こんな時に帝王切開になります。 帝王切開には2つのケースがあります。妊娠中の検査で経膣分娩が難しいと予想される場合に、あらかじめ予定を組んで行うのが予定帝王切開。一方、赤ちゃんやお母さんの状態が急変し、早急に赤ちゃんを取り出さなくてはいけない場合など、経膣分娩の途中で切り替わるケースを緊急帝王切開といいます。 予定帝王切開の場合 ●児頭骨盤不均衡(CPD) 赤ちゃんの大きさに比べて、お母さんの骨盤が狭いとき。ギリギリの場合は帝王切開の準備をしつつ、経膣分娩を試みます。 ●逆子(骨盤位) 赤ちゃんの足や膝が先に出ると、最後に出る頭がへその緒を圧迫し、危険なため帝王切開の確率が高くなります。 ●前置胎盤 胎盤が完全に、または部分的に子宮口をふさいでいる場合、子宮口が開いたとき大出血し輸血をすることもありますので、大きな病院で手術を受けることになります。手術までに出血し緊急帝王切開になることも。妊娠中の超音波検査であらかじめ診断されます。 ●妊娠中毒症 重い妊娠中毒症により胎盤の血流が悪くなると、胎児仮死の危険性が高くなります。胎児や胎盤機能、母体の状態によっては早めに帝王切開をします。 ●前回も帝王切開 前回の原因によっては経膣分娩できる場合もありますが、まれに、前回の傷が子宮収縮で伸びて薄くなり、子宮破裂を起こす心配があるため、帝王切開の確率が高くなります。 ●その他 多胎妊娠の時、子宮筋腫や卵巣のう腫で経膣分娩できないとき、子宮内胎児発育遅延など胎児の病気があるとき、経膣分娩が危険と判断されれば帝王切開になります。 緊急帝王切開の場合 ●胎児切迫仮死 一番多いケースで、何らかの原因で赤ちゃんが酸素不足になり心拍数が下がり胎児仮死に陥った場合。 ●微弱陣痛 赤ちゃんを生み出す力(陣痛)が弱いため、お産が長引く遷延分娩になり、母体や胎児の衰弱が見られるとき。 ●胎盤早期剥離 分娩前に胎盤がはがれてしまう緊急トラブル。大出血が起こり母子共に危険な状態になるので、手術で一刻も早く赤ちゃんを取り出す必要があります。手術後も母体が重傷化するので大きな病院に搬送します。 ●前期破水 破水をして長時間たつと、子宮内感染の心配が出てきます。分娩を早めるために陣痛促進剤を使用しますが、それでも分娩が進行しないときは帝王切開になります。 ●その他 予定日超過で胎盤機能が低下したとき、回旋異常などで分娩が停止したとき、羊水過少や臍帯脱出(頭より先にへその緒が出てしまうこと)で赤ちゃんが危険になったときなど。
いつ頃どんなふうに決まるの? ●予定帝王切開の場合 前回の出産が帝王切開の人などは、妊娠の初期の頃に帝王切開と早めに決まってしまうことがあります。しかし、通 常は経膣分娩の可能性も考慮しながら妊娠経過を注意深く観察し、妊娠10ヶ月に入ってから判断することになります。あらかじめ予定を組んで帝王切開を行うからには、スタッフをそろえ十分に準備をして安全に行うことが大切です。手術日の決定には、いくつかの条件があります。まず、陣痛が起こる前に行うということ。また赤ちゃんの発育状態も重要です。これらの条件を満たす時期は、妊娠37〜38週頃です。 ●緊急帝王切開の場合 どんな状況でも、必要と判断された場合はすぐに緊急帝王切開を行います。予定帝王切開の手術日前日であっても、陣痛が始まってしまったり、ママや赤ちゃんの状態が急変した場合は早急に行われることも。また、経膣分娩予定のママであっても、あるいはすでに経膣分娩の最中であっても、危険な状態と判断されれば、帝王切開に素早く切り替えられます。ただし、常位 胎盤早期剥離や、分娩中の意識障害など、出産後さらに状態が悪くなることが予測される場合は、大きな病院に搬送して手術を行うこともあります。
手術の流れ ●手術室に入ります 陣手術室に移動した後衣服を脱ぎ、バス タオルをかけます。その後心電図や血 圧計などの器械をセット。導尿などの 処置を受けます。 ●麻酔をします 横向きになり、背中を消毒し、背中から腰の部分をできるだけ突き出すような姿勢をとり、脊髄液の中に麻酔液を注入。その後仰向けになり、腹部を消毒します。帝王切開で使用される麻酔の多くは、下半身の痛みだけを取る腰椎麻酔です。意識ははっきりしていますので、赤ちゃんの産声を聞くことができます。 ●切開をします 麻酔が完全に効いたことを確認し、切開を始めます。皮膚、脂肪層、筋膜、筋肉、腹膜、子宮の順に切っていきます。原則として皮膚は縦に、子宮は横に切ります。 ●誕生 子宮を切開し卵膜を破ると、羊水が自然に流れ出ます。赤ちゃんを取り出し、へその緒を切ります。手術の開始後赤ちゃんを取り出すまでは5分程度と、あっという間です。このとき赤ちゃんの産声を聞けますし、赤ちゃんと対面 することもできます。産んだ実感を十分に味わうことができます。誕生後は胎盤や卵膜をきれいに取り出します。 ●縫合 自然にとける糸で子宮を縫い合わせ、続いて切開とは逆の順で縫合していきます。使用する糸はすべて自然にとける糸ですが、皮膚は手術用の接着剤で固定します。