短編集  1987〜



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妖魔の戯れ 〈平たい地球シリーズ X〉 (1987)

妖魔の戯れ  NIGHT’S SORCERIES 〈 FLAT EARTH X 〉 (1987)
 ★夜の娘、昼の望み★

  口減らしで捨てられ、寺院で虐げられ育った少年〈兜虫〉。 空腹のあまり蝋燭を盗み食いしてしまった罰に、森で起居する貴人の元に使いに出された。 だがその貴人と姫は、妖術使いとも噂されていた。

 ★夜の子ら★

  美しい娘マルシネは、裕福な父のもとで何不自由なく暮らしていた。 ところがある時、コルチャッシュ卿が結婚を申し入れてきた。 使いの者が差し出した財宝の数々に、父は申し出を受けた。 だが、マルシネはやはり裕福な隣家の息子ディルに、密かに思いを寄せていた。

 ★放蕩息子★

  長者の息子ジャイレシは、生まれた時から全てに恵まれていた。 だが、すべてにおいて恵まれ過ぎた生活は、ジャイレシの心から何かを欠くことになった。 やがて放蕩を始めた息子を諫めるため、父親はジャイレシを知人の元で働かせるために旅立たせたが・・・。

 ★月のドゥーニヴェ★

  妖魔ヴァズドルーの公達ハズロンドは、夜の君アズュラーンの娘アズリュアズへの贈り物として、黒馬と黒鷲との間に交配種を作り出した。 卵から生まれ出たのは翼を持った美しい馬と、馬のような四つ足を持つ醜い鷲。 やがて育った二つの魔性の生き物は、人の世に波紋を広げていった。

 ★薔薇のごとく黒く★

  ジャラシルは三人の老僕にかしずかれ、一人砂漠の中の家に住んでいた。 魔女であった母親が残した守りのお陰で、彼女は平安のうちに暮らしていた。 やがてジャラシルが年頃の娘になった頃、流浪の若者の一団がジャラシルの家の近くへと辿りついた。 若者を率いていた若き指導者ゾーレブに、ジャラシルは心を奪われてしまった。

 ★戯れる者★

  ある村に、〈凶運〉と呼ばれる幸運に見放された女がいた。 だがある時、〈凶運〉の周りで二つの兆しが現れ、それを先触れに老いた男と女の物乞いが、彼女の家を訪れた。 〈凶運〉は快く迎え入れ、貧しいが出来る限りのもてなしを二人にした。 そして・・・。

 ★魔法使いの娘★

  魔法使いラザク卿のもとに、夢見がちな乙女シェムシンは嫁いでいった。 ラザク卿の恐ろしい噂に怯えていたシェムシンだが、夫となった男の美しい顔を見るやその虜となった。 一方ラザク卿は、ある野望のために、シェムシンの美貌を必要としていただけであった。


  〈平たい地球〉シリーズの5作目です。 『熱夢の女王』で繰り広げられた、アズュラーンの娘アズリュアズの魂の遍歴。 その物語の中で語られなかった、妖魔や闇の君、そしてアズリュアズが立ち現れ触れていった、人々の物語です。

  長編の1〜4作目とは趣が変わって短編集となっていますが、『熱夢の女王』の世界が背景となっているので、読んでいてどきどきしてしまうのです。 いつアズリュアズが現れるのだろう? どう妖魔たちが人々を翻弄していくのだろう? また、妖魔たちやチャズ、アズリュアズが見せる、いくつもの姿に驚かされます。 読み返す度に、「この物語は別格なんだな〜」と思ってしまうのです。

  もう〜、とにかく読んでください。 それしか言葉が浮かびません〜!!(笑)

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