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…Stardust coffee…
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一番寒い冬の夜
ちっぽけで何もないその街に
その少年は雪と共に現れた
少年は、体よりも少し大きな鞄を抱えていた
街の人々の中にはまだ、少年の名前を知る者はいなかった
だから少年は『雪連れの君』と呼ばれた
「今晩和。」
少年は暗い街の中で唯一光の溢れる場所の前に立っていた
ちっぽけな街にある大きな教会の前に
「すいません、誰か居ませんか?」
少年は教会のドアと数回ノックした
すると、勢いよくドアが開き中から女性が出てきた
「何?」
「ん?あんたは、雪連れの君じゃない。」
女性は少年の顔を見るなり、そう言った
「雪連れの君?」
少年は女性の言った単語を鸚鵡返しした
「あんたがこの街に来たとき、滅多に降らない雪が降ったから。」
「だから、あんたはそう言われてんの。」
なるほど。っと少年はにこりと笑った
「で、何か用?」
「それが今日はどこの宿もいっぱいで泊まる所がなくて。」
「じゃあ勝手に泊まっていっていいわ。」
「ありがとう、えっと。」
「静夢。」
静夢と名乗った女性はそのまま教会の中に入っていった
少年は慌ててそれを追いかける
「ほら。」
静夢は少年に何かを投げる
少年はそれをしっかり受け止めた
「毛布?」
「寒いでしょ、それとも凍え死にたい。」
少年は横に首を振る
そして、ありがとう。といって嬉しそうに笑った
その日からしばらく少年は教会で寝泊まりしたが
静夢は何も言わず、ただ1日3回の食事をちゃんと用意してくれた
そうして1週間が経つ頃、少年はあることに気付く
静夢は何かを待っているようだった
毎日毎日決まった時間になると外へ出る
そして1時間程たつと何もなかったかのように教会に戻ってくる
そんな日が続く中
今日も静夢はいつものように外へ出たが、1時間たっても帰ってこない
2時間、4時間、6時間と過ぎていって
ついには半日たっても戻ってこなかった
流石に心配になった少年は教会の外へ静夢を探しにいった
外へ出るなり、目に入ったのは紙切れを手にしたまま動かない静夢の姿だった
こちらに背中を向けているため表情は確認できない
だが、どう考えても静夢は普通の状態には見えなかった
「静夢・・・さん?」
少年は静夢の背中に恐る恐る話しかける
だが静夢は相変わらず動かなかった
少年は慌てて静夢の正面に回った
「・・・静夢さ・・ん?」
静夢の目は真っ赤に晴れ上がり、頬にはすでに乾いてしまった水の後があった
「旦那が死んだの。」
静夢はそう一言いうとのろのろと教会に入っていった
少年も静夢を追いかけ教会に入る
「静夢さん・・?」
静夢はさっきとは正反対にぱたぱたと動き回っていた
そして、見慣れたトレイに食事を乗せ少年に突きつけた
「今日の夕飯よ。」
静夢はそういうと、教会の奥へ入っていった
少年は黙って食事を口に運んだ
その夜 少年はそっと教会の外へ出た
「何してんの、あんた。」
聞き慣れた無愛想な声に、少年はびくりと肩をふるわせる
「気付きましたか、折角秘密にしておこうと思ったのに。」
「大人の目を誤魔化そうなんて無駄なことよ。」
静夢は無愛想にそう言う
すると、少年はそれに少し苦笑した
「静夢さん、珈琲は好きですか?」
「普通よ。」
「嫌いじゃないんですね?」
「そうね。」
静夢の言葉を聞き、少年は子供のようににこりと笑った
そして、細い腕を空に上げ何か呟く
と、その瞬間、空に光るいくつもの星が少年の手を目掛け降ってきた
「っ!?」
静夢は目の前の光景に、思わず声を上げそうになる
「ん、静夢さん、どうかしましたか?」
少年は平然と話しかける
その間にも、いくつもの星は少年の手に降ってきている
そして、少年の手に当たる寸前で星は力を失い、少年の手の中に吸い込まれた
「面白いでしょう?」
少年の、けろりとした様子に静夢は一瞬呆れた
「俺、これでも魔法使いなんです。」
「でも月並みの魔法使いだから、こんな月並みのことしかできない。」
「その月並みなことしか出来ないあんたがやったことは何なの?」
少年はふふっと嬉しそうに笑った
そして、さっき星を吸い込んだ片手をそっと開く
少年の手の中には小さな金平糖が転がっていた
「夜空に浮かぶ忘れられた星くずをこんな風に金平糖にかえたんです。」
「変なの。」
静夢は吐き捨てるように言った
「仕方ないです、僕月並みのことしか出来ないんですから。」
少年はそう言うと静夢の背を押して教会に入っていった
静夢を椅子に座らせると、少年はぱたぱたと珈琲をいれ始めた
数分して、少年は湯気の出るカップを2つ持ってきた
「どうぞ。」
カップの1つは静夢の前へ、そしてもう1つは自分の座った席の前へ置く
そして、2つのカップの両方にさっきの金平糖を3,4粒浮かべた
「何してるのよ。」
「寒いときには甘い物の方が体が温まるんですよ?」
「それに静夢さん、泣き疲れてるでしょ。」
「疲れてるときにも甘い物は良いんですよ。」
少年は得意げにそう言った
「あんた、馬鹿じゃないの、何が泣き疲れるよ。」
「ええ〜、だって静夢さん、目が真っ赤に腫れてますもの。」
少年は静夢の目元に手をやる
「お黙り。」
静夢は少年の頬をぎゅうっと抓る
少年は顔を少し歪ませながらもにこにこと笑っていた
「大人を馬鹿にした僕が悪かったですから、珈琲早く飲んで下さい。」
「冷めた珈琲なんて美味しくないです。」
「こんなに寒い夜は特に。」
「だからあったかいうちに召し上がれ。」
静夢は黙って珈琲を飲む
全部飲み干すと少しだけ笑った
「あんた旦那に似てる。珈琲入れるの上手い所まで。」
「全然違う所は、私の旦那は軍人だったけど、あんたは魔法使い。」
「そして私の旦那はあんたよりずっと大人でもっと格好良かったわ。」
それを聞いて少年も珈琲を一口だけ飲んだ
「静夢さんも俺の知人によく似てます。」
「でも静夢さんほど口は悪くなかったです。」
静夢は眉間に皺を寄せ、少年の前に空になったカップをどんっと置いた
「おかわり。」
少年は苦笑し、ゆっくりと席を立つ
「今日はもう寝て下さい、疲れてるでしょ。」
「眠れないなら俺が羊を数えて上げます。」
「羊が1匹、羊が2匹、羊が3・・・。」
少年が羊を数え始めると静夢は本当に寝てしまった
そして静夢は不思議な夢を見る
景色から見て、冬の夜
自分の住んでいる教会よりももっと小さな教会の中で
あの少年・『雪連れの君』によく似た子供と
どこか自分に似ているような感じの少女がぽつりといた
『星華姉ちゃん、僕もっと大きくなるよ』
『大きくなったら、お母さん助けるために魔法使いになる』
『星華姉ちゃんが悲しまないように魔法もかけたいな』
『もう泣いちゃダメだよって』
『それまで、待っててね』
『いつか必ず月並み魔法使いになるから、、、』
『忘れないで』
『2人だけの約束だよ』
子供は星華と呼んだ少女の頭を一生懸命撫でていた
その少女は涙を目に浮かべながらも、小さく笑って
『私をなぐさめてくれるの?』
『良い子ね。』
それを聞くと子供はとても嬉しそうに笑った
静夢をそれを見て、その子供が『雪連れの君』と確信した
その瞬間、やわらかい朝日で目が覚めた
教会の中には気配はなくて
所定の場所に置いていた荷物も消えていて
静夢には、どうやら少年はここを出ていったということが分かった
「住んでた跡残していかないなんて、燕みたい。」
静夢はぽつりと呟く
そしてさっきまで寝ていた机の上に目をやると
見覚えのない大きな硝子瓶があった
その硝子瓶には金平糖が詰まっていた
近くに紙切れが添えられていて
『忘れないで。』
と落書きのような字が並んでいた
「金平糖が置き土産なんてやっぱり子供だわ。」
「でも、こんな物でも嬉しい私も十分子供ね。」
静夢は苦笑して、空になったカップを手にキッチンに行った
すでに冷めてしまった珈琲を鍋にかけてもう一度温める
すっかり湯気が出るようになったらカップに入れて
少年の置き土産の金平糖を3,4粒浮かべる
「魔法使いだし、どこかに行くときはやっぱり、ほうきか何かで飛んでいくのかしら。」
「あ、でも歩いたり走ったりして移動するんでしょうね。」
「魔法使いでも月並みだし。」
静夢は珈琲を飲みながらぽつりぽつりと呟く
ふと今日は日曜日で、お祈りに街の人々が来ることを思い出す
慌てて珈琲を飲んで、正装をしながら
少年は今頃連続のくしゃみで苦しんでいるだろうか
なんて馬鹿なことを考えてみる
「すいません、お祈りをしに来たんですが。」
扉の先から声が聞こえた
静夢は、はいはいと急いで扉を開けた
そこにはいつも誰よりも早く来る子供が立っていた
「静夢さん、それなぁに?」
子供は静夢の右手を指さす
その時、静夢は自分の右手に瓶があることに気が付く
無意識に持ってきたらしい
静夢は苦笑して
「いつも一番に来てくれるからご褒美。」
と、瓶から金平糖を取り出し子供の手に乗せた
子供は嬉しそうににこにこと笑った
『忘れないで。』
そんな呪文の魔法をしっかりかけられたなと
静夢は又苦笑した
【END】
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