| 光 |
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鮮やかな光に 世界は輝く ただそこにあなたがいるだけで。 |

| 「ランスロット!」 カノープスが、ランスロットの空になったグラスに酒を注いだ。 「おいおい、飲んでないな〜?」 「カノープス・・・。飲み過ぎだ」 「かたいこと言うんじゃねーって。せっかくの新年だってのにノリが悪ィな〜」 肩を組むカノープスの腕を、ランスロットははずした。 「・・・酒くさいぞ、カノープス。それにまだ新年じゃない」 うっとおしい。 言って、強引にカノープスをどかせる。 カノープスはにやにやと笑んだ。 「ふーん、酔っ払いは嫌いか」 「当たり前だ」 「だってさ」 言って、カノープスは振り返る。 そこには、完全にできあがった様子のエルリアの姿があった。 「エ、エルリア殿」 「あたし、嫌なの〜?」 「そ、そういう意味では・・・あ、こら、カノープス!」 女リーダーに抱きつくカノープスを、ランスロットはあわてて剥がした。 支えるエルリアの腕が、ランスロットの首に回される。 「エルリア殿?」 「・・・ランスロット、大好き」 にっこり。 陰りのない微笑み。 硬直するランスロット。 「嬉しい」 聞こえてきた言葉にランスロットはドキリとする。カノープスはバンバンとランスロットの背中を叩いた。 「―そう思ってるだろ〜! このこの!」 「・・・・・・」 ランスロットは無言でその酔っ払いを蹴りやる。 ずるずると崩れ落ちるエルリアを、ランスロットは抱き上げた。 「大丈夫ですか、エルリア殿?」 「んん」 ぼんやりとした瞳が、ランスロットを見上げる。 「エルリア殿?」 「ん。だいじょぶ」 ふにゃあ、と酔いのまま微笑む。 安心しきった顔。 ランスロットは思わず笑んだ。 普段の彼女からは想像もできない。 たまにはこんなふうにハメをはずす場があるのもいいかもしれない、と思う。 「ランス〜」 「はい」 「あたしを守ってね」 「はい。必ず」 優しく、ランスロットは娘に微笑んだ。 娘は目をこすりながら、むにゃむにゃと続ける。 「あたしが、皆を、ランスを守るから」 「・・・はい」 「ランス」 「はい」 「大好き」 「・・・・・・はい」 にこりと笑って眠りにつくリーダーを、ランスロットは優しく抱え直すと宴の続く広間を出た。 空いている部屋のベッドに、ゆっくりと彼女を横たえる。 窓から見える空は、まだ暗い。 夜明けまでは数刻ありそうだった。 ランスロットはエルリアの寝顔を見た。 愛しい。 そう、思う。 彼女が与えてくれるぬくもりが、自分を一人の人間として生かせてくれる。 昔、夜は自分を苦しめた。過去という名の全てが、ランスロットの心を襲った。 けれど今は違う。 暗いこの闇も、彼女のそばにいれば優しく感じるほどだった。 冷たい静けさだったものが、穏やかな時間に変わる。 穏やかな表情のまま、ランスロットは窓の外を眺めた。 夜空に緩やかに雲が流れている。 どれだけの時間が過ぎたのだろうか。 やがて空が、茜に染まり始めた。 身じろぎする気配を感じて、ランスロットは振り返った。 エルリアが、身を起こしていた。 「・・・ん〜」 エルリアは伸びをし、小さく唸る。 ランスロットはエルリアに寄った。 「大丈夫ですか」 「う・・・頭痛い。・・・カノープスめ、無理やり飲ませて〜」 小さな独白だったが、ランスロットにも聞こえた。 ランスロットは少し笑ってしまう。 エルリアはランスロットを見た。 「あれ? ランスロット?」 「はい」 「・・・・・・。あたし、もしかして昨日迷惑かけてしまった?」 記憶がないらしいリーダーに、ランスロットは静かに首を振る。 「いいえ」 「うーん、かけちゃた、みたいね」 エルリアはだが、そう肩をすくめて笑った。 そして髪をかきあげ、窓を見やる。 「明けたわね」 エルリアはランスロットを見た。 にこり、と微笑む。 「今年もよろしくね、ランスロット」 鮮やかな笑顔、明るく強い真っすぐな眼差し。 今日も、世界が輝き始める。 「はい、エルリア殿」 それを感じながら、ランスロットは差し出された手を握り返した。
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