VOL.11 2000.4
TOPIX
母乳で育てたい
 
  おなかで芽生えた小さな生命・・・。ママのおなかもおっぱいもまあるく大きく変化して、赤ちゃんを迎える準備を着々と整えています。「母乳で育てたい」おそらくすべてのママがそう考えているでしょう。妊娠すると、さまざまなホルモンの働きで、乳房は「乳汁の分泌」という本来の目的に向かってフル活動を始めます。初めは小さかった乳腺も、木のように枝葉を広げて成長し、臨月になれば、乳汁分泌の準備もすっかり整います。このように、妊娠すれば誰もがおっぱいを出す準備が整うのに、いざ母乳育児を始めて何かにつまずくと、早々に人工栄養に切り替えるお母さんが少なくありません。まず、グラフ1をご覧ください。母乳のみで保育しているママの割合(母乳率)のグラフです。母乳で育てたいとほとんどすべてのママが望んでいるにもかかわらず、全国統計では、産後1ヶ月の母乳率は46%と、半分以上のママがミルクのお世話になっています。でも、佐藤クリニックで出産したママは、どの時点でも全国平均より20%以上高く、母乳のみの育児でがんばっているのです。この秘密はどこにあるのでしょうか。
   
  乳頭のケア
佐藤クリニックでは、「母乳で育てたい」と言うママの気持ちをとても大切にしているのです。そして、その希望に答えられるよう、さまざまな工夫をしています。まず、母乳育児をよりスムースにスタートさせるためには、妊娠中からの乳頭の手入れやマッサージが欠かせません。なぜなら、お乳の出る量 は、乳房の大小には関係しませんが、乳頭は、形や大きさ、長さによってもずいぶんと飲みやすさに差がでてくからなのです。赤ちゃんにとっては、乳房の形よりも、乳頭の形の方が大問題なのです。そこで、佐藤クリニックでは、妊娠5ヶ月の検診の時、心電図検査を行っていますが、このとき、皆様の乳頭乳房の形のチェックを行っています。そして、一般 的なケアの仕方についての説明がありますが、特に乳頭の形などで注意深くケアをしないといけないママには、直接その場で詳しくアドバイスをしてもらえます。赤ちゃんが吸いつきやすいような乳頭の形に整えて、乳頭を丈夫に鍛えるには、妊娠中からのケアがものを言うのです。
 
  母乳で育てる意思
そして、次に母乳育児を成功させるには、妊娠中から「母乳で育てる」という強い意志が不可欠です。佐藤クリニックでは、「母乳100%に向けて、がんばってみませんか」というキャンペーンをしています。(1)出産後30分以内に初回授乳をする。(2)出産後24時間以内に7回以上母乳を飲ませる。(3)出産直後から母児同室母児同床とする。(4)陣痛が起きたら、乳管開通 操作を始め、乳管のつまりをとっておくという4項目を行うと、母乳がよく出てくるということがわかっています。佐藤クリニックではこの4項目に重点を置いて、ママのケアを行うことになっていますが、これを行うためには多少の努力が必要で、「母乳で育てる」という強い意思が大切になってきます。そのために「母乳でがんばってみよう」という気持ちを自己確認するために、わざわざ署名をしているのです。こうして「母乳で育てる」という意思を確認したママの母乳率は、右のグラフ2でお示ししています。退院の時点では署名をしたママと署名をしなかったママの母乳率はほとんど差がありません。入院中は授乳に関して、ナースのお手伝いもありますし、前に述べた4項目も、署名の有無に関わらずできるだけ全員の方に行うことになっていますので、母乳率の差が出ないのだと思います。しかし、退院後一人で授乳をしているときに、「母乳で育てる」という気持ちの有無の差が出て、出産後1ヶ月、3ヶ月になると大きな差となるのだと思われます。
 
  母乳育児に対する理解
そして極めつけのデータは、左下のグラフ3です。佐藤クリニックでは、母乳保育を推進するために、マザースクラスの中で2回、母乳のためのレッスンが行われています。この様なシステムはおそらく全国でも珍しいと思います。このグラフは、「母乳100%に向けて、がんばってみませんか」というキャンペーンで署名をしたママの中で、マザースクラスの中のおっぱいに関するレッスン(第2回と第5回)のいずれかに参加したママと、レッスンに参加しなかったママの母乳率を比較したグラフです。今までに母乳保育をしたことのない初産婦の方に限った、少数例の検討だけですが、レッスンに参加しなかったママの産後1ヶ月の母乳率は62%でしたが、レッスンに1回だけでも参加したママの母乳率は100%でした。おそらく、レッスンに参加した方は、「母乳で育てる」という意志がより強いと考えられますし、母乳育児中に何かにつまずいたとき、ミルクに頼らず、解決する方法を見つけることができるからでしょう。
 
 

佐藤クリニックのデータから考えると、母乳育児に成功するためには、まず、「母乳100%に向けて、がんばってみませんか」というキャンペーンに参加して、署名し、母乳で育てるという意思を自ら確認すること。次に、母乳育児に関して理解を深めるため、マザースクラスの中のおっぱいに関するレッスン(第2回と第5回)に参加することが大切になります。

さあ今日から、まず「母乳で育てよう、是非育てたい」という強い意志を持ってください。この気持ちが最も大切なのです。「病は気から」という言葉がありますが、「おっぱいも気から」なのです。そして後は行動あるのみです。かけがえのない赤ちゃんのために、早速、今日から準備を始めましょう。 (今回使用したグラフは、研修報告にもありますが、滋賀県母性衛生学会で発表したものを一部使用しています。)

 
院長から一言
 
  私は「ロフト」が大好きです。名古屋・栄のナディアパークにある「ロフト」です。みなさんご存じですか。大阪梅田にもありますし、大津西武にも小さいのがあったと思います。黄色地に黒い太文字で「LoFt」と書いてあるお店です。大阪は少し遠いので、私はよく名古屋のロフトに行きます。当直の医師がいるときで、院内で何もなく、学会もないときなど、車で行きます。家を出てから、約1時間とすこし。土曜日の午後3時頃からちょっとそこまでという感覚で行きます。何しに行くのかというと、院内に置く小物を選ぶためという業務上の理由にしていますが、これは表向きで、本当は単なるウィンドーショッピングなのです。もともと私はデパートが大好きで、京都にいたときも、よく大丸や高島屋に出入りしていました。いろんな商品を見て、そのデザインにいいなと思ったり、機能に感心したり、まあ、雑学の一つとして楽しんでいます。デパートの商品は高級なものが多く、確かにデザイン的にも価格的にも目を見張るものもあるのですが、デパートの性格上、万人向けのものが多いような気がします。それに対して、ロフトの商品はちょっとおもしろいものが多いのです。感覚的にはロフトの方が好きなので、よく行くのです。院内のカレンダーのほとんどは私がロフトで選んできました。クリスマスシーズンのころ玄関に置いていたスノーマンもロフトで見つけました。2階ラウンジの絵は大阪のロフトで選んだものです。もちろん時間があれば、パルコもよく行きます。ただ一つ心配なことは、そこにいる若い人たちから、変なおじさんと見られているのではないかと言うことです。
 
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