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…月並み魔法使い…
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冬のある日
冷えきった街の隅にある小さな教会
そこでは丁度葬式が終わったばかりで少し騒がしかった
大人達の世間話だけが響く教会の中
1人だけ、子供がいた
子供の名前は月夜
泣いているわけでもなく、ただ古ぼけた木の箱に話しかけている
「月夜、ちょっといらっしゃい。」
「はぁ〜い。」
月夜は声のする方向に走っていった
月夜の名を呼んでいたのは16〜7くらいの女性
「何かお話? 星華姉ちゃん。」
「そう、お母さんについてね。」
「お母さんなら、あそこで寝てるよ。」
月夜の指さす方には、さっき話しかけていた木の箱がある
そう、今回の葬式は月夜の母のためのもの
月夜はまだ幼く、『死』と言うモノを知らないようだ
「お母さんね、綺麗なお花の中で、ずーっと寝てるんだ。」
「起こそうと思って話しかけてたんだけど、全然起きないの。」
「きっと、とっても楽しい夢でも見てるんだろうね。」
月夜は無邪気に笑う
星華はその様子に心を痛めていた
悲しみが溢れそうになり、思わず月夜を抱きしめる
「? どうしたの、星華姉ちゃん。」
「、、、、、っ。」
「、、、姉ちゃん、泣いてる、、、、?」
「ねぇ、月夜お母さんは好き?」
「うん、大好きぃ。」
「、、、じゃあ。」
星華の心の痛みはさらに増していた
今、口を開けば、張り裂けそうにもなる
月夜を抱きしめている手に力が入る
「じゃあ、お母さんがあのままずっと寝ているのは嫌?」
「うん。」
「じゃあ、”魔法使い”になりなさい。」
「え?」
「月並みでも良い、”魔法使い”になりなさい。」
「月並み、、、魔法使い?」
「ええ。」
「うん、僕魔法使いになる!」
月夜はすぐに”良い”返事をした
星華は少しずつ涙を流していた
「、、、貴方が、、、魔法使いになっ、、、たら。」
「きっと、、、、お母さんは助かる、、わ。」
言葉が途切れそうになりながらも星華は月夜に言い聞かせた
月夜はにっこりと笑顔で星華の背に腕をまわす
「泣かないで星華姉ちゃん、僕絶対になるよ。」
「月並み魔法使いに。」
月夜はぽんぽんと星華の背を軽く叩き、溢れ出る涙を小さな手で拭った
星華は顔を上げ月夜を見た
「私をなぐさめてくれるの?」
「良い子ね。」
その日、街には初雪が降った
街は真っ白に染まっていった
何もかも包み込むように
真っ白に、真っ白に
「じゃあ、姉ちゃん行って来るよ。」
1人の少年がいた
体よりも少し大きな鞄を抱えた
数年前まではとても幼くまだ子供だった、少年は
今ではその面影がないくらい立派に・・・立派に・・
「気を付けていくのよ。」
「月夜。」
月夜と言う少年に話しかける女性
とても温かい目で少年を見る
数年前まではただ自分の感情を押し殺し背伸びばかりしていた、女性は
今ではその面影がないくらい大人に・・・大人に・・
「ねぇ、月夜。」
「本当に行っちゃうの?」
「うん、行くよ。」
「で、夢叶えてくる。」
「母さんと、姉ちゃんのためにもね。」
月夜は笑う
ただ目前の人に心配させたくないから
「、、、行ってらっしゃい。」
「うん。」
「行って来ます!」
「星華姉ちゃん。」
そして月夜は消える
真冬の闇夜に
真っ白な幻に消える
ただ降り続く幻に
「ちゃんと、、『おかえり』が言えるかな?」
そう言い、星華は2つの月夜に背を向けた
顔をつたう冷たいモノ、それが何なのか星華は分からず笑う
気が付くと足下に小さな水たまりが出来る
「もう、寝よう。」
星華は家の中に帰った
そのまま、涙も拭かずベットに入る
きっとこれは夢かもしれない
そんな事を考え星華は星を眺めた
【終】
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