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…海底の白い月…

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「そんなの在るわけないじゃん。」

彼女の第一声はそれだった
ひどく不機嫌そうに煙草をふかしている

「未成年者でしょ、煙草なんか吸っちゃダメ。」

吸いかけの煙草を取り上げ、灰皿に押しつける
少しばかりの煙が辺りに漂う
彼女は私の目の前にカップを置いた

「珈琲。」

カップは空になっている
私は黙ってカップを彼女からとった

その時、カップと引き替えに一握りのあめ玉を彼女の手に置く

「なにこれ。」
「煙草吸う人は口寂しいから吸うんだって。」
「で、あめ玉?」
「そうそう、それのどあめだし風邪にも良いよ。」

彼女は急に顔をしかめた

「のどあめ、きら、、、」
「はい、珈琲。」

彼女にカップを押しつける
彼女は口を開けたまま、カップを受け取った

「で、何? のどあめがどうかしたって?」
「もういいよ。」
「あ、言い忘れてたけど珈琲、砂糖もミルクも入ってないよ。」

彼女はカップの中のただ黒いだけの液体を眺める

「ねぇ、これホントに珈琲?」
「うん、ホントに珈琲、普通分かるでしょ。」

彼女はカップを机に置く
そして私をじっと見た

「朝から鼻つまって、わかんないよ。」

そうなの。っと私は聞き流す
彼女は散らかった床の荷物を適当に足で動かした
少しばかりのスペースが出来る

「それにしてもホント、足の踏み場もないって感じね。」
「あるよ。」

彼女はさっき作ったスペースを指さす
私は机からカップをとり、一口珈琲を飲む

「あ、それ、、、、。」

彼女は私を睨んだ
私はもう一口飲み、カップを机に置く

「冷めちゃうよりずっと良いわよ。」

又後で入れてよね。そう言い彼女はその場に座り込んだ
散らばった荷物から雑誌を引き抜き、一枚一枚めくる

「所であんたの趣味の悪い小説、完成した?」
「その、名前何だったかなぁ、、、。」
「『海底の白い月』」
「そう、それ。」

机からカップをとり中の珈琲を、又一口飲む

「まだよ。」

私が適当に返事を返すと、彼女は読み終わった雑誌を閉じた

「で、『海底の白い月』って何?」

彼女は立ち上がり、身体をはたく

「海に落ちたあめ玉。」

そう言い、私はカップを机に戻した
カップは空になっている
そして少しばかりの湯気が立っている

「、、、出来たら見せてよね。」
「出来たらね。」

私は彼女に背を向けた
空になったカップだけを持ち、キッチンに歩く
彼女は灰皿の中の煙草を尻目に、あめ玉を手に取った

「白い月とあめ玉か。」

くすくすと笑い、彼女は1つだけあめ玉を口に入れた

【End】           



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