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…月夜の仕事人…

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−プロローグ−
今日も街角のアンティークショップから歌が聞こえる
それらは何処か懐かしくて
自然と人々をその店の中に招き入れた
でも街の人々は、あの店に対してこんな噂をしていた
「時々、あの店から客が出てこない」と
でも、それは悪魔で噂
真実はそのアンティークショップの店長しか知らない


−1:琥珀の桜花−

「ようこそ、お客様。」

ドアの軋む音と、店長の声が店内に響いた
店長はにこりと笑い、子供に近付いた

「初めまして、歌を探してくれると言うのは本当ですか?」

子供は小さな声でそう言った
店長は店内の奥へ入り、カタカタと何かを出し始めた
しばらくすると、薄紅色の湯飲みに和菓子を持ってきた

「音をお探しですか、曲名は?」
「『琥珀の桜花』といいます。」

店長は子供の前に湯飲みを置き、にこりと笑った

「わかりました、お引受けします。」
「ホントですか!?」

子供はガタンと大きな音と共に大きな声を上げた
店長は少しも吃驚せず、くすくす笑っている

「本当です。」
「所でお客様のお名前は?」
「はい、雪花といいます。」

子供は店長の手のひらに、指で文字を書いた

「雪に花ですか、綺麗な名前ですね。」
「お返しに、私も。」

そう言うと、店長も子供の手のひらに、文字を書く

「水、、、鶏?」
「はい水鶏といいます、ここの店長です。」
「良い名前ですね。」

雪花はにこりと笑う

「ありがとうございます。」

水鶏は嬉しそうに和菓子を食べた

「ニャアー。」
「ん?」

何やら机の下から声がした
雪花はそろそろと机の下を覗いた
と、そこには黒い子猫が尻尾を振って座っている

「可愛い。」
「水鶏さんの猫ですか? 名前は?」
「金平糖です。」
「あの、お菓子の金平糖ですか?」
「はい。」

水鶏は机の下の子猫を抱き上げた

「あのよろしければ雪花さん、『琥珀の桜花』について教えてもらえませんか?」
「私の知っている範囲でなら、、、。」

水鶏はにこりと笑う 雪花は持っていた湯飲みを机に置き、静かに話し始めた

「それは、母と妹の大好きだった歌なんです。」
「そして、妹の名前の由来になった歌でもあります。」
「妹さんは?」

水鶏の言葉に雪花は少し悲しそうに笑い、返答した

「半年前に亡くなりしました。」
「そうですか、何も知らないとはいえすいませんでした。」

どうぞ。と小声で言い、水鶏は雪花の前に和菓子を出した
雪花は嬉しそうに和菓子をつまむ

「雪花さんは、その歌少しでも歌えますか?」
「良かったら教えて下さい、その歌を。」
「はい、本当に少しですけど。」

そう言い、雪花は歌い始めた
水鶏はその歌を静かに聴く
ほんの少しの間だが、店内には雪花の歌声が響いた

「わかりました。」

水鶏は金平糖を放し、立ち上がった
そして、静かに歌い始めた
雪花はとても驚いた
何と水鶏は琥珀の桜花を全て歌ったのだ

「凄い、この歌知ってたんですね。」
「はい、今雪花さんから教えて貰いました。」

水鶏はそう言い、又店内の奥にいった
雪花は不思議そうに首を傾げる
その間に水鶏は木製の箱を手に、戻ってきた

「とにかく、この歌で間違いありませんね。」
「あ、はい。」

水鶏は木製の箱のネジをキリキリと巻いた
雪花はさらに不思議そうに首を傾げていた

「?!」

箱からは琥珀の桜花が聞こえた
雪花はとても驚き、箱を眺めたり水鶏をを見たりした
水鶏は箱を指さし、くすくすと笑う

「これはオルゴールといい、歌をそこに保ちいつでも聞けるという箱です。」
「おるごぉる?」

雪花は水鶏と木製の箱を不思議そうに見ていた
水鶏は又、くすくすと笑った

「とにかく、お金を払わないと。」
「そうですね、、、お代はちゃんともらわないとね。」
「あの、、、いくらですか?」
「お金は頂きません、その代わりにですが雪花さんの笑顔を下さい。」
「え?!」
「ただ、笑ってくれるだけで良いんです。」
「でも、、、、。」

雪花は少し悩み始めた
眉間にはしわが寄っている

「ほら、そんな顔じゃお代にはなりませんよ?」
「あの、、、、水鶏さん。」
「はい?」
「何で、目隠しをしていても私の顔が分かるんですか?」
「なんとなくです。」

そう言うと、水鶏は目隠しを外した
雪花は水鶏の両眼にとても驚いた

「水鶏さん、、、その目。」

水鶏の両眼は赤と青
それぞれ違う色をしていた

「生まれつきなんです、気持ち悪いですか?」

水鶏はにこりと笑う
すると、それにつられてか雪花も笑った

「いいえ、とっても綺麗です。」
「ありがとうございます。」

水鶏は笑いながら、又目隠しをしようとした
が、その手を雪花に掴まれ一瞬止められた

「せめて、私がここから帰るまでそのままでいて下さい。」

そんな綺麗な物隠すなんて勿体ない。 雪花は小声でそう言った
水鶏は少し顔を赤らめ嬉しそうに笑った

「それでは、もうそろそろ帰りますね。」
「そうですか、じゃあ今日はもう閉店にします。」

雪花はそう言い、席を立とうとした

「では又のご来店お待ちしております。」
「、、、、まぁ、又会えたらの話ですがね。」

水鶏はどこからかはさみを取りだし、何かをプツンと切る
その瞬間、雪花は床に倒れた

「ごめんなさいね、これもお仕事なんです。」

水鶏は笑う

「金平糖、お仕事です。」
「ニャア、、。」
「お客様をちゃんと家まで送って下さい。」
「あ、それといつものあれもお願いしますよ。」

水鶏は金平糖の首輪に木製の箱を結びつけ、小さく撫でた
金平糖はニャアニャアと鳴きながら、雪花に近付いた

「ニャア、、、。」

店内には金平糖の鳴き声が静かに響いた



「雪、、、花、、、、。」
「ん、、?」
「雪花。」

雪花はゆっくり目を開けた
目の前には雪花の母・深雪が立っていた

「朝から寝てるなんて、貴方にしては珍しいわ。」
「桜を見てたら急に睡魔に襲われて、、、。」
「ふ〜ん。」

少し冷たい風が2人の間をすり抜けた

「涙のあとがあるけど、、、何、桜花の夢でも見た?」
「違う、それに桜花の夢ぐらいで泣かない。」
「じゃあどんな夢を見たのよ?」
「よく覚えてない。」
「ただ、悪い夢を見た気はしないよ。」

雪花は立ち上がり、家の奥へ入っていった
ふと、足下を見て何かの存在に気が付く深雪

「あら、可愛い。 何処から来たの?」

そこには黒い子猫がちょこんと座っていた

「ニャア〜。」

子猫は首を振り、木製の箱を床に落とした
深雪は屈み、その箱を拾う

「これは私に?」
「ニャァ。」
「ありがとう。」

深雪は子猫を撫でた
すると、冷たい風が又吹き付けた

「あら、、、、。」

深雪が目を閉じたのは、ほんの一瞬だった
それなのに、次に目を開けたときにはそこに居るはずの子猫が消えていた
桜の花びらが目の前を何度も通過する

「良い構図、良いモノが描けそう。」

深雪はそう言い、家の奥に入っていった


「金平糖、あれが深雪さんへの贈り物とよく分かりましたね。」

水鶏は紅茶を飲んでいた
金平糖はごろごろと水鶏に甘えてみせた

「ニャ。」
「桜の花びら、、、。」

水鶏は金平糖の頭に付いていた薄紅の小さな花びらを拾う
しばらく考え込むように腕を組む
そして、水鶏はにっこりと笑い金平糖を撫でた

「今日のおやつは桜餅にしましょうか。」
「ニャア!」

そうして、水鶏は店の前に『一時休憩中』と書いた看板を出した


【END】


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