雪舞
SETUMAI
 
 
 
 
 
 
 
―――――・・寒い
 
 
 
泰明は、身震いを起こした。
 
布団が捲り上がって、
 
隣りに寝ている筈の彼女がいない。
 
(?神子・・?)
 
起きてきてから時間が経っていないらしい。
 
布団が温い・・。
 
泰明は、神子を探しに行こうとすると、
 
あかねが戻ってきた。
 
「あっ・・・起こしちゃいました?」
 
申し訳なさそうに、あかねは泰明の顔を覗きこむ。
 
頬は桜色に染め、手足が冷たくなっている。
 
「何処に行っていたのだ?」
 
「えっと・・雪の舞姫見るために・・・」
 
「雪の舞姫・・?何だそれは。」
 
あかねの言葉に疑問を抱く。
 
それほどあかねのことが気になってしょうがない・・。
 
「雪です。空から舞い降りてくるから、雪の舞姫って名前つけたんです。」
 
無邪気に笑うあかねにはどこか人を轢きつける力が有るのだろうか・・?
 
龍神の力とは別に・・・
 
と、泰明はフッと思う時が有る。
 
何時か自分の前から消えそうなぐらい愛しい存在なのだから。
 
「お前みたいだな。」
 
「え・・・?」
 
きょとんとした顔つきで泰明を見る。
 
凛とした空気が流れる。
 
「いや、何でもない。」
 
「えーっなんか言ったよね!?教えて下さいよ〜〜!」
 
本当に無邪気な笑顔を振り撒くあかねに
 
泰明は肩を抱いた。
 
「知りたいのか?」
 
「はい。知りたいです。」
 
あかねは、クルッっと後ろを向き泰明から視線をとうざけた。
 
そして悪戯っぽく・・
 
「聞こえてました。私が雪の舞姫で・・」
 
言い終わらない間に
 
又泰明はあかねの肩を抱き、
 
「寒い・・寒い冬を春にしてくれたのはお前だからな。」
 
耳元で泰明は呟いた。
 
小さな舞姫は顔が赤い・・
 
「もう・・私から離れないでくれ。少しでもお前から離れたくない。」
 
クスッと笑いあかねは・・
 
「もう決して貴方から離れませんよ?さっきは・・」
 
 
 
―――――――ドサッ・・
 
 
 
「あぁ・・梳けちゃったかなぁ・・」
 
「?」
 
あかねの足元で氷が梳ける音がした。
 
「なんだ?それは・・」
 
あかねは淡く微笑み・・
 
「石蕗の花が凍っていたので持ってきたんです。泰明さんの為に・・。」
 
「わざわざか・・・?」
 
手が赤くなり、冷たくなっているのを今泰明は気づいた。
 
「だって・・」
 
「有難う、あかね・・」
 
小さな舞姫は、微笑んで
 
 
 
―――――大好きだよ泰明さん。
 
 
 
雪は止む事無く今も降り続いている。
 
幸せを運んでくれる小さな舞姫と共に・・
 
雪舞よ、淡くて優しい文を届けて送れ
 
誰にも邪魔をされない、誰にも汚されはしない
 
あの小さな舞姫に・・
 
 
 
 
 
 
―――――もう寒くはない・・むしろ暖かい・・・
 
 

こんにちわ。
 
オペックです。
 
石蕗の花は、泰明の好きな花ではなく、泰継の好きな花です。
 
冬の花で泰明は何が好きだろうと思いつかなかったので、
 
百年後の泰継の好きな花に設定しました。
 
この所はご了承下さい。
 
 
(オペックさんよりv)