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…聖母の揺り籠…
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今日も街角のアンティークショップから歌が聞こえる
あの店に客が入っては2回だけ流れては止まるその歌
街の人々には”とても可愛く優しい歌”と言われていた
♪空飛ぶサカナは知っている 海に浮かぶ揺り籠を
♪蒼い小鳥の口ずさむ 天使も歌わぬ子守歌
♪聖母の見守る揺り籠よ
♪我が子をのせて優しく揺らせ
丁度、アンティークショップの店内には客が入っていた
真っ黒なスーツに身を包む大柄の男だ
男は店長と思われる人間を睨み付ける
店長はにこりと微笑し、流れるCDを止めた
「本当に綺麗な歌ですよね。」
「では、どうしましょう?」
「この歌を俺に返せ。」
「この歌は貴方の歌ですか?」
「そうだ、さあ早く!」
男は机をどんと叩く、よほどいらいらしているのだろう
そして、男は煙草を取り出し火を付け始めた
「まあまあ、そう焦らないで下さい。」
そう言い、店長はその煙草を取り上げ、近くにあった看板を指さした
看板には”禁煙”と大きく漢字で書いていた
男は舌打ちをし、又店長を睨んだ
「それではお客様、このオルゴールを鳴らしてみて下さい。」
「は?!」
「この歌が貴方の歌ならば、そのオルゴールからも同じ歌が流れるでしょう。」
「そんな、占いみたいなことを、、、、。」
そう言いながらも男は言われるがままに、目の前に置かれたオルゴールのネジを巻く
キリキリとネジの巻く音が店内に響く
「ほら、終わったよ。」
男はオルゴールのネジから手を離し、机に置いた
だが、オルゴールは一向に鳴ろうとしない
店長は笑う
「嘘を付きましたね?」
男は店長のその言葉と笑顔が不気味に思えた
「ニャー。」
その時、男の足下に真っ黒な子猫が居た
男は少し驚き、冷や汗をかく
「こら、金平糖お客様を驚かしちゃ駄目ですよ。」
「ニャ〜、、、。」
「何だ、店長さんの飼い猫か、、、ったく、驚かせやがって。」
男は子猫を撫でる 始め子猫はごろごろと気持ちよさそうにのどを鳴らしていた
が、次の瞬間子猫は大口を開け男に飛びかかった
それは本当一瞬だった
「あ〜あ、金平糖又お客様食べてしまいましたね。」
「駄目じゃないですか、いくら嘘つきが嫌いだからって。」
「今度からはもうご飯抜きにしますよ?」
「ニャア〜〜。」
子猫は店長に体をすり寄せる
店長は苦笑し子猫を撫でた
それから、数日後のこと
店の前をふらふらと歩く、女性が居た
店のショウケースをちらちらと覗いている
「ニャァ、、、。」
「ん?!」
女性は少し驚き、足元を見た
足下には真っ黒な子猫が居る
自分の足に体をすり寄せ、ニャアニャアと鳴いている
「どうしたの、君のお家はどこ?」
女性が屈んで子猫を撫でると、子猫は尻尾を振り店に入っていった
女性は慌ててその子猫を追いかける
「待って、猫くん。」
女性は店に入り、やっと子猫を捕まえ抱き上げた
子猫はニャアと一回だけないて店内の奥をじっと見ていた
店内にはありとあらゆるアンティークのモノが置かれていた
「いらっしゃいませ、お客様、、、、ん?」
どこからか声がし、女性は辺りを見回した
ふと、気配を感じ後ろを向く と、そこには少し小柄の少女が立っていた
「お嬢さんはお留守番をしているのかな?」
女性はにこりと笑い、少女を見た
少女もにこりと笑う
「珍しい、金平糖が私以外の人間に抱かれて大人しいのは。」
「お客様はきっと良い人なんですね、どうぞこちらへ。」
少女は女性を椅子に座らせ、店内の奥へ入っていった
女性は子猫を抱いたまま、きょとんとしている
しばらくすると、さっきの少女がティーセットを1つ持ってきた
ポットからは珈琲の良い香りとあたたかそうな湯気が出ている
少女はカップに珈琲を注ぎ、シュガーポットとミルクと一緒に女性の前に出した
「ありがとう、お嬢さん。」
女性はにこりと笑う
そして子猫を放し、カップに手をかけた
少女も椅子に座る
「初めましてお客様、私は水鶏と申します。」
「お嬢さんは水鶏さんって言うのね、私は峰音。」
「所で峰音様、お歌は好きですか?」
「うん、好きだよ。」
「そうですか。」
水鶏は嬉しそうに笑い、CDを取り出した
そして、それを流し始める
「綺麗な歌、、、なんか懐かしい感じがする、、。」
峰音は静かにその歌に聴き入った
「峰音様、良かったらこのオルゴールを鳴らしてくれませんか?」
水鶏は何処から取りだしたか、古めかしいオルゴールを峰音に手渡した
峰音はきょとんと、手の中のオルゴールを見る
「ネジを回したらいいの?」
水鶏は何も言わず、ただにこにこしている
峰音は不思議に思いながらも、そのオルゴールのネジを巻いた
キリキリとネジを巻く音がし、しばらくすると峰音はそれを机に置いた
と、次の瞬間オルゴールが鳴り出した
「わぁ、この歌あのCDと同じ歌だね。」
水鶏はその様子を見て、にこりと笑う
「良かった、やっと貴方にも主が現れましたね。」
「え?」
「峰音様、良かったらこのオルゴールを貰ってくれませんか?」
「もちろん、お代はいりません。」
「ええ?」
峰音は驚いた
一瞬嘘かと思ったが、水鶏の様子を見る限りとてもそうには見えない
「『聖母の揺り籠』、それがこの歌の名前です。」
「今から十数年前、とある女性によって作られ歌われていた歌です。」
「おそらく、この歌を作り、歌っていたのは貴方の母親でしょう。」
「そして、この歌は貴方のためだけの子守歌です。」
そう言い、水鶏はオルゴールを箱に詰め包装し始めた
しばらくし、包装したオルゴールを又峰音に手渡した
「この歌は貴方が主と言っています。」
「何で、、、、そんなことが分かるの?」
峰音は神妙そうな顔をし、水鶏を見た
水鶏はにこりと笑い、口を開く
「それは、私が歌の声を聴けるから。」
「え?」
「それでは今日はもう閉店です、さようなら。」
「ちょ、ちょっと待ってよ、、、私まだ話が、、、。」
「そうそう言い遅れましたが、私はここのお留守番をしているわけではありません。」
「ちゃんとした、店番です。」
そう言い、水鶏ははさみを取り出し何かをプツンと切る
すると、峰音はその場に倒れた
「金平糖、お仕事です。」
「ニャア。」
「お客様をちゃんと家まで送ってくださいな。」
子猫は水鶏の言うとおり、峰音を家に送った
どうやって送ったかは、水鶏しか知らない
その翌日 街角にあったはずの何かが消えていた
その何かがあった場所には、ただぽっかりと大きな空き地がある
「すいません、ここにお店があったんですけど知りませんか?」
街にはそんな声が至る所から聞こえた
声の主は、峰音
「ここは昔から空き地だよ、店なんて建ったことがない。」
街の人々からはそんな声しか聞けなかった
「金平糖、ちゃんと峰音様の記憶消さなかったんですね?」
「ニャア〜。」
「誤魔化しても駄目です、罰として今日のおやつは抜きですよ。」
「?!」
峰音には、そんな声が聞こえた
でも声のした方向には、やっぱりぽっかりと大きな空き地以外何もなかった
でも峰音にはそんな声が又聞ける気がして
その日から毎日、その空き地に通うことにした
【END】
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