Gently



       
 降誕祭で賑わう人々の中に芽衣は背の高い人物を見つけた。そして・・・・
 その日を境に、レオニスと芽衣の仲は急速に近づいて行った。
「隊長さん?居る?」
  執務室の扉を少し開いて中を覗き込む芽衣の姿に苦笑してレオニスは返事をする。
「あぁ・・・居る」
「えへへ・・・また来ちゃった。」
 少し照れながら部屋の中に入る芽衣にレオニスは優しく笑って応える
「こう日を置かずに私の所に来ているとキールに怒られるぞ」
「だって・・・勉強ばっかりしてるの嫌なんだもん」
「もうすぐ試験だからな・・・キールも自分の成果が試されると思っているんだろう」
「ま〜ね・・・でもこう毎日毎日山のような課題出される身にもなってよ」
  頬を膨らませて言う芽衣にレオニスはしょうがないと言う表情をして、芽衣の側に近寄り芽衣の顔を覗き込みながら、なるべくキツクないように言葉をかける。
「息抜き程度なら私も構わないが・・・試験が終わる迄は少し大人しくしてた方がいいぞ」
「だって〜!」
 芽衣は再び頬を膨らませて今度は少し傷ついた瞳をしてレオニスを見つめ返す。
「そう、怒るな。私もお前に側に居て欲しいのは一緒だ。」
「隊長さん・・・」
 今までは、お互いの気持ちを確認するまでは絶対に聞けなかったであろうレオニスの言葉に芽衣は頬を染めて笑顔になる。
「ほ・・・ほんと?」
「私がお前に嘘をついてどうする?」
「だって・・・だって信じられないんだもん」
「莫迦だな・・・・私はお前に嘘などつかない、これは絶対だ」
 優しく、でも真剣な眼差しで言われて芽衣は耳まで赤くなって俯いてしまった。
「メイ?」
「・・・し・・い」
「なんだ?・・・すまない聞こえなかった?」
「もう!・・・・嬉しいって言ったの!」
 再度聞き直したレオニスに芽衣は真っ赤な顔でレオニスを見上げて応えた。
 あまりに愛らしい仕草にレオニスは思わず芽衣を抱きしめて彼女の髪にキスをする。
「た・・・隊長さん?」
 胸の中でおそらく真っ赤になって戸惑っているであろう芽衣にレオニスは更に彼女の感触を確かめるように、ほんの少し彼女が苦しくないように気遣いながら腕に力を込める。
 そんなレオニスの胸に自分の頬をすり寄せてくる芽衣に愛しさがこみ上げてレオニスは彼女の耳元で静かに囁いた。
「何時になったら・・・名前で呼んでくれる?」
「え?・・」
「お前とこうして思いを通わせ合ってから、もう大分過ぎた・・・」
「う・・うん」
「未だにレオニスと名前では呼んではくれないんだな、メイ」
「・・・・」
 レオニスは抱きしめていた腕を緩め芽衣の顔を覗き込むように屈む
「メイ・・・そろそろ私のことを隊長さんではなくて、名前で呼んではくれないか?」
「・・・・・」
「それとも、嫌か?」
「そ・・・そんなこと無い!」
 少し寂しそうに笑ったレオニスに芽衣は思いっきり頭を振って否定する。
 そしてゆっくりとその小さくて蕾のような唇を動かした。
「レ・・・・レオ・・・ス」
「もう一度・・・」
「レオ・ニス」
「もう一度・・・」
「レオニス・・」
「それでいい・・」
 芽衣が自分の名前を呼んだことに、満足そうに頷くとレオニスは再び芽衣を抱きしめた。
「ちょ・・ちょっと・・たい・・じゃなくて、レオニス?」
「なんだ?」
「あんまりひっついてると誰か来た時どうするの?」
「どうもしない」
「?」
「どうもしない・・・誰かが来ても構わない・・・私はお前とこうして居たいのだから」
「レオニス・・・」
 レオニスの言葉に芽衣は嬉しそうに彼の背中に自分の腕を回す。
「メイ?」
「なぁに?」
「今日はどこかで食事でもするか?」
「良いの?」
「あぁ・・たまには息抜きも必要だろう?」
「うん!」
 元気よく返事をしてレオニスを見上げる芽衣の嬉しそうな表情に、レオニスは優しく微笑み返す。
 そして彼女の顔をそっと両手で包み込んだ。
「お前の試験が無事に終了したら、一緒に暮らそう・・・」
「え?!」
「そろそろ私も、お前と離れて暮らすのは限界だ」
「レ・・・レオニス?」
「愛してる・・・お前だけだ・・・」
「わたし・・・も・・・」
 愛してる・・・・そう続けようとした芽衣の言葉は聞こえない。
 彼女の唇はレオニスによって優しく塞がれたから・・・




『愛してる・・・お前だけだ・・・』
わたしも・・・愛してるよ・・・・レオニス・・・




                                END