芽衣がクラインに来てから一年がたった。
 この国にもだいぶなれて、友達もできた。
 シルフィスとディアーナは特に仲良しだ。
 その日、芽衣はディアーナに「お茶会をするから」という連絡をうけていた。
 お茶会っていったらいつもは芽衣、ディアーナ、シルフィス、それにシルフィスの恋人のシオンがメインのメンバーである。
「ふい〜終わったぁ!さっディアんとこ行くかな」
 芽衣は大きく背伸びをして済んだ課題を持ってキールの部屋へ行く。
「キール、課題終わったよ。あたしディアーナんとこ行ってくるから」
「ああ、そこに置いて行け。くれぐれも姫に迷惑かけるなよ」
「はーい」

 外は青い空が広がっていた。
 こんなひは恋人とデート・・・ってあたしには恋人なんていないけど。
 暫く歩いて市街にでる。
「・・・たしか大通りの喫茶店で待ち合わせだよねぇ」
 人ごみをわけて喫茶店のドアをやっと開ける。
 カラン コロン
 喫茶店に入ると威勢のよい聞きなれた声が聞こえた。
 ガゼルだ。
「いらっしゃいませー!おう、芽衣か。ディアーナが奥の席で待ってるぜ」
「そっ。ありがと」
 奥に進むとディアーナの声が聞こえる。
 ディアーナだけではない・・・・・・イーリスの声もかすかに聞こえる。
「・・・それからラッキーカラーは青ですよ・・・おや芽衣ではありませんか」
「芽衣!ごきげんよう!ところで聞いて下さいまし!私今日はお兄様にギャフンと言わせられるらしいですわv当たるといいんですけど。」
 ディアーナはふふん、と笑いながら言った。
「何よ〜イーリスに占ってもらってたのぉ?ならあたしも」
 あたしはディアーナの横の席に腰掛ける。
 イーリスはカードを広げながらにっこり笑って言った。
「お金いただきますよ」
「あ〜わかったって。早く早く」
 テーブルに銀貨を一枚置く。
(お金についてはうるさいのよね・・・イーリス)
 イーリスは(当たらない)占いと歌でお金をかせいでいる。
 カードをめくる指には金や銀の指輪が光り輝いている。
「でましたよ。・・・どうやら芽衣は今日王宮で思い人と会うみたいですね」
「あら、芽衣好都合ですわね!イーリス、今日は私のお部屋でお茶会なんですの。さっ芽衣行きましょう!善は急げ、ですわ」
 グイ、と芽衣の手をひっぱる。
「ちょっとディアーナ、シルフィスは?」
「今日はシオンとデートですわ。」
「そうなんだ。じゃあね、イーリス」
「ごきげんよう」
 カラン コロン
 大通りにでるとディアーナはあたしに話しかけた。
「芽衣、聞いて下さいまし!昨日レオにスが私の部屋までお花を届けて下さいましたの」
 ディアーナは、可愛い。
 女のあたしから見ても。
 特に、恋人のレオニスの話をしている時は。
「良かったね!」
「芽衣は言って下さらないけど本当は芽衣も好きな方いらっしゃるんでしょう?」
「え・・・」
 言ってしまったらディアーナはどう思うだろう。
 軽蔑されるかもしれない。そう思っていつも言い出せない。
(だってあたしの好きな人はディアーナの兄―殿下だよ?)
「秘密」
「言って下さいですわ!も、もしかして・・・・・・レオニスですの!?」
 スミレ色の大きな瞳に涙を浮かべるディアーナ。
「あはは・・・違うって」
「そうですの。でも芽衣?私いつでも相談に乗りますわよ!私は芽衣の親友ですもの」
「ありがと、ディアーナ」
 ディアーナの部屋に入ると、女官が何人かきて、大きなテーブルに芽衣の好物のトリュフやケーキが並べられる。
 ディアーナはポットからティーカップに紅茶をついだ。
 そしてにっこり笑って言う。
「今日の紅茶はシオンオリジナルのオレンジティーですの。芽衣お砂糖は?」
「あ、二ついれてくれる?このトリュフ美味しいねぇ」
 ディアーナが用意しているのもかかわらずあたしはトリュフをほおばる。
「でしょう?アイシュに教えていただいて、芽衣のために作ったんですのよ」
 ――どうりで手に沢山ばんそうこうがあると思った。
 ディアーナはこんなにもあたしによくしてくれる。
 あたし、やっぱりディアーナに好きな人の事いうべきだよね。
 ディアーナになら、いっても大丈夫だよね。
「ディアーナ、さっきの話なんだけど・・・」
 コンコン
「あ、芽衣ちょっと待って下さいまし。・・・どなたですの?」
「私だ。たしか今日だったよな?来週の予定表を渡すのは」
 ガチャリ
「お兄様!丁度良かったですわ!今お茶を飲んでいましたの。さ、お兄様も」
(ちょっとぉ!イーリスの占い当たってるよ!!)
 芽衣は服のリボンを直すふりをしながら熱くなる顔をかくしていた。
「ああ、お邪魔するよ・・・おや芽衣もいたんだね」
「あっ、殿下!おはよ!」
 ぱっと顔をあげると、ディアーナと目があってしまった。
(ヤバ・・・殿下の事バレたかな・・・)
「芽衣!顔が赤いですわよ!?大変!風邪を召したんですわ!お兄様、芽衣を
 私のベッドに寝かせて下さいまし!私、女官を呼んできますわ!」
 バタン!!!
(ディアーナが天然ボケでよかったぁ・・・)
 殿下は少しあきれた様子であたしに言った。
「芽衣、立てるか?」
「うん。ありがと」
 ディアーナのベッドに横になると殿下があたしの横に座ってふっと笑いながら言った。
「いつもすまないね、芽衣。ディアーナが迷惑かけてしまって」
「そっそんな事ナイよ!ディアーナはあたしの親友だもん!」
 緊張して声うわずってるのが自分にもわかる。
「そうか。そう言ってもらえると嬉しいよ。これからもよろしく頼むよ」
「うん」
 話がとぎれて、沈黙が流れる。
(なんか話さなきゃ・・・えっと・・・えっと・・・)
「で、殿下」
「ん?」
「あたし・・・殿下が好き!」
(ちょ・・・ちっがぁう!・・・ど、どうしよう・・・)
「芽衣・・・」
 目があってしまってそらす事ができなかったケド、断られると覚悟を決めて、
 あたしはギュッとシーツをにぎった。
「私も芽衣が好きだ」
 バタン!!!!
 あたしは嬉しさのあまりちょっとボーッっとしてたけど、かなりその音にびっくりして、ドアの方を見た。そこにはディアーナとレオニスが立ってたの。
「聞きましたわよ!たしかに!ねっ?レオニス?」
「・・・ええ、たしかに」
「ちょ・・・ディアーナあたしが殿下の事好きなのわかって・・・!?」
 ふふん、と自慢げにディアーナはあたしに言った。
「私だってそんなにお馬鹿さんじゃありませんわ!さっきの芽衣でお兄様の事好きなのがわかりましたわ!お兄様が芽衣の事気になってるのもレオニスから聞いていましたし」
 おどろきを隠せず立ち上がる殿下。
「レオニス・・・!!」
「殿下、ご無礼お許しください。研究院に通っているのが気になりまして。姫の計画に協力させていただきました」
「そうなんですの。お兄様が予定表を持ってきてくださるの今日でしたので、
 お茶会に丁度いいと思ったんですわ。ちょっと強引でしたけど・・・おめでとうですわ、芽衣」
 (・・・ディアーナ、あたしね)
「ありがと、ディアー」
「どういたしまして、ですわ。―さっレオニス、行きましょう」
「ま、待て!ディアーナ!私はレオニスとの交際を許したおぼえは・・・」
「お兄様だけなんてずるいですもの!(ギャフン、ですわ!!)」
 セイリオスが廊下をのぞくと、ディアーナがレオニスに”お姫様だっこ”をされて去っていくのが目にうつった。
(心から思うよ。ディアーナが友達で良かった・・・って)
「ふう・・・ディアーナもやってくれるな・・・」
 やられた、と頭をかかえている殿下にあたしは思いっきりだきついた。
「うわっ・・・!め・・・芽衣!?」
「大好きだよ!」
「・・・・・・芽衣、その好きはディアーナの事かい?それとも・・・」
「殿下だよっ!」



―――――――イーリスの占いも当たる事あるんですのね。byディアーナ