ピアソラはモダンタンゴの鬼才と呼ばれる。彼の作品は、従来のタンゴの持つ概念を超越した彼独自の「ニュー・タンゴ」である。
アルゼンチンタンゴの強烈な2ビートのスタイルを取りながら,クラシックやジャズといった新たな要素を多分に取り入れ,従来のタンゴとはまったく違う音楽のスタイルを作りあげた。
幼少からアメリカのニューヨークで育ったピアソラは,ほとんど独学でバンドネオンを修得し,18才の頃にはすでにバンドネオン奏者としてデビューしていた。

バンドネオンとは、アコーディオンと同じように携帯版オルガンのようなものであるが、アコーディオンと違うところは、規則的に鍵盤が並んでいないということ。
一見バラバラに配置されたような30個ばかりのボタンが並ぶ。最高10までの和音が出せ,しかも音域も実に幅広い。演奏にはかなりの技術を要するという。

彼の音楽は、聴いている者に挑みかかってくるかのような激しさを持っている。サウンドは息苦しいまでに凝縮され、常に爆発する危険をはらんで進行する.。曲が終わったあとまで胸騒ぎがおさまらない。そして、タンゴの持つ郷愁をそそるようなメロディーに加え,彼独自の悲哀が音楽の中に満ち溢れ、私の心を捉えて離さない。




Astor Piazzolla
アストル・ピアソラ(1921〜1992)
〜タンゴの鬼才
ピアソラは1921年、アルゼンチンに生まれたバンドネオン奏者で、46年に初めての自己の楽団を結成。
50年代にはクラシックの作曲家を目指すが、その挫折を乗り越えて再びタンゴの世界に戻る。
そして50年代半ばからタンゴの新しい地平を開拓し世界的な作曲家、演奏家として知られるようになっていった。
しかしその生前は、今我々が思っているほどには評価されず、没後世界中で脚光を浴びることとなる。