思い桜
 
 
 
 
 
                           桜が散り、風と共に舞っている。
 
                               「・・・・・桜・・か。」
 
                      あの出来事から、もう、1年が過ぎようとしている。
 
                  もう忘れても良い時季なのに・・・なぜ、忘れられないのだろう・・?
 
                    まだ、あの方への思いが・・・・胸の痛みとして残っている。
      
                       「あの日も、この様に桜が舞っていたね。」
 
                  そう、あの日・・・その時だ。私のつまらない心を動かしたのは。
 
                  
 
 
                            神子殿は不思議な方だ。
 
                   いつも、京の街を歩いているのに、怨霊とも戦っているのに・・・
 
                    花のような、決して疲れた素振りはしない笑顔
 
                                   穢れ一つも無い、優しさ・勇気
 
               ―――――私は、次第に轢かれていったのだ・・・・・
                  
                                   胸が痛くなるほど・・・・・。
 
        
                           恋など、何度もして来たのだ。
  
                                   でも、
                         
                       こんなに、痛みを感じた、恋は初めてだったよ。
 
 
 
              
 
                「友雅さん、一緒に頑張りましょうねっ!」
 
 
 
 
                    どんなに願っても、桜は止めど無く散りつづける・・・。
 
                            決して  止まる事無く・・。
 
 
                    「この桜のように、私の恋も、儚く散ってしまうのか・・・。」
 
 
 
 
                
                        神子殿の心を、私は奪う事が出来なかった。
 
                    だから、あの人と帰ってしまったんだね。   神子殿。
 
                ナズナの花の所を飛ぶ、蝶のように        ひらひら・・と・・・・
 
 
 
 
              「おや、私に用とは何かな?恋の相談・・・・と言う顔をしているね。何かな。」
 
                      顔を紅く、染めた神子殿の顔を私は覗きこんだ。
 
                                  「えぇっと、こ、恋の相談・・・・・・で・・す・・・。」
 
                 友雅は、おや、っと思った。本当に恋の相談とは・・・・と、思ったのだ。
 
                   「で?誰なのかな?神子殿の思いを貰える権利がある方は。」
 
                           紅かった顔が、ますます赤々と成った。
 
                        「・・・・頼・・・ひ・・さ・・さん・・・・なんですけど・・・。」
         
              ―――――――頼久・・・・ね・・。
 
                「如何すれば、私の気持ちを知ってもらえるかな・・・って思って。」
 
              ―――――――じゃぁ、神子殿。私の思いは如何すれば、君の心が分かってくれるんだい?
 
               「―――――私は、分からないね。私の場合は、いつも相手から来てくるからね。」
 
              ―――――――そうなんだ。私は、自分から、思いを告げたことが無い。
 
                         だから、分からないんだ。思いの伝え方・・。
 
 
 
 
                            私のほうが知りたいね・・・。
 
 
 
 
                 「そうですか。あっ!ごめんなさい。 こんな事で、時間作ってしまって・・・。」
 
                     「気にしないでくれ。神子殿と話が出来て、楽しかったよ。」
 
                                本当に?   楽しかった?
 
 
                              「じゃぁ、さようなら。  友雅さん。」
 
 
                           目を細めて、笑いながら走っていく神子殿。
 
                             桜の花びらと共に散っていく私の恋・・。
                         
                     私の心を楽しませてくれる天女はもう居ない・・・・・・・・・・・・・。
 
                                               決して、私の側に居ても、居る心地がしない。
 
                  私の為に居ないから・・・・。           私の為に笑ってくれないから・・・・。
 
                             「これが・・・・・、失恋と言うのかな・・・・。」
 
                      友雅の頬には、何時の間にか、橘の花のような涙が毀れていた。
 
               
                                   桜が止まない・・・・。
 
 
 
                          頼む・・・この桜を止めてくれ・・・・。
 
 
 
 
              
                                    「友雅さんっ!」                           
 
                                    「み、神子殿。」
 
                       神子殿の後ろから、背の高い男が神子殿の側についてきた。
 
                                 「今までお世話になりました。」
 
                                     「帰るのだね。」
 
                          ―――――その男と・・・・・・か。
 
                              「友雅殿、今までお世話になりました。」
 
                          ―――――彼女を・・・・。
 
                                    「さようなら。」
 
                          ―――――大切にしてくれ。私の変わりに・・・。
 
                             
 
 
 
                               四六時中・・お前を・・・お前を・・・
 
  
                                違う世界で、見守っとくよ・・・・。
 
           
 
 
 
 
                            私の思いは、ただ美辞麗句だ・・・・ね・・・。
 
 
 
 
                                      君は
 
                                 私の花鳥風月だった。
 
                                   君と側に居ると
 
                                奇想天外な事ばかりだ・・。
 
 
                   
 
                                 月の下で、君を見守るよ。
 
                             さようなら。もう、私の鳥は、歌わない。