笑顔を見せて・・・?





      
「隊長さーん」
「・・・・・・またお前か。今日はなんのようだ?」
「ねえねえ、今度暇なのいつ?」
「??・・・・なんでだ?」

 パッと見ると整った顔だちよりもその雰囲気の恐さに圧倒されてしまう。
 高い身長、鋭い眼差し、鍛えられた体躯・・・・・そろいもそろっている上に剣を腰からさげてたりするものだからまず、普通は最初、逃げ腰になる。

 しかし、真面目すぎるほど真面目で口数が少ないことをのぞけば理想的といってもいい男性であった。ただその眼差しの鋭さに、正面きって話しかけられる女性がいないだけで・・・・・・・・ただ一人の例外を除いては。

「一緒に湖に行かないかと思って・・・・あそこら辺、狼とかでるって噂だけど隊長さんがいれば大丈夫でしょ?一緒にピクニックに行かない?」
「・・・・・私と行って楽しいか?」
「え? 楽しくなきゃ誘うわけないじゃん。ね、行こうよ」
「・・・・だが休みといってもな・・・・・・」

 レオニスはそうやって考え込んでしまう。レオニスにとって全く仕事から離れて休みを取るということは滅多になかった。特にここ数年は・・・・・まったくと言っていいほど1日休みということはない。
 考え込んでしまったレオニスを見て、メイはちょっとがっかりしたような表情を見せる。

「隊長さんに暇な時間なんてあるわけないか・・・・・ものすごーく忙しそうだもんね。いいよ、無理しなくて」

 メイは作り笑いを浮かべてそう言う。それを見てレオニスはちょっと考えて口を開いた。

「どうせ・・・今日は抜け出してきているんだろう? お前はいつが休みだ?」
「え? えーと・・・・今度の日曜日かな? 課題が終われば、だけど」
「じゃあ、その日に半日だけ行こう。だから課題は終わらせておけ」
「いいの? やったー。大丈夫! 絶対終わるから。約束だよ?」
「ああ、わかった・・・・・・・抜け出してくるのはダメだからな」
「はーい!」

 メイがうれしそうにはしゃいでいるのを見て、レオニスはふと笑みをもらす。
 メイはそれを見てぴたっと止まり、じーっとレオニスを見つめた。

「・・・・・・どうした?」
「隊長さんがそうやって笑うのはじめてみた。」
「そうか?・・・・・・特に意識してる訳ではないが・・・・・・」
「そっちの方が絶対いい!・・・・・いや、やっぱりいつものがいいや」
「・・・・・・・どっちなんだ?」
「うーん・・・・・どっちもかな?」

(だって、あんな笑顔見たら片っ端から女がよってきちゃって困るじゃん。ただでさえ、本人気がついてないけど相当もててるのに・・・・)

「・・・・・・おかしな奴だな」

 そう言いながらレオニスはまたいつもとは違う優しい笑みを見せた。
 メイはそうやって笑われるたびに心臓がばくばくいうのを押さえるのに必死になる。

「いいの! 私はわかってるから・・・・日曜日、絶対約束だからね」
「・・・・・・・ああ、わかった」
「ぜーったい絶対・・・・・・・・・・」

 メイは何度も念押しして帰っていく。パタンとしめられた扉の向こうでレオニスはそんなメイの様子を思い出してふっと微笑んだ。

(本当に・・・・・・無敵だな。お前は・・・・・・・・・)

 そうしてレオニスはいつもの厳しい表情へともどって仕事を始めた。




                                  終わり