VOL.17 2001.4
TOPIX
拝啓“新”おばあさま
 
  まず、下のグラフをご覧ください。これは厚生省が毎年調査している周産期死亡率のグラフです。昭和27年は今の妊婦さんのおばあさん(今度ひいおばあさんになる方)が出産したころ、昭和50年というのは妊婦さんのお母さん(今度おばあさんになる方)が出産したころになります。周産期死亡率とは、出産1000人に対して、妊娠28週以後(通 常22週以後ですが、国際比較のため28週以後になっています)の死産数と生後1週間以内の新生児死亡数の合計の割合のことです。つまり、平成9年の6.4というのは、出産した人1000人のうち、6.4人は死産であったか生後1週間以内に赤ちゃんが亡くなり、赤ちゃんがもらえなかったということなのです。この50年間の日本の産科、小児科医学の進歩で、周産期死亡率は劇的に改善し、世界のトップレベルになりました。ちょっと怖い話になりましたが、要するに、以前と比べると、赤ちゃんの安全性が飛躍的に改善し、それと共に、妊娠出産に対する考え方も大きく変化しているということなのです。妊婦さんのお母さんは、新米ママから頼りにされる存在ですから、最新の産科事情を理解していただいて、“はなまる”おばあさんになって、新米ママたちにアドバイスをしてあげてください。
   
  今どきの妊婦
妊娠中のお嫁さんや娘さんに、つい「あれしちゃだめ」とか「これするといい」といいたくなりませんか。その代表的なことが「赤ちゃんのために、もっと食べなさい」という言葉です。確かに昔の主婦は、今の主婦より家事でうんと体力を使っていました。洗濯もたらいでゴシゴシ洗う。掃除も床にはいつくばってのぞうきんがけ・・・。一昔前の「子供の分までいっぱい食べなさい」というのは、昔の家事労働に見合ったことでもあったのです。しかも、食事は今よりも質素でした。よく体を動かした分、よく食べて体力をつけ、安産も心がけていたというわけです。しかし、昔は重労働だったはずの洗濯も、スイッチ1つでOKになり、食事の支度もお部屋の掃除も、便利な電化製品が全部手助けしてくれます。そう考えると、今の妊婦さんは生活の中の消費エネルギーが少ないといえそう。家でラクチンな家事をこなすだけでは、運動不足になりがちです。昔とは逆に、体重制限が厳しいのも、運動量 や消費エネルギーを考えれば当然のことなのです。今どきの妊婦さんには「赤ちゃんのためにあまり食べてはいけませんよ」といってほしいのです。しかし、今も昔も変わらず、お産がある程度の体力を必要とするので、妊娠中の適度な運動は必要不可欠。とはいえ、今どきのママが、川へ洗濯に、というわけにはいかないもの。そこで、その代わりに、エクササイズをお勧めします。佐藤クリニックでは、マタニティビクスやマタニティすいみんぐなどのエクササイズを行っています。積極的に参加するよう勧めてみてはいかがでしょうか。
 
  今どきのお産
「お産というものは痛いのが当たり前で、1〜2日は陣痛と闘って、口にタオルをくわえて、痛くても声を出さずにがんばったものだよ」とか、「障子の桟が見えなくなるくらい、我慢して、最後は力一杯何度もいきんでおまえを生んだ」というように、古来、お産は苦しいもの、堪え忍んで産むもの、陣痛とは、痛い、苦しいものだと考えていました。でも、今どきのお産は全く違っています。 「ソフロロジー」ってご存じですか。「何それ、新種のソフトクリーム?」「新聞とかに載っている社会現象のこと?エコロジーの親戚 ?」という迷答が返ってきそうですね。「ソフロロジー」というのは、佐藤クリニックで取り入れている分娩法で、今もっとも注目されている新しい方法なのです。 この方法は、妊娠中から赤ちゃんとのコミュニケーションをとり、赤ちゃんと一緒にお産をしていく方法です。妊娠中、楽しい出産のイメージトレーニングをすることにより、陣痛は、赤ちゃんを生み出す喜びのエネルギーとなり、苦しいものではなくなります。むしろ陣痛がくれば早く赤ちゃんに会えるのでうれしくなるのです。ソフロロジーのお産のためには、楽しい出産のイメージトレーニングが重要です。妊娠中、ソフロロジーの音楽を聴きながら、うつらうつらとうたた寝しているように見えるときは、イメージトレーニングの最中です。怠けているわけではありませんから、決して揺り動かして起こさないでください。実際の分娩の時も、そんな状態のまま赤ちゃんが生まれてくることも多いのです。このイメージトレーニングが現代の胎教なのです。昔の言葉で言うと、「心頭滅却すれば火もまた涼し」、座禅の時の瞑想状態と似ています。最新のソフロロジーの出産は、決してうんうんがんばることはないのです。静かに赤ちゃんが生まれてくるのを待ちましょう。
 
  赤ちゃんのお世話
おばあちゃん世代のお産では、お産するとすっかり疲れ果ててしまいましたので、産後は、1日、ゆっくり床について休んでいなければなりませんでした。しかし、今はそんなことはありません。ソフロロジーのお産では、疲れ果 てるということはありませんから、出産直後より、赤ちゃんを抱きしめ、なるべく早く、授乳をしていくのです。母児同室で、赤ちゃんと添い寝して、おっぱいをあげる・・・。これは、家庭内で出産していたひいおばあちゃん世代のお産とおなじですよね。でも昭和30年代に自宅分娩から施設分娩へと移行してきましたので、母児別 室が当たり前になっていました。また粉ミルクの発達により、一時は母乳より粉ミルクの方がいいとされた時代もありました。でも今は、母乳の方がはるかに優れていると再認識されていますので、佐藤クリニックでも積極的に母乳育児に取り組んでいます。よく母乳を出すためには、出産直後から頻回におっぱいをのませ、ママと赤ちゃんが枕を並べて横になっていることが大切なのです。こうすることで、おっぱいがよく出るようになるのです。産後赤ちゃんをベビー室に預けて、ママは別 室でゆっくり寝ているというのはちょっと古いスタイルなのです。もちろん、ママの疲労やご希望があれば赤ちゃんをお預かりすることも可能です。また、おっぱいは、入院中はよく張っているのですが、退院後あまり張らなくなります。これは産後10日もすると張らなくてもよく出るようになっているからです。そんな中で、よく泣く赤ちゃんをみると、思わず「ミルクを足してみたら」と言ってしまいます。ミルクを足すと、赤ちゃんは母乳で十分足りていても、50ml程度はペロリと飲んでしまいます。そうなると「母乳不足」と思いこんで、ママが自信を失い、混合栄養になってしまいます。おばあちゃんはママのおっぱいを信じて、母乳保育を応援してください。
 
 

佐藤クリニックのデータから考えると、母乳育児に成功するためには、まず、「母乳100%に向けて、がんばってみませんか」というキャンペーンに参加して、署名し、母乳で育てるという意思を自ら確認すること。次に、母乳育児に関して理解を深めるため、マザースクラスの中のおっぱいに関するレッスン(第2回と第5回)に参加することが大切になります。

さあ今日から、まず「母乳で育てよう、是非育てたい」という強い意志を持ってください。この気持ちが最も大切なのです。「病は気から」という言葉がありますが、「おっぱいも気から」なのです。そして後は行動あるのみです。かけがえのない赤ちゃんのために、早速、今日から準備を始めましょう。 (今回使用したグラフは、研修報告にもありますが、滋賀県母性衛生学会で発表したものを一部使用しています。)

 
院長から一言
 
  今、懸賞生活にはまっています。「進ぬ!電波少年」というテレビ番組で、「なすび」というタレントが、日々懸賞に応募し、獲得商品が合計100万円になるのを目指すという企画をやっていました。そんな懸賞生活とは異なりますが、私の場合、インターネットで懸賞に応募するというテレビニュースを見たことがきっかけです。インターネットで懸賞に応募するなんて考えたことがなかったので、どのくらいの数があるのか早速調べてみると、あるわあるわ、日本全国いろんなホームページで、懸賞をやっているのです。毎日、30件から50件、この3月31日締め切りの懸賞なんて、1300件を越えるくらいありました。冬の間クリニックの外にあまりでることもありませんでしたので、応募が簡単で、当選者が多いものを選んで、毎日せっせと応募しました。「電波少年」の場合、毎週2〜3個当たっていたので、私の場合も、すぐ何か当たるのではないかと期待していたのですが、これがなかなか当たりません。1月中旬くらいから毎日2〜3件くらい応募していましたが、1ヶ月しても全く当たりません。2月後半からは意地になって、応募していました。月末が締め切りの懸賞は多いので、2月末には1日で50件くらい応募しました。家族からは「当たらんのにようやるな」という目で見られながら、それでもせっせと毎日インターネットで応募していました。そして、3月28日、待望の初当選商品が届きました。2月末に応募した50件のうちの1つで、カップ麺お試しセットです。1月中旬から2月末までに正確には記録していませんがおそらく200件くらい応募して、やっとカップヌードルです。ありがたく味わいました。ちなみに「電波少年」の場合、毎週はがきで1300通 以上応募して、100万円になるのに11ヶ月かかっています。はがき代だけで、毎週6万5000円です。懸賞って、参加することに意義があるのでしょうね。
 
Back to Top 目次