After rain










 雨で濡れた道路に、バイクのライトが反射していた。
 激しい雨に視界が悪いからか、それとも一人で走る時には交通法規をめったに破らない乗り手として当たり前なのか、そのバイクは辺りを不要に騒がせることなく静かに家の門の前に止まった。
 アキラは、重いヘルメットをとる。
 雨に濡れた頭が、多少気持ち悪かった。
 高村のそばに――まだ、そばというには遠すぎたが――、チームにいるのは嬉しかったが、まだ慣れていないからか家に戻るとやはりほっとする。女とばれないように張り詰めていた気が、解放される。
 羅魏との喧嘩で体力を使い切ってしまったのもたしかだが、いろいろあったせいか精神的にも疲労がきていた。
 ふう、と息をついて、アキラは小さく頭をふった。
 そして、門を開けると家へと入っていった。
 寝静まった家に、明かりがともる。外から、アキラの姿がカーテンの影に映って見えた。
 しばらくして、アキラの家の塀の向こう、影にひっそりとつけられていた車がライトをつけた。
 GTRは、静かにそこを去って行った。



END

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