君の想い・・・ |


1人の病室は静かで・・・。 風と日差しが心地好くて・・・。 ウトウトして・・・瞼を閉じた・・・。 どれくらいの時が過ぎたのだろう・・・。 夢を、夢を見ていた・・・。 高村さんがいて、祥がいて、遊佐と瑞希がいて・・・。 伊沢が・・・・いた。 いつもみたいに、静かな眼差しでこっちを見ていた。 不意に、伊沢が顔を近づけて囁いた。 『アキラ・・・その瞳に俺を映すことはないのか・・・』 その声に、いつもの寡黙さと・・・穏やかさはなく・・・・。 伊沢の息が・・・髪に、顔に、瞳にかかって・・・。 ドキドキした・・・。 触れそうで触れない・・・。 『秘密』を知っている・・・。 それが、伊沢の気持ちを止めているのだろう・・・。 オレは知っているのに・・・。 自分の気持ちも、伊沢の気持ちも・・・。 黙っている、それがまた伊沢らしい。 でも、それって不公平だと思う。 夢だと・・・夢だからこんなに素直になれるのかな? ・・・パタン 本を、閉じる・・・音? また・・・これも夢なのかな・・・。 だって、ここには伊沢が居る・・・。 『そろそろ・・・行くか・・・。』 ? これは・・・、夢じゃない・・・。 ずっと傍に・・・ここに居てくれた・・・? まだ・・・行かないで。 「いざ・・わ・・・」 困ったみたいに動きが止まって・・・。 静かにドアが閉まった・・・・。 悔しくて、哀しくて・・・涙がこぼれた。 すぐに高村さんと祥が入ってきて・・・。 そのせいで、伊沢は行ってしまったのだと気づいた。 伊沢の優しさ・・・。 何だか、伊沢がオレのことを考えてくれているのが嬉しかった。 今本当に好きなのは伊沢なのに・・・。 いつかきっとこの想いを伝えたい・・・。 昨日、高村さんと祥が帰って・・・考えた。 伊沢のことを・・・。 きっと、伊沢からオレの秘密を口にすることはない。 だから、オレから・・・。 と、思ったのに今日は・・・来ないのかな? 天気も良いし・・・外で待つか・・・。 片目しか見えないと、やっぱり不便だと思った。 ベッドから降りたとき、躓きそうになるし・・・。 「そんな瞳でどこへ行く気だ・・・。」 いつの間にか、真後ろで伊沢の声がして・・・。 勢いよく振り返ったら・・・伊沢の顔が目の前にあった。 目と目が絡み合って・・・視線が離せない・・・。 「あっ、いや・・・天気もいいし外で・・・」 話すだけで息が掛かってしまいそう・・・。 「顔が赤い・・・。寝ていた方がいい。」 伊沢の手が額に、頬に触れる・・・。 その度に、頬が熱くなるのを感じた。 更に、伊沢が顔を近づけながら囁いた。 「昨日、俺の名を呼んだろう・・・。」 目が点になった。 微笑みながら真直ぐにオレを見つめ、続けてこう言った。 「俺は、知っているから・・・。」 何を言っているのか、分からなかった。 不意に、体ごと持ち上げられて・・・。 「えっ?なっ・・・!いざっ・・・わ・・・」 何が・・・起こったのか・・・・。分からなかった・・・。 伊沢の口が・・・俺の口を塞いで・・・いた。 「知っていたろう。俺がお前に惚れていると・・・。」 優しく微笑まれて、何も言えなくなってしまう。 ベッドに寝かされて・・・。動けなくなってしまった。 なのに伊沢ときたら・・・。 「好きだと言っているんだが。」 と、冷静に言ってくる。 まさか伊沢から言ってくれるとは思ってもいなかった。 すごく驚いたけど・・・。 よく考えると伊沢は意地悪だと思う・・・。 ・・・。 「オレは、オトコだけど・・・?」 少し困らせてやりたっかた。 「じゃあ、俺の前では女の晶で居てくれるか?」 真剣な眼差しと、口調が本物だと教えてくれた・・・。 本当の想いを・・・・伝えてくれた・・・。 返事を伊沢に顔が、不安に満ちている。 オレの方がよっぽど意地悪だったみたいだ・・・。 「・・・オレで良いなら。」 初めて・・・。初めて伊沢の涙を見た・・・。 こんなにも好かれていたんだと知った・・・。 伊沢の手が髪に触れ、額をなぞり頬を滑る・・・。 唇が触れ合い・・・・。 風で・・・・白いカーテンが揺れていた。 |
END
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