あてのない
        Love letter

  いつもの年よりも、冬将軍は控えめな気がします。
  それでも、出会う人との挨拶は「寒いですね。」という日々。
  お元気ですか?
  空気が乾いていますが風邪をひいてはいませんか?

  仕事先でであったひとりの女性。
  向学心が旺盛で、頭が良くて、
  気持ちを嫌味なくストレートに表し
  私よりもずっと年上なのに、気取らず構えず
  あまり得意でない日本語で親しく話してくださる
  笑顔が素敵な方です。

  山茶花を見て
  「似ているけれど私の好きなのとは違う。」
  とおっしゃるので、詳しく聞くと
  その方がお好きなのは椿の花でした。

  椿と山茶花の見分け方を、お教えしたら喜んでくださり
  さっそく電子辞書を取り出して、母語のスペイン語で調べます。
  でも、英語でもスペイン語でも、椿も山茶花も同じCamellia です。
  
  それでも、次に逢ったときに
  「この前山茶花を見ました。あなたのことを思い出しました。」なんて
  言ってくださいました。

  その方が、母国に帰ってしまうことになり
  仕事先で最後にご一緒する日に、何か差し上げたいと思い
  でも、大げさなプレゼントは気を使わせてしまうからと
  手作業の干支の金太郎飴と、いくつかの写真にしました。

  写真は、その方が大好きな富士山を仕事場から写したものと
  仕事場に続く銀杏並木、そして、仕事場の庭に咲いていた
  ヤブツバキと山茶花です。

  日本語と英語のキャプションをつけてプリントしたものを差し上げると
  とても嬉しそうに少女のような声をあげて
  いつもの素敵な笑顔を見せて喜んでくださいました。

  高価なプレゼントでなくても、ふとした会話の中に出た
  好きなものを覚えていたことを喜んでいただけたようです。
  
  そして、こんなふうに素敵な笑顔をみせてくださったことが
  私への何よりのプレゼントでした。

  どうぞお元気で。 
  母国での幸せな日々をお祈りしています。 
  

   2009年 1月18日  
  
   寒々とした空が
   ひときわ春を待ちわびる気持ちにさせる日に
    
   
  ヤブツバキの花  
  
   陽だまりで春が来るのを待ちきれないように
   一輪だけ咲いていました。。