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…蒼い雪…
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夢を見た。
一年前に死んだ妹・桜花の夢だ。
此処では珍しくはない、雪が降り積もった真っ白い地の上で桜花が楽しそうに走り回っている。
そんな夢だ。
声をかけようとするといつも目が覚めてしまうのである。
その瞬間、振り返る桜花の表情はとても寂しげなのだ。
「雪花ちゃーん。」
緋見ちゃんが今日も遊びに来た。
「今日はね、花火持ってきたの。」
「もう少し暗くなったら一緒にやろうね。」
「あ、、、、。 うん。」
七月。
外では太陽が植物達を元気付けるかのように照らし続ける。
時折入る風は何かの花の甘い匂いがする。
夜には蛍が光を灯し、鈴虫が優しく子守歌を歌う。
そんな季節、、、私は嫌いじゃない。
そういえば、桜花も夏が好きだった。
『桜花、夏が好きぃ。』
『だって、夏はお日様の匂いがするもん。』
『なんかね、元気になるの。』
そんなことを言っていつも外を見ていた。
「あ、西瓜があった。 緋見ちゃん、食べる?」
「うん。」
「じゃあ、ちょっと手伝って。」
前はこんなことはすべてさざれがやっていた。
あの人の作る料理はとても美味しかった。
今でももう一度食べたいと思っている。
そんなことを考えながら台所へ向かった。
「雪花ちゃん、こんな感じで良い?」
「うん、いいよ。」
「、、、、、、、。」
「へぇ、上手いね。」
「家じゃいつもやってるの、でもまだまだ下手だよ。」
「いや上手いよ。 うん、緋見ちゃん絶対良いお嫁さんになれる。」
「そ、そんなことないよぉ。」
緋見ちゃんは真っ赤にして止めていた手を又動かし始めた。
流石に二人でやると作業が捗る、沢山あった西瓜も短時間で全部切れた。
家の中で一番風通しの良い場所で食べることにした。
「う〜ん。 まだ、花火は早いかな?」
外を眺めながら緋見ちゃんはそう言った。
空は薄く青い色をしていた。
丁度、時刻は十九時だった。
「後、一時間って所かな?」
「そうだねぇ、後一時間か、、、、。」
「、、、、、、。」
「西瓜でも食べていようか。」
「、、、、、いいねぇ。」
「じゃあ、持ってこよう。」
緋見ちゃんは私の手を引いて台所へ走った。
「いい具合に冷えてる。」
「雪花ちゃんはそっち持って、私はこっち持つから。」
「うん。」
なにやら隣が騒がしい。
「? なんだろうね。 隣がうるさい。」
西瓜を頬張りながら私は言った。
すると、緋見ちゃんは笑いながら私の顔を布で拭いた。
「雪花ちゃん、頬っぺたが西瓜だらけだよぉ。」
「へ? え?」
「隣が騒がしいのは引っ越しか何かじゃないのかなぁ。」
「あ。 ありがとう、、、、、。」
私は少し照れくさくなって下を向いた。
緋見ちゃんはちょっと嬉しそうに西瓜をかじった。
「あ、もうそろそろ花火してもいいくらいだね。」
「本当もう真っ暗だ。」
「それじゃ準備でもしようか?」
「そうだね。」
「じゃあ私、水持ってくる。」
丁度その時だ。
玄関の方で人の声が聞こえた。
「すいませ〜ん。 誰か居ますか?」
「お客様だ。 私が出ようか?」
「ありがとう助かるよ。」
「すいませ〜ん。 誰もいないんですか〜?」
「はーい。 今行きます。」
緋見ちゃんは玄関の方へ走っていった。
私は浴室へ行き水を持ってくることにした。
「初めまして〜。」
玄関には小柄の少女が立っていた 緋見も笑顔で挨拶を返した
「自分は、隣に引っ越してきた『朱草小梅』です〜。」
「どうも私はこの家の者の代理人で、『葵緋見』と申します。」
「よろしくね〜。」 「はい。 こちらこそ宜しくお願いします。」
「あの〜、良かったらこれ渡しといて下さい〜。」
「お二人で仲良く食べてね〜。」
「ありがとうございます、小梅、、、さん。」
「さん、なんか つけなくいいのよ〜。」
「それじゃあ、又ね〜。」
そう言い、小梅は去っていった
その後すぐ奥の方から足音と声が聞こえた
「緋見ちゃん、今の人だぁれ?」
「隣に引っ越してきた人が挨拶に来たの。」
緋見ちゃんは私に小包を渡した。
「、、、、、これ、、、は?」
「食べ物って言ってたよ。 なんだろうね?」
「お菓子だったらいいね。」
「うん、そうだね。」
「そうそう、緋見ちゃん今日はもう帰った方が良いよ。」
「わぁ、もう二十時だ、、、、、。」
「ごめんね。 又、明日来るね。」
「うん、又ね。」
緋見ちゃんは真っ暗な夜道を急ぎめに帰っていった。
私は家の片づけをした後、すぐ寝た。
『・・・・・ちゃん。』
『・・・・お姉・・・ちゃん。』
どこからか桜花の声がする。
『起きて。 雪が・・・雪が積もってるよ。』
『・・・とっても綺麗だよ。 さぁ、起きて。』
桜花は私の手を掴もうとした。
「?!」
桜花の周りに淡い霞がかかり始めた。
やがてその霞は蒼い雪になっていった。
「、、、、桜花?」
桜花の顔には大粒の涙が零れていた。
『・・・・・雪が溶けちゃうよ、早く行こう。』
『・・・桜花、独りは嫌だよ・・・。』
「ちょっと、、待て! いつもおいて行くのは桜花の方じゃ、、、。」
『・・・桜花、独りは嫌だよ・・・。』
涙を流しながら桜花は薄れ、やがて消えてしまった。
『・・・桜花、独りは嫌だよ・・・。』
「桜花!!」
「、、、、あ。」
夢だった。
又、あの夢だ。
又、途中で目が覚めてしまった。
「、、、、、、。」
体中汗だくだった。
「すいませ〜ん。」
玄関の方で聞き慣れない声がした。
「、、、、昨日のお客さんかな?」
「今行きます〜。」
玄関には小柄で可愛い感じの少女が立っていた
その少女は納得するかのように雪花の顔を見た
「初めまして〜、自分は『朱草小梅』です〜。」
「貴方が、あの有名な絵師である『深雪氏』の娘さんかぁ〜。」
「流石、親子だ。 似てますね〜。」
「え?」
「、、、、あの。」
「はい〜?」
「失礼ですが、母のことを知ってるんですか?」
「う〜ん、ちょっとね。」
そこへ緋見が勢いよく家に入ってきた
「おはよう! 雪花ちゃん。」
「あ、、、おはよう。」
「今日こそ花火やろうね!」
「う、うん、、、。」
緋見は小梅の存在に気付かず話しを続けた
「いっぱい、いろんな種類があるの。」
「これとか色がとても綺麗なんだって。」
「後ね。 後ね。」
「緋見ちゃん、、、、。」
「ん? なぁに? 雪花ちゃん、、、。」
「あの〜。」
「わぁ!? 小梅さん! いつから居たんですか??」
「、、、、さっきから、ず〜っとですよ〜。」
緋見は顔を真っ赤にして俯いた
その隣で雪花と小梅は苦笑いをしていた
「、、、、それでは、自分はこの辺で失礼します〜。」
「お邪魔しましたぁ〜。」
「あ、もう帰るの?」
「あの、ちょっと待って下さい!」
ようやく顔を上げた緋見は小梅を呼び止めようとした
が、もうそこには小梅は居なかった
「は、、、早、、、。」
「嵐のような人だったね、緋見ちゃん。」
「、、、、どうしよう。 私が悪いんだ、、、、。」
「気にしなくて良いよ。」
「え? で、でもぉ〜。」
「まぁ、まぁ。 あ、そうだかき氷でも食べよ。」
そう言い、私は緋見ちゃんの背中を押した。
「そうだね。 今度、謝ろう。」
「さっ、早く作ろうよ。」
「うん。」
雪花と緋見は急いで台所へ走っていった
「あ〜美味しいぃ。」
「本当、すごく美味しいね。」
「やっぱり、夏は西瓜にかき氷だね。」
「うん。 うん。」
「すいませーん、郵便です。」
「あっ、私が行く。」
雪花は玄関の方へ行った
数分後、雪花はなにやら一枚の葉書を持って帰ってきた
そして嬉しそうにその葉書を緋見に見せた
「あー!! さざれさんから、暑中見舞いだ!」
「わぁぁ、、、、久しぶりだねぇ。」
「久々だよね、元気かな? さざれ、、、。」
「それより、早く読もうよ。」
「そだね。 緋見ちゃん。」
その後、すぐ葉書を読んだ。
葉書には今の身の回りのことを書いていた。
そして、文章の最後にはこう書いてあった。
【たまには、桜花さんのお墓にも行ってあげて下さい。】
【あの子は特別寂しがり屋だし、きっと泣いていますよ。】
【できればあの子の大好きだった向日葵を持っていってあげて下さい。】
【それでは、体に気を付けて下さいね。 雪花さん、緋見さん。】
「、、、、、あの馬鹿。」
最初に声を出したのは雪花だった
「たまには帰ってくればいいのに、、、、。」
雪花は少し寂しげな笑顔を浮かべた
緋見はかすかなおえつをもらしていた
黒く大きな瞳からは大粒の涙が零れていた
「、、、、、明日辺りに雪花の墓にでも行こう。」
「いや、、、、。」
「今すぐ行こうか。」
「うん、さざれさんが書いてたとおり桜花ちゃんきっと泣いてる。」
「向日葵は、、、、。 あ!」
玄関にはとても大きく綺麗な向日葵の花束が置いてあった
とても鮮やかな黄色はまるであの子のように見えた
いつも皆に元気を与えた桜花のように、、、、
「、、、、、きっと、これは母からのだ。」
「え、、、?」
「きっと、そうだ。」
雪花は嬉しそうに向日葵の花束を投げた
緋見も嬉しそうに笑い涙を拭いた
そんな光景を見守る人影が二つあった
「、、、、、、ああ、もうわかったみたい。」
「本当、やはり身内だと不思議と勘が良いですからね。」
さざれと深雪だった
「あら、そろそろその格好やめたら? さざれさん。」
「はは、、、、私はこの格好結構気に入ってるんですけどね。」
「、、、、、、、。」
深雪はさざれを見ながら口を開いた
「、、、ある時は、気前の良い世話役。」
「又ある時は、突然引っ越してきた嵐のような訪問者。」
深雪は楽しそうに話続けた
「さて、その正体は、、、、?」
「はい。」
「深雪さんの夫であり雪花・桜花の父です。」
さざれは深雪の頭を撫でながら答えた
「いくら貴方が変装の名人だからって、あれは上手く化けすぎよ。」
「はい。 以後気を付けましょう。」
深雪はさざれの手を払いこう言った
「さ、次の絵完成させないと。 早く、貴方も手伝いなさい。」
「わかりました、手伝いましょう。」
小走りで深雪は仕事場へ向かった
さざれは深雪を追いかけるような形でついていった
丁度そのころ、小さな墓石の前には手を合わせる少女が二人居た
雪花と緋見だ
「さぁて、桜花の墓参りも終わったことだし。」
「今日こそ、花火やろうね。」
「うん、雪花ちゃん。」
「じゃあ帰ろうか。」
「うん。」
雪花と緋見は手をつないで帰っていった
墓の前に置かれていった向日葵は二人を見送るかのように いつまでも雪花達の方向を向いていた
「あ、そういえば明日は七夕だね。」
「雪花ちゃん、何お願いする?」
「え? 私、そうだな〜。」
「まだわからないかな? じゃあ、緋見ちゃんは?」
「私もまだわからないの、、、、、、おあいこだね。」
私達は少し照れくさそうに顔を会わせた。
きっと、二人とも同じことを考えてたと思う。
それは。
『いつまでも、仲良しでいられますように。』
こんなことじゃないのかな? っと。
【終】
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