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…蛍の便り…
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今日も又、雪だった、、、、。
何も変わらない一日を過ごすのかと思った。
いや、何も変わらないことを願っていたのかもしれない。
「雪花ちゃーん。」
いつものように緋見ちゃんが、家に遊びに来た。
庭の隅にある小さな池の水に反射して、すぐわかる。
「今日も雪がすごいね。」
「、、、、うん。」
しばらく会話がとぎれ、二人とも固まっていた。
「、、、桜花ちゃんは、、?」
「あ、、、、家の中で、、、。」
「、、、、まだ、病気は治らないの?」
「、、、、、うん。」
「、、、、、、、、、、、。」
私には『桜花』という、双子の妹がいる。
生まれつき病弱な子だったために寝たきりの生活を送っている、、、、。
そんな妹には、少々風変わりの『さざれ』と名のる世話役がついている。
しかし、さざれはよく働いてくれる。
桜花の世話役だけでなく、掃除、洗濯、家事までやってくれる。
でも、やはり変わっている。
年齢、性別、その他家族のことはいっさい話そうとしなかった。
たとえ聞いたとしても、、、、、
「記憶をなくしたんですよ。」
と、笑いながらよくごまかすのがいつもだ。
、、、母はなぜこんな変わった人を雇ったのだろう。
気が付くともう30分が過ぎていた。
「、、、寒いね、、、そろそろ家の中に入ろうか。」
「うん。」
雪はいっこうに降り止もうとはしなかった、、、。
家の中に入ると玄関にさざれが立っていた。
「外は寒かったでしょう、、、。 今すぐ甘酒を持ってきますね。」
「すいません。 桜花ちゃんは、、、?」
心配そうな緋見の顔に気付いたのかさざれはにっこりと笑い静かにこう言った。
「大丈夫。 桜花さんは今、ぐっすり寝ていますよ。」
その言葉に安心したのか緋見は少し笑顔になった。
私もつられて笑顔になった。
「、、、、、お姉ちゃん、、、、?」
部屋の奥から桜花がやって来た。
起きたばかりのようで少し眠そうだ。
「桜花さん。 起きておられて大丈夫なのですか?」
「、、、、うん。今日はなんか調子がいいみたい。」
「それよりさざれちゃん。 甘酒の方はいいのですか?」
「あ、、、、、、、、。」
さざれはしばらく立ち尽くしてたが、すぐに台所へ走っていった。
「クスッ、、、さざれちゃんらしいや。」
その後、しばらく桜花は笑っていた。
緋見ちゃんも私も、桜花の元気そうな笑顔を見て安心していた。
しばらくして、さざれが台所から帰ってきた。
「はい、甘酒です。 まだ熱いから気を付けて下さいね。」
「ありがとうございます。 さざれさん。」
「、、、、ありがとう。 さざれ。」
「ありがとうです。 さざれちゃん。」
「それでは私は、奥様の所へ行って来るんで桜花さんを頼みますよ。」
「うん。 解ったよ。」
「いい子にしていてくださいね。 桜花さん。」
「うん。桜花いい子にしてる。」
「行ってらっしゃい。 さざれさん。」
そして、さざれは私達を残して母の所へ行った。
母は、とても有名な絵師である。
母の作品はどれも評価が高く、とてつもない額で売られているそうだ。
ここより20分くらい離れた別館で母はいつも絵を描いている。
そのため、私達はあまり顔を会わせない。
と、いうより母はいつも、面をつけているのである。
彼女の素顔を見た者はまだいないという、、、。
、、、、、母は、有名な絵師でありとても変わった生き物でもある。
「さざれちゃん、、、。帰ってこないね、、、、。」
「そ、そのうち帰ってきますよ。 桜花ちゃん。」
「それより桜花ちゃん。 私と遊びましょう。」
「ごめんね。 緋見ちゃん、、、、、。」
「え、、、、?」
「子守任せて、、、、、桜花は赤ちゃんだからな。」
「む〜。 桜花、赤ちゃんじゃないもん。」
「まあまあ、、桜花ちゃんあっちで遊びましょう。」
その数分後、さざれが真っ白になって帰って来た。
「おかえりなさい。 さざれちゃん。」
「ただいま。 桜花さん。」
「さざれちゃん。 雪で、真っ白だぁ、、、。」
「途中、吹雪にあいましたからね。」
「じゃあ、桜花甘酒入れて来る。」
そう言って、桜花は走って台所に行った。
「桜花さん。 走って大丈夫なんでしょうか?」
心配そうなさざれを見て、緋見はこういった。
「大丈夫です。 桜花ちゃん、本当に調子がいいみたいですからさざれさんは、早く服を着替えて下さい。」
「そうだよ、さざれ。 風邪でもひいたら桜花どころじゃないよ。」
「そうですね、、、、じゃあ、私は着替えてきます。」
そう言い、さざれは濡れた着物を着たまま家の奥に行った。
入れ違いで、桜花が走ってきた。
小さな手の上に湯飲みを持って、、、、。
「さざれちゃんは、、、、、?」
「さざれさんなら今、入れ違いで、、、、家の奥に、、、。」
「せっかく入れてきたのにぃ〜。」
桜花の顔色が少し青い、、、、、。
息も荒いようだ、、、、。
着替えを終わらせたさざれがやってきた。
「みなさん。 おそろいですね。」
「あ、さざれちゃん! 遅いです〜甘酒冷えちゃったです。」
「ごめんなさい。 桜花さん。」
「ちょっと、着替えに手間取ってしまい、、、。」
「む〜、今度はいいわけですか。 さざれちゃん。」
「まあいいです。 はい、さざれちゃん。」
さざれが桜花に近付いたその次の瞬間だった。
湯飲みは突然、桜花の小さな手から落ちた。
「ん、、、、、、緋見ちゃん?」
「桜花ちゃん! 良かった、、、。」
「大丈夫なのか?! 桜花。」
あの後、桜花は5時間近く眠っていた。
まるで、人形のように冷たく、、、二度と目を開かないのかと思うくらい静かだった。
「あ、さざれちゃん、、、、、。 甘酒は、、、、、?」
さざれは、冷たくなった小さな手を握りしめ答えた。
「ありがとうございました。 とても美味しかったですよ。」
「良かった、、、、、。」
「桜花、、、、。 もう、無理するな、、、。」
「無理なんかしてないよ、、、、。」
「じゃあ、さっき倒れたのは何でだ?」
「なんか、、、、、急に眠くなって、、、、それで、、、。」
「ばか、、、、、。」
そう言うと雪花は桜花を抱きしめた。
彼女の目には涙が溢れていた。
「お姉ちゃん、、、、泣いたら駄目だよ。 涙は嬉しいときに流さないと、、、、。」
「、、、、、、今でも十分嬉しいさ、、、、。」
桜花は急に叫んだ。
「あっ、、、、蛍!」
「えっ? ど、何処ですか?」
「ほら、、、、、あそこに、、、、。」
桜花の指さす方向には確かに光が溢れていた。
「本当、、、、。」
「そんな、今は冬ですしここの気候では生息は無理のはず。」
「でも、綺麗です、、、。 星がこぼれているみたい。」
「きっと、神様からのごほうびです。 桜花ずっといい子にしてたもん。」
その光達はいつまでも輝き続けていた。
たったの数分間が永遠にも思えた。
―あの日から一年
いろいろな事が変わった。
桜花は病気であっさりと神様とか言う人の所へいってしまった。
まあ、彼女は幸せ者だっただろう。
それから、さざれは突然何処かに行ってしまった。
その代わりに最近、母がよく家に帰ってくる。
後、夏には小さな蛍が一匹、この家を訪ねるようになった。
でも、一つだけあの日から変わらないことがある。
それは、緋見ちゃんが毎日私の所へ必ず来ることだ。
「雪花ちゃーん。」
今日も又、いつものように彼女の声が庭中に響き渡る。
【終】
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