展開に、辞書のような厚さも何のその(^o^)、自分でもびっくりする早さで読み終わってしまいました。

  もちろん謎も続きます。 一族の『スカラベ』という名から想像できるように、どうやら彼らの発祥は古代エジプトに関係しているようです。 でもやはり、はっきりとした説明はありません。 僅かなビジョンや会話の所々に見えるだけです。 もうこれは、がんばって続きを読むしか、すっきりできないようです(笑)

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